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20代がゴルフを救う オジサンゴルファー徹底改造

小川朗の現場を照らす 小川朗

コロナ禍の中で生まれてきた芽を摘んではならない。今年の6月、20代の若者がゴルフ市場回復のけん引役に躍り出ていた。対前年比でゴルフプレー支出額が2343%、ゴルフ場入場者が150%。中部・関西の練習場では125%増と、すべて前年に比べてアップという驚きのデータが続々と届いた。次代を担うのは20代の若者と女性ゴルファー。そこで重要となるポイントも見えてきた。「オジサンゴルファー」の徹底改造だ。

体を持て余していた20代がゴルフ練習場へ

「オジサンゴルファーの徹底改造計画」をぶち上げたのは、日本プロゴルフ協会の倉本昌弘会長。9月7日に行われた理事会後の定例会見でのことだった。

話の流れを順に追っていくこととする。「中部・関西の特定のゴルフ練習場でのアンケート結果で、20代・30代の来場者数が120%増。これは若い人たちが『体を動かしたい。密にならない所に行きたい』ということでゴルフを選択してくれている。細かく言うと、20歳から24歳までが125%増、25歳から28歳までが60%増、逆に75歳から79歳までが50%減、60歳から64歳の層は44・4%減です。『コロナが恐い』という警戒感から出控えの傾向が強い」(倉本会長)。

実は、3月から20~29、35〜39歳の層は、すでに増加へと転じていたという。「多分リモートが始まったあたりから、若い世代は体を持て余していたのではないかなと。それが数字に表れたのだと思います」と倉本会長は解説した。

4月に始まったフジテレビ、テレビ朝日などのワイドショーによるゴルフバッシング。自粛要請の対象から外れているゴルフ練習場を、対象でありながら営業を続けるパチンコ店と同列に扱う偏向報道により自粛警察のターゲットとなった。営業していること自体を批判するSNSでの拡散などのいやがらせにより、複数の練習場がゴールデンウィークに臨時休業を選択せざるを得なかった。

そんな状況下でも、若者たちは練習場に足を向けていたわけだ。数字はほかの分野にも表れている。本誌前月号・山岸勝信氏の寄稿連載でも既に報じた通り、29歳以下のゴルフプレー支出額(ゴルフ練習場、ゴルフ場)が前年同時期(3~6月)に比べ2343%となっている事実もある。

また全国で134コースを運営するアコーディア・ゴルフの入場者(6月)でも、20代は前年同月比150%という驚きの数字が続々と弾き出されている。

だが問題は、ここで生まれた新しい芽を、今後しっかりと根付かせることができるかどうかだ。倉本会長も、そこに頭を悩ませている。「ゴルフをまったくやったこともない子たちが、見様見真似でやっている。せめて立ち方、握り方、クラブを飛ばさないためにはどうしたらいいか、くらいはウチ(PGA)の会員をうまく利用して基本を教えられたらいいなと思っています。実際、練習場でも無料のお試しレッスンなどをやっているところもあるわけですし」。

女性ゴルファーも増加

前出のアコーディア・ゴルフは以前から女性ゴルファーの集客にも妙味を発揮してきた。たとえば、おおむらさきGC(埼玉)。1995年に西武鉄道系のゴルフ場をオープンしたが、2007年にパシフィックスポーツアンドリゾーツに譲渡され、2012年にアコーディアが取得。同グループの運営ノウハウが注入されると年間7万5千人(推定)の来場者数を記録している。

特に2015年の12月から16年11月までの女性来場者数は全体の19・7%。当時同グループ135コースにおける女性比率は平均12・1%。グループの中でもトップだった。

この時採用していたのが「サービスキャプテン制度」。自薦、他薦で選ばれたフロント、レストラン、ショップなどの女性スタッフ6人ほどが月一ペースで会議。リーダー以外は毎回違うメンバーが出席していた。

スタッフたちは女性来場者の要望や不満を、ロッカー、大浴場、脱衣場、レストランなど敷地内の至る所でモニタリング。それを会議で検討し女性目線の企画を打ち出してきた。

それがチェックイン時におけるメーク落としなどが入ったアメニティグッズプレゼントや、ロッカールームの水素水サーバー設置、トイレのタッチレスサニタリーボックス、洗面台のマウスウォッシュなどのきめ細かいサービスにつながった。

