地上波でのゴルフ中継は「昭和の残滓」
三田村 昌鳳
1949年神奈川県逗子市に生まれ。立正大学仏教学部を経て、週刊アサヒゴルフ副編集長ののち、1977年に独立。著書に「タイガー・ウッズ伝説の序章」「伝説創生」など。2011年春に「ブッダに学ぶゴルフの道」(中央公...
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月刊ゴルフ用品界2014年5月号掲載
なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
テレビの世界のアカデミー賞と言われるエミー賞は、テレビ番組の各ジャンルに与えられる賞である。その中で、スポーツエミー賞というのがあって、1975年のマスターズ中継が、この賞に選ばれたことがある。 確かに、試合展開も面白かった。ジャック・ニクラス、ジョニー・ミラー、トム・ワイスコフが土壇場まで抜きつ抜かれつの1打の争い。そこでニクラスが16番ホール、パー3で12メートルのバーディパットを見事に沈めて走り抜けての優勝だった。 その番組が、テレビ界最高の名誉となるエミー賞を受賞したのである。 NBCの敏腕プロデューサーのフランク・チャキニアンである。チャキニアンは、1970年代からずっとプロデューサーとしてマスターズを中継し、オーガスタが大のお気に入りで遂には住居まで引っ越してしまったという熱の入れようだった。 この人は、ともかく場面の切り返しのテンポが速い。それでいて目障りでなく、間延びもせず、ゲームの流れが自然に目に入るというスイッチングをしたことで有名である。 そして各ホールのコメンテーターにも、厳しい指令をすぐに出す。 「おい、いい加減に話をやめろ! どうせろくな話じゃないんだから!」 こうやって怒鳴りつけたらしい。このコメントは、アメリカのゴルフ迷言名言集に載っていたから、ホントのことである。 スポーツ中継に演出はないとよく言われる。ゲームが面白ければ、それだけ評価が高くなり視聴率も上がる‥‥。 これが過去の常識だった。でもそれは、スポーツ中継の過去の話である。もちろん、笛吹けど踊らずという要素もかなりあるけれど、視聴者、つまりゴルフファンをワクワクさせる引き込み方が、プロデューサーの腕の見せどころではないだろうか。 そう、確かに、日本のテレビ局も苦心惨憺して、さまざまな試みを取り入れている。バラエティによく出演しているタレント。あるいは、熱血スポーツキャスター、ゴルフ好きのタレントなどを登場させてレポーター役を頼んだりもその一つである。 あるいは、ワイワイガヤガヤとアナウンサー、ゲスト、キャスター、さらにゲストなどを呼んで賑やかしもしている。そう、確かに、日本のゴルフトーナメントでも演出はしているのである。けれども、それはゴルフトーナメントの本筋だろうか。
テレビの世界のアカデミー賞と言われるエミー賞は、テレビ番組の各ジャンルに与えられる賞である。その中で、スポーツエミー賞というのがあって、1975年のマスターズ中継が、この賞に選ばれたことがある。 確かに、試合展開も面白かった。ジャック・ニクラス、ジョニー・ミラー、トム・ワイスコフが土壇場まで抜きつ抜かれつの1打の争い。そこでニクラスが16番ホール、パー3で12メートルのバーディパットを見事に沈めて走り抜けての優勝だった。 その番組が、テレビ界最高の名誉となるエミー賞を受賞したのである。 NBCの敏腕プロデューサーのフランク・チャキニアンである。チャキニアンは、1970年代からずっとプロデューサーとしてマスターズを中継し、オーガスタが大のお気に入りで遂には住居まで引っ越してしまったという熱の入れようだった。 この人は、ともかく場面の切り返しのテンポが速い。それでいて目障りでなく、間延びもせず、ゲームの流れが自然に目に入るというスイッチングをしたことで有名である。 そして各ホールのコメンテーターにも、厳しい指令をすぐに出す。 「おい、いい加減に話をやめろ! どうせろくな話じゃないんだから!」 こうやって怒鳴りつけたらしい。このコメントは、アメリカのゴルフ迷言名言集に載っていたから、ホントのことである。 スポーツ中継に演出はないとよく言われる。ゲームが面白ければ、それだけ評価が高くなり視聴率も上がる‥‥。 これが過去の常識だった。でもそれは、スポーツ中継の過去の話である。もちろん、笛吹けど踊らずという要素もかなりあるけれど、視聴者、つまりゴルフファンをワクワクさせる引き込み方が、プロデューサーの腕の見せどころではないだろうか。 そう、確かに、日本のテレビ局も苦心惨憺して、さまざまな試みを取り入れている。バラエティによく出演しているタレント。あるいは、熱血スポーツキャスター、ゴルフ好きのタレントなどを登場させてレポーター役を頼んだりもその一つである。 あるいは、ワイワイガヤガヤとアナウンサー、ゲスト、キャスター、さらにゲストなどを呼んで賑やかしもしている。そう、確かに、日本のゴルフトーナメントでも演出はしているのである。けれども、それはゴルフトーナメントの本筋だろうか。
すぐに帰りたい選手達
例えば、マスターズの最終日を例にとってみると、最終日最後の組がスタートするのは、午後の2時50分から3時10分の間である。サマータイムを引いても、午後の1時から2時の間に最終組がスタートする。 それは、ちょうどアーメンコーナーの11、12、13番ホールあたりから、木漏れ日がフェアウエイに長く影をつくり、太陽が西に傾いてフェアウエイの芝も綺麗に西陽で輝く時間帯である。 最終ホールは、まさに太陽がオーガスタの森に消えようとする時刻である。 ところが、日本では、最終組が18番ホールにやってくる時間が、3時頃だ。まだプレー中は、太陽が真上からやや傾く時間帯で、帽子のヒサシで顔も真っ黒で見えない。最近では、それに加えてサングラスをしていたら、選手の表情なんて、まったく解らない。 かつては、日没ギリギリに試合が終わっていたことがあった。でも、いまは、その時間になると、飛行機に間に合わない。余分に日曜日泊まらないといけない。家に帰れないなどの選手のクレームもあった。 その上に、テレビである。テレビの番組構成上、その時間帯は無理だという。しっかりとVTRで収めたいからだ。危険を犯したくない。 マスターズに限っていえば、いや、ほかのメジャーもそうなのだけれど、トーナメントの生中継を核にして、中継が始まる前には、たとえばドキュメンタリー番組のように、大会の歴史や、ある時代、ある選手にスポットを当てて特別番組を組む。それがプレリュードである。これから始まる、今年の、いまの、ライブのゲームに対するワクワク感を煽るのである。 生中継が終わっても、夜は、深夜まで、トーナメントのプレイバックやトーク番組などを組んでいる。実際、マスターズでも背景に素晴らしい練習場が見えていて、そこでサテライトスタジオを設けてのトーク番組である。 マスターズでは、日本でいう地上波のキー局だけでなく、ケーブルテレビの局と一緒になって盛り上げる。 どうも日本の場合は、地上波が親分、主導権を握っていて、BSやCSは、そのおこぼれ的なイメージが強い。地上波でなければ、スポンサーも納得しないとか、全国ネットでなければ、とか、まあ、昭和の時代を思わせる状況が、いまでも続いているのだと思う。 僕は、もうゴルフトーナメントは地上波では無理と唱えている一人だ。 それは、番組枠や視聴率至上主義に、日本のゴルフトーナメントが不釣合いだからである。それに長い時間帯をトーナメント番組に費やせる余裕なんてないはずだ。 それならば、ゴルフファンも地上波ではなく、ゴルフはBSやCSで観るという感覚をもっと持てばいい。もちろんスポンサーもである。 そしてもうひとつ、いやふたつ。選手の質、品格。コースの完成度とトーナメントの時間帯をもっと是正すべきである。 さらに、テレビ関係者も、ゴルフをより理解して、本筋をしっかりと守り、その上で、演出を考えるべきだと思う。おすすめ記事
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