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    ハッシュタグ「上を向いて歩こう」記事一覧

    時代に合わせたデジタルとアナログの両立 時代に合わせて、デジタル化をとことん推し進めるべきか。それとも大事なことはアナログとして残すのか……。ここ数年、大きな悩みとなっています。 弊社では、労働力不足に直面する中で社内のデジタルシフトを加速させ、フロントには自動精算機を、カートにはよくしゃべるカートナビを、コンペ幹事の打ち合わせにはAIチャットボットをと、あらゆるシーンでデジタル化を導入していますが、他業界でも同様の取り組みが行われているようです。 たとえばホテル業界では、ゲストに過度な干渉や堅苦しいスケジュールを押し付けないという理念から、人をほとんど配置せず、ゲストに自由気ままに滞在を楽しんで頂く〝セルフホスピタリティ〟という概念が誕生し、高単価を付けています。スタッフ含めて誰にも話しかけられない滞在は、プライバシーが保護され、心地よい時間を過ごせるという価値観を重視したためです。 私は平成生まれながら、古き良き世界観が好みで、ゴルフ場の玄関に旅館のような女将さんを立たせて会員様との日常会話を大事にしたい、とアナログの事例にも挑戦したいと思いつつ、時代の要請はデジタルに向かっておりますので、本稿ではデジタルへの取り組みや今後の展開を書き留めたいと思います。 <h2>3DとVRゴルフとの提携</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/08/2507tanimizu2.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-89953" /> VRゴーグルとクラブデバイス 先日、弊社3クラブ(ザ・クラシックゴルフ俱楽部・西日本カントリークラブ・佐賀クラシックゴルフ俱楽部)では、シミュレーションゴルフを展開する企業3社と業務提携を交わしました。 最初の提携企業は、本誌で既報されたゴルフゾン社との取り組みです。同社はシミュレーションゴルフの最大手で、ソフトには多くのゴルフ場映像が内蔵され、インドアでプレーを楽しめます。その映像に、弊倶楽部3コースを加え、街中のインドアで体験してもらう。九州以外の大都市圏でPRできるメリットがあります。現在、ドローンによるコース測量まで完了し、来年度には3コースが搭載される予定です。 その本誌記事を読んだ関係各社から問い合わせがあり、スカイトラック社や、NTTデータ社が関連するバーチャルリアリティー(VR)機器「EnonoGolf」とも業務提携を交わしました。多くのゴルファーが街中で日常的に弊社のコースを目にし、体験することは、言うまでもなく認知度向上につながり、中長期的に売上貢献となるであろうと考え、積極的に同領域の企業と連携しております。 シミュレーション施設からゴルフ場への具体的な送客設計は、今後詳細を詰めますが、シミュレーターでプレーした後にスクリーン上にQRコードが表示され、それを読み込むと、ゴルフ場のプレー割引券が発行されるなどが想像できます。 それ以外では、新人キャディの教育に「EnonoGolf」のVRが有効ではないかと企んでおります。同社のVR映像は臨場感があり、実際にゴルフコースを訪れたような感覚になります。18歳の新人キャディにVRゴーグルを装着し、講師はPCで共有映像を見ながら、レイアウト説明やバンカーまでの距離等の指導を行う。グリーンのアンジュレーションは実際のコースで実践教育をした方が合理的だと思いますが、全体像の把握にはVRで十分でしょう。 異業種においても、航空機パイロット等、高度で専門的な業種はVRで訓練を行っているようです。これまでキャディは、独り立ちまでに3ヵ月以上の時間を要し、30度以上の気温の中、先輩キャディの背中を追って身体で覚え込ませました。しかし従来の教育スタイルは令和の若者には非常に厳しく、その緩和策の観点でもシミュレーションゴルフ領域との協業は可能性があるはずです。 <h2>ギグワーカーの活用</h2> ゴルフ場事業の人手不足が深刻化する中、タイミー社のマッチングサイトを用いて、ギグワーカー(企業に所属せず短期・単発の仕事を請け負う)を労働戦力にする取り組みも進めています。 先般、ファストフードチェーンSUBWAYは店舗スタッフ全員がタイミーという気鋭な運営コンセプトを発表しましたが、マネジメントができる層を中核として、残りはAI・ギグワーカー・アウトソーシングといった組織図で運営する会社が年々増えると思われます。 弊社では、ゴルフ場のコース管理部門(建設業務は不可)と料飲部門でギグワーカーを積極活用しており、運営維持とコスト削減の一体化を目指します。ギグワーカーは従来の雇用形態と比べ、年間を通してみれば、10%程度人件費減少が見込めます。 そこで先頃、キャディをタイミーのサイトで募集しました。〝カートドライバー体験会〟という題目で「時給を払うので体験会に来てください」と謳うもの。1日3時間(時給1000~1100円)の拘束で、2時間はコースで先輩キャディに帯同し、残りの1時間はキャディの魅力や業務内容のオリエンテーション。タイミーはその場で採用スカウトが許されているプラットフォームなため、数名の採用にこぎつけました。 また、いきなりキャディとして採用すると負担が大きいので、業務範囲を制限したカートドライバー(カートの運転を主に行う)という職業を設け、来場者から同サービスについての感想を集めます。数日の研修で独り立ちするため、既存のキャディと比べれば見劣りすると思いますが、タイパを重視する令和の世代は3ヵ月の研修に耐えられないため、このような発想が必要かもしれません。ゴルフ場のあらゆる仕事がギグワーカーになっていく未来を予見しつつ、その波に対応できる体制を構築していきます。 <h2>コースにはアナログを残したい</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/08/2507tanimizu3.jpg" alt="" width="788" height="538" class="size-full wp-image-89954" /> 佐賀クラシックGCのウィッカーバスケット 時代はデジタルに向かい、人と人との関係はより浅く瞬間的なものに変わっていく中で、せめてゴルフコースだけはアナログで情緒的かつ歴史的な価値観を継承したいと思っています。マスターズトーナメントのスコアボードが未だに電子掲示板にならない話は有名ですが、改めて委員会のセンスに共鳴いたします。 個人的な趣味の一環でウィッカーバスケットをつくり、パッティンググリーンに挿しています。数年前にスコットランドのプレストウィックGCで本場のバスケットを観たことがきっかけで、その制作を始めました。大半の社員と会員様は、 「無駄なものをつくって、仕方がないやつだ」 とあきれているかもしれませんが、ゴルフコースには、手間暇をかけて、クラフトマンシップを感じさせるアナログ的な価値観が似合うように思います。 デジタルの波に乗りつつ、アナログな世界観も忘れない。両立のゴルフ場運営を模索してまいります。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年08月24日
    今を遡ること4年半前、2020年10月に、福岡・ザ・クラシックゴルフ倶楽部は、倶楽部創設3回目のメジャー大会「日本女子オープン」(優勝 原英莉花プロ)を開催しました。 次回のメジャー誘致は3年後の2028年、同じく日本女子オープンです。18ホールズの改造を昨年終え、現在は大会コースを急ピッチで養生しております。 本稿では、過去大会の経験や次回大会に向けた取り組みを中心にご紹介します。 【前回大会の記憶】 女子オープン2020年大会は、忘れもしないコロナ禍で、一般非公開試合となりました。地元のギャラリーと喜びや興奮を共有できなかったことは残念ですが、様々な学びを得られました。 女子オープンの開催コースとなる条件は日本ゴルフ協会(以下、JGA)の考えの下に設計され、コースレイアウトや周辺のパーキングスペース、場内の敷地面積、ドライビングレンジの大きさ等、多くの項目があるようです。 日本のゴルフの総本山であるJGA主管の大会だけに、世界基準と照らし合わせながら、日本のゴルフをより良く発展させるとの意思が込められています。 具体的には、パワーゲームがプロ競技の世界潮流となる中、本大会ではオープン史上最長セッティングを更新する6761ydsに設定。 空中ハザードとなる木々の伐採やコースからの景観を高めるコース外周の伐採、IP250ydsを想定したFWバンカー位置の見直し、更にはゴルフ場の基本となるコース内のOBエリアを撤廃し、完全に外周のみをOBと定義しました。 