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日本の男子ゴルフツアーは「高額賞金」に値しない

三田村昌鳳の「荒ぶる」 この記事を書いた人:
 

月刊ゴルフ用品界2014年9月号掲載
なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。


「タイガーを、いままでの規格、尺度で考えると判断を見誤る。前人の枠組みにあてはまらない新しい規格なんだからね」と語ったのは、『タイガー・ウッズ』の本の著者、ティム・ロザフォートだった。タイガーが出現した時の話である。

確かに、その時代、そのシーンで異次元と思わせる選手が、時代を築くのかも知れない。例えば、ジャック・ニクラスが1962年の全米オープンで初優勝したときも、ある意味で異次元だった。当時、ニクラスは、かなり太っていた。短く刈り上げたGIカット。いまでは想像できない体型だった。

セベ・バレステロスも、異次元だった。

1979年の全英オープンで、セベは優勝している。最終日、16番ホールのティショットだったと思う。大きく右に曲げて、駐車場の中へ打ち込だあと見事なリカバリーが印象的だった。またその翌年、彼は、マスターズに勝ったわけだが、やはり、最終日17番ホールのティショットを左に曲げ、隣の7番ホールに打ち込んでしまう。ピンチのはずのこのシーンの中で、バーディ。

それをクラブハウスのテレビで見ていたニクラスが、思わず「バカな! なんてこった」と叫んだという。そのニクラスも、マスターズ初優勝の時に、ボビー・ジョーンズに同じことを言われている。

マキロイが全米オープンで2位に8打差をつけて初優勝したとき、タイガーは出場していなかったが「僕の22歳のスイングよりもはるかに完成度が高い」とコメントしていた。そして今年、全米オープンから3連続メジャー優勝を果たしたのである。

 

「ダンロップ・スリクソン・福島オープンオープン」の成否

世界のゴルフ界は、観るスポーツとしてのゴルフと、するスポーツとしてのゴルフに鮮やかな明暗を示してきていると思う。

圧倒的なギャラリー数。相応しいフィールドとコースセッティングなど、いまさら言うまでもないけれど、彼我の差がどんどんついて来た。日本の男子トーナメントの凋落ぶりが激しいだけに、余計に眩しく映る。

聞けば、トーナメント数が減少している中で、ダンロップ・スリクソン・福島オープンが新規に開催された。賞金総額5000万円。主催者の中に日本ゴルフツアー機構も入っている。

ところがシード、あるいは上位の選手が集まらなかった。通常の大会では若干名の欠場があって、QTファイナルのランクの25~35位ぐらいの選手に出場チャンスがある。彼らは、その順番を待って賞金を稼ぎたいわけだ。ところが、この大会では、結果的にファイナル順位の120位ぐらいまで落とした。つまり、欠場者が、それだけいたということになる。

理由はいろいろあるかも知れない。その中に、もし、賞金が安いから、という理由で欠場する選手がいたとしたら‥‥。日本の男子ツアー、選手たちはもう末期症状だ。こういう選手に、高額賞金を払うということ自体が間違っている。

世界が、観るスポーツとしてのゴルフが確立されているのに対して、日本は、観るゴルフというくくりがない。もともと日本のトーナメントの生まれ育ちが、米ツアーなど海外とは違っている。1970年代に一気にトーナメント数が増えた。そのとき、ギャラリーを動員するという発想はなかった。

「ゴルフトーナメントのスポンサーになりませんか? テレビ中継すれば、宣伝効果がありますよ」

「いくらかかるの?」

「宣伝料と思えば、高くないですよ」

というような感じで、ゴルフトーナメントをイベントとして扱うなかで、ギャラリー動員、ギャラリー収入、ギャラリーのためのイベントという発想を持ちあわせていなかった。

確かに当時はジャンボ尾崎、青木功、そして中嶋常幸が活躍して、トーナメントは膨れ上がった。その豪華さや賞金総額という面では、である。それがバブルで絶頂を迎え、崩壊後、賞金額が減りスターが不足し、ギャラリー数も視聴率も惨憺たるものになる。

ゴルフゲームの妙味が面白い。戦いの攻防で見せる1打の背景が深い。そんなことではなく、飛んだ、飛ばした。順位に関係なく、アイドル選手や人気(のあると錯覚している)選手ばかりを追う。18ホール、72ホールまでのゲームの流れやその勝負の駆け引きなどは、伝えてくれない。

いつのまにか、ゴルフゲーム、トーナメントというものが、言葉は悪いけれど、AKBや韓流スターを追いかけるような興味本位のギャラリーだけを残してしまったのだろうか。

ボランティア不足

選手の資質にも、大きな問題がある。リスペクトできない。

そんな背景があるから、だと思うのだけれど、普段は男女トーナメントで、こぞってボランティアが集まるのに、52年ぶりに日本で開催される世界アマチュアチーム選手権では、締め切りを過ぎていても集まらない。

もっとも日本ゴルフ協会もパブリシティ不足は否めないけれど、それにしても、と思う。国際試合を開催する土壌が、日本にはないのだろう。例えば、各組につくルーラーも、国際試合の規定で、R&Aのルールテストのレベル3(最高位)の80点以上の保持者となっているが、日本でレベル3を保持しているのは、わずか3名。協会の職員だけである。

だから全米ゴルフ協会にお願いして、30名派遣してもらった。ことほど左様に、お粗末なのである。

岡本綾子や服部道子などは、マーカーをかって出てくれたという。インターネットでのボランティア・ゲストを僕がFBでお願いしたら、現役、現役に近いプロは、ひとりもいなかった。

その中で、快く引き受けてくれた方々に深く感謝したい。

翻って、世界のアマチュアゴルファーには興味が無い。プロだって特定の選手以外興味が無い。いや、それ以上に、ゴルフ競技に興味が無いという現状は、ゴルフメディアにも多いなる責任があると思うのだ。ゴルフゲームの面白さや奥深さ、あるいは歴史、文化を、もっと長きにわたって伝達することを、置き去りにしてきたからである。


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ライター紹介 ライター一覧

三田村 昌鳳

三田村 昌鳳

1949年2月24日神奈川県逗子市に生まれ。立正大学仏教学部を経て、週刊アサヒゴルフ副編集長ののち、1977年に独立。著書に「タイガー・ウッズ伝説の序章」「伝説創生」など。2011年春に「ブッダに学ぶゴルフの道」(中央公論新社)を発売。日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員。日本ゴルフ協会オフィシャルライター。日蓮宗の僧侶。

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