千葉県・昭和ゴルフの自慢は 350ヤード防球ネットなしの爽快感 ~シリーズゴルフ練習場ビジネス42~

千葉県・昭和ゴルフの自慢は 350ヤード防球ネットなしの爽快感 ~シリーズゴルフ練習場ビジネス42~
昭和ゴルフは千葉県富里市御料にある。周囲には畑や牧場が広がる地域密着のゴルフ練習場だ。東関東自動車道の富里ICから車で10分、周辺にはゴルフ場もありゴルファーにとってはアクセスがよい。防球ネットがないフラットな350ヤードの打ち放しで、1階115打席の天然芝が広がる開放的な空間に年間13万人が来場する。敷地は駐車場や周辺の土地を含めて7万5000坪超。 打席からフェアウェイを初めて見た時、マスターズの舞台であるオーガスタナショナル・ゴルフクラブの練習場を彷彿させる広さと解放感が心地よかった。同施設の成り立ちやコンセプトについて川島哲也支配人に取材した。同氏は勤続25年、支配人になって13年目。 昭和ゴルフの開場は1984年、元は馬の牧場跡地であった。成田空港にも近い富里は、馬の飼育で有名な地域。ここに練習場を造ったのは栃木県で運送会社を経営していた河上一吉氏(故人)であった。ゴルフ好きで、自分の楽しみのためにこの土地を1982年頃に購入し、自ら重機を運転して土地を開墾した。その造成中、知人達から、 「これだけ広い練習場ならビジネスとして成り立つのではないか」 と言われ、練習場経営を決めた。究極の道楽が、ビジネスになった。 当初は85打席でスタートしたが、折からのゴルフブームで打席待ちが出る盛況ぶりに、すぐ115打席に増設している。初代の河上社長はシングルの腕前で、鷹之台やカレドニアンのメンバーだっただけに練習場の向きも含めて設計に携わった。 経営は順風満帆で、朝から1時間待ちの行列はざら。営業は9時から深夜零時、1時まで延長することもあったとか。「昭和ゴルフ」の名称は、開業した昭和59年の年号から取ったのでは、との話である。 川島支配人の入社は1999年で、初代経営者・河上社長の時代だった。「雲の上の存在」だった河上社長は、しかし、本業の経営が厳しくなり、2002年に仕事の関係先だった古谷建設株式会社の古谷務社長に経営を委譲。河上氏のゴルフへの想いは強く、従業員を含めて練習場を残す形でのバトンタッチだったという。バトンを受けた古谷氏もゴルフへの造詣が深く、 「ゴルフ練習場を良くすることに熱心で、ほぼ毎日顔を出され、2010年にクラブハウスを増設、2019年には照明をLED化しています。打席から先は天然芝が350ヤード広がっており、芝の手入れは近隣のゴルフ場を管理している会社に委託。そのため、ゴルフ場のフェアウェイと同等の緑を確保しています」(川島支配人) 経営母体の古谷建設は、経営理念として「優れた施工とサービスで顧客を創造する」を掲げている。1967年に運送業を立ち上げ、現在千葉県を中心に総合建設会社として発展中。その発展を後押ししたのは、手間がかかっても、とにかく綺麗なものに仕上げようという意識であった。その方針が練習場経営にも生かされており、川島支配人は、 「とにかく練習場をきれいにすることと、分け隔てのない接客を心掛けることが、2代目の経営者から引き継がれています」 とのことで、練習場の導入路から綺麗に清掃されているのが印象に残った。2代目社長の古谷務氏は昨年他界され、3代目の古谷秀一氏が経営を担っている。

ドラコンプロお断り

その昭和ゴルフの特長は、 「言うまでもなく、ゴルフ場と変わらない350ヤードのフェアウェイです。ゴルフ場と同じ環境で打てることが当社の魅力ですが、創業時からゴルファー目線も大事にしてるんですね。例えば、自動ティーアップ機は導入していません。創業者の河上社長のこだわりで、実際のプレーではゴルファー自身がティーアップするので、より実践に近い形で練習できるようにとの配慮です」 価格を抑えて練習に打ち込めるよう、入場料300円、貸しボール200円/50球で、打席料、照明料、貸しクラブは無料。 「1コインから練習ができる環境を提供しています」 現在はICカードだが、5年前まではプリペイドカード式で、さらにそれ以前はコインで球貸しする方式であった。 ただ、素晴らしい環境ゆえの悩みもある。入り口に表示されている「ドラコンプロお断り」の張り紙である。この練習場環境を知って、ドラコンプロが来場し、350ヤードを超える打球が場外へ飛び出す事例が多発してしまったのだ。 「使用ボールは1ピースなので、試合球ほど飛びませんが、それでも350ヤードを超える球が打たれてしまいました。現在、ドラコンプロは来場していませんが、それでも腕自慢が来場して、350ヤード先の畑に行ってしまうことがあります」 と、川島支配人は苦言を呈する。LED照明に照らされた美しい緑のフェアウェイを、幻想的に飛んでいくボール。飛ばし自慢には最高の環境が徒になった格好ではある。 スクールは実施しておらず、プロが個人で場所を借りてレッスンする方式だという。練習場の課題について、川島支配人は、 「昭和ゴルフの来場者は上級者が多く、敷居が高いと思われています。初心者や女性が来やすい環境をどう整えるかが今後の課題。また、練習ボールは18万球で運営してますが、他の練習場と同じで入れ替え用ボールの納期に時間がかかり、交換のタイミングが延びていることも悩みのひとつですね」  設備的には、アプローチ、バンカー、パッティンググリーンがないので、将来的には敷地の広さを生かして設けたいという。これ以上望めないほどの広いスペースがあるだけに、ゴルフ界としても今後様々な活用法が期待できそうだ。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら