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    ハッシュタグ「サッカー」記事一覧

    ぼくは栃木県さくら市のゴルフ場、セブンハンドレッドクラブの三代目オーナーだが、一昨年、事業承継を決める前に「自分の役割」について悩んでいた。多くのゴルフ場は地元との関りが薄く、東京から来て山を買い、ゴルフ場にして「入山料」を取るビジネス。そんな在り方に強い疑問を感じていたからだ。 ある日、地元・さくら市の教育委員会から「子ども達が走る場所がない」と聞いて衝撃を受けた。広大な敷地をもつゴルフ場が、なぜ地域の子ども達に遊ぶ場所を開放しないのか。「ゴルフ場をもっと開かれた場所にしよう」という新たな使命に気づいた瞬間だった。 地域住民やゴルフ未経験者に話を聞くと、ゴルフ場は「富裕層のゴルフ好きのための場所」と思われており、最大の敵は「社会に蔓延するゴルフ場への心理的障壁」にあると確信したが、具体的に何をどうすればいいのだろう‥‥。新たな悩みに直面した。 そんな折、フットゴルフという新しい競技を知る機会があった。これは足とサッカーボールを使って18ホールをプレーする「ゴルフ」のこと。ボールがあれば誰でもできるサッカーは、ゴルフ場の「心理的障壁」を取り除くにはピッタリだ。代表就任後初の大掛かりな仕事としてフットゴルフを導入しようと、日本フットゴルフ協会(JFGA)に連絡を取った。一昨年6月のことである。 フットゴルフは特別な用具を購入する必要がなく、女性や子供など誰でも気軽に参加できる。ルールはゴルフとほぼ同じで、少ない蹴り数で、フットゴルフ用のカップ(直径約53㎝でサッカーボール5号球約2個分)に入れる競技である。ゴルフ場への配慮もされており、サッカースパイクは禁止、グリーン上でのプレーも原則禁止、服装はゴルフウェアを推奨。プレー時間も3時間ほどで全18ホールを終了する。 当コースの場合、カップは主にコースのラフにあけている。ティーイングエリアはゴルフと同じか、ラフに特設エリアを設け、パープレーのスコアは合計72で、最長のホールは271ヤード(パー5)。JFGAの関係者によれば、現在フットゴルフ協会公認のゴルフ場が17コースで、その多くはゴルファーがプレーを終える14時頃からスタート。 ゴルファーがいない時間帯を有効活用でき、フットゴルフを通じて初めてゴルフ場も体験できる。社会に根強く残る「ゴルフ場への心理的障壁」を打破するためにも、フットゴルフを通じたゴルフ場体験の普及は効果的。まさに一石三鳥の取り組みだと思っている。 しかし、JFGAによれば「ゴルフ場の理解が少ない」「現場社員からの抵抗が強い」などが普及の妨げになっているとか。ゴルフ場は本来、ゴルファーのためだけの場所にあらず、ノンゴルファーや地域住民のための場所でもあるべきだ。そこでJFGAの関係者と会ったその場で導入を決意し、セブンハンドレッドのスタッフへ説得に回った。 とはいえ、当時は代表に就任してわずか3か月の新米社長。現場からの信頼も低い中でいきなり「ゴルフ場でサッカーをやろう!」では、面食らうスタッフも多く、理解が得られなかった。当然だろう。ゴルフ場でサッカーをするイメージは、あまりにも現実とかけ離れている。特にコースメンテナンスに心血を注ぐ管理部門にすれば「とんでもない」という話になる。それでも前述の意義を説明し、徐々に理解が深まって、説明開始から1か月後には合意を得られた。驚いたのは、フットゴルフ普及のため弊社に転職した者がいたことである。どの世界にも「熱い男」はいるものだ。 初めてフットゴルフを受け入れたのは一昨年の9月、80名ほどの若者が場違いな雰囲気に戸惑いながら、それでも嬉々として来場した。ところが‥‥。 現場スタッフの対応は並大抵ではなかったと思う。クラブハウス内や駐車場でボールを蹴ったり、ゴルファーからは「フットゴルフのカップが邪魔」「追い抜かれた」「危ない」などクレームの嵐。スタッフからも「予約時間に来ない」など、多くの顰蹙を買ってしまった。 <h2>町興しにもつながった</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/04/foot2.jpg" alt="" width="788" height="526" class="aligncenter size-full wp-image-76564" /> ただ、フットゴルファーに悪気はなく、最大の問題はマナーを「知らない」ことなのだ。当初は「ゴルファーがボールを打つ時に大声を出す」「前をプレーするゴルファーとの間隔の取り方ができていない」「前のゴルファーを追い抜いてしまった」など、フットゴルフに対する悪印象や偏見があった。 話は少し横道に逸れるが、昨今では外部との協業により新しい価値を生み出す「オープンイノベーション」が盛んになっている。異なる背景をもつ企業同士が協業すれば、新たな視点で従来にない価値を生み出せる。ぼくは、フットゴルフに対するクレームを聞いて、まさにこれは立場が違う者同士が協業するときに見られる「対立構造」と同じだと実感した。大切なのはそれぞれの立場に立って説明し、理解を促進することだ。 初めてゴルフ場に来るフットゴルファーには、プレー前にルール、コースの回り方、ゴルフに準じたマナーやエチケットの説明を徹底した。また、「予約時間に来ない」ことについても、「少なくとも予約時間の30分~1時間前には来場する」というマナーを徹底。「予約時間=来場時間」という認識を改めてもらうために、予約時間と来場時間をそれぞれ事前に通知した。ゴルファーとフットゴルファーの双方が、同じフィールドで楽しく安全にプレーするための準備は、スタッフにとってひと手間かかる作業だが、弊社のビジョン「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」を体現する上で不可欠な取り組みだと感じている。 スタッフの細かな配慮が功を奏し、セブンハンドレッドの来場者は現在、当たり前のようにフットゴルフを受け入れている。これまで累計3000名ほどのフットゴルファーが来場しており、ちなみにプレー料金は約5000円だ。 このフットゴルフ、実はセブンハンドレッド内だけに留まらず、市内の町興しにもつながり始めている。「フットゴルフのワールドカップを開催しよう!」との合言葉を機に、地元さくら市役所内で「フットゴルフタウン推進委員会」が立ち上がり、さくら市が「フットゴルフの聖地」となるよう地域の活性化を図る動きが始まっているのだ。 残念ながら、今年10月に当コースでの開催が決まっていたワールドカップはコロナ禍で中止となってしまった。それでも小学生向け社会体験学習の一環でフットゴルフの体験教室を行ったり、市役所員が中心となり「街コン」としてフットゴルフイベントを開催。小学校の体育の授業にも導入されるなど、フットゴルフ推進の動きは加速している。 これにより、ゴルフ場への社会的関心の低さを打破するだけではなく、ゴルフ場から新しいトレンドを発信、地元が活気づく様子を見ると本当に嬉しい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年04月02日

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