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    ハッシュタグ「倉本昌弘」記事一覧

    日本プロゴルフ協会(PGA)倉本昌弘会長の3期目が今年3月に満了する。3期6年を振り返って「目標の半分にも達していない」と不満気だが、ゴルフ界ならではの事情も苦戦の理由だという。 業界きっての論客であり、「ゴルフ団体のトップ達は改革に本気じゃない」とバッサリ。会員5600人超の最大組織を牽引するリーダーは、どのような壁にぶつかったのか? ロングインタビューをお届けしよう。 PGAが抱える悩みとは? <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/kuramoto1.jpg" alt="PGAが抱える悩みとは?" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-60602" /> <strong>今年3月に3期6年の会長任期が満了します。倉本さんは当初から「3期はやりたい」と話してましたが、4期目への意欲はどうですか?</strong> 「その前に制度的なことを話しますと、新たに『特任理事』を設けましてね、これは地区から選ばれる理事とは別にPGA本体のことを考える役割で、代議員選挙を経ずに理事になります。 いわゆる従来の『執行理事』は地区の声を優先しがちなので、そうではなく、PGA全体のことを考えるための役職だと思ってください」 <strong>「特任理事」は昨年3月の社員総会で承認された新しい役職で、「組織改革」の目玉ですが、企業の執行役員と似ている気がします。取締役会と現場の意志疎通を図るのが執行役員ですが、特任理事はそんな感じ?</strong> 「まあ、そうですね。10月に私を含む5名が立候補しましたが、特任理事になれるかどうかの審査を経て、さらに通常の選挙で選ばれた理事がきて、そこから会長・副会長を選ぶという状況が生まれます。なので、来期のことは何とも言えませんねえ」 <strong>3期6年は燃焼しましたか?</strong> 「はい。目いっぱい頑張ったつもりですが、思っていたことの半分もできてないのが現状です。 これにはいくつかの要因があって、PGAの組織の問題、外的な要因、それから関連団体の協調性のなさも一因だと思います。 まずは組織的な問題ですが、我々の会員は5623名(10月28日現在)いるものの、大半はPGAを頼っていないという現実があるんですよ。つまり、それぞれ個人事業主として地域に根差した活動をしていて、それで生計を立てている。本部からの情報も満足に行き渡っていないから、会員には『本部は本部で勝手にやってる』という意識が強くあって、一方の本部も会員に手厚い対応ができていません」 <strong>協会の職員は何名ですか?</strong> 「26名です」 <strong>少ないですねえ。</strong> 「少ないです」 <strong>つまり増員が必要だと。</strong> 「というか、今の人員体制で事業規模と管理費を見てみると、管理費の方が遥かに大きいわけです。じゃあ、事業規模を大きくすれば人員問題が解決すると思うかもしれませんが、我々は公益社団だから同時に公益事業を増やす必要もある。 『収益事業』の柱はトーナメントで『公益事業』の柱は資格認証になりますが、双方を上手くバランスさせながらやりくりしなければならない。現状はそんな感じです」 <strong>大変ですねえ。5600人超の個人事業主を取りまとめて、同時に経営感覚も発揮しなければならない。とはいえ「収益」と「公益」は明確に二分できるんですか。</strong> 「ん? どういう意味です」 <strong>例えばトーナメント事業内に公益性の高い活動がある場合、それを公益事業に振り分けるとか、あるいはそのあたりの調整を主体的にして、会計上、公益事業に厚みを持たせるとか。</strong> 「そこは簡単じゃないんですよ。PGAは公益認定等委員会に申請していて、我々自身がトーナメントは収益事業、資格認証やジュニア育成は公益事業と分けて公益社団の認可を取っているんですね。 まあ、部分部分でやれるところもありますが、基本的には会計上、そのように分類しているわけです。ジュニアなどの公益事業に注力すると、持ち出しが増えるという面もあります」 <strong>いっそ「公益社団」をやめたらどうですか。職員が足りない、だから会員と齟齬が生じるという話に公益社団の体質があるなら。