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    ハッシュタグ「この素晴らしい世界を未経験者にも」記事一覧

    2025年3月31日、有馬カンツリー倶楽部で4回目となる大阪YMCAアフタースクールの「ゴルフ体験イベント」を行った。今回は、いつものしろがねこども園(兵庫県川西市)だけではなく、大阪土佐堀YMCAアフタースクール(大阪市)のこどもたちも参加。総勢46名の小学生が遊びに来てくれた。 YMCAのアフタースクールはこどもたちにとって、学童クラブとして家庭に代わる生活の場となっている。夏休みや春休みの学校が休みの間は、朝から夕方まで長い時間をともに過ごす。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/IMG_1297_web_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88331" /> 大阪市のど真ん中にある土佐堀YMCAは、ウエルネスセンターとして体操・バスケット・フットサルなどの施設が備わっているが、木々のある自然の遊び場はない。そのような街中の環境にいるこどもたちにとって、自然の中で遊ぶことは非日常的なアクティビティなのだろう。言うまでもなく、参加した小学生たちは思う存分、芝生の上ではしゃぎまくっていた。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/IMG_1338_web_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88334" /> 今回もYMCAの大型バスに乗ってゴルフ場に11時前に到着。そこから12時半ごろまでドライビングレンジでスナッグゴルフをしたり、ドライバーでフルスイングをして遊んだが、芝生の上でお弁当を食べてからが遊びの本番! 斜面で芝滑りをしたり、ボール遊びをしたり、カートに乗ったりして、ゴルフ場は時ならぬこどもたちの歓声に包まれた。 <h2>産学連携の一環として</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/IMG_1284_web_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88332" /> 当日は、「Gちゃれ」でお世話になっている流通科学大学(神戸市)の内田遼介准教授と、内田ゼミの学生6名が見学及びアシスタント指導員として参加した。これは内田先生の依頼によるもので、 「スポーツ心理学を学ぶゼミ学生に社会貢献活動をさせたい」 との想いからだ。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/IMG_1310_web_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88335" /> そこで、大学のすぐ近くにあるYMCAアフタースクールのこどもたちに対して、ゴルフ体験教室の開催を計画。こどもたちとの交流を通じて学童保育に貢献させたいと考え、そのための第一歩として学生たちを連れてこられた。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/IMG_1273_web_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88333" /> 今後弊社はこの取り組みについて、産学連携の一環として積極的に協力していくつもりである。 ゴルフのファーストティプログラムがアメリカ全土に広がったように、学童保育とゴルフの親和性は高いと考えている。 その地域にとって、ゴルフは欠かせないスポーツとして、ゴルフ場は欠かせない場所として、そこに住む人たちに広く受け入れてもらえるよう、これからも努めていく。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年07月27日
    私が大学を卒業し、新卒で株式会社リクルートフロムエー(当時)に入社したのが1993年4月。最近メディアでもよく取りあげられている、バブル経済崩壊による「就職氷河期世代」の1年目に当たる。 前年までの大量採用が、一転して有効求人倍率が1倍を切る極端な就職難が始まる最初の年だ。そして1995年、阪神淡路大震災によってさらに関西の景気はどん底となる。その翌年の4月、私は家業である有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)に入社した。 将来、経営者として継ぐ可能性が高いという恵まれた環境にあったため、事前にゴルフ業界のことを何一つ学びもせずに飛び込んだ。また、当時社長だった叔父、専務兼支配人だった父からは、将来への危機感が全く感じられなかったので、大した不安を感じることもなく入社をしてしまった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/IMG_9047_resized_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88215" /> その後、ゴルフ場を取り巻く環境は急速に悪化していく。ゴルフ離れによる来場者の減少、不景気による会員の退会急増とともに、預託金の返還問題などの大波が怒涛のように押し寄せる。 近隣同業他社との競争のため、プレー価格の見直しや予約ルールの変更を急ぐなど、のんびり考える暇もなかった。会員数の減少に伴い、それまで会員の紹介が必要だった予約をいち早く、一般ビジターからの直接予約も受け付けるようにした。また、当時始まったばかりの「ゴルフ三昧」や「ゴルフダイジェスト・オンライン」などのポータルサイトとも早々に契約した。 しかし、それでも効果はなかなか上がらなかった。当倶楽部はオープン以来一度もプロの試合を開催したことがなく、近隣に「有馬」と名がつくゴルフ場が4コースあるが、その中でも最もマイナーなため、知名度がイマイチで、新規顧客獲得への努力が実を結ばなかったのだ。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/IMG_0496_resized_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88218" /> 関西のゴルフライターに、 「20年以上取材しているけど、こんなに近くに、こんなに良いゴルフ場があるとはまったく知らなかった」 と言われたのはさすがにショックだったが、それぐらい認知度の低いゴルフ場だった。 そんなことするな! そこで、名前を知ってもらうために、ニーズのあるところへパンフレットやチラシを置きに行こうと考えた。サラリーマン時代にドサ回り営業は嫌というほど経験している。ニーズがあるところとはゴルファーのいるところであり、当然ゴルフ練習場とゴルフショップである。 当時の営業課長と話し合い、私と2人で兵庫・大阪のゴルフ練習場や大きなゴルフショップをほぼ網羅するように、2か月に1度は回ろうと決意を固めた。ところが・・・。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/IMG_9058_resized_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88219" /> まず叔父と父から、 「ゴルフ場の人間がそんな恥ずかしいことをするな!」 と言われ、カチンときた私が、 「そんなら集客はどうやるんや?」 と問い返すと、 「コースが良かったらお客は来る」 私は言い返す気にもなれず、無視して練習場やショップに足を運んだ。が、話はそれで終わらない。訪れた先々の練習場でひと悶着。 「どこのゴルフ場や!いまさらどの面下げてきとるんや!今まで偉そうにしとったくせに。チラシなぞ置くな!全部持って帰れ!」 と、頭ごなしに怒鳴られた。 あまりにも激しい罵声を浴びて、私は先代の言葉に裏付けられる、ゴルフ場の「上から目線」、ゴルフ場がその他の業界関係者にしてきた対応が、こじれた関係を作ってきたことを理解した。 ゴルフ人口を増やすにはゴルフ関連業界同士の連携が欠かせない。特に「ゴルフを練習する場」のゴルフ練習場と「練習の成果を発揮する場」であるゴルフ場の連携は、絶対に欠かせない運命共同体のはずである。それにも関わらず、お互いがそっぽを向いているような関係ではゴルフ人口の増加は〝夢のまた夢〟。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/2411range_image1_resized_788x525.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-88222" /> 確かに、商圏範囲の大きさが異なる練習場とゴルフ場には意識差があり、単純な相互送客は容易ではない。〝時すでに遅し〟かもしれないが、今からでも本気で連携の方法を探るべきだと思っている。 幸い、当倶楽部の近郊にはゴルフ界の発展を期して奔走している練習場・多田ハイグリーンの野原和憲社長がいる。同氏はGEWでも時々執筆しており、様々な改革に挑戦中。ゴルフを広めるために共に話ができる練習場経営者の存在は心強い。 今年3月29日(土)、全日本ゴルフ練習場連盟のジュニアゴルファー検定制度に則った検定会&ラウンド体験会を、多田ハイグリーンと有馬カンツリー倶楽部の共催で実施。これを機に、練習場とゴルフ場が共同で行う様々な事業に挑戦したい。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/06/202504arima1.jpg" alt="" width="788" height="565" class="aligncenter size-full wp-image-88220" /> <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年06月22日
    2024年11月19日(火)、有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では休場日を利用して、初めてゴルフに無関係なイベント『愛犬マルシェ&ドッグラン』を開催した。 『愛犬マルシェ』は株式会社錦の主催で、阪神・播磨エリアを中心にこれまで20回以上開催されている。今回は有馬カンツリー倶楽部と共催という形で、ゴルフ場で初めての開催となった。 開催場所はゴルフ場内のドライビングレンジ約1万m2を使い、隣にある第2駐車場をメイン駐車場とすることにした。 最初に犬のイベントがしてみたいと声を掛けたのは弊社からで、知人を通じて2024年6月、初めての打ち合わせを行った。錦さんは、ドライビングレンジ1万m2の広大な芝生を見て、 「ここで開催できたらこれまでにない盛り上がりになる」 と、すぐに開催することを決定。ただし、平日の休場日にしかできないことと、できるだけ荒天を避けたいため11月の開催となった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/IMG_8371.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-87592" /> マルシェについては錦さんがすべて手配するということだったが、ドッグランについては弊社が行うことになった。初めてのことで右も左もわからないが、ドッグランの主催経験がある方からアドバイスを受けながら準備をはじめた。 ネットのサイズ、小型犬・中型犬・大型犬、接種証明のない犬用の貸し切りゲージなど、ドッグランブースは3ブースに分けることや、受付での注意事項などレクチャーを受けながら進めた。 一方のマルシェは39店舗、キッチンカー6台が来ることになった。目標の来客数は400名。錦さんは、 「平日なのでとても無理かなあ。半分でも御の字」 という予想。そして当日……。 11月中旬ということもあり、最高気温9.5度で昨季一番の冷え込みとなり、さらに強風も吹き荒れる曇り空。受付で座っていると震えが止まらないような状態だった。 <h2>ゴルフの企画は不人気</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/IMG_8347.