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    ハッシュタグ「ゴルフ練習場」記事一覧

    今回も前号に続き、来場者の「安定化」を判断する分析手法です。来場回数で見ていきましょう。 図8は来場回数の増減クロス集計表です。表の見方は顧客数クロス集計と同じで、赤字が2022年に比べて2023年が減った部分です。月1ゴルファーだった人が週1ゴルファーになれば来場回数は当然増えます。横軸の月1ゴルファーに縦軸の週1ゴルファーの値を見ると、3990回で来場回数は増えていますが、逆に週1ゴルファーが来場しなくなった分は横軸の週1ゴルファーに縦軸の消滅または休眠のマイナス503回とわかります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image8.jpg" alt="" width="788" height="227" class="size-full wp-image-84621" /> 図8 図9は来場回数の増減と該当顧客数をまとめた表です。さらに図9からトップ5をまとめた表が図10の来場者数・来場回数増減結合のTOP5です。2022年に1回も来場しなかった人が、月1ゴルファーになった人の231名・5639回が最も増えた区分で、逆に最も減ったのは、週1ゴルファーだった人が月1ゴルファーに降格した136名のマイナス4759回です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image9.jpg" alt="" width="788" height="1591" class="size-full wp-image-84622" /> 図9 さらに、来場者数・来場回数増減結合のTOP5をグラフにしたのが図11です。減った部分は月1もしくは週1ゴルファーだった人の部分が大きく、常連の来場頻度が減ったという感じです。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image11.jpg" alt="" width="788" height="465" class="size-full wp-image-84623" /> 図11 上位要因の階層別該当顧客数が図12のグラフです。2022年に月1ゴルファーだった人が、2023年に週1ゴルファーとなったのは、人数的には94名ですが、3990回分増えた様子も掴めます。 図13は2022年・2023年での各階層の回数比較で、常連階層の来場回数自体は増えています。また 図13の差分を表示したのが図14で、回数としては常連が支えている様子がわかります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image13.jpg" alt="" width="788" height="466" class="size-full wp-image-84624" /> 図13 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image14.jpg" alt="" width="788" height="472" class="size-full wp-image-84625" /> 図14 図13・図14のグラフの数値を表にしたものが図15です。月に1回以上来場している「安定ゴルファー」の人数は27%程度ですが、回数としては88%程度を占めている。このことから「安定ゴルファー=常連」の来場回数や打球数が増える工夫をすれば、売上に直結すると言えます。練習場が定期的に行なう月例コンペや来場特典は、常連のゴルフ活動が活発になるきっかけ作りに役立つと言えるでしょう。とはいえ、今の常連が永遠にゴルフ練習場を支えてくれるわけではありません。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image15.jpg" alt="" width="788" height="602" class="size-full wp-image-84626" /> 図15 図16は、以前紹介したゴルフ産業需要研究所・山岸勝信代表のものです。コロナ特需ピークの2021年前後の様子を見ても、新規・休眠層から再開層の上乗せがなければ、来場者数も来場回数も基本的には右肩下がりになります。引越しや高齢での引退もありますので、経営を維持していくためには新規・再開層を積み上げる必要があるわけです。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image16.jpg" alt="" width="788" height="508" class="size-full wp-image-84627" /> 図16 このグラフも当社の分析システムでは図17、図18のように簡単に表示できます。なお、今回データを提供いただいた西の森ゴルフパークは2021年に当社システムに入れ替えたため、それ以前のグラフは出ていません。細かいデータが多いので理解が難しいかもしれませんが、山岸代表が話すように「単に来場者の増減だけを見るのではなく、その内訳を分析することで施作の成果がわかる」ことは確かです。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image17.jpg" alt="" width="788" height="471" class="size-full wp-image-84628" /> 図17 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/01/image18.jpg" alt="" width="788" height="465" class="size-full wp-image-84629" /> 図18 新規来場者の「集客と常連化」は経営の最重要課題です。そのために何をすべきかをデータを元に考え、成果をデータで振り返る。その繰り返しが大切なのです。 なお、このシステムでは自社の練習場の来場詳細分析だけでなく、分析システムを利用している全練習場のデータを使った分析結果も参照できます。商圏等が違うため、他社との比較分析が万能ではないものの、全体の動向を把握することは経営判断の参考になるでしょう。 西の森ゴルフパークの中川支配人とは先日、分析画面を一緒に確認しながら、課題や改善ポイントを議論しました。他の練習場の取り組みも同時に説明しましたが、それでも理解するのに骨が折れたそうです。 ただ、この原稿を事前に読んで頂いたところ「だいぶ理解できた」とのこと。近年のシステムは、データ自体はデータベースにしっかり溜まっていますが、使用者が理解しやすい状態で表示することがシステム提供者としてすべきことです。さらに、その分析結果をどう理解してどう活用すべきかまで紹介・提案できてこそ、初めてシステムが活きてきます。誌面で紹介する機会を頂き、感謝しています。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年01月10日
    桜宮ゴルフクラブは、大阪市都島区にあるゴルフ練習場である。アクセス抜群で、JR環状線・京阪・地下鉄の「京橋駅」、JR東西線「大阪城北詰駅」、JR環状線「桜ノ宮駅」からそれぞれ徒歩10分、大阪梅田からも約4Kmの場所にある。 クラブハウスは天井が高く明るく、受付スタッフが笑顔で迎えてくれた。120ヤード3階94打席で、年間13万人以上が訪れる。正三角形の独自の形をした敷地にある同施設の成り立ちやコンセプトについて、桜宮ゴルフクラブ株式会社・取締役会長・川﨑益彦氏、代表取締役社長・川﨑博之氏に話を聞いた。取材場所は練習場横の川﨑益彦氏が代表取締役を務める大阪冷蔵株式会社の事務所。この会社名に同練習場の成り立ちの歴史が刻まれている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/2410shimasaki2.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-83897" /> 桜宮ゴルフクラブ 大阪冷蔵定款 桜宮ゴルフクラブが開場したのは1992年である。この事業の始まりは、1898年に鳥取で日本初の冷蔵倉庫を開業した日本冷蔵商会に始まる。1905年に会社・工場を神戸に移し、更に1906年現在の練習場がある大阪に日本冷蔵倉庫合資会社として移転。冷凍設備を利用した「凍り豆腐(高野豆腐)」の製造を主力事業とし、冷蔵倉庫、製氷も行っていた。会社は1909年に大日本冷蔵株式会社として登記されている。川﨑家は代々この会社の経営には携わっておらず、堺で乾物・海産物卸を生業としてきた。川﨑会長の祖父・徳次郎氏が、同社の「凍り豆腐」を大口で取り扱っていたことから経営に参画し、その後同社の株式を取得したという経緯。 戦前は軍需用の凍り豆腐を製造しており、戦後1950年に大阪冷蔵株式会社に社名変更。主力の「凍り豆腐」は競合が増え、過当競争による価格暴落もあり、徳次郎氏は大阪冷蔵の再建を考えて1951年に凍り豆腐事業から撤退を決めた。 徳次郎氏の息子で、川﨑会長の父の益男氏が1952年大学を卒業、大阪冷蔵に入社した。益男氏は学生時代から新しい事業に挑戦する夢を持ち、アイススケートが流行ると考え徳次郎氏に提案した。凍り豆腐事業から撤退したタイミングで、工場跡地の活用、新規事業を考えていたため、アイススケートリンク事業への進出を決めた。大阪冷蔵の製氷技術をそのまま生かせ、京橋駅から近い地の利も幸いした。1953年3月別会社として、桜宮スケートリンク株式会社を設立、10月に現在の練習場と同じ場所に開場。大阪で5番目のスケートリンクであった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/2410shimasaki3.jpg" alt="" width="898" height="973" class="size-full wp-image-83898" /> 桜宮ゴルフクラブ スケートリンクの歴史 開業から2年間は赤字だったが、1955年には予想通りブームとなり、入場待ちの行列ができる盛況ぶり。ところが、開場して20年が経過し、70年代後半になるとレジャーの多様化や競合でスケート事業は不振に陥る。1982年に川﨑会長が大学卒業、三洋電機に勤務後大阪冷蔵へ入社、会社全体の改革に着手。 当時、冷蔵倉庫やスケートリンク事業など会社全体として赤字体質に苦しんでいた。さらにバブル経済の中、1990年土地基本法の施行、税制改正があり、固定資産税が3・5倍になる。事業を整理して土地活用を考え、1992年桜宮スケートリンクは39年の歴史に幕を閉じ、ゴルフ練習場事業へ転換した。 川﨑会長が理由を話す。 「三角形の2500坪の土地は一筆で価値があり、更に練習場として打席が広くとれ、フェアウエイは三角形なのでボールが集めやすいメリットもあります。また、ゴルフ練習場を賃貸する場合、フェアウエイが主体で駐車場と同じ扱いだから借地権が発生しない。いつでも次の事業に活用できるメリットもある」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/2410shimasaki5.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-83899" /> 桜宮ゴルフクラブ 三角形のフェアウエイ そこでまず、ゼネコンから練習場運営会社を紹介され、練習場設備を大阪冷蔵が建設して大家となり、練習場運営会社から家賃収入を得るモデルで1992年11月に開業。運営会社が設計した練習場は、鉄塔の間隔が8mの贅沢な仕様で、既存の事業整理を含めて10億円以上の投資だったが、運営会社からの家賃収入は投資回収するのに十分な金額だったという。が、その後経営不振で家賃の支払いが滞り、1998年から直接経営を始めている。 ゴルフウエアの古着を寄付 桜宮ゴルフクラブの名称は、近隣に桜宮神社があり、桜宮スケートリンクの名前をそのまま引き継いでいる。直接経営を始めてから改革に取り組んだのがスクールだった。 「スクールは、新規で毎月30人入るけど30人やめる状況でした。そこでプロが独自で開講していたスクールを桜宮ゴルフスクールに統一し″お好きな時間に、お好きなプロに”のコピーで、生徒がプロを自由に選べるようにしたのです。その結果ゴルフスクールの定着率と売上が順調に伸び、経営改善に貢献しました。また、従業員の提案でISO9001を取得。一貫した従業員教育でサービスの質を向上させ、お客様に喜んでもらえるゴルフ練習場を目指しています」(川﨑会長) その中で、顧客サービス基本方針を定めた。全文は割愛するが、 《当社はお客様が元気に楽しくゴルフを練習できるサービスおよび環境を提供します。そのために、スタッフ全員が笑顔で誠実におもてなしをいたします》 を掲げている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/2410shimasaki4.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-83900" /> 桜宮ゴルフクラブ 受付 2010年にクラブハウスをリニューアル、2019年には健康増進のための低酸素・高酸素ジムAORもオープンした。社会貢献として、ゴルフウエアの古着を集め、釜ヶ崎の労働者に寄付する活動を10年前から始め、関西ゴルフ練習場連盟も巻き込んで実施している。 今後の課題について川﨑社長は、「若い世代のリピート率を上げ、スクールの定着率を上げていくこと」 と回答した。次代を担う同氏は「ゴルフと健康」にも学術的に取り組んでいるという。川﨑会長、川﨑社長とも大学は理科系だけに、合理的かつ新しい切り口で練習場業界に新風を吹き込んでいる。「元気に楽しく」という言葉が、練習場活性化のキーワードになると感じた。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年11月17日