</strong> 「体質っていうか、これは我々が選んだ組織(法人格)だし、だから株式会社と違って税制優遇を受けてるわけですよ。まあ、組織に対する会員の理解不足もあるんですね。 話を極めて単純化すると、まず年会費が4万5000円です。その半分以上は公益事業をやらなきゃいけないから、2万2500円は公益に使う必要がある。残った半分を会員の皆さんに還元できますよと」 <strong>半分の還元では会員の不満が募るでしょうね。</strong> 「そこは無きにしもあらずだと思いますが、でも、みんなで決めた組織だから、不満を持っている会員は理解不足だと思いますよ。逆に言えば、だからこそ会員の理解を得ることが大事なんです」 <h2>会員の実態調査でPGAの「価値」訴求</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/kuramoto4.jpg" alt="会員の実態調査でPGAの「価値」訴求" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-60599" /> <strong>任期中、一番大変だったのが組織改革だったように思います。人事面でもインストラクター出身の井上さんを副会長に抜擢したり、ツアーの勝利数が幅を利かす組織に一石を投じた。</strong> 「組織改革は竹花委員長が一生懸命やったことですが、改革の主旨は組織の情報共有と理解の深化に尽きるんです。 全国15地区の代議員制度は国会みたいなものですが、公益社団の『社員』は92名、これがPGAの決定権を持っていて、つまり国会議員です。 一般会員は5600名強ですが、理事会で決まったことを代議員に伝え、代議員が一般会員に伝えるという組織図の中で、先ほどの繰り返しになりますが、情報伝達と理解の共有は本当に大変なんですよ」 <strong>伝達手段のひとつが会報誌ですね。</strong> 「はい。年3回PGAリポートを出してますが、調べたら、読んでいる会員は3割未満と少なくて(苦笑)。それでホームページの有効活用という話にもなるわけですが、今のホームページをキレイにしても会員は本当に見るんだろうか。5億6億かけてプラットフォームが良くなりましたと言ったところで、会員は高齢化が進んでいるし」 <strong>65歳以上の会員比率は21%です。</strong> 「そう。理事会でもペーパーレス化を検討してますが、その理事会が紙ですからね(苦笑) ただ、今は高齢化ですけれど、将来もそうだとは思っていないわけで、今後の構想が本当に大事だと思うんですよ。その構想を考えるために大事なのが会員の実態調査で、たとえば『あなたは今、どこで仕事をしていますか?』という問いに対してゴルフ場、練習場、ショップ、あるいは『してない』とか。収入面を含め細かく調査したんです。全員はカバーしてませんが、ある程度の実態はつかめると思いますね。 これがわかれば対策を打てるじゃないですか。練習施設も屋外より室内の勤務が増えているとか、ゴルフ場よりもネクタイを締める仕事が多いとか。仮にそうなら、時代に即した指導マニュアルの作成や新しいカリキュラムの提案につながりますよね」 <strong>インドアで働く会員が増えると、インドア専用の教え方も必要なわけですか?</strong> 「必要だと思いますね。室内は球筋が見えない分、顧客の満足度は下がりますが、球筋が見えないからスイングに集中できるメリットもありますよね。これを意識した指導をするとか。 デメリットは打席数が少ないから、時間帯によって満席と空席の差が激しくなる。なので、空き枠を合理的に埋めるビジネスモデルの提案もできると思います」 <h2>「ゴルフ経済」が激変した</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/kuramoto2.jpg" alt="「ゴルフ経済」が激変した" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-60601" /> <strong>任期中に苦戦した2番目の理由に「外的要素」をあげましたが、具体的には何ですか?</strong> 「外的要因は経済環境ですが、日本の経済というよりも『ゴルフ経済』の話です。ゴルフ雑誌が苦戦している、ナイキやアディダスがゴルフ市場から撤退した、今は好調のピンにしても、いざ何かで売れ行きが止まれば、」 <strong>人員整理を余儀なくされる。過去の成長で人員が膨らみましたからね。</strong> 「ですよね。