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新ゴルフルール施行の1月、ゴルフ場で何が起きていたのか

小川朗の現場を照らす 小川朗

ピンを抜くべきか、抜かざるべきか。それが問題だ。平成31年元旦。ルール大改正の初日が始まった。各ゴルフ場では新年早々、新春杯など多くの競技が開催された。

予想された通り、変化とともに混乱は起こった。ドロップを肩の高さで行ってしまい、修正せずにペナルティー。膝の高さでドロップを行おうとして腰を痛めたなどという笑えない話も。平成31年、ルール大改正の現場を検証する。

シーン1・東京湾カントリー倶楽部

新春早々、グリーン上で2人の意見は真っ二つに分かれた。

「私はピンフラッグを抜かずに打つ方がいい。ピンに当てて入れたいから」と語ったのは、一般社団法人終活カウンセラー協会の武藤頼胡代表理事(写真右)。

一方で同協会の上級インストラクターで行政書士の川崎直美さん(同左)は「抜きます。カップが小さく見えるから」と言い切った。

これは1月6日。同協会ゴルフ部の初打ちで起きた1シーン。参加者には、新ルールに則ってプレーしてもらった。

規則13.2の

プレーヤーは旗竿をホールに残しておくこと、または取り除かせること(誰かを旗竿に付き添わせて、球がプレーされた後でそれを取り除いてもらうことを含む)ができるが、ストロークを行う前にそれを決定しなければならない。動いている球が旗竿に当たっても罰はない。

という新ルールに早くも問題が生じた。

セルフプレーの場合、ピンのところまで行かずに乗った人からロングパットがどんどん打てるため、プレーはスムーズになる。

問題はショートパットだ。全員がピンを抜かないのであれば、間違いなくプレーはスピードアップする。しかし1人が差して、1人は抜く、となれば改正前よりプレーは遅くなる。

同コースでは2階のロビーでルール改正の映像を流し続けている。また新ルールブックの売り上げも好調だというが、この日のプレーでスピードアップしたという実感はなかった。

シーン2・マグレガーカントリークラブ

一方で、旗竿を立てたままプレーすることを、ローカルルールにより禁止したゴルフ場もある。千葉のマグレガーカントリークラブは新ルールの施行を受け、追加のローカルルールを掲示した。

その1項目にあるのが次の一文。

ルール改正によりグリーン上ではピンを立てたままパッティングができるようになりましたが、コースの特性上グリーンが見えないホールが多い為、グリーン上では必ずピンを抜いてプレーしてください。(打ち込み防止、危険防止のため)

同コースは打ち上げでグリーン上のプレーヤーが見えないホールが多い。打ち込みを防ぐため、ピンを抜くことでプレー中であることを後続プレーヤーに知ってもらう必要があるわけだ。

シーン3・湘南カントリークラブ

一方、キャディーが付くメンバーシップでは新ルールの認知度が一気に高まっているようだ。プレーヤーがキャディーから、新ルールの導入と、その内容を聞かされるからだ。

そうした会員制ゴルフ場の中でも、今回のルール改正に最も早くから対応していると思われるのが神奈川の湘南カントリークラブ。

R&AとUSGAが遠球先打ではなく、準備が出来た者から打てる「レディ・ゴルフ」を推奨したのは一昨年。この年の10月から導入しスピードアップに成功している。

さらに昨年9月から競技委員会がR&Aのホームページをベースにして、新旧対照表を作成して新規則の正式適用に対応。会報誌の11月号でルール改正の主たる変更点を紹介した。

11月1、7日と開かれた関東ゴルフ連盟主催の新ルール説明会にもルール部会の2名が出席。中旬からは新ルールリーフレットをフロントの外、各プライベートコンペでも300部配布した。

11月28日、競技委員会内でルール変更点の確認とクラブ競技規定及びローカルルールの見直しを行った。12月8、12日の2回に分けて行われた勉強会には全キャディーが出席。講師役は競技委員会のルール部会のメンバーが務めている。

年が明けると3、4日の新年杯で新ルール開始のメモをフロントで全参加者に配布。また特に注意を要する内容(目的外グリーンからの救済)をキャディーマスター室横に掲示した。

その結果、新年杯では新ルールに関わる疑義はなく「無難なスタートが切れた」とコース関係者も語っている。

レディ・ゴルフの時もそうだったが、このコースの特長はキャディーに対する情報共有の意識が高いこと。プレーヤーにとっても、新ルールに慣れるまでの頼れるナビゲーター的役割を果たしている。

シーン4・千葉の某老舗ゴルフ場

メンバー数も多く、千葉県内でも上位に入る歴史を持つ某カントリークラブでは1月2、3日に新春杯、4日に平日新春杯とビジターオープンコンペが開催された。
実はこのビジター向けコンペでは全参加者40人に新しいルールブックが無料でプレゼントされた。

そこで何が起こったか。参加者たちはピンを抜くか抜かないかで意見が分かれ、キャディーの仕事が増えることになってしまった。

また体に染みついているせいか、頭では分かっているのに体が勝手に動いて肩の高さからドロップしてしまうケースが続出した。

ちなみにJGAのウェブサイトでルールブックを購入する場合、個人と倶楽部団体の窓口は別になっているが、料金は同じ。いくら大量購入しても割引はなく、一冊648円だ。

「もうちょっと安くしてもらえれば、賞品にしたり、積極的におススメすることができるのですが」とこのコースの関係者も不満をもらしている。

関東7倶楽部に属する某コースでの話。1月2日、初打ちに訪れたビジター3人とも、すべて名門コースのメンバーながら、全員が「ルールが変わるの?知らなかった」という反応だった。

各クラブとも新ルールの告知に努めてはいるものの、ゴルファーの認知度はいまひとつなのが現状だ。

小川朗の目

早速新ルールでプレーしてみた。レディ・ゴルフは安全性さえ確保できれば、スピードアップにかなり有効だ。手前からは奥までアプローチをしに行く同伴競技者を待たずに打てる。

グリーン上でも、乗った順にピンを立てたままどんどん打っていける。マークせずに「お先に」と全員ができればもっと速くなる。

一緒に回った美女2人の意見はピンを「立てる派」と「抜く派」に真っ二つ。筆者は「立てる派」。気分的に強く打て、いくつか長いパットも決められた。

ドロップの方法に関しては「うっかり肩の高さから」が頻発している。修正できればいいが、そのまま打ってしまい1打罰を食らうケースも少なくない。「最初からひざまずいて花を渡す『王子様ポーズ』でドロップすりゃあいいんです」と力説するコース関係者もいた。

とはいえ、レディ・ゴルフなどでいくら自分たちがスピードアップできても、コース全体が渋滞状態では意味がない。詰め込み過ぎのゴルフ場はそれがゴルフ離れの元凶となっていることを自覚し、新ルールを来場者に根気よく告知してもらいたいものだ。


この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界2019年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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ライター紹介 ライター一覧

小川朗

小川朗

1960年山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後今年9月に退社。

フリージャーナリストとして本誌を始め、週刊誌、ニュースサイトなど各方面に執筆中。㈱清流舎代表取締役COO。東京運動記者クラブ会友。日本ゴルフジャーナリスト協会副会長。

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