    前回は練習場経営において大事な指標となる「安定化率」について簡単に触れましたが、今回はこの点を深掘りします。 安定化率は来場者の動きを調べたもので、「比較対象期間に安定化していなかった顧客のうち、集計期間に安定化した割合」のこと。安定化していなかった顧客とは「年間来場回数11回以下」の人であり、逆に安定化した顧客は「年間来場回数12回以上」と定義しますが、「12回以上」で分けた根拠は、以前当連載で紹介した山岸勝信代表(ゴルフ産業需要調査研究所)の、前年来場回数と翌年来場割合の図5を見るとわかります。 前年に12回以上来場した人は、翌年に「8割以上継続」して来場するというデータがある。つまり平均月イチ以上の来場者は、その練習場へ通うことが習慣化→安定化したと言えるかもしれません。 当社のシステムでは、図6にある分析システムで簡単に自分の練習場に関するこのグラフが確認できますが、私がざっと確認した感じでは、年間8回以上で8割を超える感じでした。それが年間12回を超えれば、ほぼどの練習場でも継続的に来場してくれると思います。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/image5.jpg" alt="" width="788" height="590" class="size-full wp-image-82963" /> 図5 図5でもう一つ大切な点は、年間1回しか来場しなかった人の多さです。有名練習場に出張ついでに、という一見さんが多い練習場は別として、一般的な練習場でもグラフの傾向は同じです。つまり、せっかく来てくれたお客さんの多くが再来場していない現実が明らかなのです。 そもそも、練習場経営にとって重要なことは、如何に「初めて来てもらえるか」です。1回目がすべての始まりなので、これがなければ2回目も3回目もありません。 初めてのお客さんは、ゴルフを始めようという人や、しばらくやめていた再開組、あるいは転居してきた人かもしれません。他の練習場に通っていた人に来てもらうこともそう簡単ではないでしょう。様々な事情や困難を乗り越えて「1回目」があるわけですが、にもかかわらず、2度と来ない割合がとても高い。その原因を分析して安定化率を高めることが如何に大事かわかります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/image6.jpg" alt="" width="788" height="433" class="size-full wp-image-82964" /> 図6 実は、再来場を促すテクニックはたくさんあります。初回のチャージを、1回で使いきれない金額で入れてもらう施策も効果的だし、次回使えるクーポンなどを渡すのも良いでしょう。しかし、それよりも大切ななことは「ゴルフって楽しい!」「また来たい!」と思える体験をしてもらうことだと思います。 そのためには練習すること自体の楽しみに限らず、スタッフの気持ち良い対応や清潔な環境、コミュニティとしての居心地の良さなどさまざまな要因が考えられます。そのための対策を行った結果、年間12回を超える来場をしてくれれば、ゴルフの楽しさがわかり、その練習場にとって「常連化」→「安定化」したということになります。 この安定化率が、わずか10%にも届かない現状は深刻ですが、逆に考えれば、ゴルフを始めたい人を増やして安定化率を高められれば、まだまだ来場者を増やせるでしょう。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/image7.jpg" alt="" width="788" height="398" class="size-full wp-image-82965" /> 図7 顧客数増減クロス集計をグラフ化したのが図7の実稼働顧客増減です。週1ゴルファーは前に説明したように2022年に比べて2023年は28名減ったという感じに増減の様子が確認できます。トータルでは363名減少しています。コロナ禍ピークの2021年から徐々に減少傾向だったことは全国的なトレンドです。この練習場では年間1回だけの来場と、コースプレー準備中(年間2〜4回来場)の減少が多いので、常連はそれほど減っていないという見方もできます。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年09月18日
    ベストゴルフ水戸は、那珂川沿いの茨城県水戸市水府町にある、180ヤード160打席のゴルフ練習場。那珂川に向かって打つ打席配置で、県内最大級のフィールドが持ち味だ。筆者は都内から車で取材に行ったが、都心から2時間の距離であった。水戸駅からも2㎞圏内だから、車で5分のロケーションである。 商圏は北側のひたちなか市、日立市、南側は水戸市内、西は笠間市と車社会ならではの広さである。そのため駐車場は打席数と同じ160台分用意されている。同練習場の成り立ちやコンセプトなどについて、株式会社ベストゴルフ水戸の大内智充支配人に取材した。 ベストゴルフ水戸の親会社は、茨城トヨタ自動車株式会社である。茨城トヨタグループ18社の中の一つで、茨城トヨタ100%出資の関連会社だ。練習場の代表者は、茨城トヨタの幡谷浩史会長である。 茨城トヨタは1943年、茨城県自動車配給株式会社として設立され、1948年に茨城トヨタ自動車株式会社に社名変更、現在に至る。1955年、経営不振に陥っていた同社を先々代の幡谷仙三郎氏に経営委譲している。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/2408shimasaki2.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82925" /> ベストゴルフ水戸 外観 幡谷仙三郎氏は1893年、現在の東茨城郡小川町幡谷に生まれた。幡谷家は当時、醤油醸造などの事業で財をなし、仙三郎氏は早稲田大学卒業後、家業を継ぎ、様々な事業を興したという。茨城県商工信用組合(現茨城県信用組合)の設立や、地元の小川町町長、茨城県議会議員も務めている。 自動車産業の将来を早くから見抜き、茨城トヨタの経営に乗り出した。1981年に他界、2代目の浩史社長(現会長)が継承し、2004年に3代目の史朗社長となった。ベストゴルフ水戸は茨城トヨタグループの一員であり、関連会社の全体会議(月1回)に大内支配人も出席している。その茨城トヨタグループの基本は自動車関連事業だが、ゴルフ練習場と他1社だけが異業種となる。なぜ、自動車ディーラーが練習場事業に乗り出したのか? ベストゴルフ水戸の前身は、同じ場所で営業していた練習場・水府ゴルフであった。およそ60年前の開業だが、経営不振に陥っていた。その立て直しを前オーナーから頼まれたのが、当時茨城トヨタの社長だった浩史氏である。同氏が練習場の経営を引き受けたのは、ゴルフ好きだったことも理由の一つで、近隣のゴルフ場の役員なども務めていた。 練習場経営に本腰を入れるため、1987年2月に株式会社ベストゴルフ水戸を設立。以前の水府ゴルフは、那珂川と平行に打つ打席配置であったが、フィールド、打席、クラブハウスを新築し、1988年7月に新規開業した。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/2408shimasaki3.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82927" /> ベストゴルフ水戸 打席間隔3m 大内支配人は、茨城トヨタで県内の店長などを歴任。4年前に現職に就いたが、歴代の支配人も同様であった。同氏は自動車営業で培ったのか、物腰のやわらかい紳士的な雰囲気で、ゴルフ業界人とはどことなく違う。同氏の話。 「以前は、営業の一環としてゴルフに親しむ程度でしたが、自動車ディーラーが経営する練習場ならではの使い方として、駐車場で自動車の展示・販売会などもしています。ゴルフと自動車は親和性が高いので、このあたりはグループの強みを生かしています」 練習場が開催するコンペには、練習場のスクール生だけではなく、グループ関連の顧客も参加するため、ゴルフ場を借り切って、自動車を展示することもある。 ふれあい第一主義 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/2408shimasaki6.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82929" /> ベストゴルフ水戸 創業当時の航空写真 ベストゴルフ水戸の名前の由来は、NHK教育テレビのスポーツ講座で「ベストスキー」「ベストゴルフ」などの番組があり、初心者も含めて親しみやすい名前であること。事業を引き継ぎ、ベストを目指そうとの思いで浩史会長が命名した。 調べてみると、「ベストゴルフ」は教育番組の「趣味講座」で1982~1996年まで10期にわたって放送されていた。杉本英世、杉原輝雄、倉本昌弘、岡本綾子ら錚々たるプロが講師となり、ゴルフの楽しさやスイングの基本、コース攻略法まで、初心者がゴルフを学べる内容であった。 ベストゴルフ水戸の特長について、大内支配人がこう話す。 「特長は、アナログなことです。人と人のつながりを大事にしているので、自動チェックインは考えていません。打席の案内は、必ずフロントでカートリッジを手渡します。『いらっしゃいませ』で始まり『ありがとうございます』で終わる。心のこもった挨拶を大切にしています」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/2408shimasaki4.jpg" alt="" width="1000" height="667" class="size-full wp-image-82928" /> ベストゴルフ水戸 打席球貸し 筆者が取材で訪れた時も、フロントの挨拶が心地よかった。ベストゴルフ水戸のポリシーとして、挨拶を含めたコミュニケーションを大事にする。顧客一人ひとりを大切にする自動車ディーラーならではの経営理念かもしれない。 「特に初心者は、初めての練習場で緊張するそうです。そこのシステムがわからないことも多く、スタッフがいなければ悩んでしまう。フロントで『いらっしゃいませ』と声をかければ、わからないことも訊ねやすい。安心できると思います」 施設の特長は広々とした練習環境で、浩史会長は開業時から、クラブの長尺化を予測して打席間隔を3mにした。2階建て各階80打席の180ヤードで、フィールドは天然芝。ゆったりとした開放的な雰囲気が持ち味である。ただし、今後に課題はあるという。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/2408shimasaki7.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82931" /> ベストゴルフ水戸 バンカー 「人の確保です。年々難しくなっており、インストラクターも高齢化しています。施設も徐々に経年劣化しており、保守・修繕が引き続き必要です。練習場業界全体の課題としましては、団塊の世代のリタイアが見えており、幅広い裾野と次世代の育成が急務だと思っています」 企業が経営する練習場も、経営環境の変化から近年は閉鎖が目立ちはじめた。茨城トヨタが経営する同施設には「顧客目線」の精神が息づいており、地域に愛される練習場として末永い継続を期待したい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年09月15日
    私がゴルフ練習場システムに関わるようになった8年前は、プリペイドカードに対してリライトカードやICカードのメリットは「カードを使い捨てしないですむこと」くらいでしたが、熱心な練習場経営者と交流を続ける中で、「顧客情報を預かる代わりにきめ細かなサービスを提供できる」メリットを学びました。 さらに「来場分析をして、料金体系などのサービスを検討する大事な判断材料」として活用できることも学び、当社のシステムを導入する際に「こういう帳票を出して欲しい」と要望されることもありました。 当初、帳票は経理的な活用だろうと考えましたが、そうではないということを、福島県いわき市の荒川ゴルフクラブ佐藤社長と、福岡市の小戸ゴルフセンター川上支配人から教わりました。練習場経営のポイントは多岐にわたりますが、特に「価格改定の考え方」「打席使用率を上げる方法」「リニューアルなど投資の判断基準」等が大事であり、データ分析→予測→決定に活かせます。 このような学びを経て、我々がやるべきことは「ゴルフ練習場が将来に向けて発展を続けるためのお手伝い」だと考え始め、分析システムの開発に着手。株式会社ONE Story山﨑代表のコンサルティング手法をシステム化し、練習場の要望に応える形で「現状分析機能」を追加。さらに昨年、ゴルフ需要調査研究所の山岸代表と出会い、マクロ分析や「山岸流分析手法」をシステムに取り込む。それが当社の現在地です。 山岸代表の「来場者が増えた・減ったの大雑把な視点では本質は見えない」という言葉は、目からうろこでした。なぜなら来場者の増減は、コロナ禍の影響はもちろん、気象状況や景気など様々な外的要因に左右されるため、単に増減だけを見ても本質は見えないからです。山岸代表は、「新規来場者を増やす工夫は大事だが、同時に、新規来場者をどれだけ『常連客』に育てられたかを見続けなければ、練習場の安定経営は難しい」と話しており、同氏はこの基準を「安定化率」と呼んでいます。 来場者を年間来場回数で階層分けし、各階層の来場者がどのように変化したかを観察すれば「常連になった顧客の数」や、逆に「来場回数が減ったり離脱した常連客数」など、具体的な動向が観察できます。 「来場詳細分析」とは? 以上を前提に、山岸代表の指導を受けながら開発したのが「来場詳細分析」です。次にこの点を説明しましょう。なお、文中のデータは金額など生々しい情報は含みませんが、架空のサンプルデータではなく実データを用います。当社の分析システム導入施設の中で最も「安定化率」が高かった、栃木県宇都宮市の西の森ゴルフパーク・中川支配人よりデータ使用の許可を頂きました。 同施設は2021年2月に当社ICカードシステムでリニューアルしたため、それ以降のデータが分析できます。リニューアル後は来場者の評価も高まっており、その声は、私が著した「ゴルフ練習場行脚録」でも紹介しています。(<a href="https://ncad-golf.com/?p=396" rel="noopener noreferrer" target="_blank">https://ncad-golf.com/?p=396</a>) <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2404image1.jpg" alt="" width="640" height="566" class="size-full wp-image-82461" /> 図1 来場ゴルファーを図1のように階層分けして分析します。ポイントは年間来場回数11回以下を細分化した点ですが、大きな括りで見ると、年間来場回数11回以下を「不安定(常連化前)ゴルファー」と位置づけ、同12回以上を「安定(常連化)ゴルファー」と定義します。 