実は、OB杭も全て抜き取り、藪の中に設置していたイノシシフェンスをOBラインと定義したのです。OB杭がゴルフ場からすべて抜かれたナショナルオープンは記録上初めてと聞いております。 OB杭の抜き差しは、コース管理上、非常に大変な作業で、復旧に1週間は要しますが、OB杭が全く見えないゴルフ場はコースのビジュアルをより良く見せるように思います。 FWラインも大きく広げました。これではゲームを簡単にしてしまうとの意見もありましたが、この作業の本質は、プレーヤーに対して多様な攻略ルートを用意したということです。 従来の国内プロトーナメントは、狭いFWに長いラフ、ティーショットの落とし所は1点のみのセッティングが目立ちますが、全英・全米という世界のメジャーでは、ロングヒッターを中心に、アマチュアが考えもしない攻略ルートを構想しており、それが観る人を熱狂させています。 プロスポーツはエンターテイメントであることをいつの時代も忘れてはならない。本大会では、その点も一つの学びとなりました。 【2028のプロモーション】 さて、来たる2028年の女子オープンに向けて準備を進めている最中ですが、初期段階として先頃プロモーションマークを作成しました。 マークのモチーフは、福岡県に所縁のある歴史上最強の女戦士「神功皇后」です。神功皇后は、日本武尊の第2子・14代仲哀天皇の皇后で、15代応神天皇の母とされます。 神と交感する能力を持つ巫女的な女性であったとされ、神功皇后についてのエピソードは、どれも伝説的です。 古事記・日本書紀にもその名が記され、卑弥呼と並ぶ古代日本の象徴的なヒロインのひとりであり、日本で初めて紙幣に肖像が描かれた人物としても有名です。 ロゴやマークは、最も観客の目につくビジュアルであり、その商品の印象までも左右するもの。 過去のナショナルオープンを振り返ると、マークへの好感度は、当然オフィシャルグッズの売上を高めます。 詳細な数字は控えますが、17年の岐阜関カントリークラブの「織田信長」や23年の芦原ゴルフクラブの「恐竜」は大変な人気を誇り、物販も盛況であったと聞いております。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/07/2505tanimizu2.jpg" alt="" width="788" height="530" class="aligncenter size-full wp-image-88924" /> 昨年度、弊社を拠点に練習しているプロゴルファーの清水大成プロの応援として、パインハーストNo2で行われた全米オープンの会場を訪ねましたが、大会のプロモーションマークのモチーフとなっているパターボーイ(小さな少年像)は大変な人気で、大半のギャラリーがロゴ入りのアイテムを持っていました。 このような経験から、マークのモチーフは、木や花等の自然物ではなく、思い切ってキャラクターを採用したのです。 現在、同マークの看板やアイテムの製造に取り掛かり、47(フォーティセブン)とのコラボキャップも開発して、販売を開始しています。 ゴルフを遊びつくした成熟したゴルファーは、揃って国内外の名門クラブやナショナルオープンのロゴが入ったゴルフウェアを愛用している印象がありますが、私どももそのお気に入りの中にスタメン入りすることが目標です。 【ゴルフ市場活性化の鍵を握るスタートアップ】 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/07/2505tanimizu3.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-88925" /> スポンサーの費用効果を可視化するサービス「Brand Insight」 私どもが重視するゴルフ場ビジネスは、プロゴルフとは切っても切れない関係です。 それは、会場を提供することによるPR効果もありますが、プロ団体がスター選手を作り出し、それがテレビに映ることによって、ゴルフギアが売れ、ゴルフ場でプレーするモチベーションにつながってくるからです。 一言でいえば“市場の活性化”を論理的に考え、その上で弊社は積極的にプロ団体に協力をし、地元の若手ゴルファーを応援する取り組みも年々加速しております。 先般、私どもの関連会社は、福岡に拠点を置くスタートアップ、株式会社NextStairs社と業務提携を交わしました。 