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-87593" /> そんな中、オープンの10時前からぞくぞくと人と犬が集まりだした。 人が犬に引きずられるような大きな犬、赤ん坊のように乗せられたベビーカーから顔だけ出す犬、防寒のため温かい服を着せられた犬、いろいろな犬がどんどん集まってきた。薄着の犬はマルシェで買った暖かい服に着替えをして、マルシェも賑わいだした。 ドッグランにもどんどん集まりだした。普段走ることができないからなのか、ロープを外されると一目散にブースの周りを何周も走り出す犬を多く見掛けた。 沖縄おにぎりや焼き鳥、ハンバーグ、パンケーキなどのキッチンカーも大はやりで午後1時半にはすべて売り切れになった。 最終的に来場者は約300名。気温が低いこともあり、滞在時間は普段より短めだったそう。それでも平日にしては大賑わいということで、主催の錦さんは喜んでくれた。 ドッグランの利用は80匹。これも普段よりは多いとのこと。ゴルフ場でゴルフ以外のイベントは初体験だったが、ゴルフ場という広大な芝生スペースの活用法として、もっといろいろ考えても良いと思った。それほど普段とは全く違う風景が、とても楽しく感じられた。 好評につき、すでに次回の『愛犬マルシェ&ドッグラン』は2025年4月15日(火)に開催が決定。とても楽しみだが、このイベントを通じて新たな気づきも得られた。 <a href="https://www.instagram.com/aiken_marche/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">https://www.instagram.com/aiken_marche/</a> 実は、隣接する練習グリーンでパットゴルフ企画も同時に行ったが、利用者は0、皆無だった。 犬イベントにゴルフは必要ないということが分かった。犬を飼っている人にゴルファーは少ないのか、犬遊びとゴルフ遊びは同時にできないということなのか。次回は余計な企画はやらないでおこう。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年05月11日
    2024年に入ってから、大阪YMCAしろがねこども館の担当者と、ちょくちょく話をさせていただいている。先だっては、こどものゴルフ体験だけでなく、こども館がある兵庫県川西市が公立中学校部活の教員顧問制を廃して「社会移行」を進めていることなども含め、数時間に及ぶ議論をした。   有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)と大阪YMCAが関わりをもつようになったきっかけは、弊社が加盟している一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(以下NGK)が参画している、文部科学省の「土曜学習応援団」プログラムを通じたゴルフ体験教室の開催依頼だった。 春休みの3月27日に約40人が参加した「土曜学習応援団」ゴルフ体験教室を、有馬CCで開催したことを皮切りに、夏休みに入ったばかりの7月29日には大阪YMCA松尾台こども園にて、こちらも約40人の小学生が参加したスナッグゴルフによる出張ゴルフ体験教室を実施。さらに8月27日には、ファーストティ有馬教室サマーデイキャンプに、約15人の大阪YMCAの小学生が参加してくれた。 大阪YMCAしろがねこども館のアフタースクールでは、学童保育として、平日の放課後や夏休み、春休みなどに小学生を預かり、適切な教育、遊びを通じて安心して過ごせる環境を提供されている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/02/IMG_5591-2.jpg" alt="" width="1000" height="667" class="aligncenter size-full wp-image-86408" /> また、楽しみながら取り組める社会体験プログラムなども積極的に行い、子どもたちが自ら「したい」「学びたい」という気持ちを伸ばすように努められている。 春休みや夏休みには、早朝から夕方遅くまで子どもたちを預かられている。そのため、日々子どもたちの新たな学びを作ることは本当に大変な業務といえる。 <h2>日本とアメリカの違い</h2> そうした学童保育のご苦労に対し、弊社では微力ながら今後も協力していきたいと考えている。なぜなら、弊社が推進しているこどもたちのゴルフ体験教室である「ファーストティプログラム」の活動は、学童保育との親和性が高いと考えているからである。 「ファーストティプログラム」発祥のアメリカでは、学校教育や放課後教育に広く活用され、子どもたちを事件や事故から防ぐ放課後の安全な見守り活動の一旦を担っている。例えば、アメリカのバージニア州にあるファーストティ ハンプトンローズは、サウス ハンプトンローズYMCAの専門プログラムの一つとなっている。 バージニアビーチナショナルゴルフクラブの敷地内にファーストティの拠点があり、専用の9ホールコース、練習場、学習センターに加え、地域内にある複数のゴルフコースでプログラムを提供されている。 このように、アメリカではYMCAのプログラムの一つとして、子どもたちの健全な成長に「ファーストティプログラム」を通じてゴルフが活用され、日常生活に欠かせないものとなっている。 一方、日本の現状はどうだろう?周知のように、日本では学校教育にゴルフが活用されている事例はほんの一握りで、放課後教育についてはいまだ皆無といえるのではないだろうか。 ゴルフやゴルフ場の存在は、日本の子どもたちの日常生活にとってはまだまだ遠いものであり、ゴルフが持っている公益性を広く理解してもらうことなど全く考えられないのが現実である。 日々の放課後教育にゴルフ場を活用することは、まだまだ困難かもしれない。しかし、春休みや夏休みの教育プログラムでは、「ファーストティプログラム」を通じてゴルフが学童保育に一役買うことができるということは分かった。 こうした小さな積み重ねが、将来においてゴルフの公益性を広く世間に知ってもらう礎になるかもしれない。そう願って今後も活動を続けていく。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年02月09日
    有馬カンツリー倶楽部では毎年、兵庫県教育委員会が進めている中学2年生の職場体験学習「トライやる・ウィーク」に参画している。 「トライやる・ウィーク」は、1995年の阪神淡路大震災、1997年の神戸連続児童殺傷事件を機に、中学生に働く場を見せて学習させようという趣旨で、1998年度からスタートした。職場体験、福祉体験などを1週間行う活動だ。 県内の公立中学校に通う2年生を対象としているが、有馬CCでは2000年度より、隣接する三田市立ゆりのき台中学校の2年生を受け入れている。さらにここ数年は、各事業所に送る最大人数の10名を受け入れている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/2410arima2.jpg" alt="" width="906" height="546" class="aligncenter size-full wp-image-83964" /> 三田市内では73ヵ所の事業所で受け入れているが、弊社はその中でも抽選になることが多く、人気の事業所となっている。2024年度は、5月27日(月)から31日(金)にかけて実施した。今年はサッカー部、野球部、バレーボール部に所属する運動部系の元気な男子生徒10名がやってきた。 学校からは、事前に各自の行動目標を記した書面をいただいている。そこには人間関係や礼儀、接客、裏方の重要性を学びたいなど、それぞれしっかりした目標が書かれていた。そして、いざ活動開始。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/2410arima3.jpg" alt="" width="788" height="899" class="aligncenter size-full wp-image-83965" /> 行動目標に書かれているように、全員が真剣に職業体験に取り組んでいる印象を強く受けた。弊社では例年、半日だけではあるが、ゴルフ体験の時間を設けている。 体験活動後のお礼状には、仕事で得られた経験もさることながら、ゴルフ体験が楽しかったという感想が多く書かれていた。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/IMG_6262-2.jpg" alt="" width="1000" height="780" class="aligncenter size-full wp-image-83967" /> スポーツ大好き少年たちにとって未知のスポーツ体験はとくに楽しい。それが先輩から後輩へ受け継がれ、毎年定員いっぱいの人気の要因となっている。 将来の従業員確保も <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/IMG_6205-2.jpg" alt="" width="1000" height="1003" class="aligncenter size-full wp-image-83966" /> 「トライやる・ウィーク」は弊社にとっても、とても大きな価値ある取り組みだ。地元に住む少年たちにゴルフ場での職業体験やゴルフ体験を実施することで、将来ゴルフを始める最初のきっかけづくりや、アルバイトを含めた将来の就業場所として考える選択肢のひとつになるのではないかと考えている。実際に〝トライやる・ウィーク〟がきっかけとなり、アルバイトキャディーになった大学生もいる。 現在、地元での就業を考える上で、ゴルフ場が選択肢となる人の数がとても少なくなっているように感じる。日常生活とゴルフ場がかけ離れているため、行ったことも見たことも入ったこともない場所を、いきなり就業場所に選ぶことは、まずないと思えるからだ。 弊社は、大阪・神戸のベッドタウンとして人口が増えたニュータウンに隣接している。だからこそ、近隣住民との日常生活における距離感はとても遠いと感じている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/IMG_6253-2.jpg" alt="" width="1000" height="786" class="aligncenter size-full wp-image-83968" /> そもそも、従業員の多くが近隣地域の住民だ。近隣地域を大切に考えている姿勢を内外に分かりやすく伝え続けていくことは、事業継続において最も重要な事項といえる。 地域行政や自治会等の取り組みに対して積極的に参画して地域交流を深めることで、近隣住民との距離感を縮めていく。 そうすることで、ますます困難となっている雇用問題の解消にもつながるのではないかと考えている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/11/2410arima4.jpg" alt="" width="788" height="828" class="size-full wp-image-83969" /> トライやる2024-(予定表) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年11月24日