「12回」で分けた根拠は後述しますが、これまでの分析画面同様、来場詳細分析でも集計期間と比較対象期間を指定できます。今回は、2022年の来場者が2023年にどう変化したのかを見ていきます。「来場者数」と「来場回数」の2視点で見ますが、まずは来場者数から。 最初に図3の顧客数クロス集計の表を説明します。集計期間(2023年1年間)と比較対象期間(2022年1年間)のクロス集計表ですが、比較対象期間である2022年の顧客数を見ると、一番下の「総計行」の右端により、2022年に来場した「顧客数総計」は、7061名から「消滅」「休眠」の1545名を引いた5516名となります。同様に、週1ゴルファーは下から2行目の右端にある460名です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2404komaimage2.jpg" alt="" width="1000" height="200" class="size-full wp-image-82462" /> 図2 各階層の顧客が翌2023年にどう変化したのかは、縦に見ていくとわかります。たとえば右から2列目の週1ゴルファーは、上から2022年に一度も来場しなかった人から16名60回以上来る(週1ゴルファー)ようになり、1回だけ来ていた人のうち2名が60回以上来るようになり、2~4回来ていた人から0名、5~11回来ていた人から9名、12~59回来ていた人から94名、60回以上来ていた人から311名が、そのまま60回以上来てくれた、という感じです。また、2022年の週1ゴルファーは総計460名だったので、2023年の432名と比較すると28名減でした。 ここで大事なのは、2022年にそれほど来場しなかった人がどれくらい「常連化」したか、です。青色の部分が2022年に1~11回来てくれた人、つまり常連化していなかった人の総計です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2404image3.jpg" alt="" width="1000" height="288" class="aligncenter size-full wp-image-82463" /> 次にオレンジ色の部分です。2022年に1~4回来場した人のうち2023年に月1ゴルファーになった人は26名、82名、154名で、2023年に週1ゴルファーに育った人も2名、0名、9名いる。その様子をまとめた表が図4です。2022年の1年間で1~11回しか来なかった常連化前の人が図3の青色部分合計の3499名。そのうち月1か週1ゴルファーになった人が273名なので、常連化した人、つまり「安定化率」は7.8%です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/komataimage4.jpg" alt="" width="788" height="252" class="size-full wp-image-82464" /> 図4 当社の分析システム導入施設の平均が5.9%なので、7.8%は高い値ですが、一見客が多い練習場の安定化率は高くなりにくいので、高ければ良いという単純な比較はできません。他の練習場と比較するより自社の練習場が以前と比べてどうかを見るのがよいでしょう。次回は安定化率をもっと深掘りします。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年08月23日
    「ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば」は、1985年に「科学万博つくば」が開催された跡地に建設された科学万博記念公園に隣接、茨城県つくば市水堀大塚に位置している。つくばエクスプレスの万博記念公園駅から徒歩15分、つくば中央インターから車で5分の便利な場所にある。建屋入り口の外観はお洒落な別荘風で高級感があり、ジャック・ニクラスの名前に相応しい雰囲気を漂わせている。 その成り立ちについて田辺正博支配人に取材した。 同練習場はその名が示す通り、ゴルフの帝王・ジャック・ニクラスが監修、1992年に開場した。ニクラスのメジャー大会18勝は、タイガー・ウッズ(15勝)も破れなかった金字塔だ。設立時は三菱商事とサントリーが出資した会社が運営し、社長は三菱商事から、支配人はサントリーからという体制であった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2407shimasaki2.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82452" /> 2_ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば 開業ニクラス来場 なぜ、ニクラスの名前を冠したゴルフ練習場が出来たのか? 実は、サントリーは1984年にマグレガージャパンの株式を75%取得しているが、ニクラスは『ターニー』などマグレガーのクラブを愛用し、米国マグレガーの経営にも関わっていた。当時サントリーの副社長だった鳥井道夫氏はゴルフ事業に関心があり、ニクラスとは個人的にも親しかった。その関係で、米国のジャック・ニクラスゴルフアカデミーのノウハウを導入。そのような流れが練習場開業の背景にある。 当時マグレガージャパンはサントリーのゴルフ事業部門といった位置づけで、男子ツアー「サントリーオープン」の運営にも関わっていた。田辺支配人は大学を卒業後マグレガーに入社してすぐ、研修を兼ねてこの練習場に1年間出向していた。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2407shimasaki3.jpg" alt="" width="1000" height="707" class="size-full wp-image-82454" /> ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば 初期パンフレット 「ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば」が1号店で、東京の大森に2号店もできたが、バブル崩壊の影響もありそれ以上の展開は見送られた。その後、三菱商事、サントリーは撤退し、もともとこの施設を所有していた地元のつくばゴルフガーデン株式会社が運営している。 田辺支配人は10年前にこの練習場に再就職、5年前から支配人を務めている。同社はジャック・ニクラスの商標を、米国のゴールデンベア・インターナショナル・インクからライセンスの許諾を受けている。大森店は別の経営になり、練習場の名前も変わっている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2407shimasaki4.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82455" /> ジャック・ニクラスゴゴルフセンターつくば ミスト設備 打席は2階84打席240ヤード。ニクラスのコンセプトで、コース同様のアンジュレーションを持つフェアウェイ、ターゲットグリーン、バンカーが巧みに配置され、打席ごとに景観が変わり、「狙い」「アドレス」の戦略的な練習ができるように設計。打席から見るとゴルフ場で打っているのと同じような感覚だ。 現在、日本でジャック・ニクラスの名前が付いたゴルフ練習場はここだけである。スタッフウエアの胸には、ニクラスがパターを入れた瞬間の刺繍があしらわれている。1992年10月の開所式には、ニクラスが来場し始球式を行った。その写真がフロントに飾られ、クラブハウスのそこかしこにニクラス関係の写真が見られる。田辺支配人は、 「ニクラスは年配の皆さんはご存じですが、若い20代では知らない方が増えてきています」 と、時代の流れを感じている。 バンカーの砂にもこだわる 随所にこだわりが感じられる。 「お客様にゆったりと過ごしていただきたいので、打席幅は2.7mと広く、椅子も木製で、2人掛け用も一定間隔で配置しています。ボールのオートセッターは、この地域では少ないですね。レストランやヨガスタジオ、カイロプラクティックの併設も特徴で、ゴルフに関係なく来場される女性の方も多いんですよ」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2407shimasaki5.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82456" /> ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば 野菜販売 レストランでは地元の野菜や和菓子なども販売され、クラブ工房も併設されている。 「エリアでナンバーワンの練習場を目指しています。建屋などの設備に負けないよう、スタッフの接客などソフト面も充実させたい。マットとボールを常に綺麗にすることを心掛けており、ボールは毎年少なくとも3万球は交換しています」 打席の横には屋根付きのバンカーも備えており、 「こだわっているのは茨木県高萩産の砂で、近隣の茨城ゴルフ倶楽部や東筑波カントリークラブで使われているのと同じ砂で練習できます」 また、夏でも快適に練習できるよう、10年以上前から全打席にミスト設備を設置。井戸水の使用でコストも抑えられるとか。冬の寒さ対策として遠赤外線の暖房を天井に設置。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2407shimasaki6.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82457" /> ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば ジュニアスクール そもそも練習場の始まりはスクールで、現在3名のJPGAティーチングプロが、ジャック・ニクラスゴルフアカデミーの認定プロとして教えている。スクール生専用のアプローチエリア、バンカー、パター練習場など充実した設備を備え、実技前の座学用の教室もある。スクールは8回がワンクールで年に6期あり、開業から190期を数える。女性ビギナーのための基本レッスン、より高いレベルの安定したスコアを目指すレッスンやジュニアコースなど、多様な6コースで対応する。 新規の来場者が多いのも特徴で、学園都市に位置するため来場者の中心は40~50歳。この練習場事業を健康産業の一環として地元つくばに貢献したいとの思いが強く、60歳以上のシニアには価格を低く設定している。課題について田辺支配人は、 「開場から30年以上経過して、設備の維持・メンテナンスをきちんとしなければなりません。ゴルフ人口の減少をどうやって食い止めるかも課題です。一練習場としてやれることは限られますが、接客で敷居を低くして若い人が来やすくする、コミュニティ誌に練習場の情報を掲載してゴルフに興味を持ってもらえるよう努力しています」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2407shimasaki7.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-82458" /> ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば 外観 ゴルフ振興のためにも、若い世代が集う筑波学園都市の「ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば」が賑わうことを期待したい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年08月18日
    今回も前号からの続きです。荒川ゴルフクラブ(福島県)の実データを基に来場者動態を分析します。 図7は「時間帯-年代別分析」の総来場者です。朝は年配者が多く、夜は若者が多いというグラフになっています。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image7.jpg" alt="" width="1000" height="480" class="size-full wp-image-82223" /> 図7 図8は「年代別の平均総打球数」です。総打球数は年代によって大きな差があるわけではありません。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image8.jpg" alt="" width="1000" height="477" class="size-full wp-image-82224" /> 図8 図9は「時間帯-性別分析」の総来場者数のグラフです。私の感覚では、女性は全体の1割程度の練習場が多く、2割程度のところは女性の集客をかなり頑張っているというイメージです。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image9.jpg" alt="" width="1000" height="479" class="size-full wp-image-82225" /> 図9 図10は「性別の平均打球数」のグラフです。このグラフを見た感じでは、やや男性の方が打球数は多い傾向でしょう。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image10.jpg" alt="" width="1000" height="479" class="size-full wp-image-82226" /> 図10 図11は「曜日-来場者分析」のグラフです。一般的に、女性は平日に少ない傾向があります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image11.jpg" alt="" width="1000" height="459" class="size-full wp-image-82227" /> 図11 「打席別分析から」 図12は「打席別分析」の回転数のグラフで、金額関連の情報は除外してあります。横軸が打席番号です。一般的に真ん中付近が人気があり、両端は利用されにくい傾向がありますが、打席棟への出入り口の場所も影響します。