一方のダンロップとBSは2年周期で我慢してますが、仮定の話として、今のファースト・ロットは6000セットで十分だと、昔みたいに1万は作らない。 小売り環境も激変しています。大きな『箱』をもつゴルフ5はリストラを強行しましたが、今後維持するのはさらに厳しくなってくる。一方で小さな専門店はこれまで散々潰されてきましたが、生き残ったショップも顧客の高齢化や息子の継承問題を考えれば先行きが暗い。 女子プロがいいと言われますが、物販にはまったくつながらない。藍ちゃん、石川遼、松山ときたけど、用品市場は拡大してないじゃないですか」 <strong>ジャンボ尾崎の活躍で物が売れました。あれで業界はスターが出れば物が売れる、いわゆるスター待望論が蔓延したわけですが。</strong> 「ジャンボさんの活躍で売れたのはバブル時代のほんの数年ですよね。あとは『ニューイング』も売れましたが、当時のビジネスモデルは今、まったく通用しないですよ。 それと、我々が注視するのは練習場の廃業です。PGA会員の主業務はレッスンですが、練習場がなくなると職場を失うことになりますから、これは深刻な問題です」 <strong>市街地の練習場は固定資産税と相続税に加え、台風による鉄柱倒壊も問題です。あれが最後の一押しになって、悩んでいる練習場経営者が続々と閉鎖を決めるかもしれない。</strong> 「あると思いますね。固定資産税と相続税に加え、施設の改修や建て直しが求められる。昭和40年代頃に開業した施設は軒並みこの問題を抱えていて、だったらマンションにしようとか用途変更を考えますよね。いずれも待ったなしの状況です」 <strong>なるほどねえ。PGA会員の雇用主が練習場という意味で、両者は一蓮托生です。そこでJGRA(全日本ゴルフ練習場連盟)に一言ありますか?</strong> 「他の協会のことなんでね、我々が口を挟むのもアレですが、連盟という意味では加盟場数を増やしてもらいたいですよね」 <strong>全国の練習場でJGRAに加盟している施設は約400、加盟率は十数%です。</strong> 「そう。加盟率が少ないと、連盟というよりは個々の練習場との付き合いになってしまう。ただ、団体同士ということでは以前から話し合いを進めていて、JGRAの認定プロと連携して、一本化を図りたいと。これを実現したいわけですが」 <strong>この話は多少注釈が必要ですね。PGAとJGRAは各々レッスンプロを認定していますが、倉本さんはPGAに認定事業を集約したいと考えている。JGRAのプロをPGAの3軍に位置づけるイメージですが、するとJGRAの収益源(資格認証)がPGAに取られてしまう。当然、JGRAは身構えますね。</strong> 「というか、JGRAのプロフェッショナルと我々が一緒にやれるならいいじゃないかと。彼らはレッスンの実践経験があるので、我々の基本講習さえ受ければPGAの1軍になれますよと」 <strong>それはJGRAの米櫃(こめびつ)を自分の米櫃にしちゃうという話ですか。</strong> 「いや、我々の米櫃という話じゃなくて、お互いに問題を抱えているじゃないですか。少子化でプロの予備軍がいないのに、両者で取り合ってどうするんですかと。今は米櫃かもしれないけど将来の米櫃にならないなら、早くから互いに話し合って、仕分けしませんかという話ですよ。 この部分をもう少し掘り下げると、JGRAは教える人がほしいわけですよね。プロを認定する機関ではなく、指導者がほしいだけなら我々が出します。その指導者は我々に作らせてください、我々は教える場所があれば飯のタネになるんですからと」 <strong>実は、この話は業界の構造的な問題を端的に表しています。業界団体は総じて連携を望むけど、各論に入ると個別の事情が台頭する。つまり総論賛成各論反対です。</strong> 「その際、一番大事なのは顧客目線だと思うんですよ。つまり、JGRAのプロフェッショナルはお客さんを満足させているんですか。我々は満足させられますと。そのあたりで共通認識を得たいと考えます」 <h2>何もしなかったと言われたくない</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/kuramoto5.jpg" alt="何もしなかったと言われたくない" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-60603" /> <strong>業界団体の在り方はどうですか。特に関連16団体が加盟するゴルフサミット会議ですが、船頭が多すぎて物事が前に進まない。