    いつもは子どもや学生に向けた「ゴルフチャレンジ」について書く機会が多いのだが、今号は、有馬カンツリー倶楽部が加盟している地元兵庫県三田市ゴルフ協会の新規プロジェクトについて紹介したい。 2024年7月より、三田市ゴルフ協会加盟のゴルフ場七か所をプレーしてめぐる『ゴ朱印めぐり』プロジェクトを始めた。「ゴルフ」と「御朱印」を掛けたわかりやすいネーミングである。 当コースのほか、有馬冨士カンツリークラブ、神戸三田ゴルフクラブ、サングレートゴルフ倶楽部、三田ゴルフクラブ、三田レークサイドゴルフクラブ、千刈カンツリー倶楽部の7か所のゴルフ場を七福神の神様になぞらえ、オリジナルの朱印シールを専用ゴ朱印帳に貼って収集していくスタンプラリーである。 近年、寺社の御朱印だけでなく、「御城印(お城)」「御船印(船舶)」「御湯印(温泉)」「御鉄印(鉄道)」「御翔印(空港)」など様々な御朱印があり、流行しているが、ゴルフ場やゴルフについては、まだ行われていないようだったので、全国に先駆けてゴルフ場専用の「ゴ朱印」と専用のオリジナル「ゴ朱印帳」を考案。三田市ゴルフ協会の新たなプロジェクトとして実施するもの。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/20240628_130451.jpg" alt="" width="1000" height="1012" class="aligncenter size-full wp-image-83234" /> このプロジェクトの実施で、三田市へのマイクロツーリズム及びインバウンドツーリズムの活性に一石を投じ、地元地域の振興に寄与していくことを目的としている。そのため「ゴ朱印帳」にはゴルフ場の情報だけでなく、近隣の観光スポットやグルメスポットも掲載している。 ゴ朱印帳は、初版1000部限定とし、販売価格は原価ギリギリの1100円(税込み)。 また各ゴルフ場でプレー時にゴ朱印帳を持参の方のみ、無料で「ゴ朱印」シールをお渡しする。すべてのゴルフ場をプレーした場合には、満願シールも配布する。 <h2>評価は「数値」だけ?</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/20240623_0922002.jpg" alt="" width="1000" height="666" class="aligncenter size-full wp-image-83235" /> 三田市ゴルフ協会の会長は元三田市長が担っているが、実際に協会の運営を担っているのは7か所のゴルフ場支配人である。事務局は現在有馬カンツリー倶楽部にある。そのため、本プロジェクトについてもゴルフ場及び発案した当クラブが中心となって進めている。 地域振興及び協会の取り組みの活性のために実施するプログラムではあるが、「ゴ朱印」には、もうひとつ目的があった。 それは、市内7か所のゴルフ場それぞれの個性を差別化して可視化することである。 ポータルサイトによるゴルフ予約が一般化している現在、ゴルフ場を決める3大要因はすべて「数値」である。 1つ目に「価格」、2つ目に「最寄りインターチェンジからの距離や時間」、3つ目は「口コミなどの評価ポイント」である。いずれも数値でのみ判断され、ゴルフ場が本当に伝えたいそれぞれの特徴がなかなか伝わらない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/VideoCapture_20240628-165331.jpg" alt="" width="1000" height="978" class="aligncenter size-full wp-image-83236" /> そこで、「ゴ朱印帳」を制作するにあたり、お互いのゴルフ場を比較しながら、他のゴルフ場にはない特徴を引き出し、それを掲載してゴルファーに知っていただく。そうすることで、同じ市内でも特徴が異なるゴルフ場を見つけて「次はここに行ってみよう!」と思ってもらえるかもしれない。そうしたものを作りたかった。 近隣ゴルフ場の特徴を理解し、自社のゴルフ場の特徴との差別化を明確にする。そうすることで、近隣ゴルフ場同士が「数値」のみで競争する原理から脱却し、近隣同士がお互いで送客し合う方向に舵を切る。このような工夫を重ねることで、地域全体に多くのゴルファーを引き寄せることができるのではないかと考えている。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年09月29日
    有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では、2016年から大学体育ゴルフ授業の「Gちゃれ」を毎年行っていることを、誌面上で何度もご紹介してきた。 この授業プログラムを開発し、そして推進しているのが一般社団法人 大学ゴルフ授業研究会(北徹朗代表・武蔵野美術大学教授)だ。多くの大学でゴルフが教材とされているものの、その大半は学内での打ちっ放しで完結するカリキュラムとなっており、ゴルフ場の楽しさを体験できない。そこで、受講学生が正課教育(大学体育)で学んだ知識や技術を、課外教育(ゴルフコース)に接続するコースデビュープログラムとして、「Gちゃれ」が位置付けられている。 当クラブでは、大学ゴルフ授業研究会の承認を得、連携している大学授業の状況により、ゴルフコースで実施する正課教育も「Gちゃれ」と拡大解釈している。 毎夏に「集中講義」として開催している甲南大学と追手門学院大学がその対象だ。「集中講義」とは、夏休み期間などの短期間に集中して授業が行われ、単位が付与される授業のことである。 大学体育では、スキー授業合宿などで集中講義が実施される例が多い。これと同様に甲南大学と追手門学院大学では、3日間のゴルフ合宿によって1単位が付与される正課授業が行われ、近隣の施設で宿泊しながら有馬CCでゴルフ授業を実施している。 ただし、3日間だけではカリキュラムの時間数が不足するので、大学内での座学やゴルフ部施設、学外にある近隣練習場でのゴルフ練習などで事前授業が行われている。 以前、当クラブで始めるにあたって、大学の担当教授に授業の目標を質問したことがあり、 「できることなら18ホールをプレーさせることを目標にしたい」 ということだった。 有馬CCでの授業は、両大学ともに、当クラブのゴルフコーチが講師となって授業を進めている。 講師として進めていく上で、弊社で定めていたミッションがある。 「初心者学生に対し、どのようにゴルフを教えれば、ゴルフ場でゴルフを楽しませることができるか、ゴルフを好きになれるか」 である。 <h2>試行錯誤をつづける</h2> ただし、大学の先生とゴルフ場側では、ミッションや目的に乖離がある。当クラブ以外にも「Gちゃれ」を受け入れているゴルフ場はあるが、特に近年は全国的に入場者が堅調なため、初心者の学生にコースを開放することが難しい。ゴルフ場が全面協力して、授業のペースを優先しながらプレー環境を提供することは困難という事情もあり、先生方は目標について、妥協せざるを得ないケースもあった。  そんな中、「Gちゃれ」をはじめて6年が過ぎ、弊社のミッションもある程度データが揃ってきたため、2023年の「Gちゃれ正課授業」より新たなミッションを加えることになった。 「いかにして集中授業の3日間で、18ホールをプレーラウンドできるまで成長させられるか」 ようやく、先生方の授業目標と合致するに至ったのである。 2023年8月に甲南大学14名、9月に追手門学院大学23名がそれぞれ受講、新たなミッションの完遂を目指して動き出した。 一般ゴルファーに交じったプレーラウンドのため、当然プレーペースは守らなければならない。最終組のスタート後に3ホール程度のプレーとは異なり、ハーフプレー2時間10分が目標と、通常と同じペースである。この間、初心者がいかに楽しくプレーできるかを念頭に、弊社コーチ陣は試行錯誤。まだまだクリアすべき課題はたくさんあるが、なんとか多くの組が18ホールを完走することができた。 技量に応じて柔軟にルールを設定したり、スクランブル競技形式などを用いてチームで進めたりなど様々な工夫を重ねながら、初心者が18ホールを、周囲に迷惑をかけることなく、しかもゴルフを楽しめることがもっとも大事。よりスムーズな方法が確立すれば、ゴルファー育成に役立つだけに、もっともっと様々な方法にトライしていきたいと思う。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年06月09日
    有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)には、2017年8月から始めた初心者ゴルフ体験の「ビギナーズ・プラン」がある。 当時は大学生の体育授業にゴルフ場を提供する「Gちゃれ」を始めた頃で、練習場である程度打てるようになってからゴルフ場デビューするのではなく、まずは実際にコースに出て、ゴルフの楽しさを知ってもらうことも大切ではないかとの思いで試験的に始めた。 プラン内容としては、最終スタートを終えた午後2時以降に90分の時間制でコースを利用できるようにした。9ホールのハーフプレーや、時間制でも2時間の設定にすると、プランのターゲットではないアスリートゴルファーが参加するかもしれず、それでは始める意味がないと考えて「90分」とした。 また初心者は、自分自身でゴルフ場予約などするわけがない。既ゴルファーがゴルフを始めたい(始めさせたい)と思っている家族や親族、友人を連れて来ると考えるのが当然だと思い、ゴルフをできる人が予約して初心者を連れてくる、そして責任を持ってゴルフ場の利用方法を教えるという「エチケットリーダー制」を取った。 2017年から始めたこのプラン。当初、当倶楽部会員に大々的に案内し、自社ホームページやSNSでも紹介したが、まったく予約が入らなかった。「後続組を気にすることなく、他のプレーヤーに迷惑をかけることなく、ゆっくりゴルフ場のコース体験を楽しめますよ!」といくら案内しても、まったく反応がなかったのである。 何故なんだろう?と数名の会員に直接聞いてみた。すると、みなさん異口同音に同じ回答だった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_725.jpg" alt="" width="1000" height="667" class="aligncenter size-full wp-image-81057" /> 「練習をまともにしたこともない人をゴルフ場に連れて行くこと自体考えられない。連れて行くだけでもゴルフ場に迷惑をかけてしまう」 これが、長年に渡って培われてきた、日本のゴルファーが一般的に等しく持っている考えなのかと思い知らされた。 いつからかはわからないが、とにかくゴルフ練習場で打てるようにならなければ、ゴルフ場に足を踏み入れてはならない。もしも初心者を連れてプレーでもしたら、後続の組から罵声を浴びせかけられたり、ゴルフ場職員から早くプレーしろと怒られたりするかもしれない。そうした想像がすぐに思い浮かばれて「とても初心者を連れて行けない」と思うのではないか。その思いは会員であればなおさら強いのかもしれない。 この深く刻みこまれた考え方を覆すのはとても困難である。しかし、私はこれを変えていきたい。幸いビギナーズ・プランは大したリスクのないプランである。利用者が居ないからといって止めることなく、地道に継続することにした。 <h2>ゴルフ場の「空気」を変える</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_6758.jpg" alt="" width="1000" height="563" class="aligncenter size-full wp-image-81054" /> 前述した「Gちゃれ」の活動を継続し、翌年の2018年からは「ファースト・ティ」という子ども教室の活動も開始した。これにより、以前は当ゴルフ場では見たことのない子どもや学生などを見かける機会が増え、会員や来場されるゴルファーの意識が少しずつ変化していった。ゴルフ帰りに、練習場で子どもたちに教えているコーチに声をかける会員や、飲み物を学生たちに差し入れてくれる会員もでてきた。 始めてから丸6年。現在、毎月20~30人の初心者がビギナーズ・プランを利用して来場している。近隣のゴルフスクールも積極的に活用してくれている。ビジターからの問い合わせも少しずつ増えている。 2023年に練習場の打席をリニューアルしたり、練習場に専用トイレを設置して、練習環境を整えたことも増加につながっているのかもしれない。「有馬カンツリー倶楽部では、初心者が安心してゴルフの体験や練習をできる」というイメージが付き始めているなら嬉しく思う。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_9078.jpg" alt="" width="1000" height="667" class="aligncenter size-full wp-image-81056" /> 「練習場で打てるようにならないとゴルフ場の敷居は跨げない」という従来の空気が払拭されて、「まずはゴルフ場で楽しいゴルフ体験をしてから始める」という新しい文化を広げることはとても大事。初めてのゴルフ体験が楽しい思い出になれば、18ホールのラウンドプレーを目指して自発的に練習場へ通うはず。そんな習慣が醸成されれば、ゴルフはもっと広がっていくと夢見ている。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年04月21日