さらに左打席や左右兼用打席は、左打ちの人を最優先する練習場が多いので、回転数が下がる傾向があります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image12.jpg" alt="" width="1000" height="479" class="size-full wp-image-82228" /> 図12 図13は「打席ごとの利用率」で、回転数は営業時間が長いほど増えます。そのため、異なる練習場とは比較しにくいので、営業時間に対して利用されていた時間の割合も表示できるようにしています。グラフの形状は回転数と同じになります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image13.jpg" alt="" width="1000" height="480" class="size-full wp-image-82229" /> 図13 図14は「打席ごとの平均総打球数」です。球数を多く打つ人がよく選ぶ打席がわかります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image14.jpg" alt="" width="1000" height="477" class="size-full wp-image-82230" /> 図14 図15は「打席ごとの総打球数」です。ティーアップユニットのメンテナンスのタイミングを知る基準にも使えます。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image15.jpg" alt="" width="1000" height="481" class="size-full wp-image-82231" /> 図15 <h2>「来場者分析から」</h2> 図16は「総来場者・新規来場者」の様子です。来場者の年代や性別が人口ピラミッドのようにイメージしやすく表示されます。新規来場者に若い世代が多い練習場は、この先も長く通ってくれる期待が持てますので、荒川ゴルフクラブの新規来場者のグラフはとても理想的です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image16.jpg" alt="" width="1000" height="719" class="size-full wp-image-82232" /> 図16 図17は総来場者を「顧客ごと」から「来場回数ごと」にしたものです。「顧客ごと」と一緒に見比べると、年配者ほど一人当たりの来場回数が多いのがわかります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/image17.jpg" alt="" width="1000" height="1432" class="size-full wp-image-82233" /> 図17 今回ご紹介したように、他所の練習場の様子のうち、金額関連を除く情報を練習場同士で共有できれば、自社の特徴・強み・弱みなどがはっきりとイメージできるようになります。この機能はまだ公開しておらず、さらに、他の分析の「切り口」も増えているため、ここに入れるべき機能は増加中です。 しかし「前編」の冒頭で書いたように、当社のシステムを利用している練習場にデータの「公開・共有」を認めてもらう話し合いはできていません。オーナーが直接運営している練習場は理解を得やすいと思いますが、親会社の承認が必要な練習場はハードルが高いかもしれません。 今回、自社データの記事掲載を快諾してくれた荒川ゴルフクラブの佐藤社長は、様々な練習場改革を成功させていますが、その背景にはデータ分析→企画立案→実行、という裏付けがあります。 筆者はこれまで、知人の練習場関係者を佐藤社長に紹介してきましたが、その都度、同氏は、 「せっかく来てくれたのだから必要な情報はなんでも公開しましょう。業界が活性化するために役立つなら、うちのデータをどんどん使ってください」 と、オープンな姿勢。同社と同じことをしても、練習場ごとに立地条件や、リーダー・スタッフの個性も違うのだから、 「参考にするのは良いけれど、真似をすればうまくいくものでもない」 という考えがあります。 システム提供側の当社としては、前述の機能が、練習場が交流するきっかけになれば嬉しい限り。交流によって業界全体が共存共栄することを願うばかりです。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年07月26日
    都内から約1時間、常磐自動車道の柏インターから約20km、国道16号線から少し入った千葉県柏市増尾に「美里ゴルフセンター」はある。近隣は学校、公園、城跡などがあり、車でのアクセスがよい。2階54打席230ヤードのメインレンジとは別に、フィールドを直角に共有する1階19打席180ヤードのノースレンジがあり、主にスクールやアプローチ、バンカー練習で使用する。同施設の成り立ちやコンセプトについて、美里ゴルフ株式会社の代表取締役会長・伊能一郎氏、支配人・金田二郎氏に取材した。金田支配人は伊能氏の二女と結婚している。 開業は1969年4月で、創業者は伊能会長。伊能家は代々この地で農業を営み、伊能会長で20代目。同氏が練習場経営のきっかけを話す。 「父親の代まで農業を営み、私も農業を継ぎましたが、若い頃に家を離れ、横浜で社長の運転手をしていた時期があったんです。そのとき、ゴルフ練習場にも行きましてね、『面白そうだな』と思ったことが、家業に戻ってからも頭に残っていた。もともとスポーツ好きで、ボクシングなどの経験もあったので、農業以外の事業も考えていました」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/misato2.jpg" alt="" width="788" height="591" class="size-full wp-image-82153" /> 美里ゴルフセンター 打席 転機は1967年、伊能家の土地の一部をニッカウ井スキー株式会社が買収したいとの話があり、売却した。現在もニッカウ井スキーの柏工場が近隣にあるが、売却のタイミングで父親を説得し、売却資金を元にゴルフ練習場経営を決断した。他の練習場を調べ、土浦で練習場を始めたばかりの施設にも日参して、 「柏なら場所柄いいんじゃないか」 と太鼓判を押され、確信した。 ただ、当時は伊能会長も父親もゴルフの経験は全くなかったという。 1969年4月、伊能会長が24歳のときに1階30打席230ヤードで開業。開場式には茨城ゴルフ倶楽部の関水利晃プロが来場し、 「プロの打球の凄さに驚きました。自分も開業式で振ったんですが、3回も空振りしてしまった」 と苦笑いを浮かべる。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/misato3.jpg" alt="" width="788" height="591" class="size-full wp-image-82154" /> 美里ゴルフセンター 外観 当初は農家をやりながらの「兼業練習場」だったが、以後、ゴルフブームの到来で来場者が増え、開場から2年後には農業を止めてゴルフ練習場を専業とした。 この間、伊能会長はゴルフの魅力にハマっていき、25歳のときに、 「プロになりたい」 と一念発起。ゴルフと無縁だった素人が練習場経営を機にプロを目指すという、異例の経営者と言えるだろう。全日本ゴルフ練習場連盟の研修会などで腕を磨き、プロテストを受けるも、9回落ちた。 「それで名前を『一郎』から『伊知郎』に変えましてね、そのせいかどうか、10回目のテストで念願が叶った。1980年、35歳の時です」 プロになるまで10年間、本気度が伺える話である。 ツアーでは未勝利だが、何試合かは上位に食い込み、注目を浴びた。1996年にはシニアツアー「第一生命カップ」で4位に入った。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/misato7.jpg" alt="" width="788" height="591" class="size-full wp-image-82157" /> 美里ゴルフセンター フィールド 「自分は遅くしてゴルフを始めたから、この成績で終わったのかもしれない。もっと早く始めたら、もっと上にいけたかも……」 との思いがあり、若い人にゴルフ練習場に来てほしいとジュニアスクールも開校。この練習場から多くのプロゴルファーを輩出している。 「その結果、近隣の練習場よりも、来場者は多いと思いますよ」 ツアープロが経営する練習場は、ひと味違うのだろう。多くの上級者が集い、金田支配人も日大ゴルフ部出身で、この練習場に足繫く通う一人だった。それが縁で伊能会長の二女と結婚し、息子の金田直之氏もプロゴルファーとなっている。 孫はショップの店長 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/misato4.jpg" alt="" width="788" height="591" class="size-full wp-image-82155" /> 美里ゴルフセンター ジュニアレッスン 美里ゴルフセンターの名称は、伊能会長が命名した。元々、この界隈の地名は柏市増尾字本郷だから「増尾ゴルフ」にしたかったが、ほかに同業で「増尾ゴルフ」があり、本郷の「郷」と「美」を合わせて「美郷ゴルフセンター」とした。ただ、オープン直後に父・健喜氏が「字数が良くない」と主張。同じ発音で「美里」に変えた経緯がある。最初、ゴルフ練習場に反対した父親だったが、息子の事業に成功してもらいたいとの思いが伝わってくる。 経営は順調で、開業から5年後に打席を増設。営業しながら、打席の後方に2階建ての打席を新設し、クラブハウスも改修。1997年にはノースレンジを増設した。直近ではネットの自動昇降機も取り付け、安全にも配慮している。 美里ゴルフセンターの特色・ポリシーについて、伊能会長は、 「ゴルフを通じて人を育てたい。ゴルフは英国発祥の歴史の長い素晴らしいスポーツなので、この練習場を起点にして広げていきたい」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/misato6.jpg" alt="" width="788" height="591" class="size-full wp-image-82156" /> 美里ゴルフセンター ショップ 練習場事業の基本的な考え方は、 「ゴルファーが研鑽する場であるとともに、新たにゴルフを始める人の上達の場でもあるので、事業の継続が何よりも大事だと考えています」 また、金田支配人は、 「お客様に来て頂けることへの感謝の気持ちと、初心者のお客様にはきちんと対応して不安を解消することがモットーです。練習場は打席、スクール、ショップの三位一体が大事で、ゴルファーを育てるためにもそれが必要だと思ってます」 と強調する。スクールは伊能プロの弟子のティーチングプロ6名が美里ゴルフジュニアアカデミーを展開中。また、ショップについては2011年からゴルフパートーナーのフランチャイズとして自社で経営しており、伊能会長の孫の伊能智規氏が店長 を務めている。 商圏は柏市、流山市、我孫子市を中心に年間11万人以上の来場者がある。10年を費やしてプロになった伊能会長の人柄が慕われ、地域に根差した練習場だ。次世代のプロやティーチングプロを輩出し続けるこの場所が、末永く地域に愛されることを筆者は願う。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年07月21日
    東急スポーツシステムが4月にオープンした東急ゴルフスクール新綱島は、7月15日に「インドアゴルフ夏祭り」を開催する。 当日は施設を会員以外にも一般開放。ゲームチケット500円で、シミュレーターを活用したドラコン、パターゴルフ、ゴルフボールすくい、ボーリング、ストラックアウト、わなげ、ぬりえ缶バッジなどが1回ずつ楽しめる。また、賞品(お菓子予定)も用意するなど、家族で楽しめるイベントだ。入場料は無料。開催時間は12時~17時。 同施設は2017年に閉場した練習場「綱島ピーチゴルフセンター」の跡地に建てられたこともあり、地元のゴルファーからも支持されている。和モダンがコンセプトの落ち着いた内装が特徴で、全打席にゴルフゾンの最新ゴルフシミュレーターを設置。スクールとレンジ利用を融合した24時間営業のインドア施設となっている。 同社は東急ゴルフスクール新綱島のほかにも、武蔵小杉にインドアを1店舗、屋外練習場の「スイング碑文谷」「東急あざみ野ゴルフガーデン」、ショートコース「東急ゴルフパークたまがわ」も運営している。 なお同施設では8月まで、会員向けに系列のゴルフ施設を優待利用できるキャンペーンを実施中だ。
    (公開)2024年07月10日