議論ばかりしているという批難を浴びています。年初に活動テーマを掲げるけれど、ゴルフ場利用税の撤廃も進まない。</strong> 「まあ、ずう~っと言ってますけれど、各団体のトップには成功者しかいないんですよ、失敗した人は消えますから。ということは昔の成功体験でみんなが話し合っている。 昔は良かったみたいな話の中で『大変だ』『苦しい』と言いながら、実は本気じゃないわけですよ。本当に苦しい人達は、業界の会合なんか出ませんよ。そんな暇あったら必死に仕事してますよ」 <strong>倉本さんは本気のヒト?</strong> 「はい」 <strong>その本気度を言葉にすると?</strong> 「ぼくの本気度は、選手としてゴルフ界のいい時代を過ごし、いろんな勉強をさせて頂いて、今はPGAの会長になりました。で、倉本が会長やって十数年後の評価として『何も残らなかった』『あの連中はいいとこ取りでいなくなった』と言われたくない一念ですよ」 <strong>食い逃げ世代じゃないかと。</strong> 「そう言われたくないだけなんです。だから少しでもいいゴルフ界を次の世代に残したい、明かりが見える状態で手渡したい。その想いだけなんです」 <strong>仮にサミット会議が本気じゃないなら、あの組織は必要なのか?</strong> 「そうですねえ、サミットもGMAC(ゴルフ市場活性化委員会)も同じだと思うんですが、やるべきこと、できることを絞らなきゃダメだと思うんです。 で、必要性という意味でサミットがやるべきことは大きな方向性を出すことで、20年後のゴルフ界をどうしたいのか、その指針を示すことでしょうね」 <strong>各団体の長が70代以上という中で「20年構想」は酷でしょう。頭を総取っ換えするしかない。</strong> 「それは我々ができる話じゃないし、今のサミットは潰すこともできません。潰すか、という話になれば『お前が抜けろ』となりますから。なので、加盟団体が共通の課題をベースに分科会をつくることが現状では有効だと考えます」 <strong>ワンテーマで離合集散するタスクフォース型ですね。</strong> 「そう。それで決めたことをサミット会議に諮るという感じですね。サミットの役割はそれをオーソライズすることで、例えば選手強化の面ではPGAとJGA、LPGA、JGTOがひとつの部会を作るとかね。 この文脈で何かをやるときにはゴルフ場団体や練習場など関係ない団体が出ますけど、それは別のテーマでやればいいんです。当然、関係団体は事務局の人間を派遣しますが、ヒトを出せない組織はね、脱退したらどうですかと。動く人がいないならいる意味もないですから」 <strong>そもそも参加する資格がない。</strong> 「ぼくはそう思います」 <strong>一番いいのは業界団体を一元化、つまりフェデレーション化することだと思います。それでCEOなりCOOがセクションの役割を差配する。その長は倉本さんが適任だと。</strong> 「そうなんですか?」 <strong>そういった声を聞きますね。</strong> 「ぼくは全然聞いたことないんだけど(笑)。まあ、本来はフェデレーションにすべきだと思いますよ。それが難しいと思うからタスクフォース型や部会型を提案しているだけで、理想的にはそっちだろうと」 <strong>その長になりたいですか?</strong> 「いや、なりたくはないですよ。個人的にはもっと楽に、自由にしたいだけで(笑)。 まあ、サミットをベースに考えたとき、我々がJGAを担ぐのは、スポーツ団体の中でゴルフ界を代表する地位にいるわけだから、これを神輿にしましょうと。JGAが神輿になって、動く部分は我々がやりますと。それをJGAの竹田会長に説明して理解を得られれば、それでいいとぼくは思うんです」 <h2>リオ五輪の「強化委」は機能したのか</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/kuramoto6.jpg" alt="リオ五輪の「強化委」は機能したのか" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-60605" /> <strong>そこで思い出すのがリオ五輪の強化委員会です。JGAを中心に「選手強化」に向けて関連団体が協同しましたが、結局、あの組織は上手く機能したんですか?</strong> 「当時の事情を考えればよくやったと思いますよ、成績面でね。一方ではその成績に不満で強化コーチの責任論を唱えるムキもあって、わからないでもないんですが、突き詰めれば責任て何だろう、取るべき責任はあったのかとも思うんですよ。 