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    ハッシュタグ「竹生流ゴルフ市場再興策」記事一覧

    <strong>ゴルフ界の持続的な発展のために</strong> 2021年12月から開始したこの連載も今回で最終回となります。そこで本稿では、これまでお話ししてきた私の35年の日米ゴルフ界での経験に基づく提言をまとめ、総集編といたします。 私は、ゴルフ界再興は「ゴルフにはまる人を増やす」ことにかかっていると考えています。 ゴルフの魅力は奥が深く、ある意味中毒性があるスポーツでもあります。 ゴルフ場も様々ですし、同じコースでも毎回違うところにボールが飛びます。「進歩と後退」を繰り返し、常に過去の蓄積と新たな挑戦を楽しむのがゴルフです。そのため上達に手間はかかりますが、それをクリアすればゴルファーはどんどんゴルフにのめり込み、一度はまったゴルファーは、他のことにかける時間やお金を削ってでもゴルフを楽しもうとします。 もし、日本のゴルファーが米国並みに年間平均20ラウンドするようになれば、日本のゴルフ業界も大きく変わるはずです。 では、どうすればそのようなゴルファーが増えるのか? キーワードは「リーズナブルな価格で楽しく」です。業界全体で、ゴルフを楽しく始め、楽しく続けられる環境を、ゴルファーが納得する価格で提供することが必要なのです。 最初に、ゴルフ場運営の立場から考えてみましょう。まず、値引き、つまり価格のコントロールだけの営業から脱却しなければなりません。コロナ禍で入場者が増えている今こそ、いったん足を止めて、現状分析と経営ビジョンの設計をしっかりと行うことです。 現状分析は市場・環境動向、マネジメント、会員戦略、オペレーション、マーケティング、サービス、施設、コース管理等多岐に渡りますが、これらを丁寧に積み上げ、ゴルフ場の潜在能力や顧客ニーズだけではなく、様々な課題も浮き彫りにしていきます。この分析の目的は「ポテンシャルの明確化とそれに対する評価」「顧客に訴求できるバリュー(強み、売り)の抽出」です。分析結果を基に次のように経営コンセプトを決めていきます。 1)コアバリュー 2)サービス方針 3)市場内ポジショニング 4)5年から10年後のあるべき姿 5)事業の方向性 事業の方向性は、提供サービスの適正グレード・価格帯、市場、ターゲット、事業領域、会員制度などです。そして、現状を将来的な理想の姿に近づけるシナリオを俯瞰的に設計し、改善すべき業務課題を明らかにします。さらに、この課題を解決するための具体的な施策を年度計画だけでなく、中長期計画に落とし込み、PDCAをまわして実行していきます。 特に3)の「ポジショニング」で悩むのは、自ゴルフ場の会員制のあり方でしょう。会員の入れ替わりが毎年5%ほどあり、それに伴う名義変更料と年会費収入で施設維持費(固定資産税等の固定費とコース管理費)が賄えるゴルフ場は、会員中心の運営が可能です。 しかし、このようなゴルフ場は日本全体の1割程度で、あとの9割はオープンでベーシックなゴルフ場を目指すべきです。これは、会員を無視してビジターを低価格で呼び込むということではありません。 会員は「生涯顧客価値」でみれば最優良顧客です。資産価値やステイタスとは別次元のコミュニティとして、ゴルフ場毎の特徴を活かした会員組織の再構築の方法を考えましょう。 その上で、お客様が支払う値段以上の価値を提供するのです。そうすれば、ビジターも千円から2千円の違いであれば喜んで来場してくれます。プレーして楽しいコースを作り、競技性を持たせたイベントを実施することで「メンバーになりたい」と思う層を育てる努力をします。 <h2>平均稼働率は約46%</h2> ここで設定した経営コンセプトは、全ての事業活動における判断基準となります。例えば、会員中心の運営というポジショニングを設定したゴルフ場は、ブランドイメージを毀損するような「閑散日にビジターだけのコンペを格安で販売する」といった施策は絶対にやってはいけません。すべてにおいて、経営コンセプトに合っているかどうかを考えて進めていきます。 ただし、コンセプトやビジョンを守ると同時に、収支状況の改善に取り組まなくてはビジネスとして成立しません。収入増のためには、まず、会員も含めたリピーターを増やし、入場者を安定的に増やすこと。 理論上、ゴルフ場のキャパシティは、夏場を中心とした6カ月が一日最大240名、残りの6カ月は最大200名とすると18ホールあたり約8万人です。これを分母として、2020年の日本の1ゴルフ場あたりの平均利用者数3万6709名(一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会発表)で計算すると平均稼働率は約46%です。つまり、稼働率はまだまだ余力があるゴルフ場が多いのです。 リピーター増加のためには顧客満足度向上が必要です。そのために優先順位が高いのは、コースコンディションとプレー進行の2点です。 グリーン上、グリーン周り、そしてティーイングエリアの整備には十分投資し、マーシャルの活用とコースセッティングでコース内の渋滞が起こらないようにしていきます。 支配人は、お客様の目線に立って定期的にコースをまわり、日々変化する芝や進行の状況を確認する。また、コース管理のスタッフとのコミュニケーションを図り、情報収集と意思の共有をしていきます。コースセッティングは「快適にセルフプレーができるか」が判断基準になります。 ゴルフ場の立地やレイアウトなども勘案して、アスリートゴルファー、女性ゴルファー、シニアゴルファーなど、適切なターゲット層を選定できれば、各層のゴルファーが何をすれば満足するかも深堀りできます。 こちらにも優先順位をつけ、順番に実行していきます。顧客満足度を向上させることができれば、ゴルフ場でのイベントをきっかけとしたコミュニティ形成の促進や、コンペ客など既存のコミュニティのサポートの充実でリピーターを増やせるでしょう。 一方、コスト面では「ポジショニング」と「顧客目線」で削減できるところを選び、閑散期の人員で繁忙期も運営できるコスト構造にすることが今後のゴルフビジネスの課題です。 多くのゴルフ場のターゲット層となる平均スコア90~110のプライベートゴルファーが、自社が提供するサービスを必要としているかどうかを考えてください。 そして、基本コンセプトとの整合性を確認しながら、ゴルフ場の強みが損なわれないように、機械化とセルフ化(省サービス化)を進めます。自動チェックイン・精算機などはほとんどのゴルフ場で必須となりますが、玄関のバッグの積み下ろしなどはゴルフ場によって変わってくるでしょう。 コースコンディション向上に重要なコース管理費用も、管理面積を減らしたり無駄な植栽を撤去して、お客様のプレーに影響を与えない部分で作業を減らしていきます。また、資材・機械の仕入れ先や仕入れ法を見直せば現状よりも2~3割は削減可能なはずです。 レストランやショップについても、基本コンセプトに基づき外注も視野に入れながら、どのような機能であるべきかを考えて、コストコントロールしていきます。どちらもゴルフ場運営のコアビジネスとはいえないかもしれませんが、顧客満足度を高め、リピーターとなる要素のひとつであることを認識して工夫します。 レストランのコストを極限まで下げようとする大手運営会社とは逆に、メニューにこだわるのもひとつのやり方です。当然、原価率に留意することは必要ですが、ゴルフ場での食事を楽しみにするお客様が案外多いので十分な差別化になります。 <h2>ゴルフ場と練習場の連携</h2> 経営者であれば、誰もが頭を悩ます人件費の削減は、機械化や省サービス化を進める中で業務部門を統合し、従業員のマルチタスク化と人員の再配置、自然減に対する補充人員のコントロールで実現できます。マルチタスクの導入は、様々な業務を経験することで、広い視野を持てる将来の経営人材を育てる上でも有効です。 こうやってゴルフ場が「リーズナブルな価格で楽しく」プレーできる環境を整えても、それだけでは新たなゴルファーを生み出すことはできません。 ここで練習場、特にスクールの役割が重要になります。スクールでは「ボールを打つこと」ではなく、「ゴルフを楽しむこと」を教えましょう。 レッスンをするプロは、どうすれば初心者がゴルフの楽しさを知り、それを深めることができるのかを考えるのです。 おすすめしたいのは、ショートゲームから始めるレッスンカリキュラムです。ゴルフ場と連携してコースレッスンを適時取り入れれば、上達が早まり、自然の中でプレーすることで「ゴルフは楽しい」と思ってもらえるはず。そうしてゴルフにはまっていくのです。 さらに、練習場でコンペを主催するなどコミュニティを作るサポートをすれば、そこを拠点としてゴルフ場へ送客することもでき、送迎バスをゴルフ場と共同運行できればベターです。 ゴルフ場と練習場は真剣に連携の方法を考えなくてはなりません。そうすることで、初心者に限らずすべてのレベルのゴルファーのプレー頻度を上げることができるからです。 また、ギアメーカーの皆さんは、品揃えや販売方法にもっと工夫ができるはずです。 例えば、打ちにくい3番ウッドに代えて使える4番ウッドを用意するとか、アイアンをどの番手でも単品で購入できるようにするなどです。ゴルファーの誰もが「良いクラブを安く買いたい」と思っているため、メーカーやショップには価格を抑える企業努力を続けてもらいたいものです。 そして、フィッティングをもっと活用していくべきです。 ゴルフアパレルも、もっと価格を下げられるのではないでしょうか。最近、しまむらやワークマンでゴルフウエアが発売され、すぐに完売したと聞きます。 また、ユニクロは「ゴルフウエア」と銘打っての販売はしていませんが、アダム・スコット選手をブランドアンバサダーに起用したり、エアリズムのCMで綾瀬はるかさんや内田篤人さんがゴルフを楽しむなど、「ゴルフでも使える」というアピールをしています。 