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ラウンド中、知らない間に相手の心を乱す3通りの言葉

エイジシュート21回の塩じいが語る 塩田正
ラウンド中、知らない間に相手の心を乱す3通りの言葉

ベン・ホーガンはプレー中、ほとんど口をきかず、多くのプロから煙たがられたという話を何かの本で読んだ。

だが、今でこそ、塩ジイは練習の効果を楽しむだけのゴルフになってしまったので、ベン・ホーガンのようにだんまりの人と一緒でも、それほど影響を受けることはなくなった。

だが、かつて、クラブの公式競技、関東や日本と名のつく競技会に顔を出していた頃は、同伴競技者から話しかけられる言葉や、聞こえよがしの独り言などには、大なり小なり影響を受けた。

どんな内容だったか、主だったものを整理してみると、だいたい次の3つのタイプに分けられる。

1.言い訳派

朝スタート前に「おはよう」の挨拶が終わるか終わらないうちに、「今日は寝不足でしてね」とか「ゆうべ飲みすぎて、今日は二日酔いなんで…」と話しかけてくる人たちだ。

塩ジイにも寝不足や二日酔いの経験は数え切れないほどある。一晩中、酒を飲んでいて、そのままコースへ出かけたこともあった。

こんな日は当然のことながら、集中力のかけらもないラウンドになる。「もう二度と、二日酔いのゴルフはやらない」と誓うのだが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、また同じようなラウンドを性懲りもなく続けてきた。

そんなある時、「どんなに体調が悪くても、ゴルフをしようとして家を出たからには、何があろうと言い訳を口にするな」と、あるゴルフ場の支配人から言われたことがあった。

その支配人氏は「ゴルフで全力を挙げるのは、同伴競技者に対する礼儀。言い訳は卑怯」と厳しく語った。それからというもの、塩ジイは「言い訳をしない」を守ることに神経を使ってきた。

2.自己分析派

ドライバーからパットまで、一球一球、打ち終わってから、そのショットのどこがどうだったかを克明に説明し続ける人がいた。

「今のショットは頭を上げるのが少し早かったな」とか「体重が左へ乗らなかった」など、カートが動き出すと座ったまま手振り身振りで解説しはじめるのだ。スタートから最終ホールまで、こんな調子で自分のスウィングを熱心に語る。

最初のうちは「ま、だんだん調子が出てくるよ」などと、調子を合わせているのだが、5、6番ホールあたりまでくると、聞いているふりをするか、「今日は足を鍛えるか」とつぶやきながら、カートから降りて歩くと言う作戦をとったりした。

もし最後まで、彼の言葉を親身に聞いてあげていたら、自分のゴルフへの集中力は完全に失われていたに違いない。

このように自分のゴルフに浸りすぎて、一緒の組の人との正常な会話ができない人は、お世辞にも楽しい相手とは言えない。年をとるにつれて、残念ながら仲間がだんだん少なくなっていく。自分のゴルフだけしゃべり続けるのは、友人を失うという点で厳に慎まなければならないことだと今の塩ジイは思っている。

3.誉め殺し派

このタイプのプレーヤーは文字通り、同伴競技者のショットを褒めまくる人たちである。

人は誰でも褒められて悪い気はしないが、ちょっと芯を外したボールにも「ナイスショット!」という声がかかったりすると、なんとなく有難味が薄れてしまう。

昔、全盛時代の中村寅さん(寅吉プロ)から「おめえなんかの目からすれば、おれのショットはみんなナイスショットに見えっかもしれねえが、1Rで本当のナイスショットは3、4発しかねえんだよ」と聞かされたことがあった。

この話を聞いて、プロはもちろん、仲間のショットでも褒めるのは難しいものだと思うようになった。今は誰と回っていても本当にいいショットなのか、自分なりに見極めてから「グッドショット」と声をかけるようにしている。

言葉の心理戦

以上、プレーヤーとして敬遠されそうな人たちを挙げてきたが、実はプレー以外のおつきあいでは、話題も豊富で友人として、むしろ好ましいタイプに属する人が多い。今でもクラブハウスであったりすると、手を上げて寄ってきて、酒の席に加わったりする。

塩ジイはあまり好きな言葉ではないが、ゴルフには「言論戦」という言葉がある。親しい仲間同士が相手にプレッシャーを感じさせるような言葉を要所要所で何気なく口にするのがそれだ。

いわゆる「メタ・コミュニケーション」と言われる心理妨害作戦である。アメリカのスポーツ心理学者トーマス・タッコ教授は「誰かが何かを伝えるのに、直接に多くのコトバをもって言うのではなく、含みのある一挙一動の全体からしてそれとなく意のあるところをわからせるのである」(「スポーツサイキング」松田岩男・訳=講談社)とメタ・コミュニケーションについて説明している。

例えば池を前にしたティーショットで、Aが相手のBに向かって「昔はあの池によく入れたもんだがね」と何気なくつぶやく。するとBはなるべく池を見ないように平常心で打とうとしていたのに、Aの言葉が強い誘因となって、Bの目の前に池が大きく迫り、いやでもプレッシャーと戦わなければならなくなる。

BはAの言論戦にまんまとはめられたことになる。

エスプリの効いた健全な心理戦は捨てたものではないが、最近は言論戦への反応も鈍りがちだ。熱戦ゴルフから楽しむゴルフへの変わりようが、こんなところにも現れているのかもしれない。


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塩田正

塩田正

昭和7年、千葉県生まれ。昭和31年東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業。体育心理学専攻。同年(株)ベースボールマガジン社入社。ゴルフマガジン誌編集長を経て独立。会社役員、短大講師を兼ねながらゴルフライターとして活躍。

最高のハンディは5。現在は14。ベストスコア69。アルバトロス1回。ホールインワン4回。エージシュート21回(平成29年1月現在)。著書「ゴルフ“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト社)ほか多数。日本ゴルフジャーナリスト協会顧問。

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