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キャディバッグ製造と生地市場との関係~素材への精通が、デザイン提案の要諦だった~

松浦真也の「現場放浪記」 この記事を書いた人:
 
キャディバッグ製造と生地市場との関係

月刊ゴルフ用品界2017年12月号に掲載された「現場放浪記 第7回」をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。


ゴルフ用品の一大生産拠点である中国の工場現場から、今月よりキャディバッグが出来るまでについてお伝えします。今回はキャディバッグ材料の供給拠点のある、広東省深セン市を訪れました。

キャディバッグ製造と生地市場との関係

①デザインから仕様の決定まで

キャディバッグの製造で最初の作業はデザイン画を含んだ「仕様書」(製品仕様書や納入仕様書ともいう)の作成です。

これは大手メーカーが直接製作する場合、キャディバッグ専門商社が製作する場合があります。製造現場に渡す「仕様書」は、デザインだけでなく詳細な製造指示がなされるため、製造手順や品質管理のポイントなど、発注サイドが理解しておくべき内容も盛り沢山です。

具体的には、
・使用する生地(品番、色バリエーション、ボンディング)
・樹脂成形パーツ(素材、形状寸法)
・縫製の方法(糸の種類、色、太さ、ステッチ)
・刺繍の方法(色や糸の指定、針数)
・口枠とボトム(サイズ、形式、色)
・口枠メッシュ(素材、仕切り材)
・パイピング(種類、太さ)
・ファスナー金具(種類、品番、色)
・ショルダーベルト
・金物(ナスカン、Dカンの詳細)
・内部ポケット(方式、材料)
・付属品(ネームタグ、プライスタグ、取扱説明書等)

これらは主に専門商社がメーカーの意向を受けて、長年のノウハウを基に提案していく場合が多いそうです。

②生地選び

キャディバッグ製造と生地市場との関係

メーカーの企画段階では様々なデザイン素案が検討され、サンプル試作をします。ここで重要なのが生地選び。どのような生地を選択し、どんな色に決定するかは「スワッチ」と呼ばれる素材見本で触感を確かめながら決めていくそうです。

使用したい生地は必ずしもキャディバッグ製造工場で在庫しているとは限りません。特殊な生地、量産実績のない生地はどうしてもサンプル試作のために「生地市場」に出向いて、少量を購入することも多いそうです。

今回、「生地市場」を探し、深セン市にある「華南城市場」を訪れました。

③何でもそろう巨大市場

まず訪れて驚いたのはその規模です。およそ東京ドーム32個分程度の敷地に、あらゆる民生品製造のための素材が揃っています。

バッグ、靴、革製品、住居内装、工芸品や玩具で用いる生地、金具、機械類まで何でも揃っています。例えば、ハンドバッグなどに使う磁石だけでも、専門の卸売店が40軒程度を連ねていました。

キャディバッグで使う生地素材は、PU(ポリウレタン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ナイロン、ポリエステルと大別されますが、それぞれ表面の風合いや柔軟性、厚さ等によって種類は数えきれないほど存在します。例えばPU製の人工皮革であっても表面のシボや風合いによって雰囲気は全く変わります。クロコダイル風からダチョウ風まで、何でもアリです。

生地の卸売店は間口6メートルほどの小規模店が殆どで、おおよそ200軒が長屋のように軒を連ねていました。各店にはそれぞれ得意としている専門材料があるようでした。

ほかにも、パイピング専門店、内部成形パーツに使うEVA(エチレンビニルアセテート)、TPE(熱可塑性エラストマー樹脂)専門店、刺繍糸専門店、チャックの専門店、金具専門店が営業しています。

この市場を巡れば、「なんでも作ることができる!」。良いキャディバッグのデザイナーは頻繁に市場を訪れ、「スワッチ」(素材見本)を貰っていくとのこと。提案力はその数で決まると言えるかもしれません。

④知的財産権保護は?

一方そうした巨大市場には、裏で有名ブランドの模造品を売っているイメージでしたが、近年の中国においては知的財産権を侵害するような製品を製造販売した企業(個人も含め)には厳しいペナルティーが科せられるそうです。罰金どころか廃業に追い込まれるリスクがあるため、「もう誰もそんな商売はやらないよ」と、ある生地卸店主の弁。見たところ全く怪しげな商品や素材は販売されていませんでした。

世界の工場」である中国で、深セン市といえば広東省随一の工業都市。その「顔」である華南城市場では真っ当に商売をしていくのが王道なのでしょう。

⑤デザインから型紙

このような生地市場から調達した材料はサンプルを少量生産するのに適していますが、最初に行う作業は「型紙」作り。仕様書に描かれたデザイン画から実際の製品と同サイズに各パーツの型紙を造ります。

2次元のデザイン画から3次元の袋物の型紙を、大雑把に言えば「ハサミ1本で作る」のですから、相当な経験が必要。縫い代や膨らみは勿論、最終的にキャディバッグになった時の「立ち姿」にこだわり、サンプル一回でメーカーの要求に応えられるようになるには、相当な経験が必要だそうです。

次回は深セン市にあるキャディバッグ製造工場、景恒運動用品有限公司を訪れ、製造の実際についてレポートします。どうぞお楽しみに。


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ライター紹介 ライター一覧

松浦 真也

松浦 真也

日幸物産株式会社 代表取締役社長 松浦真也

1973年、徳島県生まれ。埼玉大学工学部環境科学工学科卒業後、空調機器企業で原子力関連機器の設計に携わる。2003年よりゴルフジャパン販売代表取締役。実店舗経営でオリジナルクラブの製造販売に従事。2005年日幸物産に入社。大手メーカーOEMクラブの開発設計並びに工房支援業務に携わる。2006年、代表取締役社長に就任。現在に至る。

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