安くて価値のある商品の提供はゴルフのすそ野を広げていくので、ゴルフ業界全体としては歓迎すべきことです。 安価な選択肢が増えれば、ファッション性の高い高価格帯の商品を除くゴルフアパレルは、一段と厳しくなるでしょう。同じメーカーのポロシャツでもテニス用とゴルフ用では数千円の価格差があります。せめて他のスポーツのウエアと同等の価格帯で販売しなければ消費者は離れてしまいます。 <h2>変わるべき業界団体</h2> 業界全体を俯瞰してみるべき立場の業界団体は、今こそ、若い人に運営を任せて、従来にないやり方を実行してほしいと思います。 例えば、東京オリンピックの会場がエクスクルーシブな会員制ゴルフ場ではなく、誰でもプレーできるゴルフ場で開催されていたらどうなっていたでしょうか。 また、ゴルフ場を通じて一般のゴルファーから徴収するゴルフ振興金を、一部の競技ゴルファーのためではなく、ゴルフの楽しさを広めるための活動に使っていれば、今とは状況が違っていたかもしれません。 アメリカのUSGAは長年、ゴルフを楽しくするための活動をしています。わかりやすい例は、1990年から導入した「スロープレート」とR&amp;Aと連携して行った2019年の「ルール改正」です。 「コースレート」はスクラッチゴルファーにとっての難易度を表す尺度ですが、一般のアマチュアゴルファーにとってコースの難易度は、必ずしもスクラッチゴルファーと同じではありません。 こうした実態を勘案したのが「スロープレート」で、これによりコース間のハンディ差がより具体的になりました。ほとんどのアメリカのゴルフ場のスコアカードには「コースレート」と「スロープレート」が併記され、ホームコース以外でプレーした際のスコア提出も、ゴルフ場にある端末に入力するだけと非常に簡単です。 2019年の「ルール改正」は、プレー時間の短縮やゴルフの普及を目的とし、大幅に変更されました。 ピンフラッグを抜かない、準備ができた人から打つといったプレーファストをサポートする改正の他に、バンカー内でアンプレアブルを宣言すればバンカー外から2打罰で打てるなど、技術的に未熟な初心者がゴルフをストレスなく楽しめるルールも作られました。 日本でもスロープレートと新ルールは導入されています。しかし、「ゴルフを楽しくする」という観点でのPRは足りないように思います。ゴルフ場数が世界3位の日本なのですから、業界団体には、このような世界的な流れに呼応した俯瞰的で独自な取り組みの実行を期待します。 私が、最後に申し上げたいのは、ゴルフ界の持続的な発展を実現するには、危機感を持たなければいけないということです。 新型コロナ禍が広がってから、ゴルフ界の2020年問題はなかったかのような活況を呈しています。しかし、活況の大きな要因は、屋外型のスポーツというゴルフの特性と、競合するレジャー活動がしにくい状況だったからです。 活況の今こそ、それぞれの立場で何をすべきかを考え、実行する必要があることを肝に銘じるべきでしょう。 今まで連載を読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。また、このような機会を与えてくださったGEWの片山編集長にも感謝申し上げます。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年01月29日
    <strong>ゴルフ業界ももっとダイバーシティ</strong> 「ダイバーシティ」という言葉を聞かれたことがあると思います。日本語では「多様性」と訳されます。ビジネスでは「インクルージョン」(包括・包含)と組み合わせて、性別や年齢、国籍などさまざまな属性を持つ人々を等しく認め、互いの違いを受け入れ、活かし合いながら、それぞれに実力を発揮できる職場のあり方を指します。 ゴルフ界に求められているのもこの「ダイバーシティ」です。 ゴルフは老若男女が腕前の違いを超えて一緒に楽しめるスポーツなので、多様なゴルファーが生まれるのは自然です。中でも女性ゴルファーを増やすことはゴルフ業界の長年の課題。日本ゴルフ場支配人会連合会によると、2019年のゴルフ場来場者の女性比率は約12%でした。コロナ禍で女性ゴルファーが増加したという統計もありますので、現在はもう少し多いでしょう。 一方、2021年のアメリカのゴルフ場来場者の25%が女性でした。(NGF調べ)日米ではゴルフ場の立地が違うものの、日本のゴルフ界もアメリカ並みの数字を目指すべきでしょう。 女性ゴルファーが増えればゴルフ界全体が活性化します。女性はファッションに敏感な方が多いため、プレー回数が増えればアパレル類の購入も増えていきます。「習いごと」に慣れている女性はスクールや練習場にも通うと思います。 また、女性の増加によって男性ゴルファーも増えるでしょう。レジャー選択の決定権は女性が握っていることが多いため、パートナーの女性がゴルフをすれば当然カップルでのプレーが増えます。ゴルフ場や練習場に女性が増えると華やかになり活気が生まれ、男性も楽しい気持ちになるはずです。 そこで、「多様性」の第一としてゴルフ場に女性を増やすための具体策を考えてみましょう。 最初に思い浮かぶのは女性用施設の充実です。女性用ロッカーを入れ替えたり、パウダールームを新設したりと設備投資を行っているゴルフ場も多いでしょうが、資金が潤沢なゴルフ場ばかりではないので、優先順位をつける必要があります。まずは、コース内トイレの見直しです。 清潔なことは当然ですが、女性が安心してゴルフ場での一日を楽しめるよう、トイレはハーフで2カ所は確保したいところです。トイレが気になるので飲み物を控える女性もおられるようですが、これは熱中症予防の観点でも危険です。また、古いゴルフ場では男女が同じトイレを使う場合もありますが、これはすぐに改善するべきでしょう。トイレ擬音装置、いわゆる「音消し」はついてますか?女性用の公衆トイレのほとんどには「音消し」が設置されています。女性用として独立している場所でもそうなのですから、男女のトイレが並んでいることも多いコース内のトイレには必須といえます。 <h2>スルーは女性にも人気</h2> レディースティの見直しも進めるべきで、短めのセッティングにするのは基本です。多くの女性はミドルホールでもセカンドにウッドを使います。スコア100前後の女性でも、2打目までナイスショットなのにパーオンできないと「楽しくなくなる」と言います。ゴルフは「楽しい」が原則です。ゴルフ場運営大手のPGMでは、レディースティよりもさらにピンに近いピンクティを設置して好評なようです。女性がラウンドしやすい距離設定は満足度を高め、リピーター化の一因となります。 レディースティのセッティングに際しては、支配人の皆さんもそこからプレーしてみることをおすすめします。思ったより傾斜があったり、ピンまでのライン上に木の枝がかかっていることなどは実際に立たないとわかりません。 「スループレー」も女性客に喜ばれます。「女性は休憩をとってゆっくりプレーしたいはず」という固定観念をお持ちの方には意外かもしれませんが、実例があります。 私が運営をお手伝いしている「OGC岐阜中央ゴルフパーク」(岐阜県)の女性ゴルファー比率は、スループレー導入後に30%を超えました。このゴルフ場は最寄りのICから約4キロ、岐阜駅からも高速道を使わずに30分とアクセスが良く、比較的短めのコース。女性ゴルファーをひきつけるポテンシャルは十分なので、もう一押しが必要だと考えました。 そこで前金制のスループレーを導入したら、特に平日に来場される女性に喜ばれました。何人かの方にお話を伺うと、「帰宅後、家事をしなければいけないから早く帰れるのはありがたい」ということでした。スループレーは時間を有効に使いたいゴルファーに人気ですが、その中に女性が含まれることも忘れてはいけません。 ここで、スループレーについてお話しましょう。世界のゴルフ場でハーフ間の休憩があるのは日本だけです。コロナ禍の当初、スループレーへの移行が進みましたが、今は元に戻したゴルフ場が多いようです。その理由は、昼食の喫食率でしょう。食事なしでは客単価が下がるという発想です。 しかし、考えてみてください。例えば食事付きで8300円の場合、おそらく食事代は1300円程度なのでプレーによる収入は7000円となります。食事別のスループレーに変更した場合、このタイプのプレースタイルが少なくなり、需給バランスが崩れているため7500円での販売は可能だと思われます。稼働率がマックスに近い大手ゴルフ場運営会社では、調理を簡素化して極限までコストを下げ、飲食部門でも利益を出そうとしていますが、単独運営のゴルフ場はどうでしょう。まだキャパシティに余裕があれば、大資本と同じ土俵で価格競争をするのではなく、多様なプレースタイルの提供で来場者増を図るべきです。 スループレー導入による喫食率の低下を、単純にレストラン収益の減少と捉えるのではなく、レストラン部門のコストコントロールを踏まえた上で、ゴルフ場トータルでの利益増を目指す施策として検討する価値はあるはずです。レストランに関しては、きちんと調理したおいしい食事を提供することで、低価格だけを追求する食事付サービスと本質的な差別化を図れ、大半のお客様はその価値を理解してくれると思います。 <h2>コースに合わせた顧客設定</h2> 「多様なお客様」という意味では、ジュニアゴルファーも大事ですが、私は昨今の競技一辺倒のジュニア育成には賛成できません。 もちろんゴルフ界を盛り上げるためには、宮里藍プロや松山英樹プロなど世界で活躍するヒーローが欠かせませんが、すべてのジュニアがプロゴルファーを目指す必要はありません。プロになる夢がついえた時にゴルフをやめてしまう人もいるでしょう。ゴルフ場がすべきなのは、長くゴルフを続けてくれるジュニアを増やすことです。 例えば、ファミリーを巻き込んだジュニア育成です。私がリビエラCCの支配人の頃、メンバーのラウンド中にその方たちの子女や奥様を対象としたレッスン会を開きました。レッスンを終えた家族はレストランで待ち、メンバーが合流。そうやってゴルフを覚えたジュニアはまたゴルフ場に戻ってきてくれます。楽しい思い出の中にゴルフが存在するからです。 私が日本のゴルフ界として注力すべきだと思うのは、就職して自分でゴルフ代を払えるようになった20代半ばから30代の若年層です。 リクルートは21歳〜22歳の若者がゴルフ場や練習場を訪れた際、料金が無料になる「ゴルマジ!」を展開していますが、ゴルフへの参入障壁を下げるためにはもう少し上の年齢層を対象に加え、双方にメリットのある特典設定にすればもっと成功するはずです。 30代までの層にゴルフを始めてもらうことは、女性層の拡大と同様、ゴルフ界最大の課題なので本気で取り組まなければいけません。 ゴルフというスポーツの特性を考えれば、アイデアと工夫で多様なお客様をゴルフ場に呼べますが、ひとつのゴルフ場で「ダイバーシティ」を完結する必要はありません。都心から近く、比較的狭いコースは女性を対象としたサービスを拡充する。一方、アスリートゴルファー対象のコースや、ビギナーを連れていきやすいゴルフ場など、コースの特性とポジショニングに合わせてターゲット層を決めることも必要です。どのようなお客様が集まるゴルフ場を作っていくかを考えることが大切なのです。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年12月25日