同社は、画像認識AIの技術を用いて、スポーツにおけるスポンサーの費用対効果を可視化するサービスを提供しています。 可視化する技術の具体的な一例をあげると、従来、人間がストップウォッチを握って計測していたスポーツ中継におけるスポンサーロゴの露出秒数をAIを用いて計測し、 更には画面上のロゴサイズ、ロゴの位置、連続露出、多重露出といった項目も考慮して、より迅速に、そして実態に近いスポンサーシップの広告価値を算出するものです。 私も経験がありますが、興行のスポンサーを依頼するとき、多くの場合はお願いごとになってしまい、 「この金額を出して、いくらの効果が期待できるの?」 と質問されると、回答に困ることが常態化しており、このような不合理を解決するのが同社のサービスです。 ゴルフ市場を伸ばしていくために、プロゴルフは一つの大きなコンテンツであり、それをお願いビジネスにしないこと、社会貢献という言葉に逃げないことが今求められています。 微力ながら、弊社はこの切り口を重視して、市場活性化における役割を考えてまいります。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年07月20日
    本稿では、弊社ザ・クラシックゴルフ倶楽部(福岡県)が2028年の「日本女子オープン」開催に向けてコースを強化すべく、2年間に及ぶコース改修プロジェクトを実施した裏側をご紹介します。 ザ・クラシックGCは過去、国内メジャー大会を3回開催しています。直近は2020年の日本女子オープンで、九州での同大会開催は32年ぶりのこと。コロナ禍で一般非公開となり、静寂に包まれたコースで大輪の花を咲かせたのはメジャー初優勝となった原英莉花選手でした。  大会終了後、弊社は主催団体の日本ゴルフ協会に、再度大会誘致をしたい旨を伝え、ありがたいことに了承して頂きました。今度は一般公開をして、ギャラリーの歓声に包まれる大会にしたいと念願しています。 前回のこの連載に書きましたが、弊社のメジャー大会誘致はロマンやビジョンという精神論のみならず、経営戦略上の意味合いも大きいと言えます。少子高齢化が進む日本の人口構造を考えれば、特に地方都市のゴルファー減少は自明の理で、福岡も例外ではありません。この状況から脱するには、関東や関西など大商圏のゴルファーを福岡に誘引して、商圏拡大を図る必要がある。メジャー大会の開催は、ザ・クラシックGCの知名度を全国区にするための施策なのです。 選手が口を揃えた20アンダー <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/04/2501tanimizu2.jpg" alt="" width="788" height="591" class="size-full wp-image-87191" /> ザ・クラシックGC No,7 レダンホール 前回開催した2020年の大会で忘れられない光景があります。 トーナメントウイークに入り、注目選手たちが記者のインタビューに応えていました。記者から「優勝スコアはいくつになりそう?」と質問された際、多くの選手が「20アンダー」と口を揃え、当コースの印象についても「日本女子オープンっぽくない」「練習ラウンドをしましたがよく覚えていません」など、我々にすれば、忸怩たる思いを禁じえない言葉が並んだのです。 国を代表するナショナルオープンは、最高難易度のゴルフ場で行うという印象が強いだけに、優勝予想が「20アンダー」とは・・・。原選手の優勝スコアは、予想に4打足りず16アンダーでしたが、ビッグスコアに変わりはありません。 そこで大会終了後の月曜日、我々はコースレイアウトの改善を決意したのです。数か月後、親交のあったスコットランド人のベンジャミン・ウォレンにコース改修の設計を依頼します。マスタープランの策定期間を経て、2023年1月より2年間にわたる大改修に着手。初年度はアウト9ホール、次年度はイン9ホールを改修しました。 若手設計家のベンジャミン・ウォレンとの出会いは、R&Aメンバーの紹介がきっかけでした。彼はスコットランドでも特に美しい港町、ノースベリックに生まれ育った生粋のリンクスゴルファーです。改修に入る前年、私は彼と一緒にロイヤルトゥルーン、ノースベリック・ウエストリンクス、ミュアフィールドやプレストウィックあたりを視察して、多くのことを学びました。 <h2>ゴルフ場のレイアウト評価</h2> ゴルフコースの評価は、3つの概念が重視されると言われます。 <strong>ショットバリュー</strong> ゴルフゲームの基本であるリスク&リワードの思想が反映され、リスク覚悟のショットに成功すると、次のショットで恩恵を受けられる <strong>デザインバラエティ</strong> 距離や形状、ハザードの位置などが変化に富み、多様な戦略が備わっている <strong>メモラビリティ</strong> ホールごとに見た目の個性があり、周辺の景色とコースが一体化してゴルファーの記憶に残る この3つを満たすため、本改修では全てのグリーンとバンカーを取り壊して1から造り直しました。ランドスケープを整えるためのコース外周の木々の伐採は、今も継続中。張芝の延べ面積は約15万m3に及び、芝生の仕入から張芝、養生までの大部分を自社で行ないました。二度とないであろう大規模改修は、終わりの見えない作業で途方に暮れ、コース管理スタッフと共に地を這って張芝に従事したことは貴重な経験です。 多額なコストも掛かりました。国内における改修事業の相場は、バンカーで3億〜4億円、バンカー及びグリーンで6億〜8億円と言われます。海辺に近い砂ベースのコースの造成は、排水管を入れなくて済むので安く仕上がりますが、著名設計家への依頼は設計料だけで1億円近く、さらに彼らは海外からシェイパーチームを連れてくるため旅費や欧米基準の日当でコストは跳ね上がります。弊社のプロジェクトに集まったシェイパーは5名で、一人当たり日当は650ドル(9万7500円程度)。日本人のフリーシェイパーの3倍です。優れた才能には高い報酬を惜しまないという、日欧の文化の違いも実感しました。 <h2>一生涯ゴルフを楽しむ</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/04/2501tanimizu1.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-87190" /> ベンジャミン・ウォレンとその仲間たち 改修にはクラシック理論を取り入れました。この理論は、ゴルフコース設計の原点とも言える戦略性に優れた8つのレイアウトを指します。ノースベリック・ウエストリンクス15番par3の『レダンホール』、セントアンドリュースオールドコース17番par4の『ロードホール』が代表的。スコットランドで学んだ設計家たち(C・B・マクドナルド他)が米国に向かい、世界トップ100に入るコースを沢山造りましたが、彼らはこのクラシック理論を基盤としながら戦略性のある美しいコースを後世に残しています。 ザ・クラシックGCのアウト7番のpar3は『レダンホール』を採用し、会員から評価を得ています。この『レダン』は、グリーン周りがバンカーで囲まれ、ティーイングエリアに対してグリーンが斜め45度を向いている。グリーン右サイドは右から左に大きく傾斜し、左サイドは手前から奥に傾斜しています。 これらの改修で次回の日本女子オープンに臨み、大商圏からの誘客を目指しますが、別の視点では、弊社が考えるゴルフの理想を追求することも大きなテーマ。それは、一度ゴルフを始めた人を、死ぬまでゴルフに夢中にさせることです。 最近、米国の知人に、アメリカ人ゴルファーの関心事を尋ねたら、こんな答えが返ってきました。 「ポッドキャストでゴルフコース設計者の話を聞く人が増えている」 ポッドキャストはインターネットラジオです。米国の熱心なゴルファーはクラブセッティングやアマ競技を一通り楽しんだ後、コースレイアウトの歴史や設計家についての研究を始めており、ポッドキャストで情報を得ているそうです。 ゴルフ場開発が止まった日本では、上田治氏や井上誠一氏に続く次世代設計家の輩出が目立ちませんが、世界ではギル・ハンスやトム・ドーク、カイ・ゴルビーなどの気鋭設計家が活躍中。彼らについて学ぶことは、ゴルフ人生を文化的で豊かなものにし、成熟したゴルファーを生涯夢中にさせることができる。私はそのように考えているのです。 ザ・クラシックGCのバンカーを担当したクイン・トンプソンのポッドキャストはこちらから。 <a href="https://podcasts.apple.com/jp/podcast/the-tie/id1583596139?i=1000551517712" rel="noopener noreferrer" target="_blank">Quinn Thompson-Designer and Craftsman of Bunkers</a> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/04/2501tanimizu3.jpg" alt="" width="788" height="300" class="size-full wp-image-87192" /> ザ・クラシックGCのバンカーを担当したクイン・トンプソンのポッドキャスト特集 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年04月20日
    連載の初回となった9月号では、弊社の成り立ちを中心に執筆しましたが、本号では経営戦略の基本となる考え方を述べてまいります。 弊社は、福岡(ザ・クラシックGC、西日本CC)と佐賀(佐賀クラシックGC)で計3つのゴルフ場を経営しております。本社を置く福岡県は、福岡市を筆頭に人口が増え続けている街がいくつかあります。その要因は大学等の教育機関の充実、空港や新幹線駅へのアクセスの良さ、天神ビックバンや博多コネクテッドの二大プロジェクトの推進等で九州他県からの流入人口が多いことが挙げられます。 ザ・クラシックゴルフ俱楽部からは車で40分(距離30km)で中心地の福岡市中央区天神に辿り着きます。この街は近年、リッツカールトン福岡の開業に始まり、国内最大規模のシャネルの出店や、東京に次いでグーグルが支店設置を発表する等、将来性を感じさせる事業が次々と展開されています。 しかし、福岡県全体としては、2010年から人口減少傾向に入り、2020年は509万人、2030年には495万人と推測され、同年の65歳以上割合は30.4%(日本の地域別将来推計人口2018年より)と推計されています。このような状況を受け、近年弊社は地元やその近隣の「小商圏」のシェア獲得に加え、関東や関西等の「大商圏」から顧客誘引を図ることが経営課題となっています。 小商圏対応と大商圏対応 ゴルフ場の売上高は端的に、 「商圏内ゴルフ人口×獲得シェア×一人当たり消費金額」 で表せます。そこで、競合対策を打ってシェア獲得に励み、ショップやレストランでもう一品の提案をして客単価アップに努めますが、そもそもの母数となる目の前のゴルフ人口が減れば売上の維持・拡大は見込めません。従来は小商圏対応としてメンバーやコンペ幹事など、地元のお客様への密着軸(個人名での呼びかけやハレの日のお祝いなど)を磨き、売上の基盤とすることで十分でしたが、2015年前後より、減少する小商圏内人口に危機感を覚え、関東や関西などの大商圏からゴルファーを誘引し、自然減する客数を補う必要性を感じてきました。 このような単純な思考により、大商圏対応として、プロのトーナメントを開催し、全国的な知名度と価値を上げる運営に舵を切り始め、目安として、小商圏の売上を8割・大商圏の売上を2割に設定しています。大商圏優先に走りすぎると、コロナや災害時で来場者が激減するため、このような配分を考えています。 <h2>日本シニアOPと日本女子OP</h2> 福岡には、客単価4万円のにぎり鮨を提供する名店がいくつかあります。そのカウンターに並ぶのは地元の顧客に加えて東京や大阪の富裕層です。その一方で、大衆食堂に目を向ければ、地元の顧客が主な客層となります。つまり、単価が取れる、換言すれば付加価値のあるお店にならなければ、商圏拡大は見込めないということです。 弊社のザ・クラシックGCでは、経営課題として商圏拡大に取り組んでおり、その戦術として、2017年に日本シニアオープン、2020年に日本女子オープンを誘致して、「メジャートーナメントコース」という肩書きを全国のゴルファーに訴求しました。写真映えするような海も見えず、歴史が浅く、日本のトップ100選にも入っていないコースでは、この方法しか思いつかなかったというのが正直なところです。しかし、トーナメント誘致後の2018年頃から現在まで、毎年2000万~3000万円の売上伸長があり、一定の成果が確認できます。 全国のお客様を誘引する商圏拡大の手段としては、有料広告を打ったり、代理店と提携したりと、様々な取り組みが考えられますが、弊社は広告予算を設けていないため、トーナメントのようなニュースバリューのあるコンテンツをつくり、結果として広く伝わるオーガニックな宣伝広報を心掛けています。 <h2>入会動機の最大化と客層の最大化</h2> 先ほど、ゴルフ場の売上高は「商圏内ゴルフ人口×獲得シェア×一人当たり消費金額」で表されると書きましたが、弊社にはもうひとつ、参考にしている式があり、それは、 「入会動機の最大化×客層の最大化」 です。弊社はこれまで、年商2億円程度の小さなコースから10億円に達する大型コースを経営してきましたが、その「年商差」はこの式で説明できます。年商が小さなコースは入会動機が少なく・客層が狭い。年商が大きなコースは、入会動機が多様にあり・客層も広い。簡単に例を述べれば、 年商2億円のコースは、 <strong>入会動機</strong><br /> 1)メンバーフィで安くプレイできる <strong>客層</strong> 1)初心者 一方で年商10億円のコースは、 <strong>入会動機</strong> 1)メンバーフィで安くプレイできる 2)館内設備に鉄板焼やサウナがあり充実している 3)国内提携コースがあり、ゴルフ旅が充実する 4)トーナメントを開催しており、ステータスを感じられる <strong>客層</strong> 1)初心者 2)中級者 3)上級者(トップアマ) 4)エリートプロゴルファー となります。下に三角形の図を載せましたが、ゴルフ場の売上を伸ばすためには、この三角形を大きくすること(底辺:入会動機×高さ:客層)だと考えています。【底辺拡大】として、ゴルフを安くプレイする以外にいかに入会メリットを提示できるか。【高さ】として、初心者もなんとか挑戦することができ、セッティングに応じてエリートプロゴルファーも満足できるコースの汎用性を、いかに高めるかが弊社のもう一つの経営課題となります。 ハザードが多すぎる、全ホール砲台でグリーンが小さくパーオンできない等、難易度を高めすぎると「もう二度と来ない」と言われてしまうので、中途半端と評価されてしまうこともありますが、商売としてはコースの汎用性はとても大切だと考えています。 本稿に記したことの実践として、2028年の日本女子オープン誘致や、スコットランドの造成家による2年間のコース改修、他のグループコースにおいてもプロツアーのホストに立候補しております。九州という中央から離れた街で、このような挑戦をすることはとても難しいと感じていますが、挑戦は最大の防御という言葉を胸に、ゴルフ事業に邁進してまいります。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年01月05日
    クラシックマネジメントグループ株式会社で取締役副社長兼総支配人を務める谷水大祐と申します。弊社は九州を中心にザ・クラシックゴルフ俱楽部、佐賀クラシックゴルフ倶楽部、西日本カントリークラブを運営しており、福岡市内ではトラックマンを装備したインドアゴルフスクール&レンジ「Golf Days」の運営等を行う独立系の中小法人です。 関連会社にはスポーツタレントのエージェント・マネジメント業務を行うCMGスポーツマーケティング株式会社があり、代表取締役を務めております。清水大成プロ、後藤未有プロ、菅楓華プロ、リハナプロらトップアスリートの後方支援が主業務となります。 実は、前職でコンサルティングファームに在籍していた2017年に、本誌で「異業種から学ぶゴルフ界再考術」というタイトルで執筆経験があります。机上でゴルフ界を考えていた時代です。 現在はゴルフ場の現場で飲食の調理以外、ほぼすべての業務に従事して四苦八苦の日々。自然相手のゴルフ場経営は思い通りにならないのが常であり、当連載でも机上論ではなく、現場に基づく挑戦記を執筆してまいります。 タイトルの「上を向いて歩こう」は、ゴルフ場の価値を如何に高めるかを意識したものです。弊社のザ・クラシックGCは2020年「日本女子オープン」を開催し、2028年も開催予定。佐賀クラシックGCはJLPGA認定コースとなりますが、これらも価値向上の一環にほかなりません。 <h2>当社の始まり</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/12/202409tanimizu2.jpg" alt="" width="1000" height="612" class="aligncenter size-full wp-image-84347" /> 当社は、私の曽祖父である谷水信夫が、1961年に京都と滋賀の境の山頂で小さなゴルフ場を開発したことに始まります。 