    前回まで2回に分けてゴルフ練習場ごとの「様子」の違いを紹介しました。他所の練習場の様子を知りたいオーナーや支配人はとても多いのですが、その一方で自分の練習場の様子は知られたくない、「敵に手の内を見せてたまるか!」という思いが強いので、他社の様子を知ることはとても難しい。これは、練習場に限った話ではありません。 しかし、自社情報を頑なに守ることは、果たして得策なのでしょうか。少子高齢化が進む中で、何もしなければゴルファーも減少します。見せてたまるか!で「既存客を奪い合う」のではなく「業界全体で新規客・再開客の開拓」をしなければ、練習場業界自体が縮小します。 ゴルフへの入り口である練習場の来客が減れば、ゴルフ業界全体の縮小につながります。ですから、練習場同士が「どんな工夫をしたらどのような成果につながったか」などの成功事例を共有しながら、業界全体を活性化しなければいけない。私はそう考えるのです。 「自分の練習場だけ儲かれば良い」という考えは、短期的には上手く行くかもしれません。生き残り競争に敗れて近隣の練習場が閉場すると、一時的にそこの顧客が回ってきて来場者は増えますが、その後「少し遠くなったし・・・」と、来場回数を減らしたり、練習をやめてしまったりするものです。自動車ディーラーやファミリーレストランが乱立している場所は、集積のメリットで全店が繁盛する。その効果を見逃すことはできません。 そこで前回は、練習場同士が情報交換をして、互いの良い取り組みを参考にするための「情報の整理と開示」の重要性を書きました。今回は一歩進めて、今後に向けた取り組みを書いてみます。 荒川ゴルフクラブの事例 分析システムは、システムを導入する練習場ごとにアカウントを用意して、自社の分析データを確認できるようにしてあります。さらに、同じような切り口で他所の練習場の様子がわかれば、参考になるだけではなく、練習場同士の交流のきっかけがつくれる。情報交換の磁場になり得るのです。 生々しい金額関連の情報は開示したくないでしょうから、「来場者数」や「打球数」などの情報に絞って他社の様子を確認できる仕組みを既に開発しています。とはいえ、いきなり実用化すると強い拒否反応を示す練習場もあると思いますので、「開示しても構わない」という練習場を徐々に増やすべく、訪問して、説明する必要がありますが、交渉の時間がなかなか取れず、この機能を公開できていないのが現状です。 そんな中、福島県いわき市の荒川ゴルフクラブ佐藤社長は「業界の役に立つならうちのデータはいくらでも使っていい」と、非常に協力的なので、今回も同社の実データを参考にしながら説明します。 まず、図1のように「参照したい練習場」を選択し、表示期間と比較対象期間を指定できます。本稿の執筆が昨年末なので、2023年のほぼ1年分を期間に指定します。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image1-1.jpg" alt="" width="1000" height="78" class="size-full wp-image-81834" /> 図1 <h2>「ダッシュボードから」</h2> 図2のように、通常のダッシュボード画面から金額関連のデータを除外したグラフが表示されます。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image2-1.jpg" alt="" width="1000" height="499" class="size-full wp-image-81835" /> 図2 まずは「総来場者数」の様子で、大きな丸が土日祝日です。青い方が今年、オレンジが昨年です。今年の夏は異常に暑く、来場者が減った練習場が多かったのですが、その様子がわかります。 しかし、夏以外は昨年と比べてほぼ同程度で、平日はむしろ増えている。コロナ明け以降の来場者は減少傾向の練習場が多い中で、荒川ゴルフクラブの健闘ぶりがわかります。 図3では「新規来場者」を表示しています。新規来場者も夏以外は昨年同程度で健闘しています。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image3-1.jpg" alt="" width="1000" height="498" class="size-full wp-image-81836" /> 図3 図4は「総打球数」です。やはり夏は昨年と比べて減っていますが、それ以外は同程度でしょう。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image4-1.jpg" alt="" width="1000" height="500" class="size-full wp-image-81837" /> 図4 <h2>「属性分析から」</h2> 次に属性分析から金額関連を除外したグラフです。 図5では「時間帯-曜日分析」の平均来場者数を表示しています。土日は日中の来場者が多く、平日は朝と夜が多いのがわかります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image5-1.jpg" alt="" width="1000" height="480" class="size-full wp-image-81832" /> 図5 図6は「曜日ごとの平均総打球数」です。荒川ゴルフクラブでは平日と土日祝日で料金体系が異なりますので、それに応じた打球数になります。平日朝9時〜12時までの間は球数無制限の打ち放題。その後、平日16時30分までサービスタイムで、300球までお得に打てるプランがあります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image6-1.jpg" alt="" width="1000" height="476" class="size-full wp-image-81838" /> 図6 土日祝日の夜には2時間300球をお得に打てるナイトサービスタイムがあり、さらに夏の早朝営業期間には早朝打ち放題があります。グラフはまさに、それを反映した感じになっています。 佐藤社長は以前から来場者分析を重視され、曜日・時間帯ごとにターゲットを決めて、各ターゲットの客層が喜ぶプランを設定しています。単なる値引きではなく、曜日・時間帯ごとの来場者属性にマッチするプラン設定で、全打席が常に稼働する状態を作り出す工夫をしているのです。次回は年代・性別等の様子について詳述します。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年06月25日
    イトーゴルフガーデンは、東京都武蔵野市関前にある2階建て57打席150ヤードの練習場だ。井の頭通りに面しており、道を挟んで東京都水道局と境浄水場がある緑豊かな環境である。取材は平日の午前中だったが、1階打席は満員で、朝から賑わいを見せていた。 筆者は都内から車で訪問したが、交通のアクセスも良く、また、三鷹駅北口からバスで10分程度の立地。ちなみに境浄水場は1924年に通水した、日本で最大規模の緩速濾過方式の浄水場で、沈殿・濾過・殺菌処理された水は、千代田・渋谷・世田谷区などに給配水されている。この練習場の成り立ちやコンセプトについて、株式会社イトーゴルフガーデンの伊藤博通社長に取材した。 イトーゴルフガーデンが竣工したのは1972年10月。創業者は博通社長の父・平司氏で、同氏は現在会長を務める。伊藤家は代々この武蔵野の地で農業を営んでいた。練習場の横には樹齢300年を超える武蔵野市登録文化財の市登録天然記念物である「伊藤家の大ツバキ」が植えられている。伊藤家は長く、この地で生活を営んできた。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/202405shima2.jpg" alt="" width="1000" height="854" class="size-full wp-image-81819" /> イトーゴルフガーデン大椿 練習場の創業は、平司会長が40歳の時だった。伊藤家は、都市近郊にある利点を生かし様々な作物を栽培していた。特に平司氏は、それまで栽培されていなかったカリフラワーやブロッコリー、セロリなどの西洋野菜に果敢に挑戦するなど、農業経営は順調であった。 ところが、1964年の東京オリンピックを機に首都高速道路が各地に伸び、1967年に中央自動車道が開通すると、流通革命が起き、東京近郊の農家にも大きな影響がでてきた。長野県などの品質の良い高原野菜が即日市場に出回ることで、競争力が衰えてきた。また、高度成長期の都市化が進み、土地の価格が上昇。農業の継続が厳しくなる。 「そこで、当時38歳だった父は農業から土地を有効活用して、新事業を決意しました。近隣に小規模のゴルフ練習場があった。父はゴルフ経験がなかったものの、そこを訪ねたらたいへん賑わっていた。伊藤家の土地を使って大きな練習場を経営しよう、と閃いたそうです」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/202405shima3.jpg" alt="" width="1000" height="672" class="size-full wp-image-81820" /> イトーゴルフガーデン開所式 アクションは早かった。取引銀行に都内の練習場の収支を調査してもらい、経営の数値を把握する。近隣の三鷹の友人がゴルフ練習場を経営していたので、話を聞いて「ゴルフというスポーツはもっと流行るにちがいない」と確信。ゴルフ練習場のための事業資金1億7000万円を銀行から借り入れたという。 1971年に農業を止め、練習場の設計など準備を進め、1972年5月に着工、10月に完成。高度成長期で建築資材が高騰する中、即断即決が奏功して、完成後すぐ価格が3倍に上がったのを避けられた。 イトーゴルフガーデンは開業時に「有限会社イトーゴルフセンター」だった。平司氏がシンプルな社名を好み苗字から取ったが、苗字の「イトウ」を「イトー」としたのは、当時イトーヨーカドー、ダイエーなど音引きの企業名が増えたことにちなんでいる。ゴルフブームもあり、経営は順調に推移していった。 バッティングセンターも 1975年に空き地を利用して7ホールのショートコースを併設。1980年に、敷地内に緑を多く植えたことから「ガーデン」の文字を加え、現在の「株式会社イトーゴルフガーデン」に社名変更。現在、ショートコースはアプローチ練習場と5打席のバッティングセンターになっており、野球の練習もできる。周辺には少年野球チームが多く、親子や子供たちに喜ばれているが、運営にはシルバーセンターの人材を活用している。息子の博通氏は2012年10月に代表取締役社長に就任し、現在60歳で経営を担っている。 「学生時代はゴルフに興味がなく、自動車の草レースやエンジンの分解などが趣味でした。24歳で、自然な流れで家業に入りました。練習場やバッティングセンターの設備の修理は、部品さえあれば私ができる。趣味が生きてますね(笑)」 イトーゴルフガーデンの特色は、 70ヤードまで天然芝で、アプローチの球の転がりやスピンコントロールが体験できる。芝から打てるアプローチ練習場もあり、 「お客様のスコア向上、健康維持、コミュニケーションの場を目指しています。お客様が気持ちよく練習できるよう、ボールとショットマットは早めに交換しています」 このような配慮がウケて、平日の午前中でも1階打席は待ちがでることもある。平日は8時30分開場なのだが、7時過ぎから、 「お客様がバッグを置いて、楽し気に会話しながら待っている。コミュニケーションの場になってます」 特に平日の午前中が人気なのは、博通社長が提案した工夫による。バブル崩壊後、客数が減少した時に、平日の午前中に入場すると3カゴ以上打った場合1カゴサービスの割引を始めた。これを20年以上続けているが、火曜日のレディースデイも、女性客は終日1カゴサービスが受けられる。 来場者は年間10万人で、商圏は武蔵野市内が中心だが、アクセスの良さで都内からも来場する。女性の来場比率は2割。ゴルフスクールは2階打席を活用し、フリーのプロ、インストラクターのレッスンには施設使用料を課していない。練習場には来場者の打席・ボール使用料が入るだけでOKと太っ腹だ。練習場のコンペIGG会は426回を数える。 地域貢献にも前向きだ。消防団、防犯協会、武蔵野法人会などに積極的に参加して、会長・団長などの役職を親子2代にわたり引き受けている。練習場の課題として「人材確保と相続税による事業継続の難しさ」があるそうで、次世代へ如何に残していけるかを思案する日々だとか。地域密着の練習場・イトーゴルフガーデンの賑わいが、次世代も続くことを期待したい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年06月23日
    これまで連載してきた「練習場行脚録」が、先月号から「進化するゴルフ練習場の裏舞台」にタイトルが変わり、練習場におけるデータ分析の活用法を中心に紹介することになりました。前回はざっと概要を紹介。本号から各論に入ります。 前回のお話 本当は各練習場の生データを紹介したいのですが、特に金額関連の生データは開示したくない施設が多いでしょうから、主に架空のデータを使います。また、生データの方がわかりやすいケースで金額が出てこないものは、個別の練習場が特定できないよう配慮しつつ紹介したいと思います。了解が得られた場合は、練習場経営者の生の声もできるだけ紹介するつもりです。 さて、各論に入りましょう。今回紹介するのは「ダッシュボード」です。これは、弊社の分析システムにログインして一番最初に表示される画面のこと。日々の様子をざっと確認したり、昨年比や天候との相関を確認する目的の画面です。 図1のように、上にグラフ表示、下に数字が表示されます。表示する期間は自由に指定でき、まずは「売上げ」がグラフ表示されています。売上げはお客さんがICカードにチャージした金額です。このチャージは税務上「売上げ」にするか「預かり金」にするかは練習場により異なりますが、分析としてはチャージした分を売上げと表現しています。 昨年比は日付で合わせて表示できますが、土日を合わせて表示する方が比較しやすいという意見もありましたので、切り替えができます。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image2.jpg" alt="" width="1000" height="576" class="size-full wp-image-81633" /> 図2 図2が曜日合わせで表示した様子で、土日祝日は大きな○マークで表示されます。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image3.jpg" alt="" width="1000" height="578" class="size-full wp-image-81634" /> 図3 図3では「利用額」を表示しています。チャージした分はその日のうちに全て利用せず、チャージしなくても貯まっていた分で打つことがありますので「売上げ」とは違うデータになります。期間を限定して、プレミアムが沢山つくチャージキャンペーンなどを行うと「売上げ」が非常に高くなりますが、「利用額」は連動しないものです。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image4.jpg" alt="" width="1000" height="582" class="size-full wp-image-81635" /> 図4 図4では「総来場者数」を表示しており、これも重要な情報です。土日祝日と平日を比較して、平日にどのくらい伸ばせる可能性があるかが想定できます。後述する天候との相関も観察すると良いでしょう。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image5.jpg" alt="" width="1000" height="583" class="size-full wp-image-81637" /> 図5 図5では「新規来場者数」を表示しています。新規来場者は昨年比を見たいデータで、コロナの影響でゴルフを新たに始めた人が多かった一昨年・昨年に比べて現在がどうなっているか、さらにこの先の動向を考える上で大事な指標です。 より詳しく新規来場者を分析する画面もあり、この点は別の機会に紹介しますが、まずはざっくりとこの画面で日常の動きを確認しておくと安心です。常連客もいつかは諸事情により来場しなくなることもありますので、常に新規来場者の獲得施策を打ち続けることが大事です。 