    <strong>ゴルフにはまらせるには、ゴルフ用品やアパレルもリーズナブルに</strong> この連載では、これまでゴルフ場やゴルフ練習場がやるべきことを中心に書いてきましたが、今回は少し視点を変えてゴルフ用品やアパレルについて、一業界人としての私見を述べたいと思います。 まずは、ゴルフクラブです。私が今まで出会ったほとんどのゴルファーは「安いクラブは持ちたくない」とおっしゃいます。これは、安いクラブは飛ばないという幻想が理由かもしれません。 しかし、賢い消費者でもある彼らには「良いクラブを安く買いたい」という心理があるのも事実です。ゴルファーが新しいクラブを買うと、それを試したくなり、練習やラウンドの回数が増えます。ゴルフクラブが売れることは、ゴルフ界全体の発展につながるキーファクターなのです。 クラブは定期的にリニューアルを繰り返しますが、その前後に古いモデルが値下げして売られるのを心待ちにしているファンも多くいます。モデルチェンジの際に、高くても最新のモデルを手に入れたい層と、リーズナブルな価格で良質なクラブを手に入れたい層の両方に訴求できる良いシステムです。 そして、メーカーはクラブのブランド価値を損なうことなく販売量が増やせます。日本は、アメリカに比べると、クラブが高い傾向にありますから、ゴルファーもこういった機会を利用するべきです。 このほかにも、クラブメーカーや販売店は色々と工夫されているでしょうが、さらに売り上げを伸ばすために提言したいのは「品揃え」と「販売方法」です。 品揃えでいえば、例えばフェアウェイウッドです。多くの初級者や中級者から3番ウッド(3W)を打つのが難しいという声を聞きます。確かに扱いにくいクラブです。その場合は3Wと5Wではなく、4Wと7Wのセッティングがよいのですが、4Wを商品ラインナップに加えているメーカーはとても少ないのです。 おそらく、4Wを作らないというメーカーの選択は、長年のマーケティングデータから得た判断でしょうが、シニア、エンジョイゴルファーを中心に「打ちやすさ」を求める方々が増えている今、見直す時期に来ているのではないでしょうか。 また、アイアンについても提案したいことがあります。現在アイアンは、セットとセットに入っていない番手を単品で購入するのが普通です。男性なら6Iから9IにPWがセットになっていて、5IとAW、SWが単品で購入できるのが定番です。昔は5Iもセットに入っていましたが、ユーティリティの普及もありセット内容も変化しました。 男性用のウエッジが充実したこともあり、昔はセットに含まれていたSWは、今は単品購入となりました。ニーズに合わせて変化してきたのです。 私の提案は、この「セット」という概念をなくして、すべてのアイアンを単品で購入できるようにしてはどうか、というものです。そうすれば、最初はハーフセットとして奇数の番手のアイアンを購入した初心者が、上達にあわせて偶数番手を買い足せます。初心者用の安価なハーフセットでゴルフを始めて、後に一式買い換える今のやり方よりも、実はリーズナブルだと思います。 価格の高いクラブには打ちやすさをウリにしているブランドも多く存在します。最初からそれらのクラブでゴルフを始めれば、初心者もナイスショットの確率が上がるので楽しくなり、ゴルフを続けてくれるはずです。最初に良い印象を持ったブランドは買い換える時も選択肢の一番手になります。フレキシブルなセッティングをリーズナブルな価格で提供することは、自社クラブのファンを育てることにもなるのです。 <h2>フィッティングの重要性</h2> 販売方法で大事なことは、クラブフィッティングのさらなる活用です。ネットショップではできないサービスだからです。今では大半のメーカーが自前のフィッティングスタジオをお持ちですが、一般ゴルファーには敷居が高いようです。メーカーの直営スタジオではそのメーカーの商品しか置いていないので、メーカーの好みが決まっている人以外はなかなか足が向きません。 一方、ゴルフ量販店のフィッティングでは様々なメーカーのクラブが試せるので好評です。先日、4月に新宿にオープンしたALPEN TOKYOに行ってみましたが、シミュレーターの設置打席や3方向からのカメラであらゆるデータ計測が可能な3カメ計測打席など、4種類8打席が若者や女性、親子連れでにぎわっていました。フィッティングをしてから購入する流れが一般化していくことを予感させる光景でした。 そうなると、ゴルフ場や練習場のショップ、一般の販売店でもフィッティング施設とフィッターの育成は必須となりますので、インドア練習場なら、レッスンプロにフィッターの資格をとってもらうことも考えるべきです。 私はアコーディア時代、埼玉県のゴルフ場にフィッティング施設を導入しましたが、その時こんなことがありました。同じくらいの技量の女性ふたりが一緒にフィッティングを受け、2社のクラブを打ち比べました。数値を見るとそれぞれの打ち方に合っているメーカーがはっきりと分かれました。この数値がエビデンスとなり、おふたりともそれぞれのメーカーのクラブを購入して帰られたそうです。納得して、最適なクラブを購入することは「リーズナブルな買い物」といえるでしょう。 日本では「リーズナブル」は「低価格」ととらえられますが、「合理的で納得できる」という英語本来の意味に立ち返れば、価格が高くても納得すれば、それが「リーズナブル」となるのです。 「リーズナブル」の概念は、ゴルフアパレルでももっと意識されるべきでしょう。ゴルフウエアは他のスポーツウエアに比べて価格が高すぎます。同じメーカーのポロシャツでも、テニスウエアとゴルフウエアでは、少なくとも3000〜4000円の違いはあるでしょうか。1万円を超すポロシャツを着ているテニスプレーヤーはそうそういませんが、ゴルファーではよく見かけます。 ゴルフのプレー代金はバブルの頃に比べて安くなっているのに、ゴルフウエアの価格はあまり下がっていないように感じます。この価格差についてメーカーの皆さんは合理的で納得できる説明ができるでしょうか。 「吸湿性や速乾性などの機能が充実している」「ゴルフスイングをしやすいようなカッティングや素材にしている」など、一見、きちんとした説明のようですが、テニスでも汗はかきますし、サーブ、ボレーなど激しい動きをしますから消費者は納得してくれないでしょう。 これは、ゴルフがお金持ちだけのスポーツであった頃のなごりではありませんか? もしかしたら、当時のゴルファーは高いウエアでなければ買ってくれなかったのかもしれません。しかし、時代は変わったのです。ゴルフは誰もが楽しめるスポーツへと変革をとげてきました。ゴルフアパレルの価格も変えていくべきでしょう。 女性、若い男性には「ファッション性」も重要です。特に女性は「人とかぶりたくない」「同じ服を着ていると思われたくない」という心理が働きますので、自分らしいおしゃれのできるウエアなら少々高くても購入する方が多いようです。 若い方は男女を問わずファッションも自分を表現する手段ととらえるところがあります。機能、価格、ファッション性など、それぞれのブランドのポジショニングをきちんと確立し、訴求することが大切です。 販売方法でも、ゴルフ用品やアパレルの販促にはもっとイベントを活用するべきだと思います。女性ゴルフファッション誌のReginaのコンペに参加する女性のほとんどはウエアを新調してこられるそうです。「晴れの日」をファッションでも楽しむのです。 雑誌でなくても、イベントの様子は参加者に事前に断っておけばSNSで拡散できます。他の人に見られると思うと、参加者は新しいウエアを購入します。そして、その様子を見て気に入った方が購入してくれる。そんな好循環を生みだすためにもイベントは重要です。 クラブについても、ゴルフ場での試打イベントは有効です。自社の顧客を集めたイベントの他にも他業種と連携して新たな顧客層へアプローチしていくべきでしょう。 ゴルフ場では、証券会社や自動車メーカーが自社の顧客を対象として、イベントを開催することがよくあります。彼らのイベントに便乗するのもいいですし、自社からイベントに興味を持ちそうな異業種の会社に共同でのイベント開催を持ちかけ、そこで自社製品のデモを行うなど、できることはたくさんあります。購入する理由(リーズン)を与えることも、商品の「リーズナブル」な提供の仕方なのかもしれません。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年12月11日