だって、選手はワールドランクで勝手に選ばれる、選ばれてから1ヶ月間ツアー競技に参加している。プロゴルファーは個人事業主だし、スタッフを自前で揃えている。 それでもリオ五輪のときは事前に合宿を張りましたが、当時来たのは女子が3人で、渡邉彩香、成田美寿々、鈴木愛。誰も選ばれてないですよ。何のための合宿ですか」 <strong>強化委員会って何ですか?</strong> 「という話になりますが、アレをつくる必要が、JOCなりに対してあるんじゃないですか」 <strong>ひとつの体裁として。</strong> 「はい。もっと深く言うと、リオのときは男女の選手とキャディで合計8名、その数の3割を目安として3枚のクレデンシャルが出たんです。通訳に1枚、選手村の常駐者に1枚、残りの1枚はコーチの丸山茂樹ですが、すると私も小林浩美さんもどこにも入れない。東京も似たような状況になるかもしれませんが、これは我々がどうこうではなく、五輪の制度としてそうなっている。それでいて責任論を言われても、果してどうかと思うんです」 <strong>その東京五輪で日本人がメダルを取るとゴルフが盛り上がるだろうと。カナダカップで中村寅吉・小野光一組が優勝して大ブームを経験した長老達は、そう考えるはずですね。</strong> 「非常に懐疑的ですね。その理由は、帆が張ってない舟は風が吹いても進まないからです。帆を張って、指針をきちんと示して風を待たないとダメですし、現状、その準備が整っているとは思えませんから」 <h2>「5Gレッスン」に期待大</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/kuramoto7.jpg" alt="「5Gレッスン」に期待大" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-60604" /> <strong>そこで肝心な話、「倉本私案」の指針はどこですか。</strong> 「それはゴルフ人口を増やす方向にしかないんですよ。ぼくが会長になってすぐ、1500万人、最大2000万人のプレー人口を達成したいと表明しましたが、今は700万人台、ひょっとしたら600万人台かもしれません」 <strong>ゴルフ人口には諸説あって「800万人規模説」もある。レジャー白書を懐疑的に見るムキも多いですから。</strong> 「まあ、いろんな試算がありますけど、高齢化は間違いないので、いつガクッと減ってもおかしくないですよね」 <strong>日本人男性の「健康寿命」は72歳で、2019年に団塊世代の第一陣が72歳に突入しました。これ、ゴルフ市場を引っ張ってきた大集団です。</strong> 「そういうことです。なのでジュニア育成も大事ですが、PGAは『エリートジュニア脱却宣言』を行って、底辺を増やす活動に注力していきます。 エリートジュニアを追求すると大量の挫折者を出してしまうし、その部分は他団体に任せればいいと。その流れでジュニアリーグを千葉、北関東、兵庫に立ち上げて、ポイント制のチーム戦で競っています。担当の会員から『子供が喜んでいる』という話を聞きくと嬉しいですよね(笑)」 <strong>ほかに明るい話題もありますね。ひとつは「5Gレッスン」で、PGAはNTTドコモと実証実験を開始する。若い会員にとって朗報でしょう。</strong> 「それでつくづく思うのは、ゴルフって捨てたもんじゃないなあということですよ。比較的所得が高いし自由時間もそこそこあるから、異業種には魅力的に映るんですよ。 で、5Gで何をやるかですが、直近では遠隔レッスンだとしても将来はそんなもんじゃない。全国にアンテナが立つには5年ほど掛かるそうですが、すると世界観が激変する。 例えば石川遼が1番ホールで凄いティショットを打ちましたと。そのバーチャルの場にゴルファーもいて、『次はあなたです』とインストラクターが促すわけです。 打つと大きくスライスした。そこでレッスンが始まります。石川遼はこう打ったけど、あなたはフェースが開くからこうしてくださいと」 <strong>どこで、ですか?</strong> 「場所はインドアだったり、要するに『あなたのいる場所』ですよ。タイガーの素晴らしいバンカーショットもその場で体験できるし、要するにトーナメントと連動したレッスンですね。これを是非やりたいと思っていて、5Gが普及すればいろいろできる。そうなるとゴルフも楽しいだろうなあって」 <strong>いろいろ夢想するわけですね。すると会長職は3期6年じゃ終わらない。4期目もあるでしょう。</strong> 「まあ、4期目は私が決めることではなくて、会員の皆さんがやれということであれば、会員のために喜んで働きたいと思ってます」 <strong>オッ、続投宣言ですね。</strong> 「・・・・・・」