    有馬カンツリー倶楽部では、大学ゴルフ授業「Gちゃれ」やファーストティなどへの取り組みを通して、ゴルフをしたことがない人たちにゴルフ場でゴルフを楽しんでもらうチャレンジを積極的に行っている。 グループのゴルフ場を持たず、大きな資本傘下でもない中小零細の当コースが、なぜこのような取り組みをするに至ったかを私の経験を踏まえて少しお話したい。 私が求人雑誌の広告営業マンを辞して家業である現在の会社に入社したのは、阪神淡路大震災の翌年1996年4月。コース管理職員からゴルフ場勤務をスタートした。 すでにバブル景気の終焉後だったため、ゴルフ場景気の悪いことは理解していたが、当時経営責任者だった叔父や父から「ゴルフコースがキレイであればお客様は増えるはず」という呪文をいつも聞かされていた。そんな呪いを本気にすることはなかったが、まずはターフメンテナンス技術の習得に没頭した。正しい判断をすれば元気になって素直に応えてくれる天然芝の管理業務は、人を相手とする営業職に疲れ切っていた心を充分に癒してくれた。 そんなコース管理業務を楽しんでいた数年のうちに、ゴルフ場業界の周辺環境はめまぐるしく変化していた。新しい大手企業が勃興し、集客のための低価格競争は激化。弊社のような中小零細企業は完全に後手に回り、周辺の価格を伺いながらビジタープレーフィを決めているような始末。来場客数減少のため、経営状況はひっ迫していた。そこで過去の営業時代を思い出して、少し集客を手伝うことにした。 集客を第一に考えるなら、ニーズのあるところを攻めればいい。第一に近隣のゴルフ場、次にマーケットエリア内にあるゴルフ練習場やスクール、その次に同エリア内にあるゴルフショップ。要するに市場エリア内のゴルファーがいるところを狙えばいい。言い方は悪いが、価格同等クラスの他のゴルフ場から客を奪ってくるのが手っ取り早いと考えた。 市場調査を徹底して行い、景気動向を予測し、他所よりも先に価格を決めてオープンにする。他所に予約する前に先に予約を促す。知名度がなければチラシを作って練習場やショップに置かせてもらう。当時始まったばかりのポータルサイト予約もいち早く登録した。 当時の私は、我々のような小さな企業は余裕がないため、ニーズがない(ゴルファーがいない)ところに力をいれても仕方がない。新しいゴルファーを増やすような労力に見合わないことは、豊富な資金力のあるところに任せればいいと考えていた。このような考えは前職の影響である。同業他社は同じニーズを奪い合う〝敵〟である。完全な新規顧客を探しだして新たに作るよりも、他社顧客を奪うほうがはるかに少ない労力で効率よく数字を得られる。それが営業現場では当たり前だった。 だから集客に悩みながら、近隣のゴルフ場と仲良くしている支配人を見ると不思議で仕方がなかった。 それからさらに数年が経った2012年、会社の代表となった。その当時、集客力はある程度備えていたが、デフレ景気真っただ中のため、価格競争から抜け出せず、平均単価を下げない努力をしていたものの、上げることもできずにいた。何とか同業他社との差別化を図り、価格競争からいち早く脱却したいという思いが強くなっていた。また団塊の世代がリタイアする2015年問題がゴルフ業界で大きく取り沙汰されていたため、縮小市場でのさらなる競争激化が予想され、弊社のような弱小企業は簡単に飲み込まれてしまうという不安も付きまとっていた。 <h2>他社連携の可能性を</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/11/IMG_20230806_175532_448.jpg" alt="" width="1000" height="997" class="aligncenter size-full wp-image-79296" /> 業界最大の問題である市場の縮小をどう防ぐのか。高齢を理由にリタイアしていくゴルファーは止められない。それに見合うだけの新規ゴルフ参入者がいないためにゴルフ人口は減少の一途を辿っている。 この業界最大の問題解決は、需給バランスを保つために同業他社が減少するか、もしくは新たなゴルファーをつくるかの二つしかない。そこで弊社では、他社に先駆けてゴルフ場で新規ゴルファーを創ることにより差別化を図り、そうすることで弊社の存在価値をあげ、会社の存続につなげようと考えた。 これまでは弊社のような弱小企業が新規参入者を増やすような努力をするべきではないと思ってきたが、日本全人口の約5%、そこからさらに縮小する狭いゴルフ市場にとらわれず、残りの人口95%に対して挑戦しよう。そう考えると小さくなっていた視界が急に広がった気がした。 しかし、これまで日本ゴルフの歴史において、ゴルフ場で新規参入者を増やしてきた実績はない。プレーペースに対する問題が大きいため、初心者がプレーするフィールドがゴルフ場につくられてこなかった。初心者へのコース提供には乗り越えるべき数多くのハードルがある。 弊社にとってGちゃれやファーストティへの参画はそのハードルをひとつひとつ下げるための試験的な取り組みである。すぐに結果がでるものではないが、着実に少しずつ種を蒔いている。そのうちに、新規ゴルファーという芽が有馬CCのコースに出てくるだろうと信じている。 現在のゴルフ市場内での集客競争において、「近隣同業他社とはライバル関係である」という考え方について、私は今も変わらない。 しかし、「新規ゴルファーを創造する」という業界課題の解決については、他社連携はいくらでも可能であると考えている。 私自身、この取り組みを始めたことによって前職で植え付けられてきた「数字を効率的に得る」ためだけの直接的な狭い視点から、俯瞰的視野を持って、広く物事を考えることを教わった気がする。 様々な人たちと「新規ゴルファー創造」について様々なアイデアを出し合い、実行することで実績を積み、さらに良い策を協働して練り上げていく。そのような関係が構築できれば素晴らしいと思う。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年11月05日
    有馬カンツリー倶楽部の経営は、ゴルフ場運営会社の新有馬開発株式会社とレストラン運営会社の株式会社ニューアリマの2社で構成されている。ともに同じ代表者の兄弟会社である。 2022年4月、会社設立以来60年を超えて初めて、2社それぞれのパーパス(企業の存在意義)を定めた。新有馬開発は「すべての人にゴルフを拓き、これからのゴルフ文化を創造する」とし、ニューアリマは「すべての人に食を拓き、これからの食文化を創造する」とした。 これまでに紹介してきた〝Gちゃれ〟や〝ファーストティ〟などの取り組みが、ゴルフ場運営企業の存在意義を示すものとなったが、レストランについても「すべての人に食を拓き」に基づき、同様の取り組みを始めている。 ゴルフ場に来場されるゴルファーにしか提供してこなかった〝ゴルフ場の食〟を、ゴルフをしたことがない人も含めて広く提供するという取り組みである。 その第1弾がオリジナルレトルトビーフカレーのEC販売だ。国民食といえるカレーは、ゴルフ場レストランにとっても定番食である。限られた時間内で速やかに提供でき、気軽に食べられるメニューとして、日本のほとんどのゴルフ場で存在していると思われる。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/10/220210_ACC_makuake_09.jpg" alt="" width="1000" height="667" class="aligncenter size-full wp-image-79082" /> 有馬カンツリー倶楽部レストランでもオープン以来の定番メニューとなってきた。フルーツチャツネを使った甘味と少しの辛味、じっくり煮込んだ濃厚なコクのある昔ながらの欧風カレーである。 ビーフカレーはオープン以来60年に渡り同じレシピで作られており、 現在の料理長で6代目。初代料理長が作ったレシピを、代々受け継いできた。 初代料理長は明治から続く神戸の老舗ホテルレストランで腕を磨いた人で、ゴルフ場のレストラン設立時にヘッドハンティングしたそうである。当時のホテルで提供していたカレーレシピに料理長のアレンジを加えたものが、有馬カンツリー倶楽部カレーのレシピとなった。 <h2>自社ECで1000食販売</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/10/220210_ACC_makuake_12.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-79083" /> 60年間、倶楽部メンバーを中心に多くのゴルファーに「美味しい!」と親しまれてきたカレーだが、このままでは、ゴルフと無関係な人には知ってもらうことも食べてもらうこともできない。ゴルフ場ではこんなに美味しい食事を提供しているんだということを知ってほしい。美味しい食事がゴルフを始めるきっかけになれば、どんなに素晴らしいことかと思い、EC販売をはじめようと考えた。 本当は料理長が作ったカレーを提供したいが、さまざまな超えるべきハードルがある。そこでまずは味を再現したレトルトから始めようと考えた。OEMの会社に何度もサンプルを作ってもらい、1年を掛けてようやく完成。 まずはマクアケというクラウドファンディングの先行販売サイトで1か月間販売した。 目標金額25万円に対し100万円を超える支援を頂いた。これをきっかけにインターネットのヤフーニュースで「神戸のゴルフ場で出されたカレーがうますぎて驚愕」という記事が掲載されると、自社のショップサイトにおいて1か月間で1000食を売り上げた。北海道在住の女性によるリピート購入コメントでは「これまでにこんなに美味しいレトルトカレーを食べたことがない」という評価を頂いた。 このことから〝ゴルフ場の食〟にはまだまだ大きな力が秘められていると確信した。 現在、事業再構築補助金を活用し、料理長が調理した冷凍食品を中心とするEC販売の準備を進めている。また、レトルト第2弾としてカレー同様に60年間変わらない味のビーフハヤシが完成、2023年7月に先行販売を開始する。 <h2>ビーフカレーの60年変わらない製造工程</h2> <strong>●カレールーを作る</strong> 1)玉ねぎなどの野菜をカットし、ソテーパンに牛脂を溶かして野菜ソテーをつくる。 2)強力粉とカレー粉を野菜ソテーと合わせる。 3)低温オーブンでカレールーの水分を抜く。40分おきにスパテルでルーをかき混ぜる。 4)4時間後、カレールーをフードカッターで粉砕し、サイドオーブンで2時間焼いて完成。 ●ビーフカレーソースを作る 1)カレー肉をカットし、フライパンで肉をソテーしたのち、チキンブイヨンで20分煮込む。 2)作ったカレールーをチキンブイヨンでミキシングし、カレー煮込み用の鍋に入れる。 3)フルーツチャツネ、ウスターソースなどの調味料を合わせ、火にかける。 4)カレーソース濃度を確認して、肉を入れて再度煮込む。 5)カレーソースの状態を確認して、玉ねぎ、ニンニク、土生姜を加えて仕上げる。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年10月08日