    「ゴルフにはまらせろ!」~ゴルフを続けてもらうには コロナ禍の下、再開組も含めて多くのゴルファーが生まれましたが、旅行やスポーツ観戦など他のレジャーを楽しめる環境になってくれば現在と同じような来場は期待できません。今回は、ゴルファーが増えた今こそ「ゴルフにはまる人」を増やすための仕掛けが必要だというお話をします。 50代以上のゴルファーに聞くと、ゴルフを始めたきっかけは「会社のコンペ」という方が多いようです。定期的に開催されるコンペに参加するうちに、ゴルフの楽しさを知り、はまっていくパターンが多かったのです。しかし、ゴルフが個人のレジャーとなった今、どのようにすればいいのでしょうか。 これにもゴルファー創造と同じくゴルフ場とゴルフ練習場の連携が必要です。地域に根差した練習場の利点を活かして、ゴルフ場へつながるコミュニティを作るのです。屋外練習場の商圏は大体半径10キロメートル以内です。来場者は近隣地域で生活している人たちであり、同じスーパーへ買い物に行く、子どもたちが同じ学校に通っているなど共通点も多いでしょう。彼らには親しくなりやすい土壌がある上に、ゴルフという共通言語があります。 そこでゴルフ場と練習場は協力して、彼らにとっての「サードプレイス」、自宅、オフィス以外の心地いい第3の居場所となるコミュニティを作ることを目指すのです。コミュニティ作りはゴルフ場だけ、練習場だけの努力では完成しません。練習場からゴルフ場へ、そしてまた練習場へという流れを生んでこそ、ゴルフにはまっていく人を増やしていけるのです。 練習場が起点となるコミュニティができれば、ゴルフ場へ行く際のさまざまな障壁も解消されます。例えば、費用も含めた交通手段の問題。ゴルファーの皆さんが少しでもゴルフの回数を増やしたいと思うと、交通費も節約しなければいけません。 練習場で作られたグループであれば、そこにメンバーが集まって車に同乗して行くことができます。誰が迎えに行く?どこで待ち合わせる?などめんどうな段取りも一切不要です。 練習場とゴルフ場が協力してマイクロバスなどを手配できれば一番ですが、ゴルファー同士の仲が良くなれば個々の車で行くことも増えるでしょう。 それでは、練習場側でコミュニティを作る方法を具体的に考えていきましょう。ここで活躍が期待されるのがレッスンプロです。レッスンプロは生徒さんのゴルフの上達をサポートするだけが仕事ではありません。「ゴルフの伝道師」として、ゴルフの楽しさをひとりでも多くの人に伝え、皆さんの生活を豊かにすることをビジョンとして持ってほしいのです。 そのためにはまず、スクール生のコミュニティを作ることから始めてはどうでしょうか。練習場にはあらゆるレベルのゴルファーが来場しますが、初心者をまとめられるのはレッスンプロしかいません。 コースレッスン会を企画すればスクールの定着率もあがるはず。少し上手くなればコンペも開催できるでしょう。また、スクール生以外の来場者のコミュニティ作りにも積極的に関わっていくことが大切です。普段レッスンしていない人と関係を築くことはプロの営業活動の一環になります。 誰でも参加できるコンペの他、100切り、90切りやシングルプレーヤーを目指すなど目的を持ったレッスン付きのコンペで参加者を募ります。ラウンドの回数が増えれば練習量も増え、プライベートレッスンやラウンドレッスンのニーズも高まります。 ゴルフ場、練習場、レッスンプロそれぞれに経済的メリットが生まれます。プロを単なる先生としての存在に留めておくのは非常にもったいない。もっと活躍してもらうべきです。 コンペを開催する際は、その中で自発的なグループができるような工夫もしましょう。年齢の近い人、同じ町内の人、ハンディキャップが近い人など共通項が見つかる人たちを同じ組にするのです。ゴルフ好き同士であれば、話が合った人とは「では、今度一緒にラウンドしましょう」という流れになるのが自然です。練習場が主催するコンペ以外にもラウンドが増えれば活性化していくはずです。 <h2>「コミュニティ」を作る</h2> 一方、ゴルフ場は練習場との連携を深めることと同時進行で、自コースのメンバーのコミュニティ作りを行います。ゴルフはよい競争相手にもなる仲間がいるとより楽しさが増し、切磋琢磨して上手くなるという効果もあります。その意味でも、月例やクラブ競技会を見直すことが大切です。 特にシニア世代を対象としたクラブイベントの開催をおすすめします。年齢を感じたゴルファーはゴルフが楽しくなくなってきます。シングルプレーヤーなどお上手な方はなおさらで、昔のように飛距離が出ず、自分より若い人とラウンドするともどかしい思いをするようです。当然、月例や競技会で優勝できるチャンスも減って、クラブイベントを敬遠する。目標を失うとゴルフが一気におもしろくなくなって、プレー自体からも遠ざかってしまいます。 そこで、年配の方でも本気で競い合える競技会を作るのです。おそらく、70歳以上が参加できる「グランドシニア競技」はどこのゴルフ場でも実施されていると思いますが、80歳以上のための「スーパーシニア競技」はどうでしょうか。関西や九州のゴルフ連盟では2015年から公式競技として「スーパーシニアカップ」を開催されていますが、これをゴルフ場でも行うのです。競う機会があればゴルフへのモチベーションも上がり、練習ラウンドも増えます。人生100年時代、シニアゴルファーに長くゴルフを楽しんでもらう企画はどんどんやっていくべきです。 もう少し若い世代のメンバーコミュニティ作りにはSNSを活用できます。フェイスブックやインスタグラムの公式アカウントを開設しているゴルフ場も多いでしょうが、お得な情報や直前割引を発信する営業ツールに限定した活用が多いと思います。確かに予約枠を埋めるには便利なツールですが、もう少し戦略的にアカウントを設計するべきでしょう。 私はアコーディア時代の2004年に、3日前に直前割引情報が登録者に配信されるという商品を開発しましたが、時代を先取りしすぎて失敗に終わりました。当時は、スマートフォンやSNSはまだなく、パソコンのメールアドレスがコミュニケーションの手段だったことが失敗の大きな原因でした。しかし、私はそれがなくても本当の意味では成功しなかったのではないかと思います。直前のキャンセル枠を安い値段で提供するだけでは、そのお客様はゴルフ場のリピーターにはなってくれないからです。他のゴルフ場がもっと安い価格を出せば、そちらに行ってしまいます。登録者限定のイベントを開催するなど最初からコミュニティを作る設計にしないと、価格競争のツールとなるだけです。 苦労して作ることのできたメンバーのコミュニティを継続するためには、アクティブにラウンドする新しいメンバーを増やす努力も必要です。そこで注目したいのは「ひとり予約」で来場するプレーヤーです。ひとり予約の利用者は少なくとも知らない人とラウンドできるので、比較的ゴルフが上手い人といえます。それに、大概の方はゴルフ仲間を求めているはずなので、メンバー候補としてこれほど最適な層はないのです。 ひとりで来られた人同士を結び付ける工夫を考え、ゴルフ場のファンになってもらい、会員になってもらう流れを作っていくことで顧客基盤が盤石になります。 ここまで自分たちでコミュニティを作る方法を話しましたが、既存のコミュニティをサポートすることも大切です。冒頭で、会社のコンペをきっかけにゴルフを始める人が減っているとお話ししましたが、現在も以前とは違った形で会社のコンペは存続しています。昔は上司の命令で絶対参加、お迎えも部下の仕事といった仕事の延長のようなコンペが主流でしたが、今はカジュアルに社内のゴルフ好きが集まってのコンペが多くなっています。もし、あなたのゴルフ場でそのようなコンペがあれば、幹事さんにご挨拶し、予約からパーティーのアレンジ、賞品の手配などをお手伝いすることで次回以降も戻ってくる確率が上がります。 ゴルフを続けてもらうカギは「コミュニティ」です。このことを忘れずにすべてのサービスを戦略的に作ることが大切です。ゴルフをリタイアしても続くようなコミュニティを作ることができれば、ゴルフ場として大きな社会貢献にもなるのではないでしょうか。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年11月20日
    いかにゴルフにはまる人を増やすか ~ はじめる人、再開する人 本連載の初回でもお話ししましたが、私はゴルフ業界の再興は「ゴルフにはまる人」をいかに増やすかにかかっていると思っています。どうすればゴルフを始めた人が継続し、そしてゴルフに夢中になってくれるかを考えなくてはいけないのです。 新型コロナの影響でゴルフ場やゴルフ練習場は他の業界に比べ活況を呈しています。一説によると、コロナ禍でゴルフを始めた、あるいは、復帰した人は約60万人ともいわれます。しかし、彼らはゴルファーとして定着していくのでしょうか。 皆さんご承知のようにゴルフは上達するのに手間がかかるスポーツです。一般的に初心者の目標とされるのは1ラウンドのスコアで100を切ることですが、GDOによると100切りを達成するのに要した期間で一番多いのは「1年から3年」です。 6年以上かかった人も約2割いるそうです。さらに、平均スコアが100未満のプレーヤーとなると全体の約3割しかいないという調査結果もあります。 ゴルフに限らず、趣味を継続するためには「達成感を味わうこと」は重要な要素です。例えば、筋トレにはまる人が多いのは効果的にトレーニングをすれば短期間にわかりやすく結果があらわれるからなのではないかと思います。ゴルフはそうではありません。いくら練習しても上手くならないのでやめてしまったという方が皆さんのまわりにもおられるのではないでしょうか。 これは私の経験則ですが、ゴルフを始めて3年以内に115を切ればその後も続ける確率が高くなります。 110台ほどでまわることができれば、同伴プレーヤーにさほど迷惑をかけることもありませんし、ナイスショットが出る確率も上がり、時にはパーが出るなどゴルフの楽しさが増してくるようになります。つまり、どうやってこのようなゴルファーを増やすかが課題なのです。 ここで重要な役割を果たすのは練習場です。 ゴルフコースが住居に近いアメリカとは違い、日本ではゴルフとの最初のタッチポイントは練習場が多いからです。 