    (公開)2020年01月15日
    日本プロゴルフ協会(PGA)は昨4月10日、定例理事会後に倉本昌弘会長が記者会見を行った。当日は9項目の議題が俎上に載ったが、「ゴルフスタジアム問題」についても話し合われた。5月1日に新組織がスタートし、新たに「IT事業開発本部」を立ち上げてプラットホームを構築、会員にホームページ(HP)を提供する構想も明かしている。 PGAはこれまで広報業務の一環としてHPを運営してきたが、今後は内容の充実を図り、「HPをもちたい会員がいれば対応できる体制にしたい」(倉本会長)――。むろん、このコメントは「ゴルフスタジアム問題」を意識したものだ。 多くのレッスンプロが信販会社と高額なローン契約を交わし、その動機はゴルフスタジアム(GS)から無料でHPを制作してもらえるところにあった。「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」の西村國彦弁護士は「本来はPGAがその役割を果たすべきだった」と話しているが、新体制でこれを実現する方針を示した。 記者会見の大半は「GS問題」に費やされたが、この件についてPGAの問題意識はどこにあり、どのように解決しようとしているのか? 一問一答で要約する。なお、太字の質問は本誌によるもので、これ以外では日本ゴルフジャーナリスト協会の小川朗副会長から質問があった。 <h2>記者会見冒頭の挨拶</h2> 「ゴルフスタジアムの件もありましたが、5月1日に新組織のひとつとしてIT事業開発本部を設置します。GS問題については片山さんがいろんなことを書いていますが、すべてが合っているというわけではないし、我々は情報収集している最中です。 LPGAは早い段階で「会員個々の問題だから協会はタッチしない」というスタンスを出しており、我々も本来はそうだろうと思いますが、PGAの定款では、自己破産をした会員は資格喪失になる。過去にもそういう事例があったなかで、この件については方策を考えてみようかなと。 顧問弁護士と相談をしながら、救済措置がとれるならば、何か考えていこうということです。ただ、基本的には個人が(信販会社と)交わした契約に我々が関与するのは難しい。理事会に資料を提出するために若干の資料集めをするにしても、今は何をどう集めていいかわからない部分もありますが、各地区で会員の被害状況は把握したい。月並みな言い方をすると、現段階では静観ということになるかもしれません。」 <h2>質疑応答</h2> <strong>IT事業開発本部はいつ、どのような内容でスタートするのか。</strong> 「すでにやっている部分もありますが、一言でいえばプラットホームの再構築です。各所からジョイントしたいという話もありますが、第一段階としては会員情報を入れてシステムを一本化する必要がある。現状は(会員5562名のうち)1200~1300人分のメールアドレスしかなく、集約できていない状況なので、一箇所に集めて一般の人達に情報公開したい。 その後、第二段階で一般の方や業界とのマッチングを目指し、第三段階では業界外とのマッチングを目指す。プラットホームができれば、HPを作りたいという会員にも対応できるでしょう。それがなかったから外部(ゴルフスタジアム)に頼まなければならなかった。実は、この件は2ヶ月ほど前から動き始めていましたが、その矢先にこの問題が出てきたのです」 <strong>小川氏 システム完成までのスピード感は?</strong> 「資金があればすぐできます。ただ、PGAには(遊休財産が)8億円ほどありますが、なかなか使わせてもらえない。どこの団体も高齢化していて、ITについては『なんだ、それ?』という反応があるので、理解を得ながら進める必要があるでしょう。 今、IT関連の予算は年間1500万円ほどですが、それでは何年も掛かるので、大きな投資を一度にして、何年間そのシステムが使えるのか。1億使って10年(償却)なら年間のコストは1000万円、20年なら500万円です。今みたいに1500万円をちょこちょこ使うとツギハギになるので、このへんも含めて精査したい」 <strong>小川氏 かつてPGAとGSが提携していたことが信用となり、GSと契約をしたというプロもいる。