    有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)には、40歳代の会員有志が集まって2018年に発足した「accエンジョイゴルフ会」というプライベート会があり、年2回のゴルフコンペをエンジョイする。 今、この会では新たなゴルフコンペの形を模索中だ。会員同士が楽しむコンペという枠を超えて、会員以外にも裾野を広げながらゴルフ仲間を増やそうというのである。ゴルフ場デビューの人もいきなりコンペに参加して、技量の違う人たちと一緒に楽しくプレーできる姿を目指す。そうしてゴルフファンを増やしていきながらコンペを盛り上げ、会員仲間を増やそうという魂胆だ。ゴルフ場経営者にとっては願ってもないありがたい話である。 まずは、この考えに基づいたコンペルールを決めなければならない。要するに、技量に合わせて個別のルールを設定しようというのである。そこで「新ルール」による実証実験コンペを2023年3月に行うことが決まり、それに向けて何度も会合?飲み会?が持たれ、私も途中からアドバイザーとして参加した。 初回の実証実験コンペルールは「囲み記事」のとおりである。初心者ゴルファーがなじめるよう、技量に応じた名称を「クジラさん」や「カエルさん」「イカさん」「カニさん」「ニモさん」など、有馬CCのティーマークの色に合わせて名付けられ、使用するティーの位置は、自己申告により平均スコアと飛距離に応じて自由に設定できる。「ニモさん(初心者)」クラスはOBをなくし、OBになっても罰なしで、OB杭を横切った付近、またはフェアウェイからプレーを続行できる。バンカーも手投げOKだ。 このように各クラスのルールを設定し、3月のとある土曜日、8名が参加する実証実験ゴルフコンペに臨んだ。当日の天気は快晴、来場客数は45組160名とまあまあの込み具合。今回がゴルフ場デビューという「ニモさん」が1名。「カニさん」3名、「イカさん」2名、「カエルさん」2名という8名。上級者で会員の「カエルさん」2名は「進行は大丈夫だろうか?」「ニモさんがいて、前に付いて行けるだろうか?」ととても不安がられていた。 <h2>一般のゴルファーも「仲間」を増やしたい</h2> 実験コンペは、進行について問題がなく、ニモさんは「すごく楽しかった!」という感想。グロススコアはなんと108という、驚きの結果だった。最初の4ホールはゴルフラウンドの方法がわからず、周囲の指示を受けてから動く、そして走るという具合だった。しかも初めて芝生から打つためなかなか前に飛ばず、とても心配になった。しかし、すぐに少しずつ前に飛ぶようになった。 4ホールを経てラウンドの仕方がわかり始めてからは、あわてることもなく、周りを見て速やかにボールのところまで行き、打つ、そして前に進むという動きに変化した。 最も意識して伝えたのは「レディーゴルフ」。安全を確保した上で、準備のできた人からプレーするという2019年の規則改定から取り入れられたルールである。周りの人のプレーを見ながらも、ただ立ち止まって見ているのではなく、その間に安全なルートを通りながら自分のボールのところまで速やかに移動する。こうした動きの積み重ねが、初心者にもゆとりをもったプレーにつながることが実証された。 何より一番良かったことは、今回のコンペで、「カエルさん」ゴルファーが、「ニモさん(初心者)」をゴルフ場に連れてきても、条件を柔軟に設定してあげれば後続組に迷惑をかけず、適切なプレーペースを保てることを実感できた。このことがとても大きかった。 ラウンド後の表彰兼反省会では、「ニモさん」には、事前にゴルフ場に連れて行ってレッスンする機会を持ち、たとえ3ホールでもラウンドの仕方やカートの動かし方、乗り方を教えてあげれば、もっとスムーズにコンペに参加できるだろうという意見も出た。ゴルフ場としては、薄暮の時間帯なら空いたホールでゆっくりラウンドの仕方を練習させてあげられると伝え、そうした機会も試していこうとなった次第。 新しいゴルファーをつくるという課題は、けっしてゴルフ業界内だけのことではない。既存ゴルファーにとっても、自分たちのコンペを活性化させるには新規の参加者を増やすことが重要な課題だ。周囲にゴルファーがいなければ新たに育てる必要があるが、これまでのゴルファーの常識では、初心者をゴルフ場に連れていき、デビューでいきなりコンペに参加させた上に、ゴルフを楽しませるなどということは考えられないことだった。 その意味でも、今回の小さな実証実験コンペは大きな意義があったと思う。有馬CCの一部の会員ゴルファーは、ゴルフ場デビューの「ニモさん」が、どうすればゴルフコンペでゴルフを楽しめるか? その方法を理解できたのだから。 <h2>有馬カンツリー倶楽部 エンジョイゴルフコンペ特別ルール</h2> 技量によってルールが変わります。ご自身がどのクラスか事前に申告し、コンペ参加者全員の了承を得た上でスタートしましょう。 ※ジェネラルエリア:セーフゾーンにおけるティーイングエリア、パッティンググリーン、バンカー、ペナルティエリア(池など)以外の区域 クジラさんクラス(アベレージスコア80以下の方対象) ・ティーマーク位置 (平均飛距離200ヤード以上)…ブルーティ (平均飛距離150〜200ヤード)…グリーンティ ・パッティンググリーン…ノータッチ ・ジェネラルエリア…ノータッチ カエルさんクラス(アベレージスコア80〜90の方対象) ・ティーマーク位置 (平均飛距離200ヤード以上)…グリーンティ (平均飛距離150〜200ヤード)…ホワイト、イエロー、レッドティ ・パッティンググリーン…ワングリップO.K(コンシード) ・ジェネラルエリア…ノータッチ イカさんクラス(アベレージスコア90〜110の方対象) ・ティーマーク位置 (平均飛距離200ヤード以上)…ホワイトティ (平均飛距離150〜200ヤード)…イエロー、レッド、ピンクティ ・パッティンググリーン…ワングリップO.K(コンシード) ・ジェネラルエリア…6インチプレース(置き直し)O.K カニさんクラス(アベレージスコア110〜150の方対象) ・ティーマーク位置 (平均飛距離200ヤード以上)…ホワイト、イエローティ (平均飛距離150〜200ヤード)…レッド、ピンクティ ・パッティンググリーン…ツーグリップO.K(コンシード) ・フェアウェイ・アプローチ…ワンクラブプレース(置き直し)O.K ・ラフ…罰なしでフェアウェイに移動O.K ・バンカー…罰なしで手出しO.K ※バンカー、ラフから移動の場合は、ピンに近づかないこと ・各ホールパーの3倍までのスコア及び打数の限度あり ・ダブルペリアはすべて無制限とする ニモさんクラス(アベレージスコア150〜初心者の方対象) ・ティーマーク位置…ホワイト、イエロー、レッド、オレンジティのうち各ホール好きな位置からO.K ・ティーショット(第1打)…罰なしで打ち直し1回のみO.K ・パッティンググリーン…ワンパターO.K(コンシード)※半径パター1本分の距離ならO.K ・フェアウェイ・アプローチ…自由に打ちやすいところにプレース(置き直し)O.K ・ラフ…罰なしでフェアウェイに移動O.K ・バンカー…罰なしで手出しO.K ・O.B…罰なしで、O.B杭を横切った付近、またはフェアウェイからプレーを続行できる ※バンカー、ラフ、O.B杭周辺から移動の場合は、ピンに近づかないこと ・各ホールパーの3倍までのスコア及び打数の限度あり ・ダブルペリアはすべて無制限とする <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年05月28日
    有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では、2016年より大学体育ゴルフ授業「Gちゃれ」に参画してきた。若年層の非ゴルファーに対し、大学体育の授業を通じてゴルフ体験の機会をゴルフ場で設けていくという取り組みである。 2022年10月、弊社は「Gちゃれ」の新たな取り組みを実践する機会を得た。それは従来通り有馬CCで授業をするのではなく、別の場所で行う出張授業である。 2022年の6月、「Gちゃれ」授業を行っている流通科学大学(兵庫県神戸市)の先生より、10月に行われる滋賀大学大津キャンパス(滋賀県大津市)の「身体運動の科学」という授業への協力要請があった。3年毎に行われる授業で、これまでは学内での講義と実践練習、そして近くのゴルフ練習場での実践練習というカリキュラムを、3日間に分けて行ってきた。例年の受講者数は10名程度だったという。 滋賀大学の先生の要望は、「Gちゃれ」としてゴルフ業界関係者の協力を仰ぎ、授業を活性化したいというものであった。具体的な要請は2点。コーチの派遣と近隣ゴルフ場への協力依頼ということだった。 まず、コーチ派遣である。2022年度も10月15日(土)・16日(日)・30日(日)の3日間、授業が予定されていた。都合上、初日のみコーチを派遣することで了承を得、ヘッドコーチともう1名の計2名を派遣することとなった。 次にゴルフ場への協力依頼である。滋賀大学大津キャンパスから車で約5分のところに瀬田ゴルフコースがある。弊社が加盟している(一社)日本ゴルフ場経営者協会(NGK)の大石専務理事を通じて話を進め、12時から17時まで同コースの練習場を拝借することで快諾を得た。 トーナメントコースでのゴルフ授業は定員オーバー <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/05/20221015_114715.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-77214" /> これを踏まえ、9月になってから定員20名で履修登録の募集をかけたところ、なんと60名を超える学生が履修を希望した。そのため、抽選で履修生が決められた。女性8名、男性12名の計20名が参加したが、全員まったくのゴルフ初心者だった。 トーナメントコースで授業が受けられる魅力だけでなく、ゴルフ需要の高まりが学生にも届いていることが要因にあるのかもしれない。 当日のプログラムは「囲み記事」のとおりである。 授業の最後には、瀬田ゴルフコース支配人、スーパーバイザーのご厚意で、TOTOジャパンクラシックトーナメントの開催を間近に控えて整備が進められているコースの見学ができた。 学生のみなさんは、目の前に広がるゴルフコースをはじめて見て、思わず「お~」「広い」「きれい」「すご~い!」などの歓声があちこちでもれていた。「いつかこんなところでゴルフをしてみたい」という声も聞かれた。 盛りだくさんの内容で盛り上がった当日の授業を終え、滋賀大学の先生からはお礼とともに、学生のモチベーションが残り2日間に渡り維持できるか心配になってきたとの不安の言葉が聞かれた。 翌日2日目の夕方、先生からメールが届いた。 「本日実習2日目も無事に終わりました。学生はゴルフの難しさに悪戦苦闘しながらも、昨日基礎を教えていただいたこともあり、少しずつ上達しているように思います。授業はあと1日ありますので、ゴルフの面白さを伝えられるようにまた頑張って指導したいと思います」 2023年も、ゴルフを拓く様々なチャレンジをしていきたいと考えている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/05/20221015_091034.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-77216" /> ■囲み記事 滋賀大学大津キャンパス 身体運動の科学第1日目 ■日時 10月15日9時〜17時 ■場所 午前 滋賀大学大津キャンパス 午後 瀬田ゴルフコース練習場 ■内容 8時50分 滋賀大学大津キャンパス集合 9時〜11時 講師紹介(有馬カンツリー倶楽部黒木コーチ、松井コーチ) ゴルフについて、ルールとマナーの講義 ゴルフクラブの握り方,振り方の確認 11時〜11時45分 休憩 11時45分〜12時 瀬田ゴルフコースへ移動 12時〜16時 スナッグゴルフによる模擬ラウンド体験 アイアンショット,ドライバーショット練習 16時〜16時30分 後片付け,北コース見学 16時30分〜17時 諸連絡,現地解散 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年05月14日