練習場は「ゴルファー創造の起点」であり、「ゴルフ場への橋渡し」とならなくてはいけません。この「橋渡し」は練習場、ゴルフ場双方にとってメリットのあることです。 練習場止まりのプレーヤーはいずれやめてしまいますが、コースデビューをすれば、練習、プレー、また練習という好循環が生まれるからです。ですから、練習場とゴルフ場が連携していくことは不可欠です。 練習場の中でもカギとなるのは初心者を育てるゴルフスクールです。今までのスクールは「ボールを打つこと」を教えることが多かったですが、これからは「ゴルフを楽しむ」ことを教えていかなくてはなりません。「トラック一杯のボールを打ってからでないとコースに出てはいけない」といった古い考え方は捨てるべきです。どうやれば生徒さんがゴルフの楽しさを知り、その楽しさが深まるのかということを考え、カリキュラムを組んでいくのです。 そこで、提案したいのが、ショートゲームからレッスンを始めることとスクール生にカリキュラムの早いうちにゴルフ場の実際のコースを経験してもらうことです。 ショートゲームからレッスンを始めるのは私がアメリカで経験し、ゴルフにはまるきっかけとなったことです。初心者でも取り組みやすいパター、クオーターショット、ハーフショットを最初に教えることで小さな達成感が積み重ねられます。 また、スコアメイクはショートゲームにかかっていますからそれらをまず学ぶことで良いスコアが出やすくなります。 ふたつめの提案には驚かれる方も多いかもしれません。初心者がいきなりコースをまわるのは無理だと思われるでしょう。しかし、私はレッスンの早いうちにゴルフ場を体験してもらいゴルフの楽しさを知ってもらうことがこのすばらしいスポーツを続けるモチベーションを保つためにも必要なことだと思っています。 これは、アコーディア時代に「Easy Golf」という初心者向けのイベントで実証済みです。 渋谷から送迎バスでゴルフ場まで行き、プロからグリップ、スイングの基礎を学んだ後いきなり数ホールのコース体験をするという内容でしたが、イベント終了後の参加者の反応は「楽しかった」というものばかりでした。 一番良いショットのボール位置からみんなが打つスクランブル方式やグリーンから残り100ヤードまで進めてプレーするステーション方式を採用すれば時間もそんなにかかりません。 そして、何より、参加者が驚かれたのはコースの美しさです。練習場での練習は単調ですから、美しい自然の中でプレーするという目標ができることは継続意欲を高めるはずです。 もちろん、初心者に限らず、カリキュラムにコースでのレッスンを取り入れることは効果的です。また、コースデビューに同伴してあげるようなイベントを開催するのも良いでしょう。 スクールに通ってもまわりに連れて行ってくれる人がおらず、コースデビューできない人が多いからです。コースデビューできなければ、ゴルフは続けてもらえません。 多角的な連携を このようにゴルフ場と練習場が連携することの重要性はほとんどの方が理解してくださるでしょう。問題はどのように連携を開始するかです。 私はアコーディアの社長時代に練習場事業を立ち上げるとともに提携練習場を増やしていきました。 運営ゴルフ場の近隣の練習場にスクールレッスンやコンペでのコース利用をお願いしました。提携練習場5回利用で系列ゴルフ場でのプレーが500円引きになる券を発行したり、練習場主催のコンペ予約でお客様に加えて練習場にもポイント還元したりするなど、練習場にもメリットを提供することで協力を得て、一番多い時で当時の日本の屋外練習場の4割近くの施設と提携関係を築きました。 大きなメリットを提供できたのは会社の規模のおかげもありましたが、提携促進の原動力になったのは各ゴルフ場の支配人の地道な活動でした。練習場に足しげく通い提携することの重要性を説明し提携先を増やしていったのです。 提携開始後も定期的な情報交換を続けてくれていました。こういった努力は単独運営のゴルフ場、ゴルフ練習場でも可能なはずです。持続可能な運営を続けるためには、ゴルフ場、ゴルフ練習場がお互いに歩み寄りながら最適解を見つけていくことが大切です。 地道な活動に加えて、ゴルフ場、練習場双方の立場から考えて、提携先として検討すべきなのは練習場を複数運営している企業との提携です。 例えば、中古クラブ販売として有名な「ゴルフパートナー」は練習場事業についてもさまざまな取り組みを行っています。練習場のショップ運営はもちろん、練習場自体の運営、コンサルティングなどを行っており、現在、同社が運営に関わっている練習場は100カ所以上となっています。 この店舗数は魅力的です。ゴルフ場からすれば、ひとつの契約で複数の練習場と提携関係をもてるのはとても効率的です。 そして、さらに魅力的なのは同社が新品の販売から中古品の買取・販売まで豊富なショップ運営のノウハウを持っているということです。スクールはショップ売り上げにもつながります。レンタルクラブを利用してゴルフを始めた方もいつかは自分のクラブを買います。 その時にインストラクターが的確にアドバイスすれば生徒さんはそこで購入するでしょう。また、コンペを開催すればボールやグローブの消耗品やウエアまで売れるかもしれません。その意味でも多角的な連携が可能となる「ゴルフパートナー」のような企業は頼れる存在なのです。 <h2>インドア施設との連携</h2> その他、連携してできることはお客様に練習場に集まってもらってバスでゴルフ場に送ることです。車離れが進む若年層、運転の苦手な女性や年配の方は利用するでしょう。 これは、屋外の打ちっ放し練習場でも効果的ですが、街中のインドアスクールはより恩恵をうけます。インドアスクールの数が増加し競争が激化する中、差別化するためにゴルフ場と戦略的に提携していくことが重要です。 インドアスクールで良いのは多くの施設で導入されている自分のスイングの映像を見られるシステムです。ロングゲームの練習には最適です。しかし、アプローチの練習はどうしても感覚がつかめず上手くいきません。 そこで、提携のゴルフ場でのコースレッスンをカリキュラムに取り入れたり、バスを仕立ててコンペを開催したりして、スクール生や利用客の上達の手助けをしてモチベーションを高めるのです。 このように、新しいゴルファーを創造することにおいては練習場の役割は大きいです。ゴルフ場運営者はそれを理解し連携を深めるべきです。それではゴルフを長く続けてもらうためにはどうしたらいいのか。次回はそれをお話ししたいと思います。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年11月06日
    来場者をリピーター化する具体的な方法 これまでの連載で、ゴルフ場のリピーターを増やすことの重要性に触れてきました。では、そのためにはどのようなゴルフ場を作れば良いのでしょうか? 今回はそれを中心に説明します。 唐突ですが、ゴルフ場支配人の皆さんに質問です。「あなたは月に何回ご自分のコースをラウンドされますか?」。支配人の業務は多岐にわたり、日々多忙であることは私も経験者なのでわかります。しかし、支配人は自コースをできるだけラウンドするべきです。 なぜなら、ゴルフ場にとって一番の商品である「コース」のウリや強みを知るためには、顧客目線に立ってラウンドすることが必要だからです。支配人が商品の真の価値を理解していなければ、お客様が何度も訪れたくなるゴルフ場を作ることはできません。 私はリビエラCCの支配人であった時、毎日9ホールのラウンドを欠かしませんでした。コースは季節によって違いますし、芝は生き物であり常に状態が変化します。毎日ラウンドしながら観察することで、お客様の喜ぶコースはどのようなものかわかってくるし、快適にラウンドしてもらうためのアイデアも生まれます。自コースでのラウンドは、支配人を目指す若い人たちにもお勧めします。 ラウンドの際に注目したいのはコースコンディションですが、限られた運営資金の中で最適なコースに仕上げるには「メリハリ」が必要です。そのゴルフ場のポジショニングにあわせてお金をかける所を選択するのです。 重点的に整えるのは、グリーン、ティーイングエリア、フェアウェイの順です。良好なグリーンコンディションの維持はどのゴルフ場も第一に心がけるべきで、そこから先は各ゴルフ場のターゲット層によって決めていきます。OB杭の位置を変えたり、法面や林帯を意図的に裸地化することで管理面積をコントロールできます。トラブルショット時にボールが探しやすくなるので、進行のスピードアップ効果もあります。 <h2>管理スタッフが要</h2> 良いコースを作るためには、コース管理スタッフとのコミュニケーションが不可欠です。彼らこそゴルフ場の要だと肝に銘じてください。そして、管理スタッフとコミュニケーションを図るためには、彼らを心から尊重していることをわかってもらえるよう心理的な距離を縮めることが大切です。 これは米国での話ですが、リビエラCCは伝統的に、コース管理スタッフはグリーンキーパーを除きクラブハウス内に入れませんでした。私はこの伝統を破り、クラブハウス内のバンケットルーム(宴会場)に彼らを招待、クリスマスランチを開催しました。 このランチをきっかけに私も彼らのバーベキューに呼んでもらえるようになり、どんどん親しくなりました。コースの状態について活発に意見交換したものです。 日本ではこれほど極端ではないにせよ、支配人の中にはコース管理棟に行ったことのない人もいるかもしれません。芝に関する知識が乏しく、自信がなければ尚更足が遠のきます。でも、まずは管理棟に足を運んでみてください。一緒に良いコースを作りたいとの態度を示せば、キーパーもいろいろ教えてくれるはずです。 次に考えたいのはコースセッティングです。国内2100コース超の約1割を占める名門ゴルフ場を除いては、セルフでも「快適にラウンドできる」セッティングが必要になります。これにより進行が早くなるので、ゴルファーの満足度を高めながら入場者数を増やすことができます。 