データの裏付けは必須 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image6.jpg" alt="" width="1000" height="566" class="size-full wp-image-81646" /> 図6 図6では天候情報の「気温」と「総来場者数」を表示しています。気温と来場動態の関係がわかりやすく見られるよう、雪国の生データを出しましたが、地点名は塗りつぶしてあります。「気温」は最高気温を折れ線グラフで表示しています。冬で気温が低い日は来場者が減る傾向にあり、高温の夏日も減ります。冷暖房設備の導入等を検討する際、参考になる情報です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image7.jpg" alt="" width="1000" height="567" class="size-full wp-image-81644" /> 図7 図7は天候情報の「降水量」と「総来場者数」のグラフです。多少の雨ならラウンドをやめて練習場に、という人も多いのですが、大雨では外出を控えるため「雨の日特典」を検討するのも良いでしょう。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image8.jpg" alt="" width="1000" height="570" class="size-full wp-image-81643" /> 図8 図8は「降雪量」と「総来場者数」のグラフです。大雪の日は来場者数が減る傾向ですが、練習場を休場することもあり、翌年以降の振り返りデータとして重要な観点です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image9.jpg" alt="" width="1000" height="567" class="size-full wp-image-81642" /> 図9 図9は「最大風速」と「総来場者数」のグラフです。強風の日も外出を控える人が増えますが、練習場がネットを下げて長いクラブを使えない営業にするなどの影響もありますので、振り返りに重要な観点です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/06/image10.jpg" alt="" width="1000" height="256" class="size-full wp-image-81641" /> 図10 図10はダッシュボード下部に表示される数値データで、昨年比も表示されています。グラフになっていないデータでは、1回の来場で利用した1人当たりの平均金額(平均利用額)、1回の来場で打った平均球数(平均打球数)、1人が期間中に平均何回来場したか(平均来場回数)、1打席が1日に平均何回利用されたか(打席回転数)も数値で表示。各数値を詳細に確認できる画面もあり、別の機会に説明します。 ここ数年、コロナ禍で市況は大きく変動しました。そのため営業形態の変更が検討課題になるかもしれませんが、営業会議では現状をしっかり把握することが重要です。裏づけなく変更しても効果は期待できず、お客さんの不満が増えて逆効果になってしまう恐れもあります。 今回紹介したような分析システムがあると、経営者は練習場にいなくてもネット環境があれば常に確認できます。また、このような機能がなくても日報・月報などはどこの練習場でも作成していることでしょう。日々現状把握を行うことが、練習場改革の第一歩です。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年06月06日
    ゴルフ練習場のシステムは、次の経緯で進化してきました。まず、現金・コインでのボール販売機からプリペイドカードでの前払い制度が広がり、そしてボールをカゴで運ばなくても自動でティーアップされるようになり、さらにリライトカードのチャージ制度が登場した。近年、一番増えているのはICカードでのチャージ制度でしょう。さらに横浜市のハンズゴルフクラブのように、カードは使わず「顔認証」でチャージやチェックインができるようにもなりました。 来場するゴルファーとしては料金の払い方やチェックインの方法が変わるくらいの印象だと思いますが、練習場側にとっての大きな変化は「来場者データの統計処理が可能になった」ことでしょう。 リライトカードやICカード、そして顔認証のように来場者を練習場側で管理して、顧客ごとに残高管理ができるようになり、来場者の属性データが得られるようになった。これは、練習場経営上とても大きな変化です。性別・年齢・住居地域の把握だけではなく、来場の特性(来場頻度や曜日・時間帯など)や行動の特性(一度の来場でのチャージ額、打球数や打席の選択など)を統計処理して分析できるようになる。来場者の傾向分析ができれば、料金体系やキャンペーンなどの検討が高い精度で可能になります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/05/graph2.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-81508" /> グラフ2 私がお付き合いしてきた練習場経営者や支配人は戦略家が多く、システム化される前から自力でデータを積み重ねて分析し、実際に成果を出してきた現場をたくさん見ました。その一方、ICカード化をしたのになかなかデータを活用できていない練習場もありました。 そこで私は、当社のゴルフ練習場向けシステムを使い、データを有効活用してもらえないだろうかと考えました。もともと様々な分析が可能な帳票なども装備していましたが、どちらかというと財務処理的に必要なものが多く、練習場の経営戦略を検討する目的で使いやすく提供したいと考えたわけです。 ハンズゴルフクラブの元支配人で、売上を大幅に改善した実績のある山崎博之さんは練習場コンサルティングの仕事をされています。全日本ゴルフ練習場連盟の会合などでご一緒する中、コンサルティングの仕事で使う分析の仕方をシステム化したいとの話もあり、システム化できれば山崎さんも、練習場システムからエクスポートしたデータをExcelでグラフ化するなどの手間がなくなるので「是非やりましょう」と意気投合。練習場分析システムの開発を進めました。 当初は山崎さんのコンサルティング内容で使うグラフなどを中心に用意したので、どちらかというと「全容を把握した上で目標設定をして達成度管理を行う」ための機能が多かったのですが、できた機能から順次練習場で使ってもらうと、「目標設定の前に、現状把握をもっと細かく行いたい」との要望が多く、具体的な希望を叶える形で次々とシステム化していきました。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/05/graph3.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-81509" /> グラフ3 本当は開発コストも回収しなければならないので、分析システムに関わる月額利用料をいただこうと考えましたが、もともとシステム全体の保守費をいただいており、さらに上乗せするのは抵抗を感じたことと、せっかく便利な機能なのでまずは使用施設を広げたいと考えて、追加費用なしで提供しました。 データは「宝」です! 多くの練習場で導入され、私自身がサポートしながら、データがきちんと集計されているかなどを確認しつつグラフを眺めると、実は練習場それぞれに特徴があり、それは各練習場の営業方針の違いや、立地条件の違いなどが見事に反映されていると分かってきました。 練習場の皆さんと会話する中で、「よそはどうなの?」との質問も多く、金額的な生々しい情報は話しませんが、傾向程度を紹介すると「とても参考になる」と喜んでいただけます。次の目標は「お互いに開示しても支障ない、参考にしあえるデータは見られるように」というシステム化を検討しています。 さて、具体的なグラフを紹介しましょう。 グラフ1は日単位での売上げ・利用額・総来場数・新規来場数のグラフですが、ここでは総来場数を表示している状態です。昨年同期と比べると今年の状況が分かりやすいのですが、日付で重ねるよりも曜日で重ねた方が比較しやすいと思います。 グラフ2で気象データを見ながら検討することもできます。気温・降水量・最大風速が折れ線で表示されています。12月になって寒くなると来場数も少し減った感じでしょうか。雨が降ると減ったり、強風でネットを下げてドライバー禁止の時にも減少する様子が分かります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/05/gurahu4.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-81510" /> グラフ4 次に、打席ごとの様子を見るグラフ3では、打席回転数(1日に何回打席が利用されたか)を表示しています。この例では1階の方が2階よりよく使われているのが分かります。端の打席のデータがないのは、この例では個室で別管理になっているためです。グラフ4で打席ごとの平均打球数は1階も2階も大差なく、特定の打席だけ多い感じですが、特定打席でのスクールやイベント等が関係しているのかもしれません。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/05/gurahu5.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-81512" /> 球貸し・時間貸しの傾向もグラフ5・6のように見ることができます。この例の球貸しでは平均160球くらい打っている感じですが、なぜか去年より今年の方が打球数が増えていますね。弾道シミュレータを導入した影響など何らかの背景があるはずです。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/05/gurahu6.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-81513" /> グラフ6 時間貸しの方が球貸しより打球数が増えるのは、どの練習場も同じです。このグラフを見る感じでは、時間貸しは去年より増えているというわけでもありませんね。 今回はデータ分析の様子をざっと紹介しましたが、次回からは詳細な話しや、協力練習場の生の声も紹介します。現状を分析せずに方針を考えても意味はなく、ICカード化などでデータが採れても、活用しなければ宝の持ち腐れです! <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年05月30日
    埼玉県新座市。大泉ICから車で12分の場所に、300ヤードの広大なフェアウェイを備える「ウィンズゴルフステーション新座」という練習場がある。約300台の駐車場を併設し、全161打席中、計74打席でトップトレーサー・レンジを導入するなど充実の練習環境が人気だ。 昨年11月、同練習場の敷地内に新たにインドアゴルフ棟「ウィンズFAMILY GOLF」がオープンした。 最新のパタートレーニングシステム『TOURPUTT Circle(ツアーパット サークル)』に加え、ダンロップの『SDR』設置のオープンスペース5打席(左打席対応1打席)、ゴルフゾンの『TWOVISION Plus』設置の個室2打席、『FULL SWINGシミュレーター』設置の個室1打席と、豊富な計測器やシミュレーターを完備する。 施設名には「家族で楽しめるインドア」という想いを込めており、「レディース会員」や「ファミリー会員」などの割引プランもラインアップする。 そこでティーチングプロの常住充隆氏と、数々のジュニア大会で活躍する常住美結ちゃんが親子で同インドアを訪問し施設を体験。その模様を動画で観てもらいたい。 <iframe width="788" height="433" src="https://www.youtube.com/embed/k9gScp0fOkg?si=qESBwryJl9mCBZIE" title="YouTube video player" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture; web-share" referrerpolicy="strict-origin-when-cross-origin" allowfullscreen></iframe> 動画からも分かるように、ゴルファーもそうでない人も家族で一日楽しめる空間だ。前述のウィンズゴルフステーション新座と相互利用することで上達にも繋がりそうだ。
    (公開)2024年05月16日
    東急あざみ野ゴルフガーデン(横浜市)は2月17日、あざみ野ガーデンズ10周年記念「澁澤莉絵留プロによる特別イベント」を開催した。 午前中は、小学1年生~中学3年生までを対象としたジュニアレッスン会を開催。澁澤の力のこもったアドバイスによりレッスンを受けたジュニアは、飛距離が伸びたり捕まった球を打つなど、最後には笑顔で打席を後にする子供たちが多かった。午後はトップレーサーを使用して、澁澤と3球ずつの勝負をするニアピン大会を開催した。 あざみ野ゴルフガーデンの岩崎智支配人は、 「ジュニア育成の観点から、現役のプロに教わるという環境を用意できて良かった。ニアピン対決は、静岡や千葉などの遠方からの参加者もいて、開始前から行列ができるほどでした。記念撮影も含めて大いに盛り上がりました。」 とコメント。また、 「このようなイベントを開催することによって、練習場に愛着を持ってもらったり、プロを応援するようになったりするので、ロイヤルティを高めるためにも非常に重要なイベントであると再認識しました。」 と語った。
    (公開)2024年03月15日