    2022年2月7日―。新型コロナウイルス感染防止の観点により蔓延防止等重点措置が発令されている最中、有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では、流通科学大学(兵庫県神戸市)人間社会学部のスポーツ心理学ゼミにおける1日ゴルフ体験プログラム「Gちゃれ」を開催した。 新型コロナの感染者数が日々増加する中での開催が危ぶまれたが、ゼミ担当〝うっちー〟先生の強い意志によって、実現にこぎつけることができた。先生は、 「長期間におよぶコロナ禍の影響でゼミ生同士の交流の場が失われています。本来であればゼミコンやゼミ合宿、ゼミ旅行をするなどしてゼミ生間の親睦を深めるのですが、そういったイベントが開催できない社会情勢が続いています。 そこで、それらに代わる交流の場として、日帰りスポーツイベントを企画。特別にゴルフ体験ができる機会を設けました。積極的に参加してゼミ生間の交流を深めてほしい」 と、今回の意義を話した。 そこで我々は「親睦を深める」という目的のために、「ゴルフを通じて楽しむ」ことができる内容を議論。そうして決まったのが、午前中の練習後にDCPゲームを行なうことである。 〝DCP〟は〝ドライブ・チップ&パット(Drive, Chip and Putt)〟の略で、アメリカで発祥したゴルフゲームのひとつ。ジュニア競技としてマスターズ・トーナメントとPGA(全米プロゴルフ協会)、USGA(全米ゴルフ協会)が共同で実施している。毎年、全米50州のコースで300以上の地区予選が行われ、最終的に各地域の優勝者が、オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブで開催される「ドライブ、チップ、パット全国決勝大会」への参加権を獲得するという、とても大規模な競技である。 このDCPのゲーム内容は、3つのスキル(ドライビング、チッピング、パッティング)のカテゴリーごとにポイントが与えられ、最も多くのポイントを獲得した選手が優勝者となる。要するに「飛ばす」「寄せる」「転がす」の3つのゴルフ要素を分解して、それぞれに得点を付けて競うといったゲームである。ドライビングレンジ、アプローチ練習場、パター練習場の3つが競技会場となる。 この度の体験プログラムは、コロナの感染拡大を懸念して欠席する学生や濃厚接触者として自宅待機を余儀なくされた学生などが出て、最終的に男子学生4名の参加となった。このうち2名が全く初めてゴルフクラブを握った。 DCPゲームは4名の学生と〝うっちー〟先生、そして〝しーま〟コーチの6名で競うこととなった。 まずは「D」のドライビングである。飛距離を競ってポイントをつける。ここでは、ゴルフ経験者の〝ふうま〟君が274ヤードで22ポイントをゲット、トップに立った。 初心者の〝くろ〟君も〝やっく〟君も200ヤードを超える飛距離を出して大健闘! その次に「C」のチッピングだ。ここではもう一人のゴルフ経験者の〝おとや〟君がピンそば50㎝にピタリと寄せて、20ポイントをゲットして逆転に成功。 そして最後の「P」パッティングである。①1・8m、②4・5m、③9・0mの3か所からチャレンジする。それぞれにポイントを付与するため、全員に優勝のチャンスがある。〝うっちー〟先生も〝しーま〟コーチも長いパットを寄せきれず、〝おとや〟君が逃げ切って優勝。初心者の〝くろ〟君も短い距離で順調にポイントを取ることができ、合計点でも大健闘の結果となった。 <h2>楽しみながら「本質」を理解</h2> <img class="aligncenter size-full wp-image-76349" src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/IMG_8875-001.jpg" alt="" width="788" height="525" /> 今回のテーマは「親睦を深める」なので、「Gちゃれ」で初めてDCPゲームを取り入れた。少人数とはいえ、予想以上に盛り上がったのではないかと思う。毎回、経験者と初心者が一緒になって楽しめるゲーム方法を模索している。 DCPゲームは経験者にとっても、自分の長所短所が明確になるという点で今後の研鑽に役立つのではないか。右も左もわからない初心者にとっては、ゴルフの3つの要素について楽しみながら知る機会であり、それぞれの要素を理解して楽しむことが本格的なゴルフデビューへの第1歩となる。 アメリカではジュニアに対して行われている競技だが、大人も含めたゴルフの入り口にはとても有効な手段のひとつと考えている。 最後に「Gちゃれ」の翌日、〝うっちー〟先生から、以下のメールが届いたので紹介しよう。 「昨日はゴルフ体験イベントを開催いただきありがとうございました。 経験者も初心者も、それぞれゴルフ場でのゴルフ体験がとても楽しかったようで、帰宅後に『来年度もあるなら参加したい』とメッセージをくれました。 今回は基本的にゼミの学生のみを対象としましたが、来年度はもう少し参加者の枠を広げて開催できますと有難く存じます。15名程度集めることができれば、ゴルフに対する印象が1日ゴルフ体験を通じてどのように変化していくのか、ある程度の傾向を把握できるように思います」 さらに産学連携を推し進め、初心者のゴルフに対する意識変化を把握することができれば、より効果的なゴルファー創造策が見つかるのではないかと考えている。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年03月15日
    『GEW』は2021年5月号より「ゴルフ産業を社会に広めるネットワーク・マガジン」とリニューアルしたが、筆者はその初回から連載をしている。そこでせっかくなので、ゴルフ場経営者として社会に広めたいことをこの誌面で伝えたい。それは、コース管理についてである。 ゴルフ場の主な商品はゴルフコースであり、その商品を維持管理するのが「コース管理」という部署である。業界関係者は当然、ご承知のことと思う。 私は1996年に入社以来、10数年コース管理に身を置いていた。当時、有馬カンツリー倶楽部はパッティンググリーン以外のジェネラルエリア(当時はスルーザグリーン)を完全無農薬で管理。それを始めてすぐの頃だった。 当コースは、関西圏のベッドタウンとして10年連続日本一の人口増加率にもなった、北摂三田ニュータウンと隣接しており、現在のSDGsに先駆け、周辺環境に配慮してのことだった。2003年までの7年間にわたり、完全無農薬および化学肥料を一切使わず有機栽培管理を行ったが、結果は大失敗。10万平米以上の芝生を入れ替える羽目になった。 詳細については、有馬カンツリー倶楽部のホームページを参照頂くとして、こうした状況に対して一番迷惑をこうむったのは、もちろんお客様だが、経営方針に翻弄されたコース管理職員も被害者といえる。懸命に努力したが、スポーツターフを維持することができなかった。 お客様がプレーしている最中も作業を行っていたため、プレーの進行方向とは違う方向で待機する我々コース管理職員目掛け、ボールが飛んできたこともある。「こんなコースでゴルフができるか!」と、怒りを表したのだと思う。 何が言いたいかというと、コース管理の評価は原則的に、減点方式だと筆者は考えている。 良いコースコンディションが当たり前で、パッティンググリーンにエアレーションと目砂などの更新作業が行われた直後にプレーされた方から「こんな砂だらけのグリーンでパターができるか!」とクレームがでることもしばしばある。 芝生が旺盛に育成する初夏はどうしてもグリーンスピードが遅くなるが、「もっと速く転がるグリーンを作れないのか!」と言われ、また梅雨の長雨時期はグリーンの表面が柔らかくなり、コンパクションが出ない。そんなときには「ボールマークだらけでグリーンが汚い」と言われる。良いコンディションの時にはお褒めの言葉や書き込みをいただくが、コースレイアウトに対する誉め言葉が多く、管理している職員の心にまで響かない。 <h2>コース管理にも光を</h2> 近年、コース管理職員にも「ゴルフ場は接客業なので、お客様に笑顔で挨拶しよう!」と指示が出る。当然のことと分かっているし、筆者も指導する立場だが、無理強いさせることだけは絶対にしたくない、と思っている。 弊社のコース管理事務所はクラブハウスの近くにある。そのため他部署の職員と顔を合わせることは多いのだが、それでもどこか「仲間外れ意識」が強くある。業務の「質」が違うことも一因だろう。 キャディーやフロント、レストランが行う接客は、当日プレーされるお客様にゴルフを楽しんでもらうための業務である。しかし、コース管理の多くの業務は、いま来場されているお客様のための作業ではない。明日以降に来場されるお客様、または3か月後、半年後に来場されるお客様のために行う作業が多い。前述した更新作業や薬剤肥料の散布などがそうである。 そのため、作業当日や作業後すぐにプレーされるお客様には嬉しい状態ではない。初めてのゴルフ場でのプレーを楽しみに、たまたま来場されたビジターのお客様には迷惑な話とも言える。コース管理の仕事とはそういうものである。 そのためにどうしても他の部署とは微妙な距離感が生まれる。「同じようにしろ」と言っても、なかなか上手くいかない。私自身も過去の経験上、強制ができない。でもこうした状況を打破して、何とかしたいと強く思っている。 そこで熟考――。お客様に気持ちよく接することができるようになるためには、ゴルフ場での役割を明確にして、各々の自尊感情の醸成が重要と考えた。自分を価値ある存在として尊重し、認める心を持つことが何よりも大切である。 2つの策を考えた。 1つ目は、年1回発行している会員向け会報誌にグリーンキーパー(コース管理のトップ)の写真を入れたインタビュー記事を掲載して、コース管理の想いを会員に知ってもらうことである。これにより、お客様との距離を縮める効果も得られるのではないかと考えている。 2つ目は、「ファーストティ」や「Gちゃれ」といった初心者向けゴルフイベントに、コース管理を積極的に参加させて、作業のデモンストレーションなどを行い、直接「すごい!」といった声や拍手をたくさんもらうこと。これによって自尊心が芽生え、仕事に対する前向きな意識が生まれるのではないか。 会報誌については2022年2月発行の号で、ファーストティなどのイベント参加は2021年夏より開始した。贔屓目かもしれないが、少しずつ変わり始めたのではないかと思う。 これからゴルフを楽しむときに、そのコースを懸命に維持するコース管理の人たちがいるんだということを、少しでも理解して気遣ってもらえたら嬉しく思う。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年05月01日
    絶好のゴルフシーズンで賑わった2021年11月、有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では、地元の小学生、中学生、高校生に複数のゴルフ体験教室を行ない、さらに多忙だった。いずれも学校の授業と関連し、小学生は毎月開催しているファースト・ティ教室の他、地元三田市が主催する課外教育プログラム「こうみん未来塾」から「ファーストティゴルフ体験教室」を開催した。 「こうみん未来塾」とは、地元の専門機関や、三田市にゆかりのある専門家、地域の達人たちの協力を得て、子どもたちへ本物に触れる機会を提供できるプログラムを三田市が用意したものだ。児童クラブなど地域の運営サポートにより、地域の子どもたちに本物に触れる場をつくっていく事業である。 今回は三田市立あかしあ台小学校のPTA家庭教育学級から依頼されて、20人の子どもたちがファーストティゴルフ体験教室に参加した。 次に中学生である。三田市立富士中学校と八景中学校の2年生全員を対象に、それぞれ校外学習「ファーストティゴルフ教室」として開催した。人数は90人と200人、1度に開催するにはあまりにも人数が多いため、各校3班に分かれてそれぞれ3日間の開催となった。 最後に高校生――。こちらは昨年に引き続き、兵庫県立西陵高等学校3年生40人の体育授業である。9月から12月の間で全6回の授業。前半3回は学校内で、後半3回はゴルフ場で行う。11月には、6回のうち5回目の授業を行った。 さて、肝心の指導者だが、小中高、さらに大学生の「Gちゃれ」まで、これらすべての教室において、ゴルフコーチはすべて当クラブの社員が行っている。 ヘッドコーチはNGF(日本ゴルフ財団)のプロコーチで、現在は当クラブのキャディーマスターとしても勤務している。マスター室にはキャディーマスターを含めて3人の常勤社員がおり、3人ともコーチを務める。これにゴルフ競技で優勝経験のある女性キャディーが加わって、総勢4人体制だ。 11月は特に人数が多かったため、必要に応じてその他の社員も臨時コーチとして参加した。 <h2>やんちゃ坊主に丁寧に説明する</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/03/tani23.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-71218" /> 体験教室は14時ごろから2時間程度の開催が中心となるため、ある程度の人員を回すことができる。それでもマスター室の常勤社員が全員コーチに出てしまうこともあり、その間はキャディーやパート社員などでマスター室周辺を切り盛りする。また、コース管理のスタッフも準備などを手伝っており、全社を挙げた協力体制となっている。 なぜ、ここまで力を入れるのか? それは、初めて来たゴルフ場での初めてのゴルフ体験を、とにかく楽しんでもらいたい、「またやりたい!」と感じてほしいとの想いに尽きる。その想いを全員が共有し、保護者や先生方にも伝わるため評判がよく、今後ますます輪が広がる可能性があるように感じている。どこまで広げていけるか、今はブレーキをかけずに進んでいきたい。 子どもたちの体験ゴルフ教室を行うとき、安全への配慮が一番大切である。放っておくと子ども同士の距離がどんどん近くなる。過去には振ったクラブが顔面にあたるようなケガもあった。そうした経験から安全な距離を保つことを重視し、コーチの指示に従うというルールを守ってもらうように徹底している。 ファースト・ティの教えでは、子どもをけっして怒ってはいけない。今回初めて中学生を受け入れたが、少々やんちゃな子が数名いたのでとても不安になった。しかし、無理やりルールを遵守させるのではなく、なぜ守らなければならないのかを実演しながら時間をかけて丁寧に説明し、その上で各コーチが実習に目を配るようにした。すると、そういう子たちもルールを守りながら楽しんでくれることが今回よくわかった。それもこれも、ヘッドコーチのおかげであり、実演を絡めた話術の妙に改めて感動した。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年03月24日