まず、ラフは25㎜から30㎜くらい、ボールが見える程度の長さに保ちます。以前はトーナメント仕様みたいに長いラフを良しとする傾向がありましたが、最近は短めがプレーヤーに好まれます。自分のボールが見つけやすいとストレスなくラウンドできます。 ティーイングエリアではティーマークの方向に注意をします。ティーマークは基本的に、プレーヤーが打つべき方向に向けるのが良いのですが、距離が短いコースで戦略的な面白みを増すために、ティーをわざとずらしてセッティングする場合もあります。ロバート・トレントJR.設計のカラバサスCC(米カリフォルニア州)では、その技法を駆使していました。 <h2>奥から順に青・白・赤</h2> セルフラウンドをさらに快適にするためには、コース内のヤード表示が重要です。私はアコーディア・ゴルフの社長時代、以下の施策を推進しました。まず、ティーから230ヤードのIP地点にティショットの目標となる吹き流しを設置。ヤード表示杭は残り100ヤードが赤、150ヤードは白、200ヤードは青と色を変え、はっきりと数字を明記しました。 当初は共に景観を損ねるとの反対意見もありましたが、明らかにわかりやすいので、今ではすっかり受け入れられているようです。 スプリンクラーヘッドや排水溝に「グリーン手前」「センター」「奥」の残りヤード表示を設け、残り50ヤード表示のカービンマーカーをコースに埋め込みました。グリーンの旗の色も奥から「青」「白」「赤」と色を変えて、ひと目でわかるようにしました。特にアプローチエリアを強化することで格段に効果が期待できます。 また、可能であればカートナビの導入をおススメします。ホールの全体像が一目瞭然で、ショットが打ちやすく、打ち込み防止にも効果があります。前組を目安にプレーすることでスピードアップにつながり、運営側もカート位置が把握できるので、マーシャルの出動等のラウンドマネジメントをスムーズに行えます。 カートナビの出現や、2019年1月のルール改定で距離測定器の使用が認められたことで、ヤード表示の必要性が薄れたと感じる支配人がいるかもしれませんが、距離測定器の普及率はまだ低く、持っていても全ショットで使うわけではありません。 また、カートナビの距離表示はフェアウェイに乗り入れできなければ正確な距離は測れないし、フェアウェイ乗り入れであっても100ヤード以内のアプローチエリアは進入禁止のところが大半です。快適なセルフプレーにとってコース内のヤード表示は、今でも重要な要素だと断言できます。 完全キャディ付きで運営するゴルフ場でも、スプリンクラーヘッドへの表示はある方が良いと思います。常時キャディが真横にいるわけではないので、自分で確認できる正確な距離表示があれば安心してプレーできるでしょう。 <h2>「選択肢」を与える</h2> ほかにもあります。OBやハザードに対するペナルティへの柔軟な救済措置を、プレーヤーの意思で選択できるローカルルールの導入です。OB救済措置として、ロングホールは残り200ヤード地点に、ミドルホールは残り100ヤード地点にプレーイング4マークを標準設置。 これによりOB付近でのボール探索時間が短縮し、OB後に4打目をナイスショットすればパーやボギーの可能性もある。プレーヤーとゴルフ場の双方がWINWINとなるセッティングです。 私はハザードの救済措置として、プレーイング3エリアをハザード前方のフェアウェイ等に設置、トラブルの連鎖を回避できる工夫もしました。ショートホールの特設3打エリアを敢えてチップイン可能なセッティングにしたり。 これは、単純に難易度を下げて良いスコアを出せるようにしたのではなく、市場の大半を占めるスコア100前後のアベレージゴルファーに、優しい選択肢を与えることで、幅広い層が楽しめるコースづくりを目指すためです。 プレーエリア以外でも快適なプレーのために必要な施策があります。グリーン周りのカートの停止位置を、ホールの位置によってこまめに変えることは必須です。ホール間の移動でプレーヤーが迷わないよう、路面ペイントや案内看板により進行方向をはっきりと示すことも大事です。 今回はコースコンディションやセッティングについて、過去に私が実践したアイデアの一部を紹介しました。各ゴルフ場が、自社のポジショニングに基づく主要ターゲットを設定し、そのターゲットの利用シーンを顧客目線で想定してください。今回の例を参考にして頂ければ、自コースの「ウリを最大化できる」と確信します。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年10月23日
    前号では、ゴルフ場を運営するうえで各コースのポジショニングを明確にすることが重要だと書きましたが、それらを決めるにはいくつかの指標が存在します。 一例は図1のように縦軸にゴルフ場(商品・サービス)の特徴、横軸に対象顧客(ターゲットとなる市場)の特徴を示す方法です。縦軸の一番上は高級志向のゴルフ場、一番下は価格遡及志向のゴルフ場です。一方、横軸は左の端がエクスルーシブな会員制クラブを堅持するプライベートゴルフ場、右は誰でもプレーできるパブリックゴルフ場です。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/08/image1-1.jpg" alt="" width="698" height="551" class="aligncenter size-full wp-image-73813" /> 2020年に日本で営業中のゴルフ場は2151カ所です。(ゴルフ特信調べ)様々な形態のゴルフ場がバランスをとって共存する欧米と違い、日本では会員権販売を目的としたゴルフ場開発が主体であったため、ほとんどのゴルフ場が「高級プライべートゴルフ場」という位置づけで誕生しました。しかし、ビジネス環境は大きく変化しており、ドラスティックにポジショニングを見直さなくては生き残れないのが現状です。 多くのゴルフ場が環境変化への対応に着手していることは理解していますが、従来からの慣習やこだわりを捨てきれず、このマトリックスの中でのあるべき姿と現実が乖離してしまっているゴルフ場も多いように感じます。 もちろん預託金問題の解決が大前提となりますが、今後何十年にわたって経営を持続可能にするためには、一度立ち止まって「目指すべき場所」を改めて設定しなければなりません。 私は、日本の会員制ゴルフ場のほとんどがBのカテゴリーで、ホームコースとしてリピートしてくれる会員を核としたコミュニティを形成しながら、気軽に楽しめるゴルフ場を目指すべきだと思います。 欧米のゴルフ事情 どのようなゴルフ場を目指すのかという話の前に、欧米のゴルフ場について触れましょう。米国のゴルフ場は大きくプライベート、パブリック、リゾートの3つに分けられます。 私が以前、勤務していたリビエラCCやロサンゼルスGCなどのプライベートコースでは、メンバーとメンバーゲストしかプレーできず、運営はメンバーの入会金と年会費で賄われます。 リビエラCCの入会金は50万ドル(約5500万円)、年会費は3万ドル(約330万円)です。プライベートコースの中には入会金の中にエクイティが含まれていて、退会時にはその部分は戻ってくる場合もありますが、リビエラCCでは入会金の返金は一切ありません。会員権は一代限りです。 それでも、会員のウエイティングは常時80名前後います。これは他を圧倒するような最高のクラブ運営をしている証明ともいえるでしょう。 また、先日2026年のUS女子オープンをリビエラCCで開催することが発表されましたが、私がいた頃も積極的に公式競技の誘致をしてゴルフ場の価値を上げようとしていました。 日本にもハイエンド型の会員制ゴルフ場は存在しますが、米国のプライベートクラブとは大きな違いがあります。 日本では会員が最優先ですが米国ではメンバーゲストを大事にします。キャディはメンバーよりもゲストに気を使います。 さらに練習場の利用もメンバーは有料ですがゲストは無料です。そうすることでメンバーは体面が保たれ満足度も高まるのです。 国民性の違いもありますが、国際感覚を持つ方が増えている日本でもそういった方針に変えた方がいいかもしれません。 もちろん、メンバーをないがしろにするわけではありませんが、ゴルフ場を運営するのに十分な入会金と年会費を設定できないなら、メンバーがゲストをどんどん連れてくる状況を作り出すべきだと思います。 パブリックコースはベーシックなミュニシパル(市営)が大半ですが、ベスページやTPCハーディングパークなどのようにUSGAやPGAツアーが投資をして全米オープンやライダーズカップを開催できるようにしたコースも含まれます。 誰でも予約しプレーできるのが共通点です。市営コースでは予約なしに気軽に低料金でプレーできます。その分コースメンテナンスにはそれほどお金をかけません。 リゾートコースは日本にはあまりない運営形態ですが、ハワイやパームスプリングスなどのリゾート地に位置するゴルフ場で、その多くに会員はいません。 必ずしも宿泊施設併設ではありませんが、併設しているところではその利用者のみ予約ができる場合も多いです。ペブルビーチゴルフリンクスもこのカテゴリーに入ります。 トーリパインズGCは市営なため、サンディエゴ市民と併設のロッジ、ホテルの宿泊者に予約の権利があります。 英国にもリゾートコースがありますが、私が日東興業時代に運営に関わったターンベリーリゾートではユニークな運営をしていました。 地元住民は会員になれますが、プレーできるのは早朝と遅い時間帯のスタート枠のみ。プライムタイムはホテルゲストが高い料金でプレーします。地元に貢献しながらビジネスとして収益を伸ばす上手いやり方です。 また、過去に16回の全英オープン開催実績があるミュアフィールドは会員制ゴルフ場の元祖ともいわれています。 <h2>脱価格競争の方策</h2> 本題に戻りましょう。私は日本の大半のゴルフ場は、オープンとベーシックが交わる図1のBを目指した方がいいと考えます。 