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新ルールに泣く人、笑う人

エイジシュート21回の塩じいが語る 塩田正
エンジョイ派と競技者向け ゴルフルールが2つに分かれる?

新しくゴルフの規則が変わって、早くも5ヶ月が過ぎようとしている。例年と違って、かなり大幅な改正なので、塩ジイがルール改正後に体験したこと、話に聞いたことなどから、ちょっとばかり気になった点をご紹介しよう。

ピンを抜く人、立てる人

「どう、今度のルール改正で、少しはプレーが早くなった?」

4月に入ったばかりの頃、古いキャディに聞いてみた。

「そうですね、これまでのラウンドで早かった人は、今度の改正でさらに早く、逆に遅かった人は、新ルールになっても時間短縮にはなっていませんね」

「なぜ?」

「ショートパットでピンを抜く人と、立てておいたほうがいいという人に分かれるからです」

という答えが返ってきた。

「例えば、これまでもOKパットでプレーをしていた人は、1ラウンド、ほとんどピンを抜かずに済ましています。こうした組は20~30分早くなっているのではないでしょうか。反対に短いパットでもOKなしでやってきた人たちは、ピンを抜きたい人、立てておきたい人いろいろです。抜いたり立てたりの時間が余計にかかってしまいます」

立てたピンに向けて打ってOKが出れば、ピンを抜く必要はないわけで、これを4人に当てはめれば、大幅な時間短縮は決して夢ではなくなる。

プライベートな競技などでは、マッチプレーでコンシードされるような短い距離は「OK」として、次のホールへ歩を進めるような「競技の条件」を加えたらどうか、と、つい思ってしまう。

基本はやはり遠球先打

進行を早める策として「ストロークプレーでは、安全が確保できるのであれば、球の位置に関係なく、準備ができたプレーヤーからプレーすることが奨励されます」(新しいゴルフ規則について=JGA GOLF Journal Vol.103)という一項は、新ルールが採用された1月1日から、ラウンド中にいつその状況がやってくるか、待ち望むような気持ちがあった。

というのも、我々の仲間うちでは、前々から「あいつ林の中で苦労しているから、進行上先に打って行こう」などと話し合って、ルール先取りでやってきていたからである。

つまり、新しくこの奨励策が出る前から、少しでもラウンドの時間を節約しようとして、すでに我々の間では実行済だったのである。それが晴れて日の目を見る日がやってきたのだ。

もちろんいつもの仲間同士でやるときは、安全のために、仲間の一人とか、あるいはキャディに「先に打つよ」と声をかけて打っていくのが自然に身についていた。

そんな4月のある日、仲間の一人が欠けて3人のところへ「K・Iと申します。どうぞよろしく」と初顔の人が入ってきた。

ところが順調に遠球先打のリズムでプレーを進めて行く我々の仲間とは関係なく、Iさんはボールのところへ行くと、辺りを見回すでもなく、真っ先に自分のボールを打ち始めたのである。

仲間の一人が「新ルールといってもあれは少しやりすぎではないのか」と言い出した。キャディも「ほかの人と打つのが一緒になって、ボールの行方を追うのも大変ですし、ちょっと危険なところもありますね」と言って眉をしかめた。

そのうち彼はパットでも自分の順番が来る前にそれをやり始めた。

一番長い距離を残した人が構えに入ろうとすると、Iさんは勝手に「お先に行きますよ」といって、さっさとボールを打ってしまう。

「集中して」いざ構えようとした遠球先打の人は、ここで仕切り直しだ。結果はその遠いパットをあっさりと3パットで天を仰ぐ。

いつもは楽しいゴルフが、この日はIさんに引っかき回された感じだった。みんなだんまりで、終始、 Iさんのショットが終わるのを待つ1日で、変則の遠球先打のゴルフが終わったのである。

前出の「新しいゴルフ規則について」では、規則が大きく変わった一方で「プレーヤーの責任を明確にし、プレーヤーの正直さ、誠実さを信じることを明記している」とも述べている。他の同伴競技者への影響という点から見れば、Iさんの行為はルール改正の真意とは大きくかけ離れている。

「遠球先打」を基本に、時に応じて「準備OKで先打」を採用するのが、新しいルールの精神ではないだろうか。

2度打ちでも罰なし

今年になって、まだ2度打ちを1回もやっていないことに、つい最近気がついた。

80歳の頃からショートアプローチやグリーンサイドのバンカーで、2度打ちが目立つようになった。大抵はダフった後、飛んでいくボールをヘッドが追いかけて、もう1度コツンとボールに触れてしまうのだ。ミスショットの中でも最低の後味の悪さである。

原因は手首を使ってボールをすくい上げるインパクトにある、というところまで突き止めた。だが実戦ではなかなか治りきるまでには至らなかった。短いショートアプローチの前に立つと〈2度打ちをするのではないか〉という不安な気持ちになり、手がすくんでいたためのようだ。

それが新ルール施行の今年から、2度打ちのことなど忘れてしまったかのように、スムーズなストロークができるようになった

なぜ、5年かけても治らなかった2度打ちが跡形もなく消えたのか。その答えは「例えば、偶然に2度打ちをしても罰はありません。そのストロークを1回と数えるだけです」(前出・新しいゴルフ規則について)という新ルールのおかげと思っている。肩の力が抜けたに違いない。


この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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塩田正

塩田正

昭和7年、千葉県生まれ。昭和31年東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業。体育心理学専攻。同年(株)ベースボールマガジン社入社。ゴルフマガジン誌編集長を経て独立。会社役員、短大講師を兼ねながらゴルフライターとして活躍。

最高のハンディは5。現在は14。ベストスコア69。アルバトロス1回。ホールインワン4回。エージシュート21回(平成29年1月現在)。著書「ゴルフ“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト社)ほか多数。日本ゴルフジャーナリスト協会顧問。

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