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ゴルフスタジアム問題の現在

小川朗の現場を照らす 小川朗
ゴルフスタジアム問題の現在

難病と闘いながら、真相解明に立ち向かう一人のレッスンプロがいる。ALS(筋萎縮性側索硬化症)で闘病中の阿部進さん(49)がその人だ。

1000人を超えるレッスンプロや練習場関係者らがだまされ、40億円を超える被害が出た「ゴルフスタジアム(以下GS)問題」が発覚したのは2017年の春だった。

「被害者の会」が結成され、集団訴訟も次々に提起されたが、事件の風化も懸念されるところだ。GS問題の今を追った。

発病と事件発覚が同じタイミング

3月26日、GS社の破産手続きに伴う最後の債権者集会が東京地裁で開かれた。この時、ひときわ目を引いたのが、車いすで参加した阿部進さんの姿だった。

これまで開かれた公判や債権者集会などに、阿部さんが参加したことはなかった。それは他の被害者とはまったく違う、特別な事情があるからだ。

阿部さんはちょうどこの事件が発覚した時期から突然、異常なほど疲れやすくなった。整形外科で検査を受けたが、原因が分からない。「最初は体がだるくてどうしようもなくて、それからどんどん動けなくなった」(阿部さん)。

1年になろうとする頃、ようやくALS(筋萎縮性硬化症)だと分かった。

ALSは、手足、のど、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだん痩せて力がなくなっていく難病。新たにこの病気にかかる人は1年間で10万人あたり約1~2.5人といわれている。

阿部さんが被害者の活動よりも闘病生活を優先させたのは当然の選択。それでも「みんなに協力できなくて、ホント申し訳なく思っています」と最後となった債権者集会への参加を決断。

さいたま市の自宅からタクシーとヘルパーも頼んで駆け付け、GSの堀新(あらた)社長に対し直接、経営者としての責任を追及した。

GSとは10年以上のつきあい

もうひとつ、阿部さんにはほかの被害者とは違う事情がある。短期間のセールストークで騙されたケースも多い中、阿部さんは10年以上ゴルフスタジアム社と付き合いのある、いわば「お得意様中のお得意様」だった。

中学時代からゴルフを始め、埼玉栄高、日体大と進みツアープロを目指した2001年の全日空(現ANA)オープンはマンデーから本戦へ。2003年の日本オープン(栃木・日光CC)は予選から出場し、決勝ラウンドにも進出している。

だが「参戦経費で借金が600万円までふくらみ」ツアープロの道をあきらめた。2004年にレッスンプロに転向。最初は個人で始めたが、ラウンドレッスンがウケて2年目にはお客が1000人を超えた。
2006年に会社組織にして、仕事は軌道に乗った。「10年間は毎年5000万円以上の売り上げがあった」。

GSとの付き合いは10年近い。

「初めのモーションアナライザーとホームページは、レッスンにも活用していました。お客さんはホームページ上で、今日のレッスンの動画を見ることができましたから。ウチはホームページも週2、3回頻繁に更新していましたから『GSさんに手間をかけさせているな』と申し訳ない気持ちもありました。

当時はスマホとかiPadがない時代。レッスンを(再生して)すぐに見られる機械がなかったんです。『お客さんが見られるのがいいな』という私の判断で、モーションアナライザーというスイング分析器(1台250万円)を2台買いました。

ホームページの制作費とともにローンを組んで、返済額は300万円程度でした。GSにとっては、いいお客だったと思います。それが済んでから『新たなローンを組んでくれ』と(事件発覚の2年位前から)言い始めたんです」。

後に大問題となるモーションアナライザー2の購入ローンと言う名目だった。

「10年近くトラブルなく来ていたし『いろいろとやってくれたんで、今回は(ホームページ制作費を実質)無料とさせていただきます』という話だったので契約した。800万円と聞いた時にはちょっとためらいましたが、長年つきあってきた仲だけに、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった」。

債権者集会は厳しい結果

その阿部さんが出かけた最後の債権者集会だが、結果は厳しいものだった。会社に残された財産はほとんどなく、被害者の配当はゼロ。期待されていた事件の全容解明も、GSの堀社長個人が破産手続きの対象外であることから、難航している。

それでも「ゴルフスタジアム事件被害者の会」の面々は、この事件を風化させないために地道な努力を続けている。

昨年の12月14日には、被害者たちが東京・大手町の三菱UFJ銀行の本店を訪れ、担当者に平野信行CEO宛ての嘆願書を手渡した。

というのも、被害者たちが最も多く契約を結んでいるのが、三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)のジャックスであるからだ。1月18日にはオリエントコーポレーションがグループに属しているみずほFGにも同様の嘆願書を出した。

国会議員へのアプローチも積極的だ。立憲民主党の初鹿昭博、阿久津幸彦両衆議院議員にも議員会館まで出かけて事情を説明している。

初鹿議員は昨年の12月6日の消費者問題に関する特別委員会、阿久津議員は2月27日の衆議院予算委員会第7分科会でゴルフスタジアム問題に関する質問を行っている。

さらに経産省、クレジット協会へも1万人を超える署名を提出。ゴルフスタジアム問題の現状を訴えた。

これから秋にかけてリース・クレジット会社との訴訟が本格化。法廷の場で新たな事実が出てくることも十分ありうる。

阿部進さんを始め被害者たちの戦いが、ようやく本格化する。

ゴルフスタジアム事件
レッスンプロやゴルフ練習場などにGS社の営業が訪問し、「HPを実質無料で作成・運営できる」と説明。ゴルフスイング解析ソフトのローンを組ませ、月々の返済はHPへの広告掲載料を振り込むことで相殺していた。しかし2年前の3月、掲載料の振り込みがストップ。被害者は1000人以上、被害額も約40億円に達している。

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この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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小川朗

小川朗

1960年山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後今年9月に退社。

フリージャーナリストとして本誌を始め、週刊誌、ニュースサイトなど各方面に執筆中。㈱清流舎代表取締役COO。東京運動記者クラブ会友。日本ゴルフジャーナリスト協会副会長。

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