これは安売りをして入場者を増やせという意味ではありません。価格競争では、極限までコストを下げられる大手運営会社には勝てないからです。 しかし、私は大手でさえもこのまま価格競争で集客することに限界が来ると思っています。 その理由はゴルファーが成熟して、1000円~2000円の違いであれば、少しでもコースコンディションや進行状況の良いゴルフ場を選ぶと思うからです。 勝負はいかに低価格化するかではなく、リーズナブルな価格を提供できるかにかかっています。 「安い」ではなく「納得のいく価格」という意味です。某家具量販店のごとく利用者に「お値段以上」と思ってもらうのです。 そのためにはセルフ化や機械化といったコストダウンの企業努力を続けながら「メンバーになりたいと思ってもらえるようなコース」を作ること。 リピーターを増やすことを続けながら最終的にはメンバーになってもらうことを目指します。 本連載の第2回で、リピーターを増やすためには良いコースコンディションとスムーズな進行が大切と述べました。 つまりはプレーして面白いコースを作るということです。 それに加えて大切なのは「リピーターを育てる」という発想です。 そのために有効なのが各ゴルフ場のターゲットに合ったイベントの発信で、ゴルフの回数を増やすきっかけ作りです。 上手くなればより楽しくなるというゴルフの性質上、イベントは何らかの競技性を持たせたものが良いでしょう。 様々な競技イベントを各ゴルフ場のターゲットに合わせて柔軟にカスタムメイドしていきます。 シングルプレーヤーならスクラッチでの競技、初心者であればスクランブル競技が楽しめます。スクランブル競技は全員がティーショットを打った後、毎ショットで一番良いポジションのボールを選択してチームメンバーが同じところから打つ競技です。 日本人プレーヤーは18ホールの個人スコアを気にする傾向が強く、チームでひとつのスコアしか出ないこの競技方法にアレルギー反応を示すこともありますが、一度経験するとその楽しさに驚きます。 自分一人では考えられないスコアが出るし、初心者もたまに出るナイスショットが採用されたり、最初にパッティングをして仲間にラインを見せてあげてチームに貢献することができます。 <h2>工夫の連続が大事</h2> 企業コンペの幹事にスクランブル競技を勧めることも有効で、友好を深めるという企業コンペの趣旨にも合致します。 上司が嫌がるというのであれば春はストローク競技、秋はスクランブル競技と2回開催を提案してみてはどうでしょう。 新型コロナが落ち着けば企業コンペも増加するので、今のうちに手を打つべきです。 リピーターは最終的にはメンバーに移行するように仕向けます。 週末に安いメンバーフィーでラウンドする会員が多くなると、収益に悪影響と思われるかもしれませんが、長期的視点に立てば彼らが定年を迎えた時に平日需要が期待できます。 また、前述のターンベリーリゾートのように、メンバーは早めと遅めのスタートのみに限定する方法もあります。 年会費を下げれば実現できるかもしれません。いずれにせよ、そういった工夫を地道に続けることが大切です。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年10月10日
    冬本番となり、ゴルフ場運営にとって厳しい閑散期を迎えています。しかし、こういった時期こそビジネスを再考し、将来の準備をする好機ととらえ、現状分析と経営ビジョンの設計をきっちり行っていただきたいと思います。 私は前回「18ホールのゴルフ場の年間最大入場者数は8万人」と記述しました。併せて、ゴルフ場の平均稼働率が5割未満の現状を示し、これを高めることが重要だと書きましたが、本号ではその補足説明から始めましょう。 ゴルフ場は、在庫を繰り越して翌日以降に販売できない「装置産業」であり、需要がシーズンや天候等によって大きく変動するビジネスです。 ゴルフに適した晴天日は年間260日程度であり、残りの100日ほどは台風、降雪、雨天などでプレーできない日もあります。つまり「8万人」は、18ホールのゴルフ場の器の大きさを示した数字だと考えてください。 私が着目する入場者増加施策は、閑散日に値段を下げて、365日フル稼働を目指すものではありません。ゴルフ場ごとに日々の最大キャパを把握し、対処するという意味で「年間8万人」と申し上げたわけです。 実際には、まず需要の旺盛な繁忙期に、適正な価格で最大稼働を目指すことがビジネスの定石です。繁忙期の収益向上のためには、商品価値を下げずに販売数量を増やす、つまり良好なサービスが提供できる範囲でのキャパシティの拡大が必要なのです。 この際に重要なのは「顧客志向」での運営改革です。そして、低需要の日の経営を安定させるには、オフピークに関係なく当該ゴルフ場を指名してくれるファン層、リピーターの獲得による安定顧客基盤の構築が重要となります。 会員をはじめとする固定顧客は、価格感応型のフリービジターとは異なり、年間を通してまんべんなく来場してくれます。 その基盤造りの努力をすることなく閑散期に安値競争でフリービジターを集客する戦法は、当該ゴルフ場の商品価値を著しく低下させる恐れがありますので、細心の注意が必要です。 <h2>機械化とセルフ化</h2> 入場者が増えれば運営コストも増えると考えがちですが、閑散期の人員数で繁忙期も運営できるようなコスト構造にしていくことが、今後のゴルフビジネスの課題です。 ゴルフ場運営のコストを考える際の基本コンセプトは「ポジショニング」と「顧客目線」であり、これに基づいてコストの削減部分を決めていきます。 そのときに大事なことは、ターゲット顧客を想定することですが、ハイエンドや一部のゴルフ場を除くと、ほとんどのゴルフ場ではスコア90~110のプライベートゴルファーとなると考えられます。 この層が一番ゴルフにハマる確率が高く、自コースのリピーターになってくれます。そこで、彼らにとって何が必要で何が不要なサービスかを一つひとつ検討します。 ピーク時の人件費を低廉化するためにも機械化やセルフ化(省サービス化)の促進は必須ですが、これらの導入は基本コンセプトとの整合性を確認しながら行います。 私見ですが、自動チェックイン機と自動精算機はほとんどのゴルフ場で顧客との摩擦なく導入可能だと思いますので、早期検討をお勧めします。 コロナ禍で非接触のサービスが望まれているこの機会を逃さずに対応すべきです。これらの導入でフロント業務や現金、クレジットカード関連の業務も大幅に削減されます。 削減されたコストと時間を商品価値の向上につながる業務に転換できれば、顧客満足度もあがります。 機械化とは別に、セルフ化(省サービス化)で検討すべき点は、玄関での車からのキャディバッグの積み下ろし、カートへの積み込み、プレー終了後のクラブ清掃などがあります。 日本のゴルフ場ではあたりまえと思われていたサービスですが、新型コロナウイルス対策として中止したゴルフ場もあるはずです。ポストコロナでこれらのサービスを元に戻すのか、それとも廃止するのかの判断は、顧客の反応を観察してください。 もし、現状を違和感なく受け入れている顧客が多いなら、そのサービスは廃止すべきかもしれませんが、省サービス化によってそのゴルフ場の強みが損なわれると思われる場合は残すべきでしょう。 <h2>レストランの在り方</h2> レストラン部門について最初に考えることは、コストコントロールではなく、ゴルフ場の基本コンセプトに照らしてどのような供食機能であるべきかの確定です。 従来のゴルフ場レストランは、少しお高いデパートのお好み食堂的なものが定番でしたが、ゴルフ場のポジショニングに応じて多様な形に転換すべきだと思います。 それには専門知識や経験、優秀な人材が必要ですが、供食がコアビジネスではない場合は、顧客満足度の向上をサポートしてくれる外注先を検討すべきでしょう。 ショップ部門も同様です。顧客満足度の向上と効率運営を実現するには、専門知識をもつ優秀な人材が必要であり、外注も選択肢のひとつです。 アコーディア時代、私はスタッフに恵まれ規模の経済も活かして、10年間でショップ売り上げを10倍以上にしましたので、商売としては十分に成り立ちます。ただし単独運営のゴルフ場では、ショップ専門のスタッフを確保することは難しいはず。 であれば、クラブの買取機能が充実している「ゴルフパートナー」などのショップと連携すれば新作クラブへの買い替え促進も可能でしょう。会員やリピーター層の利便性も高まります。 次に、コース管理費用について考えてみましょう。私の経験上、単独運営のゴルフ場でも現状より2~3割程度削減できると思います。プレーに悪影響を与えずコスト削減できるところは少なくありません。まず、管理面積を小さくしたり無駄な植栽・樹木を伐採します。 ティーイングエリア周辺の垣根や樹木は本当に必要でしょうか? 日本のゴルフ場は欧米のゴルフ場に比べて、箱庭的な見栄えにこだわりすぎる傾向があります。 背の高くなった樹木で日照が遮られ、ティーイングエリアの芝の状態が悪化したり、落ち葉の除去に時間がとられるなら、伐採も選択肢のひとつです。これにより得られるメリットを丁寧に説明すれば、会員の理解も得られるでしょう。たとえばこんな感じです。 「芝には太陽と水と空気が必要です。樹木のせいでこれらが遮られて芝が発育せず、ティーイングエリアを人工芝にしなければなりません。木を伐れば解決しますが、どちらがよろしいですか?」 ゴルファーであれば自明です。 <h2>ゴルフ場職人の育成</h2> コース資材、機械の仕入れ先の見直しも必要です。大手の運営会社であれば、強大な購買力により業者との交渉も容易ですが、単独運営のゴルフ場ではそうはいきません。 しかし、比較検討することで今までの価格が適正かどうかわかるはずです。グリーンキーパーが癒着しているなどとは言いませんが、気づかぬうちに相場以上の金額を払っていることはありえます。現在の取引会社とうまく付き合うためにも、相見積もりをとることをおすすめします。 人員配置については、長期的視野に立って戦略的に再構築すべきです。