    有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では、2016年から大学体育のゴルフ授業「Gちゃれ」を開催している。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令されていた今夏も、昨年に引き続いて甲南大学の「Gちゃれ正課授業」を、感染防止及び熱中症の対策を万全にすることで何とか無事に開催できた。 「Gちゃれ」では毎回、授業の最後に参加学生全員にアンケートの記入をお願いしている。アンケートではゴルフ経験の有無、授業でゴルフをはじめる前と後におけるゴルフやゴルフ場に対するイメージの変化、ゴルフ授業で楽しかったことなどについて聞いている。 大学生の考えを知り、それを蓄積することで、大きく減少している若年層の新規ゴルファーの創造や、効果的な初心者のゴルフ場デビューなどの施策につなげていきたいと考えている。 公益財団法人日本生産性本部が毎年発刊している「レジャー白書」によるゴルフ人口は、2003年の1080万人から2019年は580万人(約46%減)、先ごろ発表された2020年は520万人と減少の歩みが止まらない。 レジャー白書はサンプル数の少なさやネット調査であることから、中心となるシニア層の実態がつかみにくい問題が指摘されるが、高齢化が進み、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達してゴルフ・リタイアが進む「2025年問題」も間近に迫っている。 総務省では2019年の総人口は1億2616万7千人と発表しており、総人口に占めるゴルフ人口の割合は、わずか4・6%。日本の95・4%の人たちの中から新たなゴルファーを創っていくことが業界の重要課題である。そのためにも若年者のゴルフに対する考えを調査することはとても大切だ。 今夏の甲南大ゴルフ授業では2回生6名、3回生1名、4回生3名(計10名)の参加者アンケートが追加された。10名のうちゴルフ場経験はないがゴルフ練習場に行ったことがある人が4名、それすらないゴルフ未経験者が4名だった。 彼らのゴルフやゴルフ場に対するイメージの変化については、「思っていたより難しかった」「思っていたより100倍楽しかった」「思っていたより広くて気持ちよかった」など「思っていたより‥‥」が非常に多い。過去のアンケート結果も同様であり、逆に元々の「思っていた」イメージを考えると「ゴルフはつまらないと思っていた」ということになる。 <h2>ゴルフのアピールポイント</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/03/IMG_5699.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-70899" /> ゴルフが日常生活の身近にないことで、「ゴルフ場には簡単に入れない」「ゴルフはおじさんのスポーツ」「ゴルフはお金がかかる」などの先入観がどんどん大きくなり、ゴルフをはじめるハードルを自分の中で高くしている様子が伺える。 ゴルフ場が初心者プランを充実させればネガティブなイメージを払拭できることがわかっているが、そもそもネガティブなイメージを持つ人に対して、どうすれば「ゴルフを始めよう」と思ってくれるのだろうか。どうすれば「ゴルフ場に行ってみよう」と思ってくれるのか、これが最大の課題である。 そこで筆者は、まずはゴルフとの距離感を縮めることが大事だと考える。ゴルフを身近なレジャースポーツとして感じてもらえる施策を描くことが急務だろう。 次にゴルフ場での授業で最も楽しかったことについて問うと、「ドライバーがきれいに当たった時」「ドライバーでまっすぐ飛ばせたとき」「遠くからのパットが入ったとき」「狙った位置にボールを打つことが出来たとき」という意見が多かった。ゴルフの「飛ばす・寄せる・入れる」という3つの要素がそれぞれに楽しいというのである。初心者にとってはラウンドプレーでのスコアが問題なのではなく、ゴルフの特徴そのものが楽しいのだ。 この観点で考えれば『ゴルフが一番ボールを遠くに飛ばせる球技』だということを、広く大衆にアピールすることが効果的だと考えられる。 例えばベースボールでは、1960年にミッキー・マントル(ニューヨークヤンキース)が打った推定飛距離193メートルのホームランが歴代1位と言われている。一方、ゴルフのギネス記録は515ヤード(470・9メートル)。 1974年の全米シニアオープンで当時64歳のマイク・オースチンが達成した。両者の飛距離差は約2・5倍。「ボールを遠くに飛ばす」事象だけを切り取ってもゴルフの魅力が伝えられる。 これ以外では「みんなで一緒にラウンドプレーしたこと」「ナイスプレーとほめあったこと」「ナイスショットだけでなく、カップをわずかに外れたときなどでも、仲間でワイワイできたこと」などが最も楽しかったと書かれている。つまり、コミュニケーションの楽しさだ。 近年、他者への配慮、双方向の密度の高いコミュニケーションが不十分で、お互いを支えあう社会的なサポートが乏しく、理解不足や軋轢によって不適応を生じやすくなる傾向があると言われる。そのため、円滑な対人関係、組織の活性化を図るために、コミュニケーション力の向上が求められている。 このような状況を、特に若者は痛感しているはずだ。コロナ禍で大学授業の多くがオンラインを余儀なくされ、対面による密度の高いコミュニケーションを図る機会が極端に減っている環境下で、ゴルフでは4人1組が一緒に行動し、相手のプレーを観察し、配慮しながら声援を送り合う。 これもゴルフでしか得られない機会であり、ゴルフの大きな特徴といえる。以上の諸要素が、ゴルフを広める大きなアピールポイントとなるのではないだろうか。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年03月08日
    有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)は2016年から、大学一般教養科目の体育でゴルフを履修する学生にコース体験をさせる「Gちゃれ」を開催。これまで5つの大学に対応してきた。また、新型コロナによるパンデミック下の今夏も、甲南大学の「Gちゃれ正課授業」を昨年に続き開催。感染防止及び熱中症の対策を万全にすることで、何とか開催にこぎつけた。 当連載では過去3回にわたり「Gちゃれ」について書いてきたが、今号は趣向を変えて当ゴルフ場で取り組んでいる「ファースト・ティ・プログラム」を取り上げる。この活動についてご存じの方も多いと思われるが、簡単に説明しよう。 ファースト・ティは米フロリダ州に本部を置き、1997年にプログラムを開始して以降、アメリカをはじめニュージーランド、カナダのゴルフ場や学校、軍施設で展開し、全世界で200以上の支部、1000ヵ所以上の施設で、累計1500万人以上の子どもが参加しているゴルフレッスンプログラムである。 このレッスンの目的は人間性を育むことであり、技術的指導は最優先事項ではない。ゴルフを通じて子どもたちの健全な人間形成を図り、「ライフスキル」(生きていく上で必要な能力)の学習を目的とした教育プログラムだ。 定義するライフスキルは「ナインコアバリュー」(9つの重要な価値観)と呼ばれ「正直」「誠実」「スポーツマンシップ」「尊敬」「自信」「責任」「忍耐」「礼儀」「判断」から構成。ゴルフの練習やプレーにおけるシーンの中で、気づかせ、学ばせるのが特徴だから、競技ジュニアとは一線を画す。 有馬カンツリー倶楽部では、2018年8月より小学生を対象に毎月教室を開き、これまでに延べ1000人を超える子どもたちが参加している。 また、2019年10月からは、地元兵庫県三田市の「健やか育成課」が進める課外学習プログラムに参画し、地元の子どもたちを対象にファースト・ティ・ゴルフ体験教室を開いている。地域の各小学校区PTA等からの依頼を受けて開催を決定する流れである。 <h2>「おどおど」から「キラキラ」</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/01/IMG_8903.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-70140" /> 2020年はコロナ禍で夏休みの予定がなくなった子どもたちに、3密を回避できる屋外学習として、多くのPTA等から依頼を受けて開催し好評を博した。 プログラムは、午後2時頃から90分ないしは120分とし、土日祝を中心に開催日を決めている。 主にゴルフ場のドライビングレンジをホームグラウンドとし、内容によっては、後半の時間に1番ホール等コースの空いたホールを利用してレッスンを行う。プラスチック製の スナッグゴルフとジュニア用ゴルフクラブを使うが、道具はゴルフ場ですべて用意している。 プログラムは、毎回コーチが詳細を決めるが、その内容は主に「アイスブレイク」という挨拶からはじまり、今日のテーマについて話し合う。その際に安全やレッスンのルールについて子どもたちに伝える。 次にウォーミングアップだが、ここでは様々な遊びを用意している。ドッジボールを使う「キャッチボール」や「長縄跳び」、夏は「水風船投げ」、さらに斜面を利用してダンボールに乗った「芝滑り」や「竹馬」もする。大人には懐かしい遊びかもしれないが、今時の子どもたちには経験のない新鮮な遊びのようで歓喜の声が響きわたる。 そしていよいよゴルフのレッスンだが、ドライビングレンジでは、チップショットとドライビングショット。その日の子どもたちのレベルに合わせて、スナッグゴルフの「ランチャー」を使うか、ジュニア用ゴルフクラブを使うか決めている。 チップショットは様々な「的」を用意して得点を競いながら進めている。時間があるときは練習グリーンに移動してパット練習も行う。 次に、ドライビングレンジ全体を使って、スナッグゴルフによる模擬ラウンドを行ったり、1番ホールなどコースに移動して実際のゴルフプレーを行うが、ここではチームを決めて協力して前に進むことを学ぶ。 最後に「ラップアップ」。これは学校でいう「ホームルーム」のことだ。今日のテーマについてレッスン中にどんなことができたか、また普段の生活ではそのテーマについて、どんなことが考えられるのかをみんなで話し合う。ファースト・ティ・プログラムでは、この時間が一番大切な時間といえる。 レッスンプログラムの流れは以上である。子どもたちのエピソードなどは次号以降、機会があれば書かせていただくが、このプログラムを開催するたびに、子どもの表情や行動の変化を見るのがとても楽しいと感じている。 わずか120分で、「おどおど」「もじもじ」から「キラキラ」した目と「ワーワー」に変わるのである。ゴルフ場で子どもたちが大騒ぎしながら楽しむ光景はあまり見られないのではないだろうか。 この話をするときに必ず聞かれるのが、「会員から子どもたちにクレームはないの?」だが、これまでにただの一度もない。 <h2>ファースト・ティ有馬教室のレッスンルール</h2> 1)プレーヤーから必ず「セーフティゾーン」として約3メートル離れて、自分の順番を待つこと。 2)ゴルフクラブは杖のようにヘッドを手元にする「ケインスタイル」で持つこと。 3)他人のショットには必ず声をかけること。良いショットには「ナイスショット!」、ミスショットには「ドンマイ」。 4)打順を交代するときは必ず「ハイタッチ」すること。※コロナ禍の現在は中止。 5)コーチは絶対に子どもたちを怒らない。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年01月23日
