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日本ゴルフツアー機構の迷走

小川朗の現場を照らす 小川朗
日本ゴルフツアー機構の迷走

JGTO(日本ゴルフツアー機構)への批判記事が、目に付くようになってきた。8月9日に都内のホテルで行われた理事会では、選手への説明に追われ終了予定時間を大きくオーバー。

組織内に大きな亀裂が入っていることが、隠しきれなくなっている。またもや「かつて来た道」に逆戻りしつつあるJGTO。関係者へのインタビューを通して、理事会の現場を照らす。

無策より愚策のほうがマシ

平日の昼下がり、一流ホテルのゆったりしたスペースを静寂が支配していた。そこに響き渡ったのが、上田昌孝専務理事の、怒声にも似た大声だった。

声のトーンが一段と高くなったのは、JGTOがこの春から行っている女性ファン獲得を狙った「ゴルフFAN!プロジェクト」に話題が及んだ時。

上田理事の話=「愚策って、タケ小山に書かれたんだよね。他にもいろんなことを書かれてるけど、そういう人たちに僕が言いたいのは『愚策と無策とどっちがマシですか』と。僕は去年の9月から来たけど、それまでの20年間、JGTOは何もやってこなかったんだから」

JGTOの20年を全否定するのも驚きだが、週刊ゴルフダイジェスト誌に掲載されたタケ小山氏の発言には、よほど悔しかった様子。しかし「無策より愚策の方がいい」というのも、今後物議を醸しそう。

それよりも現在のJGTOに必要なのは、ISPSの半田晴久氏を激怒させ、消えてしまった3試合のマイナスを1試合でも多く取り戻し増やすこと。

8月のなかばになって、ようやく来年の7月、ゴルフパートナーがスポンサーのプロアマ形式のトーナメントが1試合新設されると報じられた。賞金総額はツアー最少の5000万円。それでもまだ、スケジュールはスカスカだ。

現実には厳しい逆風が吹き続けている中、3月19日に行われた定時総会とその後の理事会で起こった「定款の変更」と「役員の報酬決定」が騒動の発端となる。

この定款変更により、それまで実費精算と日当だった報酬のシステムが変更され、上田専務理事、宇治重喜理事、村田一治理事ら青木ファミリーと言われる新理事に対し、新たに固定給が支払われることになった。

この件が選手間に不信感を生み、JGTOバッシングにもつながっていく。

上田理事の話「定款変更?しましたよ。でもそれは一般の会社と同じことをしたに過ぎないんです。元々僕は、ガバナンスの専門家で、こういうことをするために来たんですから」。

上田理事がこう話している時に、宇治理事も合流。正当性を力説した。

宇治理事の話=「僕の収入(360万円)なんて、去年までのシステムだったらこの倍は行ってる。定款の変更により上限が決まり、むしろ出費が抑えられる形になっている」。

こうした言い分が3月19日の理事会で選手に十二分に説明され、理解が得られていれば、混乱はなかったはず。しかし開幕前の時期は海外に出ている選手も多く、出席そのものが難しい時期。

委任状を出しているとはいえ、定款変更という一大事をあっさり実行に移されて、選手たちは不安になった。

肖像権ビジネスが騒動の火種に

それでなくても、上層部は青木人脈が色濃い。このことだけで組織内では猜疑心が広まっており、職員が退職するなど、さらにムードは悪くなった。

これに追い打ちをかけたのが、JGTOが常に頼り続けてきたゴルフ写真家協会に対する「裏切り」ともいえる行為だ。公式ウエブサイトの強化を目指し、JGTOは写真家協会に「相場の半値」で協力させてきた。

ところが昨年末になり、それとは別に宇治理事が主体となってフリーカメラマン宮本卓氏と単独の契約を推進。契約は4年、金額は年間2000万円プラス経費1000万円との噂が流れた。

合計1億2000万円という大きな支出、しかも4年という長期契約だ。これに反発が広がり、石川遼選手会長や前会長池田勇太らが中心となってこの契約を直前で留保させたこともZAITEN誌に報じられた。

本誌の取材では、交渉の末この金額が経費込みで2000万円の4年契約へとダウン。理事会も通っていることで、順調に契約の運びとなるはずだった。だが直前に選手たちが説明を求め、結局契約は保留された。

この問題が組織内をさらに混乱させた。そこで宮本氏を直撃してみたが、口は重かった。

宮本氏の話=「今は理事会に諮っている状態で待っている立場。公式にはこれ以上話せない」。

当事者としては守秘義務もあり話せないのも無理はない。では、ここまで舞台裏が大混乱となった最大の原因はどこにあるのか。辿っていくと、機構内における上層部とスタッフとのコミュニケーション不足に突き当たった。

以前は理事会に部長クラスの出席が許されていた。上層部の方向性が中間管理職から下に直接伝えられ、情報が共有されていたという。

だが現在理事会は「密室」で行われ、上層部と現場の一部しか情報を得ていない。そのため、現場の士気も著しくダウン。組織内に亀裂が起こっているという。そこが原因だと、指摘する関係者は多い。

上田理事のようにこれまでの実績を全否定し、新しい物を目指すのはいいが、周囲からは現在の企画内容と告知の弱さに批判が集中。8月9日の理事会まで、結論は持ち越されることになってしまったのだ。

定款の変更やウエブサイトの写真の問題も選手たちに充分な説明がなされていれば、ここまでこじれることはなかった。大きな原因のひとつが閉鎖的で説明責任を怠っている上層部にあることは間違いない。

石川選手会長は態度を軟化

一方、選手会長であるため、自動的にJGTOの副会長にも就任している石川遼も、2か月前までは疑心暗鬼に陥っていた。

だが理事会の終了がズレ込んだため、後半を中座する形で会議室から出てきた石川の表情からは、わだかまりが消えていた。

石川の話=「僕らが思っていたよりも進み方が速かったこともあって、噂が噂を呼んでしまうような形になってしまった。つい2か月前、1か月前までは、選手に聞かれても、説明できるような状態ではなかったんです。でも話を聞けて、納得できた。全日空(ANAオープン)の週の火曜日(9月10日、札幌GC輪厚C)の選手会で説明できると思います」。

選手が説明を聞いて納得するかどうかで今後の動向が定まりそうだ。広報担当理事の佐藤信人も、理事会終了後は穏やかな表情。

佐藤の話=「写真がいまどき売れるのか、という声もあったり、悪いうわさも耳にした。でも騒動によっていったんストップがかかって、もう一度説明を丁寧に聞けたことで、もやもやしたものは取れた感じはあります」。

選手会での説明により、選手たちが納得するのか。まずはここが大きな分岐点となりそうだ。
(金額はいずれも推定)


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小川朗

小川朗

1960年山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後今年9月に退社。

フリージャーナリストとして本誌を始め、週刊誌、ニュースサイトなど各方面に執筆中。㈱清流舎代表取締役COO。東京運動記者クラブ会友。日本ゴルフジャーナリスト協会副会長。

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