    「よみうりゴルフガーデン」は、東京都稲城市と神奈川県川崎市にまたがる広大な敷地の遊園地「よみうりランド」内に位置する練習場。今回の取材は車で訪問した。よみうりランドのゲートから中に入った、よみうりランド大駐車場の横に位置している。住所は神奈川県川崎市多摩区である。取材したのは8月で、よみうりランドの駐車場からアクアエリアのプールに向かう家族連れが多くみられた。同練習場の成り立ちやコンセプトについて、株式会社よみうりランド・よみうりゴルフガーデンの山田孝治支配人を取材した。 練習場の事業主体は株式会社よみうりランド。同社は読売新聞グループ本社の基幹7社の一つで、総合レジャー事業、不動産事業、ボールパーク事業、サポートサービス業を担っている。レジャー事業の中には遊園地部門、ゴルフ場経営のゴルフ部門、競馬・オートレース・競輪等施設運営の公営競技部門、ゴルフ練習場・温浴施設・親子向け屋内遊戯施設等を経営する健康関連部門、食堂・売店経営の販売部門と広範だ。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/11/yyomiuri2.jpg" alt="" width="1000" height="678" class="size-full wp-image-79389" /> よみうりゴルフガーデン受付 よみうりランドは「大衆へ奉仕する」という創始者・故正力松太郎の言葉から始まっている。会社設立は1949年で公営競技事業に始まる。ゴルフは昭和30年代「一部の上流階級のスポーツでしかなかったゴルフを一般大衆へ開放しよう」という創始者の思いから、1961年(昭和36年)に東京よみうりパブリックコース(現:よみうりゴルフ倶楽部)をオープンしている。 1964年東京よみうりカントリークラブ、1978年千葉よみうり、1985年静岡よみうりをオープン。1993年3月21日に練習場の「よみうりゴルフガーデン」を開業した。今年で開業30年を迎え、ラウンジには30年記念のディスプレーが施されていた。練習場は2階建て1、2階各40打席、計80打席で、距離180ヤードは創業時と同じ。 実は同じ場所で、1974~92年までテニスコート「よみうりテニスガーデン」を経営していたが、市場規模が大きいゴルフ練習場に業態変更。ただし、ゴルフ場に併設される練習場を除けば、練習場単体として経営するのはよみうりゴルフガーデンのみ。山田支配人いわく、 「少子高齢化でゴルフ市場の拡大が望めない中では、練習場事業の拡大も厳しいのではないか」 と、現状を冷静に見る。 フロントの女性は制服を着ていて、雰囲気はゴルフ場の受付けのよう。よみうりランドは東京2場、千葉1場、静岡1場と計4コースを運営しており、その雰囲気が色濃くある。ラウンジから外をみると650㎡の天然芝のパッティング練習場があり、ゴルフ場のような雰囲気を漂わせている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/11/yomiuri5.jpg" alt="" width="1000" height="692" class="size-full wp-image-79392" /> よみうりゴルフガーデングリーンスピード 「このパッティンググリーンは東京よみうりCC、よみうりGCと同じグリーンキーパーが管理しているので、ゴルフ場と同じクオリティーを保っています」 練習場のパッティンググリーンとしては最高水準と思われ、グリーンスピード、刈り高が表示されていた。その奥には5打席のバンカー練習場があり、専用のターゲットグリーンを併設。コース仕様の質の高い砂を使用して、実践的な練習ができるという。 練習場を複眼的に見る <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/11/yomiuri4.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-79391" /> よみうりゴルフガーデン・バンカー 「ゴルフ場で培ったノウハウを存分に活かした本格的なレベルのパッティンググリーンと、練習用バンカーを備えることが当練習場の特徴のひとつです。また、フレンドリーで親切な接客を通じて、地元のゴルフ愛好者に末永く愛される練習環境の提供を基本としています。スクール運営にもこだわっており、ゴルフを楽しく続けてもらうことを念頭に置き、専属のプロが一人ひとりの技術レベルに合わせて最適なレッスンを心掛け、継続的に練習場に足を向けていただけるようにしています」 練習場の各打席はフルオートティーアップ、冷暖房完備で、この暑い夏でもダクトから冷風が送られ快適に練習できる配慮が行き届いていた。商圏は半径10㎞圏内で、川崎市多摩区、麻生区、稲城市が中心とのことである。来場者の年齢は60~70歳代が中心で、男女比は8:2とのことである。 「来場者の多くが地元地域の居住者で、ゴルフを通じて健康促進と充実した時間を提供しています」 フロントで事前清算してから打席を指定。ボール貸し、打ち放題ともに両立できるシステムだ。 よみうりランドの社員である山田支配人は1997年入社で、同練習場の支配人になって1年半、その前はよみうりランド内にあるフラワーパーク「HANA・BIYORI」の支配人を務めていた。以前はよみうりGCのキャディーマスターも経験しており、 「ゴルフ場を経験してから練習場の支配人になって思うのは、同じゴルフでも双方の雰囲気はぜんぜん違って、練習場では心からフランクになれるんですよ(笑)」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/11/yomiuri3.jpg" alt="" width="1000" height="750" class="size-full wp-image-79390" /> よみうりゴルフガーデン・グリーン ゴルフ場に比べると、練習場は気楽にゴルフに接することが出来る雰囲気があり、敷居の低さを実感したとのことである。また、現在は練習場の支配人と兼務で、全国に4か所あるフランチャイズの全天候型屋内キッズ施設「KID‒O‒KID(キドキド)」のキッズ施設運営課の支配人も務める。多様な部署を経験した上で練習場の支配人をしている中で、練習場の課題を山田支配人は、 「全体として高齢化が進んでおり、次世代、若年層、女性ゴルファーの掘り起こしが喫緊の課題です」 子供施設の運営に携わり、よみうりランドという、家族連れや子供が多く集まる施設に位置する練習場だけに、練習場事業を複眼的に見られることが同氏の強み。若年層や女性ゴルファーを取り込むための新しいイベントや発想、他の事業との連動性を含め、練習場業界に新風を吹き込むことを期待したい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年11月12日
    都心から車で20分、東急多摩川線の沼部駅から徒歩6分。多摩川に架かる新幹線の橋の下流側に、東京多摩川ゴルフ練習場はある。場所は東京都大田区田園調布南で、河川敷なので番地はない。開場は1951年11月。 翌52年には東京ゴルフ練習場連盟が発足しているが、当時加盟した9ゴルフ練習場の1つで、現在まで残っているのは東京多摩川ゴルフ練習場のみ。都内で最も古いゴルフ練習場で、36打席250ヤードの屋外練習場である。 その成り立ちについて、同練習場の2代目田中誠氏と、田中氏の孫にあたる株式会社東京多摩川ゴルフ練習場の取締役・池田陽太氏に話を聞いた。田中氏の娘・成美さんの子供が陽太氏である。田中氏は1936年生まれで今年84歳、1960年の日本アマチャンピオンで、世界アマに出場し、ジャック・ニクラウスと戦った経験もある。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/09/2023092202.jpg" alt="" width="1000" height="666" class="aligncenter size-full wp-image-78831" /> この練習場を創業したのは、田中誠氏の父・光義氏である。光義氏は渋谷で指物師(家具職人。箱、机、椅子、たんすなどを、板材をさし合わせて組み立てる職人)をしていた。ゴルフクラブの修理ができないかとの相談を受けて、修理をはじめたという。そんな折り、田園調布在住のゴルフ愛好者から、練習場をつくりたいとの話が持ち上がった。戦後すぐの時代とあって、近隣に練習場はない。現在の多摩川河川敷の場所は畑だったが、前述のゴルフ愛好者に銀行関係者や企業のトップなど富裕層がおり、出資して、光義氏が管理をまかされた。東京多摩川ゴルフ練習場の誕生である。 距離は現在と同じで250ヤード。その後、堤防が拡張されて左側の打席はなくなったが、当時は今より多く50打席程度だった。場所は現在より100mほど上流側で、公共のグラウンドができて現在の場所へ移動した。田中氏は、 「開場当時はボールがなく、ゴルフ場のキャディさんから1個50円前後で買い上げたり、当時代々木にあったワシントンハイツに行ってボールをもらって運営していました」 と振り返る。田中氏の父・光義氏は、明治38年(1905年)生まれで創業時は41歳であった。「東京多摩川ゴルフ練習場」の名称は、創業時からのもので光義氏が命名した。田園調布にあるため、今であればその名称を使ったら良いと思うが、当時は何の迷いもなくこの名称に決まったという。 創業時は近隣の田園調布在住のゴルファーが徒歩で訪れたり、中村寅吉プロが練習に来たりして、経営は順調であった。創業から10年ほど経過して、出資金を返却し、株式会社東京多摩川ゴルフ練習場となった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/09/2023092203.jpg" alt="" width="1000" height="666" class="aligncenter size-full wp-image-78833" /> 対岸にはショートコースの多摩川ゴルフ倶楽部があるが、練習場が出来て10年後ぐらいに親族が開場した。当時は、川を渡ってショートコースに行ったとのことである。気楽にゴルフを楽しめる環境で、多摩川にあるゴルフ天国の様相であった。現在、ショートコースの経営は変っているが存続している。 <h2>無人インドアも新たに開設した</h2> 東京多摩川ゴルフ練習場は河川敷に位置するため、河川法の対象となる。設立された1951年当時は旧河川法が適用され、河川敷の利用に関しては緩やかな時代であった。1964年の法改正により、新河川法の適用となっている。 多摩川は一級河川で国交省の管轄だから、同省に占用料を支払って運営している状況だ。河川敷なので、建築物を建てられず、受付も簡易な小屋である。防球ネットの柱は木製で、簡単に取り外しができるとのこと。打席は創業から土を使用しており、打撃部分にはショットマットを置いている。以前は土から打つこともできたが、現在は整備の関係からショットマットを使用する。 フィールドは天然芝で、バンカーやアプローチエリア、天然芝のパッティンググリーンも備わっている。また、池田氏が経営にかかわるようになってから、ボールの綺麗さにこだわっており、 「3か月に一度、ボールの塗装を塗り直しています」 池田氏は、河川敷にあるゴルフ練習場ならではの苦労、特に水害についてこう話す。 「2019年10月の台風19号の時は、ゴルフ場横の堤防ギリギリまで水位が上がり、練習場にあった全ての設備や藤の木が流されて、1か月近く閉鎖しました。ブルドーザーで流れ込んだ土砂をどけるなど、本当に大変な作業でした」 ただ、この洪水を機に、アナログで受付していたものを、デジタルの会員証にして、LINEで会員にリアルタイムで情報を流せるなどのシステムに変えた。 河川敷練習場特有の制約から、屋根を付けることが出来ないので、雨天の場合はクローズとなる。 「今までは、雨が止んだら数時間後に再開していましたが、LINEで再開時間などを知らせて利便性を高めています。ただ、台風や大雨のときは常に水没の危険があります」 もう一つの難題は、河川敷の占用について3年ごとに更新があり、国交省に使用許可の書類を提出する必要があること。池田氏は、 「書類は細かく、内容も厳しくなっていますが、前職でメディア関係の会社にいたので、慣れている分、対応できています」 一方、河川敷ならではのメリットもある。およそ2万3000m2の土地を国交省から借りて営業しているが、田園調布の私有地であれば相続税は莫大となって、事業継承は厳しくなる。占用許可が継続できれば、都市部で課題となっている事業継承問題はクリアできる。国がこの河川敷を水防や公共目的など、別の用途を考えた場合は問題だ。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/09/2023092204.jpg" alt="" width="1000" height="666" class="aligncenter size-full wp-image-78834" /> 「最近、近隣の屋外練習場4~5か所が閉場したため、開放的な広い場所で打てる屋外練習場は貴重です。自分の代で開業100年を迎えることが可能なので、この仕事を続けていきたい。そのためには、現在年間4万人以上の来場者をさらに増やすこと。スクール事業を伸ばしていきたいですね」 そのため、同練習場の近隣にある事務所の1階に、新しく無人インドア練習場とパーソナルジムを併設した施設をつくった。 「時代のニーズに合わせ、若くて新しい顧客を取り込んでいきたい」 と、次代を見据えている。 東京の田園調布にある250ヤードの屋外練習場が継承され、100周年を迎えることを期待したい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年09月24日
    東急大井町線「荏原町駅」と地下鉄浅草線「馬込駅」から徒歩7分。環状7号線内側の城南地区である都内大田区北馬込1丁目の住宅街に「馬込ゴルフガーデン」はある。 その同社のHPに先頃、次の一文が掲示された。 「この度諸般の事情により、令和5年1月9日(月)をもって営業を終了し、閉場することになりました。併せてゴルフスクールも令和4年12月末にて閉校いたします。長きにわたりご愛顧いただきましたこと、厚く御礼申し上げます。」 現在、東京にある屋外ゴルフ練習場は157(全日本ゴルフ練習場連盟=JGRA=調べ)。またひとつ、都内の屋外練習場が姿を消すことになった。 施設の入り口は木製の外壁で、植栽が美しくほどこされ緑があふれる。入り口横には、自転車が30台以上停められる屋根付きの駐輪スペースが整備されている。 町家風の受付周りは雰囲気があり、その奥のラウンジは古い木材を活用した和を感じさせる内装で、照明も昔の器具を使ったエコロジーなこだわりがある。閉場するのは「もったいない」が、記者の第一印象だった。 2階建て28打席、40ヤードの距離はコンパクト。記者は浅草線沿いに住んでいるが、この練習場の存在を知らなかった。 大竹章裕社長は、 「この練習場の商圏は半径1・5kmで、その範囲の住民にしか積極的にPRしていません。知らない人も多いかもしれませんね」 と前置きして、施設のコンセプトを次のように説明する。 「創業当時から『地域のお庭づくり』を企業理念に掲げ、大人からお子さんまで、広く地域の方々の憩いの場としてご利用いただけるように様々な工夫をしてきました」 前述した入口の雰囲気を含め、地域密着の想いが伺えるのだ。地元に愛された練習場が、なぜ閉場してしまうのか? そこには相続税の問題が根深く絡んでいる。 「2020年10月に父が他界し、相続に絡んで土地を手放すことになったのです。心血を注いだ施設も手放すことになりました」 大竹社長は詳細について多くを語らないが、閉鎖を決める前にはいくつもの延命策を検討したようだ。 ところが、この地域の路線価格は1m2当たり36万~40万円で、約1000坪の同施設の相続税は数億円になると推定される。城南地域で、環状7号線の内側という好立地。その土地を活かして練習場事業を継承する難しさを表す事例といえる。 1973年に祖父の代でゴルフ練習場を始めてから半世紀、その歴史に幕を閉じる。都市部では今後、同様のケースが相次ぐとの懸念もあり、打開策が急がれる。 JGRAの横山雅也会長は以前、こんな危惧を漏らしていた。 「当社も都内の世田谷区に屋外練習場を構えますが、相続税問題で閉鎖を余儀なくされる練習場は今後も増えるはず。住宅地に近接する練習場は、新しいゴルファーの創造拠点になっています。近年、コロナ禍で練習場への来場者が増えたことにも明らかですが、相続には多くの難題があるのです」 本号で、同じく相続税問題に苦しんだ「カシワゴルフ」(都下立川市)の事例を取り上げたが、事業を継続するためにはいくつもの障害が存在する。業界全体で知恵を絞り、打開策を講じる必要がある。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年08月08日