    有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では2016年から大学体育ゴルフ授業の「Gちゃれ」を開催している。 これは一般教養科目の体育でゴルフを履修する学生向けの授業で、参加者の大半がゴルフ未経験者もしくは初心者だ。 これまでに武庫川女子大(兵庫県西宮市)、甲南大(兵庫県神戸市)、追手門学院大(大阪府茨木市)、大阪学院大(大阪府(吹田市)、流通科学大(兵庫県神戸市)の5大学におけるゴルフ授業のお手伝いをしてきた。 延べ428人の学生が参加し、そのうち約35%の152人が女子大生だった。当倶楽部では女性比率が約15%なので、「Gちゃれ」の女子率はとても高い。 「女性ゴルファーの創造」はゴルフ界にとって大きな課題だ。「Gちゃれ」では毎回、参加学生全員からアンケートを取るようにしている。ゴルフに対する女子大生の生の声を以下に紹介するので、参考になれば幸いだ。 <h2>ゴルフカートは「マリオカート」?</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2021/11/CIMG5632.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-69374" /> ゴルフ場に初めて来る学生のほとんどは、ゴルフカートに初めて乗る。女子大生にはこれがとても楽しいようだ。 2016年の年末、最初に当倶楽部で行った「武庫女Gちゃれ」。午後から5人乗りカートに乗ってコースへ出て行った。運転を先生やインストラクターが行う中、「マリオカート、ゴー‼」の掛け声とともに学生たちは大騒ぎ。お尻を浮かして半身を乗り出してはしゃぐのを注意しながらのコースデビューだった。プレーに来たのか、ゴーカートに乗りに来たのか分からないくらい。 アンケートで「一番楽しかったシーンは何でしたか?」の問いに、「カートに初めて乗れて楽しかった」「ゴーカートに乗っているとき」「ゴルフカーがすごく気持ちよかった!」などと書かれていた。我々はこれまで、ゴルフカートは単なる移動手段としか見ていなかったが、ゴルフ場の魅力の一つとなり得るかもしれないと強く感じた。 一方で、昨今の「若者の車離れ」や「運転免許保有者数減少」という時代背景から、安全対策として運転を必要とするゴルフカートの運転講習や乗車講習などの重要性を痛感。 そこで2017年以降の「Gちゃれ」においては、取引があるゴルフカート販売会社の協力を得ながら乗車講習を必ず実施するようにしている。講習は駐車場にカラーコーンを立てて、ハンドル操作を学ぶ運転練習を行いながら、同乗者に対しても安全に乗車する方法を教えるようにしている。 2017年の第2回「武庫女Gちゃれ」ではデザインカートを用意してさらに盛り上げた。 <h2>チームでラウンドが楽しい!</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2021/11/IMG_0184.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-69375" /> ゴルフカートの他に多くの女子大生が「楽しかった」と回答したのが「チームでのラウンド」だった。当倶楽部で行う授業では、「チームスクランブルゲーム」でのラウンドプレーを多く行う。 この方式を採用する運営側の理由は、初心者がバラバラで動くと目が届かなくなり危険であることと、プレースピードの問題を解消することの2点だが、初心者プレーヤーの視点はまったく別のところにあることが分かった。 「チームスクランブル」と言っても18ホールの定められた厳密なルールではなく、時間制限(約2時間)の中で、単純にベストボールを使いながら前に進むことだけ。 参加学生数とコーチ、先生の数に合わせてチーム数を決めるので、1チーム5人でも6人でもよい。ただし、スコアを数えて順位は決めるようにしている。「Gちゃれ」では、チーム内全員のプレーをしっかり見ること。その上で良いショットには「ナイスショット!」、ミスショットには「ドンマイ!」の声掛けをして、必ず応援することをルールとしている。 女子大生のアンケートでは、これが「楽しかった!」という声が多い。 「他の人が良いプレーをしたときに、グループ全員で喜びを共有できたことが楽しかった」「みんなでラウンドしたときが一番楽しかった」「みんなで応援しあうのが、とても良い雰囲気で楽しかった」「グループで一人のプレーを見て良いところに打ったときに皆で喜んだこと」「みんなで周りながらプレーをしたのがとても楽しかったです! 上手くいってもいかなくても、全てを肯定していただけて明るい気持ちで取り組むことができました」などなど。 つまりキーワードは「みんな」である。 これらの意見から改めて「チームスクランブル」の良いところを考えてみると、チーム内でのベストな位置にあるボールを使うため、ミスショットに対するプレッシャーがないことはとても大きい。だから自分や他人のショットをすべて肯定できるのだろう。この美点は、他の球技ではなかなか見当たらない。 個人スポーツのイメージが強いゴルフだが、「チームスクランブル」には他の球技にはない魅力がある。それを広く知ってもらうことが女性ゴルファーの創造に一役買うかもしれないと感じている。 <h2>カート講習会</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2021/11/IMG_0383.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-69376" /> カート講習会の初回となった「第2回武庫女Gちゃれ」の前日、偶然にカート事故が起こった。当倶楽部は自走カートのため運転が必要となる。事故は16番ホールから17番ホールへ移動する急カーブで、ハンドル操作を誤りカートが横転、同乗者の一人が軽傷を負った。セルフプレーによるものだった。 翌日の「Gちゃれ」座学講習では、横転したカートの写真を見せながら、守ってくれるドアもシートベルトもないカートの危険性を説いている。さらに運転者はボールを探すなど、絶対に脇見運転をしないこと、同乗者は移動中にスコアを記入したりせずに安全バーから手を離さないなどを徹底して教えている。 たまたま「授業」という機会で「カート講習会」を行ったが、一般のゴルファーにも事故抑制のため必要だと思う。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2021年11月25日
    2020年夏、新型コロナウイルスの第2波が騒がれていた最中、有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では甲南大学(兵庫県神戸市)の体育ゴルフ授業「Gちゃれ」を開催した。「Gちゃれ」はいわゆる「部活」ではなく、一般教養科目の体育としてゴルフ未経験の学生も多く参加する。当ゴルフ場では2017年から毎年1回、3日間の集中授業を行っている。 甲南大学との授業のきっかけは受講定員数の問題だった。以前から近隣パブリックコースで授業を行っていたが、定員数が12名という少なさが問題となっていた。授業の最終目標をゴルフプレーの18ホール完走とされていたため、最終組でスタートする。後半折り返しの一般プレーヤーがすぐ後ろに付いてくるためプレーファーストが要求される。 ある程度練習場で事前授業をしているとはいえ、やはり初心者学生には高いハードルである。3名の引率教員が面倒を見るには3組12名が限界だが、それでも一般プレーヤーからクレームがくる。ゴルフ場は低価格での協力はしてくれるものの、その他に人的な協力はなく、発生するすべてのトラブルは、当然先生及び大学の責任になる。授業の存続自体が難しい状況となっていた。 この状況を聞いた私は、以下の3点を提案した。 ①技術指導からラウンドプレーまで全面的にゴルフ場が協力する。 ②最終組の後半スタート後や休場日、空き枠を効率的に利用するなど、一般プレーヤーと切り離して授業を進める。そうすることでレベルに応じたペースで授業ができるようにする。 ③ゴルフ場側から受講定員限定の要求はしない。  筆者は以前から未経験若年者のゴルフ場デビューについて研究したいと思っていたので、甲南大学の状況は、未経験者に対してゴルフ場がどのような環境を整えればよいかを実践する良い機会だと捉えたのである。 <h2>コロナ禍のゴルフ授業</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2021/11/IMG_0023.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-68911" /> 2020年夏――。 コロナ下の渦中で大学側は、授業開催をよくOKしたと思う。7月までの前期授業のすべてが、休講かオンラインによる授業のみで、対面授業をまったく行っていない。にもかかわらず、甲南大学の場合は初めての「対面授業」がこのゴルフ授業だった。むろん、授業に際して大学側の要望はとても細かいものだった。屋内でのミーティングは行わない、クラブバスは定員の半数乗車で「3密」を回避。授業中においてはソーシャルディスタンスの徹底、手洗いの徹底、使用するゴルフ用具の消毒の徹底、さらにレストランでの食事は一般来場者と引き離す等々。様々な要件をクリアして、ようやく開催にこぎつけた。 先生方も大変なご苦労をされたことと推察する。もしも授業でクラスターが発生すれば責任問題になりかねず、相当な覚悟を持って授業開催に踏み切られたことだろう。国内約800大学は、少子化の波をもろに被り、大半が定員割れの状況と聞く。今後、廃校や統廃合が進む中で大学教員のリストラも深刻化する。ましてコロナ禍でクラスター感染が発生すれば、わが身が危うくなるのは必定だ。 一言で「覚悟」と前述したが、そんな諸々を考えると、私たちゴルフ場側も中途半端なことは絶対にできない。改めてそう決意したが、同時に酷暑期の熱中症対策にも万全を期した。こまめな水分補給はもちろんのこと、以前小さなブームを起こした「ファン付き日傘」を全員に貸し出し、「シャツクール」をスプレーし、氷や塩飴も随時補給するなど、考え得る万全の態勢で授業に臨んだのだ。 <h2>鬱屈晴らす青空授業</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2021/11/IMG_0425.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-68913" /> 参加学生は例年の半数以下の12名だったが、よく参加してくれたと思う。クラブバスでの移動中、乗車している学生にこれまでのコロナ禍生活を聞いてみた。 「授業もなく、ずっと自宅に引きこもっていた」「どこにも遊びに行っていない」「久しぶりに身体を動かせる!」といった声が多く、学生たちも悶々としたコロナ下生活を過ごしていたようだ。 ゴルフコースの「青空授業」で、そんな不自由な思いを少しでも晴らせたなら嬉しい限りだ。授業はケガもなく無事終了。その後も新型コロナウイルスの感染者が出なかったかと心配していたが、9月に入って大学側から当期の見積り要請があったので、胸をなでおろした。 ちなみに一人当たりの参加費は昼食のカレーライス等を含め3000円(税別)である。 <h2>忘れていた傘</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2021/11/IMG_9744.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-68916" /> 2020年夏の「Gちゃれ」。ソーシャルディスタンスの確保と熱中症予防で活躍したのが「ファン付き日傘」であった。10年ほど前にブームとなって、ネットでも売り切れ続出で値段が吊り上がったので、覚えている読者も多いだろう。 これを当時、先代社長が「全カートに常備せよ」と命令を下した。私はエッと驚き、瞬時に計算を働かせた。この日傘、当時の価格で1本6000円ほど。60台のカートに4人分で計240本。締めて144万円也。ありえない額である。 そこで私は「メーカーに在庫がない」とごまかして50本だけ仕入れ、酷暑が過ぎるのをひたすら待った。翌年から、忘れ去られた高級日傘は倉庫に眠り続けていた。 そのことをふと思い出し、コロナ下の「Gちゃれ」で倉庫から引っ張り出した。当の日傘たちもこんな形で出番がまわってくるとは、思いもしなかったろう。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2021年11月05日

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