</strong> 「ゴルフスタジアムとPGAの関係は平成19年9月から22年末までで、インターネットレッスンの提携をしてましたが、以後は一切関わりがありません。それと、申し上げたいのは、片山さんの記事に『日銭をもらって所得を申告していない者(レッスンプロ)が沢山いる』とありますが、」 <strong>沢山ではなく「一部」と書いています。</strong> 「それが問題だと書いてますが、定職でレッスンをしている者は、ほぼ99.9%申告しています。なかにはラウンドレッスンをして、そのまま領収書がなくポケットに入れちゃう者がいると。ただ、コンプライアンスの問題が発生してから厳しく言い続けていることは、ニギリは絶対にダメですよと。もうひとつは、もらったお金は申告しなさいということで、協会としては指導を続けています。まあ、現実はどうなのと言われると、見つけるのが困難ということですが」 <strong>見つかった場合は資格の剥奪など強制力はあるのか。</strong> 「そうなれば、コンプライアンス委員会に諮って、どういう形かで懲罰が決まります。いきなり剥奪とは思えないけど、戒告なのか訓告なのか・・・」 <strong>無申告で懲罰の前例はありますか。</strong> 「ないですし、告発もありません。ただ、(会員からの)質問はいっぱいあるんですね。例えば地区のプロ会がお金を出し合って大会を開くことも、厳密にはダメだと言っています」 <strong>賭博開帳図利の可能性がある?</strong> 「ええ」 <strong>ただ、そのような大会はかなりありますね。</strong> 「だからやめてくれと言っているわけです、集めたお金が全額取り分になるのはダメです。スポンサーからきちんとお金を集めて、これを分配するのはいいという区分けをきちんとしなさいと、地区大会でも言っています」 <strong>スポンサー大会はOKだけど、プロが出した参加費を全額賞金に充てるのはダメ。</strong> 「はい。うちの会員だけではなく、ほかでもやっているところはあると思いますが、それはダメです」 <h2>プロの未熟さを責めるのは論拠が違う</h2> <strong>定職に就いている者は99.9%申告しているとのことですが、「定職」というのは練習場等に所属して源泉徴収される場合ですか。</strong> 「それと、個人で練習場を借りて営業しているケースですね。不定期じゃない場合は、何月何日に練習場を借りて仕事をしたことを税務署が把握するわけだから、その部分に関しては99・9%申告しているという意味です」 <strong>そう言い切れる?</strong> 「はい。そうじゃないと練習場も困りますし」 <strong>これとは別に、ラウンドレッスン等の場合は事業所を挟まないから捕捉しにくい。</strong> 「そうですね。あとは友達同士の場合などで、例えば片山さんとゴルフをして、終わったあとに食事をした際、これが今日のレッスン費だともらった場合は調べようがないわけです」 <strong>調べようがないから、どうしようもない?</strong> 「いや、どうしようもないということじゃなく、我々はしないでくれと指導しています。だから、やってないだろうとは思っているけど、現実にあると言われれば、告発しなければいけないのか。ということについては、非常に難しいと思います」 <strong>今回のゴルフスタジアム問題は、レッスンプロの常識が欠如していることも槍玉に挙がっています。</strong> 「欠如というのは具体的に?」 <strong>仮に年収300万円のレッスンプロが、500万なり800万のローン契約に判子を付いた。そのことです。</strong> 「それは(審査を通した)ローン会社の問題でしょ」 <strong>むろん、そうです。ローン会社が無審査だったと「被害者の会」も言っており、仮にそうなら責めはローン会社が負うべきです。ただし、その手前で判を押した側にも瑕疵がある。</strong> 「その論拠はおかしいでしょう。だって、たとえば2万円しか収入がなくても1億の家を買っていいと銀行が言ってくれたと。ならば借りるし、むしろ片山さんのほうが非常識ですよ。だって、お金を貸す側が、あなたにお金を貸しましょうと。借りたほうは、お金があればちゃんと回せると思っているわけですから。まして今回は5年ローンが大半と聞いているし、月々5万円、多いひとで7万~8万円の返済額が(広告費として)入ると言われている。『本当にわたしで大丈夫ですか?』と聞いているのに『貸します』と言われたわけだから、それを非常識と言ったらおかしいでしょう」 <strong>そう思うこちらが非常識だと。