    2204ゴルフ練習場限界突破論12 最終回 既成概念をぶち壊す実践主義 ゴルフ練習場限界突破論、今号で最終回となりました。12回にわたり本連載をご覧いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。 2021年4月に、茨城県水戸市のゴルフ練習場ROYAL GREEN Mitoを新業態の Golf &amp; Entertainmentにリニューアル。これと同時に本連載がスタートし、誌上ライブとして様々な挑戦をお届けしました。最終回の今号は集大成として、1年間のチャレンジで得たものを、今後どのような形でビジネスにつなげていくかを詳述したいと思います。 <h2>Golf &amp; Entertainmentの更なるバージョンアップ</h2> リニューアルの詳細は本連載で随時書きましたので割愛しますが、最も特徴的なのは1階と2階打席でコンセプトを明確に変えたことです。この1年で「ゴルフを楽しむ時間、空間」に対するニーズが予想以上にあったことに安堵しております。 そこで今年は、エンターテイメント施設として新たに2つのサービスをスタートさせます。 ①地域連携による飲食事業 リニューアルオープン以降、地元の食材を活用した簡単なフードを提供してきましたが、今年は本格的にランチ、ディナーを提供できる体制になります。メニュー開発は、東京の著名なカフェの業態開発も担当されるパートナーと共に、コンセプトから構築しました。 その際、飲食事業立ち上げのリスク対応として、オペレーションコストを下げること、食品ロスを減らすことを重視。さらに茨城県の魅力を伝えることも加え、地元の食材をふんだんに使った「オリジナルカレー」でチャレンジしていきます。 当店の近隣には大型の物流倉庫や製造工場があるものの、ゆっくりと気持ちよくランチタイムを過ごす場所は多くありません。そのため飲食の業態でも十分に勝算があると判断しました。狙いは、ランチ目的で来店頂き、食後はゴルフも楽しめる。食事とゴルフをセットにしたプランなどで、新規ゴルファー創出のきっかけにしたいと考えています。 食材の仕入れなどは、当店の真向かいにあり開学70年の歴史を持つ、公益財団法人 鯉淵学園農業栄養専門学校と連携します。同学園の直売所から、当日の採れたて野菜をメニューに加えることや、管理栄養士を目指す学生が社会経験の場として、当店のカフェメニューを考案し、実際に販売します。学生に実践の場を提供することで、地域連携、学生教育にも貢献したいと考えました。 ②ROYAL GREEN Mitoならではの滞在型ゴルフツーリズム 次に宿泊・観光事業です。弊社のビジョンは「地方創生×ゴルフ市場の活性化」です。茨城県は観光資源が乏しいと思われがちですが、「ゴルフ」は非常に大きな資源です。 しかし、都心近郊から車で約1時間圏内であるため日帰りゴルフが多く、宿泊して県内観光をする需要が未開拓です。そこで下記3つのプランによるROYAL GREEN ならではの滞在型ゴルフツーリズムプランを確立し、地方創生、ゴルフ市場の活性化を達成したいと考えております。 1 愛犬と過ごすゴルフツーリズム コロナ禍においてペットを飼う人が急増していますが、ペットを飼うと旅行に行きにくくなる点に注目し、愛犬と共に過ごすプランを用意。 2 ビギナーからファミリーまで楽しめるパッケージプラン 当店自慢のレッスンプロによるラウンドレッスンが付いたプラン。ゴルフアパレルやグッズのショッピング、飲み放題付きのディナーなど、ROYAL GREEN Mitoの全てが詰まった滞在型パッケージプラン。 3 法人向けゴルフワーケーションプラン 全館・全打席Wi−Fiを完備、カフェタイムはフリードリンクプランや、プライベートルームを利用したミーティングやプレゼンなど、休憩時間はゴルフで息抜き。完全に仕事とゴルフを両立したプラン。 <h2>ゴルフ練習場のすべての「不」の解決を!ROYAL GREEN Mitoの成功モデルを全国へ</h2> 当社の中長期戦略において柱となるのが、ゴルフ業界向けDX事業です。近年注目されるDXですが、既存のゴルフ業界に見られる「省力化」「無人化」「デジタル化」の施策だけではなく、我々はDXを活用した「すべてのサービスの最適化」「業務効率化によるハードとソフトのアップデート」を掲げます。 具体的には、ICデータシステムを活用したデータマーケティング、LINEやSNSを活用した顧客とのコミュニケーションなど、「デジタルマーケティング」を常時行なっていますが、異業種では一般的であるものが、ゴルフ業界ではまだまだ浸透していないのが現状です。 ゴルフ練習場業界の特性として、「異なる商圏」でも「非常に似た事例」があり、「集客力向上の課題」については全国共通。そこで私たちは「全国のゴルフ練習場の仲間づくり」を実現したいと考えます。すでに数社と連携が始まっており、その内容の一部は下記の通りです。 お互いの売上や来場データの全てを持ち寄り、徹底的な傾向分析や対策の共有をして最善策を講じる。この点がDXを活用した「すべてのサービスの最適化」となる。 また、施設により異なる販管費・施設管理費予算の有無や、店舗のスケール感において事例を共有し、弊社のシステムやノウハウを提案。この点が「業務効率化によるハードとソフトのアップデート」となる。 その他にも、当店のホスピタリティサービスに基づいたオペレーションマニュアルの共有や、補助金、助成金を活用したファイナンスサポートなどがあります。 弊社の強みは「直営店舗」があることです。そこで1年間チャレンジしてきた成功事例や、もちろん失敗例も活用した新たな施策を、出来るだけ多くのゴルフ練習場に広めていくことを『事業』としてスタートします。本事業を通して、 →集客が向上、収益が安定し更なる投資につながる。 →顧客満足度が上がり、来場数増、練習場全体が盛り上がる。 →新規ゴルファーが創出され、ゴルフ人口増によりゴルフ場、用品へも波及。 →「ゴルフ業界の発展」につながり、全国の「地元への地域貢献」につながる。 1年間寄稿した本連載を通して、様々な挑戦やその背景、新規施策や顧客の反応など、リアルタイムでお伝えしました。「地方創生×ゴルフ市場の活性化」というビジョンをもとに、今後も当社ならではの挑戦を続けてまいります。今号をもって終了となりますが、今後ともぜひご期待頂けますと幸いです。 これまでお読み頂きました皆様に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年05月29日
    この連載も11回目となり、いよいよ次回が最終回となりますが、改めて私の経歴をご紹介します。 弊社の代表に就任する以前は、不動産ポータルサイトのHOME’Sを運営する株式会社LIFULL(ライフル)に勤めていました。在任期間は2007年から7年間で、この間は従業員数が100名弱から約1000名に増えるなど、急成長していた時期で、学生の人気企業ランキングでは常に上位でした。 同社には「日本一働きたい会社プロジェクト」がありました。人事部が制度を作るのではなく、他の社員がプロジェクトリーダーとなり、どんな会社であれば社員が幸せになれるのかを考えるプロジェクトです。当時私も立候補し、「組織を作る」という業務を担当しました。 このプロジェクトには井上高志社長(ライフル創業者・現社長)も参画。我々は起業の想いや様々な経験談を直接耳にしながら、会社をより良い組織に構築することを考える貴重な時間を過ごしました。 そして、この時の経験から「社長のリーダーシップ」「人財が集まる風土」「人が育つ教育プログラム」の重要性が、今の私をつくる大きな学びとなり、その学びから当社は以下の3つを大切にしています。 1)ビジョンの共有と徹底 組織においてビジョンやミッションは重要だが、単なるスローガンで形骸化するケースも見られる。自社にとって何のためのビジョンなのか? ゴルフ業界が厳しい時代を迎えるからこそ、業界の課題を理解した上で活性化に寄与できる組織運営を遂行する。それに必要なのがビジョンであり、スタッフ全員にその本質の理解を徹底させる。 「地方創生×ゴルフ市場の活性化」 これが当社のビジョンであり、地域資源を活用しつつ、より多くの人がゴルフの楽しさを感じるきっかけをつくることで「地域経済とゴルフ業界」の活性化に貢献する。 全ての活動の判断軸に、上記のビジョンを明確に据える。 <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/04/RG_mito_0424_3661.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-71652" /> 2)『利他主義』 これは私自身の理念であり、コーポレートカルチャーとなるもの。スタッフ、お客様、お取引先様、その他当社に関わるすべての人に、我々と「出会ってよかった」と感じて頂ける行動をするという揺るがない指針が「利他」である。どの企業でも社員の組織に対する貢献意欲に濃淡があり、一枚岩になりきれないという課題があるが、当社では「利他主義」を行動基軸として解決に導く。 4つの利他 ・会社からスタッフへの利他 スタッフを採用する際、当社で働く「2つの価値提供」を約束する。 会社の利益を上げることで給与を上げること/仕事を通じて自身の成長の機会を提供すること 会社全体の利益が上がっているのに、人件費を抑制することは絶対にしない。スタッフ本人の真摯な努力は「給与待遇の向上」と「自分自身の成長」という2つの報酬につながり、成果を上げたスタッフには必ずそれを提供する。 ・スタッフからお客様への利他 すべてのお客様に「出会ってよかった」を感じて頂くために、スタッフ全員が心を込めてご案内する。当たり前に聞こえるかもしれないが、これを実行し続けることで「利他の心」が当社の企業文化となる。 ・スタッフ同士での利他 スタッフ全員が協調性をもって円滑に仕事をすることはとても難しいが、スタッフ同士のコミュニケーションでは相手が求めていること、感じていることを察して行動する。 ・会社からお取引先様への利他 発注元がお取引先様に対し、上から目線で接する場合があるが、当社は「発注元だから」という考え方ではなく、双方の関係は対等であり、その上でどうすればお取引先様が当社に対して、より良いものを納める為に頑張りたいと思って頂けるかを第一に考え行動する。 何よりも、会社が全スタッフへ利他主義を実践すれば、スタッフ→お客様→お取引先様という形で利他が循環するため、ロイヤルグリーン水戸に来てよかった、株式会社ウィルトラストの仕事を担当できて良かったと、プラスの循環ができ、自社の成長につながると信じている。 3)夢を尊重したスタッフ教育 会社経営で最も大事なのは、人財教育であると考えている。特に当社は「サービス業」(装置産業ではなく)なので、最後の決め手は人になる。どんなにすばらしい戦略や理論を構築できても、また、店舗をお洒落で華美にリニューアルしても、そこに関わるスタッフがいなければ成功に導けない。 当社のスタッフ教育の基本はやりたいことをさせ、自ら成長の機会を得たくなる仕組み作りを意識。そのために半年に一度、社員面談で各人の夢を確認しながら半期を振り返り、評価を行った上で、次なる課題と目標を設定する。 その夢が当社で実現できそうなことであれば、会社も一緒にその実現に向けて準備を進め、当社ではなく違うフィールドに移るならば、そこに向けて必要なスキルを当社の業務で養えるよう指導する。 個人が判断する集団 以上が、前職の学びから構築した当社の組織作りの根幹です。私が代表取締役に就任して今年で10年目を迎えます。初めは私の考えや方針に対して否定的な声も聞こえましたが、根気強く、ブレずに続けた結果、スタッフの考え方に変化が見られ、今では一人一人が仕事を楽しみながら取り組んでいる手応えを感じます。 とはいえ、課題は沢山残されています。私が目指す組織は、上司が管理しなくても、自分自身で制度や状況を把握、試行錯誤しながら個々に意思決定できる集団です。今後はプロジェクトの担当を任命せず、自ら手を挙げた者をリーダーとする。一度任せたら、そのリーダーを徹底的に信じ、やり遂げるまで見守る。失敗の責任は私が取る。そんな方針で組織を作っていく考えです。 「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」 この言葉は、私の大好きなアフリカの諺ですが、今号のテーマに「組織づくり」を選んだのは、前職で経験した仕事内容と、ゴルフ業界の現状にギャップを感じる部分があったからです。ゴルフ練習場の多くは人件費率に目標を設定し、省人化を目指していると思います。「人財」への投資を積極的に行う企業も見られますが、それでも急成長中の他業界との差は大きいと感じます。 私自身、ゴルフ業界の既定路線を踏襲すれば、経営効率を考えて人件費を抑え、利益体質の企業を目指すべきと考えることもあります。しかし、既成概念に囚われず、業界に風を吹かせ、新たな価値創造を実現することが自分の志と心得ます。 そのため、あえて組織を大きくし、たとえ目先の利益が多少薄くなったとしても、新しいことに挑戦できる盤石な組織を作っていきたいと考えています。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年04月27日