信夫は1912年和歌山に生まれ、戦前は大阪で小さな鉄工所を営み、その後空襲被害の少なかった京都に移りました。京都ではお米のポン菓子の製造機業を展開し、当時珍しかった割賦販売で、関西では8割近いシェアを獲得したとの記録があります。食料危機の改善を見越した信夫は、娯楽の時代を予見して、映画館や旅館業へと事業転換しています。 1957年、霞ヶ関カンツリー俱楽部で開催されたカナダカップを信夫は現地で観戦します。中村寅吉・小野光一組がサム・スニードら世界の名手を抑えて優勝した瞬間、ゴルフブームの到来を予感して、帰りの電車でゴルフ場の開発を決意したそうです。 1961年、滋賀県の山頂で県内2例目のゴルフコースとして皇子山カントリークラブ(設計 谷水信夫)を開場。ゴルフ場としては土地が狭く、開発工事を引き受けてくれる業者もおらず、大学でゴルフをしていた二代目谷水雄三との二人三脚でゴルフ場を設計しました。苦労して資金を調達し、信夫の個人資金も投じて、18ホール・5200ヤード弱のコースを造り上げました。(※2021年皇子山CCは他社へ譲渡) <h2>関西から九州の地へ</h2> その後、銀行から広大な土地の情報を聞き付け、九州の開発に着手。1975年、福岡県北部に西日本CC(設計 ゲーリー・プレーヤー)を開場。1990年には同じく福岡県北部の丘陵地にザ・クラシックGC(設計 鈴木正一/改造 ベンジャミン・ウォレン)を、6年後には姉妹ブランドの佐賀クラシックGC(設計 中村享治)を開場します。いずれも「接待型」がコンセプトで、サービスや食事、館内の設えにこだわりました。 社内に「感動創造課」を設置したところに、弊社の経営方針の一端が表れています。お客様のおもてなしを第一に考える専門部署で、リッツカールトンのゴールドスタンダードに憧れを抱きながら、お客様の心に残るコミュニケーションに注力するのが同課の役割。 近隣には古賀GCや門司GC等、著名設計者による名門があります。歴史があり、確固たる会員組織の団結があり、ゴルフリテラシーも高い。一方で参入する立場の弊社としては、当時の名門が着目しなかったホテルのようなきめ細かいサービスで対抗する、カウンターポジションを目指したのです。 1991年にバブルが崩壊し、1週間に1件ゴルフ場が倒産する時代に突入します。弊社も会員権の償還対応で経営難に陥りました。幸い、事業清算をすることなく代をつないできましたが、ゴルフ業界を取り巻く環境は楽ではありません。人口減少やクラブハウスの老朽化、多様なスポーツの出現等、ゴルフ場業態の好転要素はなかなか見当たりません。 <h2>垂直軸が「背骨」になる</h2> このような状況下、依存する親会社もなく、ゴルフ場単体で商いをしている弊社は、戦略軸の見直しを真剣に行っています。多くの同業者が様々な策を講じていると思いますが、弊社の場合はゴルフ場としての「本筋」(垂直軸)を伸ばすことにこだわっています。 ザ・クラシックGCではメジャー大会の誘致や海外設計家によるコース改修等、本筋を重視。私は前職のコンサル時代に菓子業界を中心に歩きましたが、本筋重視は当時の経験とも重なります。 菓子業の「垂直軸」は美味しいお菓子をつくることです。「水平軸」にはイベントを通じた地域交流や感動接客もありますが、そもそもお菓子がマズければ成果は期待できません。背骨があるから肋骨が機能するという考え方です。 ゴルフ場も同じではないでしょうか。サービスを磨き、交流イベントを行うことも非常に大事だと思いますが、本筋であるゴルフコースを磨かなければ、その他の努力は報われにくいと考えられます。業界のリーダーではない弊社の立場で、このようなことを書くのは気がひけますが、激動のゴルフ場市場を60年以上生きてきた中で肝に銘じていることです。 連載では、小さな会社が女子のメジャー大会誘致に挑戦した戦略的経緯や、スコットランドのデザイン会社と2年間のコース改修プロジェクトを行った体験記等を共有させて頂きます。ゴルフ産業がゴルファーを魅了しつづけ、異業種に負けない市場となることを皆様と目指してまいります。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年12月15日

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