</strong> 「そこを責めるのであれば、ぼくはそう思いますよ。そうじゃなくて、『あなたはこの関係を疑わなかったんですか』とか、『あなたは5万円を払い続けられるんですか』『あなたの仕事で大丈夫ですか』という話なら、『ちょっと浅はかだったかもしれない』となりますが、」 <strong>それなら今の話と同じでしょう。そもそも常識が欠けて、だから判を押したわけだから。</strong> 「違いますよ。そもそも自分ができると思っていて、なおかつ(広告費が)入ってくるわけですから」 <h2>PGAは基本的に関与できない</h2> <strong>そういった教育的カリキュラムをPGAの講習会に加える必要性は?</strong> 「どういったカリキュラムですか」 <strong>契約の際に気をつけること、あるいは税務署の人間を呼んで税務問題を指導するとかです。</strong> 「税務問題は入っていると思います」 <strong>信販系の問題はカリキュラムに入っていない?</strong> 「あのぉ、我々みたいな人間には基本、お金を貸さないじゃないですか。わたしはPGAの会長で1080万円ですけれど、(1期2年なので)住宅ローンを借りたいと言ってもまともなところは貸してくれないですよ。だって、定額収入がないわけですから。 我々の常識からすれば、プロゴルファーにローンを組ませることが基本的に少ないわけです。逆に言えば今回は、そこを突かれたわけだから、騙されやすい面はあった。 それと、全員に聞いたわけではありませんが、購入者は何百万円もするソフトを1回も使ったことがないと。あれより簡単で安いソフトは沢山ありますが、これを買わないとHPを作ってくれない、お金も(広告費として)払ってくれないから、仕方なく対価として買ったという話を聞いています」 <strong>だとすれば、詐欺性を疑える?</strong> 「ただ、顧問弁護士に言われたのは、被害者かそうじゃないかわからない今、我々公的機関が何かに煽動されたり、こうしたほうがいいとは極力言わないほうがいいと。そのように言われましたので、書く場合はそのあたりを理解した上でお願いします」 <strong>被害人数は調査中ですか。</strong> 「我々のざっくりした感触では、会員数で300~500の間かなと。『被害者の会』は1000人規模と見ていますが、関わった人はそれぐらいだとしても実際にはどうでしょう。まあ、ゴルフスタジアムにつきましては、ゴルフ界の社会問題だと思いますが、我々は直接タッチできません」 <strong>先ほど「救済」を検討するという話でしたが?</strong> 「信販会社と個人の話なので、基本的にはできないと思います。ただ、議論の上では、破産した人間に対して何かできないのかと。そういう話もありましたし、準備だけはしておきたいと考えています」 以上、倉本会長との一問一答を要約した。論旨をまとめると、 <ol> <li>新設のIT事業開発本部でHP事業を強化する</li> <li>ゴルフスタジアム問題は信販会社と個人の問題なのでPGAは基本的に静観する</li> <li>一部のレッスン収入「無申告者」に対しては従来通り指導を徹底し、懲罰を含め厳格化する</li> </ol> ことに集約されそう。今回の問題は、水面下で燻る様々な課題を顕在化させたといえるだろう。契約に至った背景に「プロの上下関係による紹介」を指摘する声もあり、だとすれば、ある種の閉鎖的な人間関係が徒になったと見ることもできる。 ゴルフスタジアムは事業再建の過程で、IT系企業との資本・業務提携を示唆しているが、同社が構築したシステムをPGAが買収すれば「プラットホーム強化」の青写真も描きやすくなる。相互送客や最新のスイング解析システムを導入して顧客カルテを掌握すれば、会員価値の向上と組織の近代化につながるはず。「公益社団法人」としてどこまでやれるのか、このあたりの動向も注視する必要がある。(片山哲郎) <strong>訂正 (4月12日11:28) 自己破産は会員資格停止との倉本会長発言について、PGAから正しくは資格喪失との訂正が入りました。</strong> なお、PGAは代表電話(03-5472-5585)を被害者の「連絡窓口」としているが、一部で「相談窓口」を設けたとの情報については「相談を受けられる段階ではなく、勘違い情報」(事務局)と否定している。
    (公開)2017年04月11日

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