最近では同グループの四街道ゴルフ倶楽部が女性から高評価。女性用のロッカー、トイレなどをリニューアルしパウダールームも新設した。シャンプーを変え、ドライヤーはダイソン、XXIO11のレンタル料金はわずか1000円と、女性に喜ばれるサービスが充実。今年の3月には女性比率25・8%という驚異的な数字が記録されている。

一方、140コース保有(他運営2コース)のPGMが全社的に行っているのが、ピンクティーの全コース設置。約3600ヤードと短く「初心者や女性でも気軽にゴルフを楽しんでいただけるようにしています」(同社広報)。その甲斐あって、8月は20代・30代女性の来場者数が、すべて前年同月比を上回っているという。

コロナ禍の中、密ではないスポーツということでゴルフに興味を持つ人は少なくない。特に伸びを示した20代や女性層は、ゴルフ界の将来を握っている。しかしこの層の市場参入の障害となっているのが、ゴルフ界を支え続けてきた男性の高年齢層だというから悩みは深刻だ。

オジサンゴルファーの大改造計画

倉本会長がそのショッキングな事実を明かす。「女性ゴルファー創造プロジェクトなどからは、辛辣な意見が出ています。練習場に行けば、知らない人が寄って来てレッスンするとか、会社にはゴルフをすることを報告したくないとか」。

練習場でよく見かける「教え魔」や「ヌシ」。頼みもしないのに上から目線でレッスンし、時にはセクハラまがいの言動まで。女性ゴルファーにとっては、うっとうしい存在でしかない。せっかくゴルフに興味を持ってくれたのに「練習場などゴルフに関するすべての施設が、女性に優しくないという意見も出た」(倉本会長)現実が、女性の参入を阻んでいる感は否めない。

コースに出られるまでに成長しても、会社には秘密にしている女性ゴルファーも少なくない。社内コンペへの強制参加や、プライベートなゴルフへの誘いを嫌がる向きも多い。各組に女性を入れてホステス役を強要しているのもその表れだ。オンオフの切り替えがつかなくなることも嫌がられる理由に挙げられる。

ある50代の女性は「私がゴルフを辞めた理由」をこう説明する。「始めたころは練習場にもよく行ったのですが、レッスンを受けた時に体を触られてイヤになっちゃいました」。

セクハラやパワハラの原因となっているのが中高年層。冒頭の「オジサンゴルファーの徹底改造」発言は、ここにつながる。

ここまでゴルフ場、練習場、用具業界に多大な貢献をしてきたオジサン世代は日本独特のゴルフ文化を作り育ててきた世代でもある。しかしその文化は、女性や若者に居心地の良いものでは決してない。むしろ嫌われている。
「今の若い子のゴルフに対する感覚は(オジサン世代とは)まったく違っています。だったら我々から歩み寄って行かないと。R&Aやアメリカですら変わっている。日本が一番変わっていないのではないか」(倉本会長)。

オジサンが、変わらなきゃ。日本ゴルフ界がV字回復を実現するための、最優先課題だ。

小川朗の目

介護業界の2025年問題をご存じだろうか。団塊世代が後期高齢者の75歳になるのがこの年。様々な問題が現実化することが予測される。そのため厚労省は地域で高齢者を支える「地域包括ケアシステム」を2025年までに整備することを提唱している

▼同省発表の簡易生命表によれば、男性の健康寿命は72.14歳で、女性は74.79歳。あくまで平均値だが、何らかの介助が必要となるのがこの年齢。健康でなくなったことを理由にゴルフ場から足が遠のくのはよく聞く話
▼一方で平均寿命は男性が81.25歳で女性が87.32歳。男性で9.11年、女性で12.53年の開きがある。男女とも長期間介護が必要になることを覚悟した方がいい
▼健康寿命と平均寿命の差が開けば開くほど医療費、看護費などがかさみ日本経済を圧迫する。ゴルフに勤しみ、健康寿命を延ばすことが日本を救うと言っても大げさではない。

それと並行して、オジサンゴルファーの徹底改造も大事だ。今の感覚では、ますます立場は悪くなる。意識改革はオジサンたち自身のためでもある。


この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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小川朗

小川朗

山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。フリージャーナリストとして本誌を始め、日刊ゲンダイで「ホントにゴルフは面白い!」(毎週金曜日)を連載中。

終活ジャーナリストとして「みんなの介護」でも連載中。日本自殺予防学会会員。週刊誌、ニュースサイトなど各方面に執筆中。㈱清流舎代表取締役COO。東京運動記者クラブ会友。日本ゴルフジャーナリスト協会会長。

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