つい先日まで、高齢化と人員不足に悩んでいた業界ですから急激な人員削減は不適切です。 特に単独運営のゴルフ場では、従業員を家族のように大事にされているところも多いはずです。 そこで人員削減は、機械化や省サービス化による運営改革を進める中で①業務部門の統合、②従業員のマルチタスク化と人員の再配置、③自然減に対する補充人員のコントロール、で実現します。 特に新規雇用者や若い既存従業員は総務・フロント・マスター室・スタート・マーシャル・レストラン・ショップ・コース管理などの業務を固定せず、マルチに働けるゴルフ場職人を育てるのです。これには広い視野を持つ幹部候補生を育てるという意味もあります。 最後に、昨今の省サービス化で私が気になっていることを指摘します。それは「預かったキャディバッグのセキュリティ」です。 アメリカのゴルフ場では、プレー後にすぐマイカーに積み込む人が多いのでバッグから目を離す時間はほとんどありませんが、日本ではプレー後の入浴が一般的なので、その間の安全性確保が必要です。 以前は担当スタッフが管理するのが普通でしたが、最近は無人のバッグたてにキャディバッグが並んでいる状況もあります。 クラブはゴルファーにとって大切な財産であり、自分の使用クラブにこだわりを持つ方も非常に多いため、キャディバッグを安全に預かるという姿勢はお客様の信頼を獲得する最大のチャンスであり、ファンづくりの第一歩です。 スタッフを配置できない場合は、クラブ抜き取り防止機能のある鍵付きバッグスタンドを設置し、お客様に自由に使ってもらうことで不安は解消されるはずです。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年09月25日
    コロナ禍に揺れた今年も、いよいよ師走を迎えます。さまざまな業界で厳しい経済状況が続いていますが、ゴルフ業界は比較的活況のようです。 自然の中でプレーするゴルフは「三密」が避けられるため、自粛やテレワークに疲れた既存ゴルファーだけではなく、若者や女性などの新規ゴルファーもゴルフ場に足を運んでいるようです。 これは世界的なトレンドで、米NGFの調査によると、2020年に米国のゴルフ場でプレーした人は2480万人、ラウンド数は前年比14%増で、300万人の新規ゴルファーが生まれたそうです。 日本ではゴルフのメイン層である団塊世代(1947~49年生れ)がすべて70歳を迎え、大量のゴルフリタイアが発生すると見られた「2020年問題」が懸念されましたが、2022年を迎えようとしている今、表面上はそれを乗り切ったかのように見えます。 しかし、今後も安泰なわけではありません。なぜなら、今の状況はコロナ禍という想定外の出来事と、医療技術やゴルフ用具の進化、カートのコース乗り入れなどにより、健康寿命とゴルフプレー寿命が予想よりも延びたことが原因だからです。 これから団塊世代が75歳の後期高齢者に突入すると、彼らの一人当たりのゴルフ回数は減っていきゴルフリタイアも加速します。 新規ゴルファーが参入しても、彼らが団塊世代と同じ頻度でプレーしなければ全体のラウンド数が減少することは明らかです。 したがって、ゴルフ業界は引き続き危機感を持ち、いかに生き残り発展していくかを考えなくてはなりません。これはとても難しい課題です。 そこで、私の考える「ゴルフ界再興」のプランをご提案することで、業界活性化のヒントになればと思い、この連載を引き受けました。 提案の前に、私の経歴を簡単に述べておきます。私はゴルフ場運営会社「アコーディア・ゴルフ(アコーディア)」の立ち上げから2012年までの10年間、同社の社長を務めました。 これは、私の欧米ゴルフ場での運営経験を知ったゴールドマン・サックスからの招聘によるものでした。 退社後は、以前勤務していた米国のリビエラCCに勤務し、日々の運営指導に加え、トーナメント運営やロス五輪ゴルフ競技会場の招致活動への協力を通じてUSGA、USPGA等と交流する中で、改めて米国ゴルフの本質に触れることができました。 その後、2019年に帰国し、現在は国内ゴルフ場のコンサルティングを行っています。 <h2>ゴルフ人口拡大への障壁</h2> 現在、アコーディアは私が退職してから2度目の売却の話が進んでおり、次のオーナーもファンドになりそうだとの報道があります。今後の同社の運営方針は業界の皆さまも気になるところでしょう。 一般的にファンドは、目先の利益だけを求める経営をすると思われがちですが、私の認識は違います。 彼らは大型投資によるハード面の改善や最適なビジネスモデルの導入により、3~5年で企業価値の最大化をはかる投資家です。 したがってゴルフ場を実際に運営する立場のミッションとしては、事業会社がオーナーになった場合と差異はありません。 どのような形であれ、ゴルフ場に「価値」が生まれなければ、企業価値の最大化を実現できないという単純な事実があるからです。 「ゴルフ場の価値」は、ゴルファーニーズを的確に捉えたサービスの最適化により、リーズナブルで価値のあるゴルフシーンを提供することに尽きると私は確信します。その手法は本連載で詳述していきますが、今後もアコーディアが多くのゴルファーから支持され、業界のためにもなるような方向に進むことを切に願ってやみません。 さて、本題に入りましょう。私はゴルフ界の再興は「いかにゴルフに『ハマる』人を増やすか」にかかっていると考えています。 ゴルフの魅力は奥が深く、ある意味、中毒性があるスポーツだとも思っています。ゴルフ場ごとにコースレイアウトは違い、同じコースでも同じところにボールが飛ぶことはありません。ゴルフは進歩と後退を繰り返し、常に過去の蓄積と新たな挑戦を楽しむレジャーなのです。 そのため、上手くなるのに手間がかかり、そのことが大衆化の障壁になっています。 これをクリアすればゴルファーはどんどんゴルフにのめり込み、一度ハマったゴルファーはプレー代、ギア、ウエアなど、人によって重点的に出費するところは違えど、他のことにかける時間やお金を削ってでもゴルフを楽しもうとします。 つまり、日本にゴルフにハマる人が増え、米国並みに年間平均20ラウンドしてくれるようになれば、我が国のゴルフ業界の景色は一変するはずです。 では、どのようにハマってもらうのか? 私は長年、ビジネスとしてだけではなく、一人のプレーヤーとしてゴルフに関わってきました。 その体験から断言できることは、まず、ゴルフの敷居を下げること、そして初心者に短期間で上手くなってもらう「仕組み」を作ることなのです。 <h2>米国流レッスンの衝撃</h2> 私がゴルフにハマったのは、小松製作所の米国駐在員時代でした。 渡米前にもゴルフの経験はありましたが、当時は「コースに出る前にはトラック3杯分のボールを打て」とか「ラウンド中はクラブを持って走れ」など、「ゴルフ道」ともいえる決まりの多い日本の流儀にあまり興味を持てませんでした。 ゴルフ場会員権も高額で、若い私が気軽にできるものではなかったのです。 しかし、アメリカではゴルフが日本よりも遥かに身近であり、ゴルフクラブの会員となって、真剣に取り組もうと考えました。そこで最初に受けたクラブプロのレッスンが衝撃的だったのです。 日本では初心者レッスンはフルショットから始めるのが主流ですが、彼はショートゲームから始めました。そして、最初のラウンドレッスンでは5番ウッドと7番アイアンだけを使い、2打目以降もティーアップしてハーフショットで打つようにと言われたのです。 半信半疑でしたが、言われたとおりにするとみるみる上達するではないですか。それでゴルフがどんどん楽しくなって、気づくと毎日のようにプレーするほどハマってしまったのです。 また、ゴルフの敷居を下げることについては、私がアコーディア時代に掲げた『it’s a new game』の標語があります。これは、今までとは違う新しいゴルフ場運営を目指す姿勢を込めた言葉です。 運営コストを見直し、リーズナブルな価格でのプレーを提供するだけではなく、カジュアルな雰囲気でゴルフ場を訪れやすい場所にしました。 ゴルファーのニーズに応える良いサービスの提供について、私がグループ全体に浸透させたのは次の「サービス4原則」です。 ①ゴルフ場の一番の「商品」であるコース管理に力を入れる ②スループレーや早朝プレーなどラウンドバリエーションを増やす ③量販店と同じ価格で買えるショップを作る ④スポーツの場にふさわしいレストランメニューを提供する 上記以外にもカートのフェアウェイ乗り入れなど「新しいニーズ」をつくることに取り組みましたが、これらは日本のゴルフ場のスタンダードになったものも多く、アコーディアの登場以降、日本のゴルフの敷居は確実に下がりました。 しかし、その影響で急激な環境の変化に対応する準備が整っていなかった単独運営のゴルフ場が、価格一辺倒の競争に巻き込まれ、苦境に立たされたケースもあったでしょう。今後私は本連載で、チェーンメリットがない単独運営のゴルフ場でも十分に再生可能なことを、具体例をあげて記述してまいります。 短期間で上達を促し、ゴルフにハメる施策については、アコーディア時代に練習場運営、ゴルフスクール開設、プロのレッスン提供などさまざまな取り組みをしましたが、完全にできたとはいえず、やれることは沢山残されています。 この連載では単なるゴルファー増加策ではなく、業界がビジネスとして利益をあげつつ発展する方法をご紹介します。 アコーディアはスケールメリットを活かして躍進した部分があり、そこに注目が集まりがちですが、実は単独運営のゴルフ場でも導入できるアイデアは豊富にあります。 また、業界全体で取り組むべき方法はいくらでもあります。私の35年以上にわたる日欧米のゴルフ業界での経験から導かれたサステナブルな提案をしていきますので、ご期待ください。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年08月28日

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