高齢者に人気のスポーツのうち怪我の割合が最も高いのはゴルフ
2025年10月に権威あるスポーツ医学誌Orthopaedic Journal of Sports Medicineに公開された論文(Andrew Qi et al., 2025)に、米国で高齢者に親しまれるスポーツにおける整形外科的損傷の定量化に関する研究が掲載されている。
この研究では、米国事故情報監視システム(NEISS)の10年分(2014年~2023年)のデータベースが分析され、米国の高齢者に人気の12種目において合計5,561件の症例が確認された。
その結果、ゴルフの怪我の割合が最も高かった。
怪我の割合が多い順では、ゴルフ(22.8%)、ピックルボール(17.0%)、テニス(13.4%)、ウエイトリフティング(12.9%)であり、負傷患者の平均年齢は67.3歳(±8.6歳)であった。
中でも、ゴルフ参加者の平均年齢は71.2歳(±9.9歳)で最も高かった。
2014年以降、ピックルボールの怪我が急増しており、ここ数年ではゴルフを上回っている(図1)。
図1.米国における2014年~2023年までの高齢者に人気の12スポーツにおける整形外科的傷害の発生率(Andrew Qi et al.,2025)
ゴルフ場での心停止の平均年齢は64.6歳
上記とは別の研究(2026年2月公開のJournal of the American College of Emergency Physicians Open)では米国ゴルフ場での心停止の状況についてまとめられた論文が掲載されている(Bret Gustafson et al., 2025)。
それによれば、2020年から2023年までの4年間において、米国CARESデータベースがカバーする406のゴルフ場における病院外心停止(OHCA)は476件確認され、患者は主に男性(91.4%、n=435)および白人(85.1%、n=330)に多かったとされている。
患者の平均年齢は64.6歳(±15.5)であった。
この研究の著者らによれば、ゴルフコースでのOHCA発生時の状況や予後、その後の生存結果について示された先行研究が殆ど報告されていないことから、安全にゴルフを楽しむための基礎資料としてこの研究をまとめる意義があるとしている。
ゴルフ場での心停止における生存率は30.5%
米国のゴルフ場で2020年~2023年までに発生したOHCA症例476件のうち、73.7%(n=351)の患者が心肺蘇生(CPR)を受け、24.6%(n=117)に対してAED(自動体外式除細動器)が用いられたが、その生存率は30.5%(n=145)であった。
なお、生存者の97.2%(n=141)は良好な予後であったとされている。
パブリックコースでのAED使用率が低い
この研究の著者ら(Bret Gustafson et al., 2025)によれば、AED使用率はパブリックコース(19.7%)よりもプライベートコース(32.1%)で有意に高く(p=0.03)、パブリックコースで起きた心停止はプライベートコースに比べ生存率が低かったとされる。
また、PGA of Americaはゴルフ施設に「最低2台のAEDを設置」を推奨しているが、これらの勧告がAED使用に効果を及ぼしたかどうかや生存結果に与えた影響は不明とされる。
起伏の多い日本のゴルフ場では各カートへのAED搭載が必須
この研究(Bret Gustafson et al., 2025)の報告では、米国ゴルフ場で発生した心停止476件のうち、CPRを受けたのが351件、AEDが用いられたのが117件であり、死に至らなかったのは145件(生存率30.5%)であった。
日本のゴルフ場に目を向けると、平坦な丘陵タイプのコースよりも、いわゆる山岳コースや斜面が多く起伏が激しいゴルフコースの方が多い。
そのため、とりわけAEDの備えと、とっさの場面でためらわず使用することが必要である。
特に、カートへのAEDの搭載は必須だろう。
例えば、山梨県の上野原カントリークラブではカート1台おきにAEDを搭載するなど、安全対策が進んでいるゴルフ場も見られる。
セカンドショットは危険がいっぱい
ティーショットやパッティングなど、緊張を伴いやすい場面では、激しい身体活動を伴わなくとも心拍数が急上昇しやすい。
例えば、よいスコアのかかったパッティング時にはプレッシャーがかかるが、その緊張は心拍数や血圧の上昇として現れる。
特に、ミスショットした後の「セカンドショット」前後の危険性が指摘されている。
要するに、ティーショットを右や左に曲げてしまったストレスに加え、ボール地点まで山を上ったり谷に下りたりと激しく動くことで、ショットの際に上昇した心拍数や血圧をさらに上げることになる。
そして、息が上がっている状況ではスイングし難いため、多くの場合はアドレスに入ると呼吸数や換気量を落としてショットをしようとする。
そのため、さらに心臓には負担がかかる。
また、ショットの瞬間(インパクト前後)は一瞬息を止めているため、一時的に心拍数や血圧は急上昇する。
図2.上野原カントリークラブのAED搭載カート(2024年3月25日、北徹朗 撮影)
日本のプレースタイルは血圧を変動させやすい
12月~3月頃までにかけては、いわゆるヒートショックが発生しやすい季節でもある。
日本のゴルフ場では、ハーフターン時に屋内で食事を摂り、ホールアウト後に入浴、15時以降の外気温が下がり始めたころに帰宅するパターンが一般的である。
プレー当日の気温の状況によっては血圧が上下し、心疾患などを引き起こしやすくなる可能性があるため、その点では米国よりも注意や備えがなおさら必要であろう。
参考文献・参考資料
1)Andrew Qi et al.,(2025)Sports-Related Orthopaedic Injuries in the Older Athlete: A 10-Year NEISS Database Analysis, Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2025 Oct 15;13(10):23259671251360439. doi: 10.1177/23259671251360439.
2)Bret Gustafson et al.,(2026)Cardiac Arrest Care on United States Golf Courses-Up to Par Yet?. Journal of the American College of Emergency Physicians Open, Volume 7, Issue 1, 100278, February 2026
3)PGA of America:Save a life with heart safe protocol, https://www.pga.org/CPR/save-a-life-with-heart-safe-protocol
4)北 徹朗(2024)カート1台おきにAED搭載(上野原カントリークラブ, 2024年3月25日撮影)X, https://x.com/Actionresearch_/status/1772989034706407907(2026年2月26日確認)
5)吉原 紳(2010)セカンドショットは危険がいっぱい ゴルフ場での突然死を防ぐ, ダイヤモンドオンライン, https://diamond.jp/articles/-/10069(2026年2月26日確認)
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この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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