「私がマネージャーとしてサポートを始め、早15年。レギュラーツアーからシニアツアーへ舞台を移して約6年。今回のコマツオープン2014での復活優勝を遂げるまで、幾多の困難に立ち向かい栄光を勝ち取ったその背景を記したいと思います。
私自身が思う"尾崎健夫"というプロゴルファーは、ひと言では語ることはできませんが、"物事全てに対して瞬時に緻密な計算をし、周りの情報をくみ取り、分析し、戦略を考え最良の結果へと導いていく――。やはり、人生の達人、本当のプロフェッショナルだと思います。
究極を言えば、その頭脳がゴルフというスポーツに非常にマッチしているのではないかなとも。まずゴルフクラブに対する想い、考えはもちろん、クラブの数値的なデータも重要視はするのですが、そのデータに基づいたクラブ造りの調整とは一線を画す。長年培った勘で全てのクラブを本当に信頼できる一本にしていくのです。
その感性には、いつも驚かされます。近年、ヘッドとシャフトをスリーブというパーツで組み立てるというのが主流ではあるが、例えばヘッド重量189gのAヘッドと192gのBヘッドを組み立てて試打を重ね、鉛を貼ったり外したり、その位置もヒールなのか?トウなのか?ソールの後部なのか?練習の中で調整を重ねていくんです。
球の飛び方で、その時の気象条件や体調も考慮しながら。なかなかこれで完璧という訳にはいかないのですが、"これで試合に行くぞ"と決まった時、AとBの鉛を貼ったヘッド重量を測ると2つともぴったり197gだったりします。元々のヘッド重量の差3gを体で、脳で感じ取れるのが、尾崎健夫プロなのです。
次に、試合に向けたコンディショニングについてです。60歳という年齢を考えると、ゴルフはプロアスリートとして活動できる数少ないスポーツのうちのひとつではないでしょうか?長い間ツアーに出場し続けるためにもっとも大切な要素としては、健康な身体、怪我をしない身体作り、メンテナンスが重要だと思います。
PGAシニアツアー賞金王を獲得した2009年の翌2010年に出場したあるトーナメントで、雨の中6時間を費やしたラウンド後、長年患っていた腰痛が悪化、病院で検査の結果、『腰部脊柱管狭窄症』という診断が下った。今回の不振の原因ももとはと言えば、その部分の要素が強いのだが、それから約5年その痛みと戦ってきました。
ダイナミックなスイングゆえ、腰・膝・肩・肘などへの負担はかなり大きく、また蓄積してきた疲労も重なり、腰椎の第3・第4・第5の骨の変形と椎間板の擦り減りで、下肢へ続く坐骨神経を圧迫し、歩くこともままならない。
500メートル歩くと動けなくなり、少し休むと痛みが和らぎ、また500メートル歩くと座り込んでしまう。間欠跛行という特徴的な症状が悪化し、そんな状況では戦う意欲すら普通なら失ってしまうだろうと思いました。
評判の良い病院を探しながら、治療に取り組んでいた中、ある先輩プロに紹介して頂いた
病院での治療で、奇跡的に少しずつだが歩ける身体、練習できる身体へと回復してきたのが、ここ最近です。
また、腰痛対策の一つとしてダイエットにも取り組んできました。身体の本来持っている自然治癒力、免疫力を向上させるため、野菜ジュースや高機能ヨーグルトで腸内環境を整えたり、健康で負担の少ない身体を目指してきました。
最後に、今回の優勝でいつもどんな時も希望を持って物事に取り組めば、いつかは実を結ぶ日がくるのだなと改めて思い、そのためには日頃の準備(クラブ、身体、精神的安定)が必要不可欠で、それを怠らなければ栄光に結び付くチャンスもあると痛感しました。今後も、いつまでも感動を与えるプロゴルファーであって欲しいと思います。
ご声援ありがとうございました」
陽気なキャラが印象深いので、内面に潜む苦悩を語られることが少ない尾崎健夫プロだが、この手記からは人知れず困難に立ち向かっていた姿が読み取れる。"もう一度、栄冠を勝ち取りたい"というプロフェッショナルアスリートとしての姿勢に深い感動を覚えずにはいられない。ジェットの益々の活躍を願ってやまない。