TSIグルーヴアンドスポーツはこのほど、ゴルフブランドPINGとアパレルに関わる契約を締結。2020年SSより、PINGのゴルフウエアを同社がリボーンさせ、4月の小田急ハルクを皮切りにスタートする。TSIの考えるPINGのゴルフウエアとは? 小野田剛取締役に聞く。
聞き手:GEW 片山哲郎
<strong>TSIは過去にキャロウェイアパレルで成功しました。次はPINGのアパレルということで、勢いのあるブランドに乗るのが上手い。生粋の商売人ですね(笑)</strong>
小野田:そう、やりたがりなんですよ(笑)。でも、キャロウェイで培ったノウハウがあるからPINGが興味を示してくれたのでしょう。当社もPINGには関心があったので、相思相愛という形です。
<strong>PINGは世界的に絶好調。その余勢を駆ってアパレルに注力。間髪入れずに契約するあたり、早業ですね。</strong>
小野田:そのように見えるかもしれませんが、実はPING社とは数年前から面識があって、我々もPINGという歴史あるブランドに興味を持っていたのです。タイミングが合い、日本におけるPINGアパレルのライセンス契約締結に至ったという経緯ですが、今回の契約には私自身、ワクワクしています。
<strong>今回PINGが加わることで7ブランド展開になりますね。</strong>
小野田:はい。サンマウンテンは総代理店ですが、『パーリーゲイツ』『マスターバニーエディション』ジャックバニー』『ニューバランス』『セントアンドリュース』という構成です。
<strong>個々のブランドの位置づけはどうなりますか。</strong>
小野田:基本的にはハウスブランドとライセンスブランドに大別され、ハウスブランドの『パーリーゲイツ』が30周年、『マスターバニーエディション』が10周年、『ジャックバニー』が5年を経過して、厳しい市況環境の中で健闘しています。
一方のライセンスビジネスでは『セントアンドリュース』に代表される歴史あるブランドも扱っていて、そのブランドの本質を理解し、歴史を紐解くことによって個々の位置づけを明確にする。今回PINGと契約したのも、その部分をしっかり表現できると確信したからです。
<strong>キャロウェイが抜けた穴をPINGで埋めるイメージ?</strong>
小野田:いえ、そうではありません。キャロウェイは礎をしっかり築いているので、そういったところをPINGで狙うつもりはありません。
たしかに両社ともギアブランドですが、西海岸に発祥した先進的なキャロウェイとPINGはその歩みやバックグラウンドが違います。
その違いを深い部分から理解して、そこに我々が得意としているファッションやカルチャーのフィルターを通して、我々が想うアメリカンスタイルに“楽しさ”をプラス。そんなコンセプトでやりたいと考えています。
<h2>武骨さと純朴な魂 PINGの本質を理解する</h2>
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<strong>具体的には?</strong>
小野田:まず、PINGには良い意味での武骨なイメージがありますよね。周辺重量配分のパターが発祥など非常に実用的で、物作りに対する確固たる信念がある。それが武骨さにつながるわけですが、これに当社のファッションインフルエンスを融合させて化学反応を起こす、という感じですかね。
<strong>創業者のカーステン・ソルハイムは頑固一徹で、元々GEのエンジニアだから物理の目線も入れている。</strong>
小野田:そうですね。PINGはスコッツデールという砂漠の町(アリゾナ州フェニックス)で、長い年月をかけて一つひとつの製品を大切に作る、本当にモノ作りが大好きなメーカーです。
ただ、ギアブランドを単に服にしても面白くないでしょ? PINGが持っている「純朴さ」や「魂」を、我々のアパレル寄りの発想でオシャレでクールなものに仕上げたいと。
<strong>今のジョンK社長で三代目。非上場のファミリーカンパニーだから、株主の「数字を作れ」という圧力も無縁です。</strong>
小野田:そのあたりもジックリと腰を据えて物作りに打ち込める一因だと思いますね。
<strong>PINGは砂漠の町に創業して61年目を迎えました。現地に行かれたそうですが、どのような印象ですか?</strong>
小野田:本当に何もないところで、サボテンしかない(笑)。
<strong>岩山の景色に10m級のサボテンがドカドカある。</strong>
小野田:そう。だから色彩的にワントーンのイメージなんですよ。オフィスの内装も如何にもアメリカっぽくシンプルで、昔から大事に受け継がれてきた様子が伺えます。
敷地の奥へ進んでいくと、クラブやパター作りのスタッフが大勢いて、とにかくモノを大事にする。その姿勢を強く感じました。
何ていうか、カーステン・ソルハイム氏から受け継がれた“変わらぬ武骨さ”が漂っていて、61年間ロゴも不変じゃないですか。キャラクターの「ピンマン」も、現会長が幼少期に作った粘土細工をそのまま使っているとか、変わらない。その変わらないモノを新しく表現する面での遣り甲斐もありますね。
<strong>キャロウェイの先進性、洗練さとは明らかに違う。</strong>
小野田:はい。キャロウェイは革新的な機能を主張するブランドだから、PINGのアパレルはそこではなく、ブランド全体が醸し出す雰囲気が明らかに違う。先述した“ワントーン”に集約されると思いますね。
<strong>その際、PINGの歴史、哲学が詰まったこの本も参考になりそうですね。</strong>
小野田:おっしゃるとおりです。温故知新がいっぱい詰まっている分厚い本で、昔のアイアンヘッドを見て「これはファスナーの引き手に使えるんじゃないか」とか、「パターのゴールドもアパレルのカラーに活かせる」とか、見ていると発想がどんどん膨らむんですよ(笑)。歴史がアパレルの発想に繋がります。
<strong>ジョンKは東日本大震災のとき日本の社長として常駐していて、炊き出しに並ぶ列が整然としていたと感動したり、日本通でもありますね。御社の企画に対する理解度も深いでしょうね。</strong>
<h2>PINGアパレルの流通戦略</h2>
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<strong>流通戦略については?</strong>
小野田:PINGは世界的に認知されているブランドなので、将来的には幅広いお客様に買ってもらえる場所で展開していきたいと考えています。
我々がリボーンするPINGアパレルは4月24日、小田急ハルクのポップアップを皮切りに、当社の直営店でのスタートとなります。
<strong>中期計画の3年間、PINGを加えた7ブランドの展開法はどうなりますか。</strong>
小野田:「ニューバランス」や「ジャックバニー」が好調で、いい数字が出ていますが、PINGはまず、このレベルに達しないとダメでしょう。早い機会にベスト10に入り、将来的には業界のベスト3ブランドになりたい。今後、そのための施策を意欲的に打っていきます。
<strong>来年以降は専門量販チェーンにも入れていく?</strong>
小野田:もちろんそこは視野に入れます。PINGは今、すごく元気で、そこにTSIのPINGアパレルが登場することで、コロナの影響もありますが、業界を元気にしていきたい。このブランドがひとつの光明となり、“こういう服を着てみたい”と思われる商品にしたい。暗い話が蔓延していますが、まあ、見ていてください!
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