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両腕のドロップが切り返しを易しくする

エイジシュート21回の塩じいが語る 塩田正
両腕のドロップが切り返しを易しくする

「ダウンスウィングのスタートは、両腕をドロップさせる動きから始める。だがその時、頭と両肩はトップのままだ」

この言葉を初めて目にしたのは、今から12年前の米ゴルフマガジン誌だった。アメリカの著名なレッスンプロ、ショーン・ハンフリーズ氏が「再現可能なスウィングの作り方」と題した特集である。

塩ジイは、この教えを拙著「ゴルフ死ぬまで上達するヒント」(2014年=ゴルフダイジェスト社発行)で「切り返しの方法として注目すべきレッスン」と紹介した。

なぜ注目したのかといえば、当時塩ジイは早すぎる切り返しと、ダウンスウィングのスタートとともにコックが解けてしまう欠点に悩まされ、その矯正に苦労していたからである。

有難いことに、このハンフリーズ氏のレッスンのお陰で、二つの欠点がかなり改善できた。2年後には倶楽部のグランドシニア選手権で、思いもかけず76、77のエージシュートで優勝することができた。77歳という参加者中最高齢であり、塩ジイにとっては、同倶楽部での3回目の栄誉だった。

再現性が高い両腕ドロップ

両腕のドロップと両肩の開きを抑えて、ダウンスウィングをスタートする練習は、今でもちょくちょく採り上げている。というのも、せっかちな性格と旧制中学から大学の2年まで、陸上競技の投てきを専門にやってきたので、若い時からダウンスウィングになると、どうしても必要以上の力に頼ってしまう。それが時々顔を出してしまうのである。

そんなこともあって、両腕ドロップのハンフリーズ理論には、これまでも数え切れないほどお世話になっている。

そして有難いことに、この方法は練習場でのナイスショットが、実際のラウンドでも再現できるという利点があった。

ゴルフの場合、練習場でいくらナイスショットが出ても、本番では期待に反して裏切られることが多い。「練習場ではよかったのになぜ?」と頭を抱えてしまうケースは誰にでもあるはず。

それなのに、ハンフリーズ氏の両腕ドロップと、両肩の開きを抑える打ち方は、12年前の雑誌のタイトルに偽りなく、再現性が非常に高いのである。

なぜ再現性に優れているのか。

塩ジイはハンフリーズ理論が、非常にシンプルな動きだからと思っている。一口にいえば、トップに達した両手をコックしたまま、バックスウィングの軌道へストンと落とすだけという感じである。

もちろんここでは、速く、強く振り下ろそうとする必要は全くない。ただ、両手をそのまま単純に軌道へ落としてやるだけで、筋肉がすぐ応じてくれるわけである。

有力プロも推奨

頭と両肩をトップのままにして、両手をドロップするのが、なぜダウンスウィングのスタートによい結果をもたらすのか。その辺を整理してみると①肩の早い開きを抑えて、インサイドからのヘッド軌道を確保、②コックのキープが、ヘッドの加速を生む技術につながる、③力む必要がないので、頭を静止した状態に保ちやすくなるなどが考えられる。

ハンフリーズ氏は、切り返しの要点として、両腕のドロップ、頭、両肩キープのほかに、体重移動の重要さを挙げている。だが、幸いなことにウェイトシフトについては、これまでの練習で、ほぼ身につけていたので、実際にはあまり気にすることがなかった。これなども塩ジイにとっては、ハンフリーズ理論を再現しやすくした一つなのかもしれない。

冒頭で書いたように、塩ジイがハンフリーズ氏のドロップ論を読んだのは12年前の2007年だった。最近、塩ジイが米・英の雑誌をチェックした限りでは、その以前には、切り返しでの「両腕ドロップ」という言葉は発見できなかった。

この方法を推奨するツアープロやレッスンプロが、雑誌に載るようになったのはその後だった。その名手たちの言葉を米ゴルフマガジン誌から拾ってみよう。

スペインの名手で早くからアメリカツアーで活躍しているセルヒオ・ガルシアは、ハンフリーズ氏が雑誌に発表した3ヶ月後に「ドライバーについての打ち方にはいろいろあるが、私にとって役に立つのは両腕をトップからまっすぐにドロップさせることだ」と述べている。そしてこの両腕のドロップはパワーを得る貴重な〝間〟になっているともいっている。

次にスーパースターで目を引いたのは、アーニー・エルス(南アフリカ)だ。

彼は「ダウンスウィングのスタートでは、両腕を体から離れたところへドロップさせ、シャフトは、体の近くに落とすように(註・コックをしたままという意味)振り下ろす」と、細かく分析する。

米ツアーで、屈指のロングヒッターであり、世界ランクでも上位を占めるダスティン・ジョンソン、それにジャステン・ローズも「ダウンスウィングのスタートを両腕のドロップから始めよ」といっている。

ジョンソンは両手を右耳から遠く離して落とすことを推奨し、ローズは「自然のコックにまかせながら両腕をドロップさせる点に注意を払っている。クラブヘッドは自然にインサイドからボールに向かっていく」と両手ドロップのポイントを説明している。

もちろん、こうした名手やレッスンプロたちの記事は、年を追うごとに雑誌に載る回数が増えている。クラブの進歩は誰もが認めるところだが、ここへきての両手のドロップによる切り返しは、スウィング技術進化の象徴的ポイントといえるかもしれない。


この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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塩田正

塩田正

昭和7年、千葉県生まれ。昭和31年東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業。体育心理学専攻。同年(株)ベースボールマガジン社入社。ゴルフマガジン誌編集長を経て独立。会社役員、短大講師を兼ねながらゴルフライターとして活躍。

最高のハンディは5。現在は14。ベストスコア69。アルバトロス1回。ホールインワン4回。エージシュート21回(平成29年1月現在)。著書「ゴルフ“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト社)ほか多数。日本ゴルフジャーナリスト協会顧問。

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