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日本人は喧嘩下手と言われているが

エイジシュート21回の塩じいが語る 塩田正
日本人は喧嘩下手と言われているが

「デーブ・ヒルのフォームは素晴らしく綺麗だが、あっちこっちでカドを立て、よく喧嘩するのでも有名である。つい最近も同伴したヒルはチ・チ・ロドリゲスと大喧嘩をした。(中略)同伴したヒルは『うるさい。人のプレーを邪魔するな』と食ってかかった。相手の言い分が正しくとも、そうあからさまに言われるとチ・チとしても面白くない。プレーが終わっても、しこりが残り二人は犬猿の仲になった」。

これは金田武明さん(故人)が書いた「近代ゴルフの心と技術」(昭和47年/産報刊)の中に出てくる話である。

消えた野球放送の名コンビ

日本でもかつてプロ野球の放送で長い間、名コンビを続けてきたアナウンサーと解説者の仲がまずくなったという噂が流れたことがあった。仮にN放送局Sさんと解説者Kさんとしておこう。

Sさんは本場スコットランドの厳格なアマチュア選手のような趣がある人だった。ゴルフの練習を始めてから1年くらい経ったとき、Sさんと泊りがけで水戸のあるゴルフ場へ出かけた。

彼は車中はもちろん、ホテルでも技術やルール、マナーの話を熱心に質問してきた。

そして最後に「やがてわが局もゴルフを放送する日が必ずやってくる。その日のために、ゴルフ発祥の地であるイギリス人の心を少しでも身につけておきたい。」といった。

一方Kさんには、Sさんとは反対にゴルフについて、よからぬ評判があった。

ある日、顔見知りだった読売ジャイアンツの牧野茂コーチ(故人)と新幹線で一緒になった。

品川に着いたあたりからKさんの話題になった。「Kさんは古いゴルファーで、エチケットやルールについては知り尽くしているのに、申告するスコアはいつも7以上にはならないし、マークしたボールの位置も、打つときには30センチも前になっちゃうんですよ」

こんな具合で話が弾み、終わったのは牧野さんが下車する名古屋駅の近くだった。

牧野さんは「でもKさんは、憎めない人だったですね。得意な話術で、一緒に回っている人をケムに巻いちゃうんです。別所さん(毅彦=元読売ジャイアンツ投手)なんか、そんなKさんとチョコレートを賭けていましたものね」と、笑顔を残して席を立っていった。

SさんとKさんとの間は、ゴルフのプレーぶりを見る限り水と油の関係だったが、しばらくして、二人の息の合った野球放送は、多くの人に惜しまれつつ終わりを告げた。後には「ゴルフが二人の仲を裂いた」という風評が残った。

「我々日本人はどちらかというと喧嘩下手である。例えば上下関係の絆が強く、会議では上役の意見が尊重される。部下は言うべきことを言わずにじっと我慢する。その代わり一度不満が爆発すると、徹底的な喧嘩になり、しこりが残る。(中略)刀を抜いたらどちらかが死ぬという武士の生き方では困る」。前記、金田武明さんの言葉である。

そしてさらに彼は冒頭のデーブ・ヒルとチ・チ・ロドリゲスのような後々まで残る喧嘩もあるが、欧米にはつかみ合い寸前になりながら、すぐケロリと親友関係に戻るさっぱりした喧嘩もあることを教えている。

「1971年の全米オープン(メリオン)で試合の最中『ニクラスみたいなスロープレーは見たことがない』とパーマーが毒づいた。それでもしこりは残さず、その後ナショナルチーム・チャンピオンシップ(ローレルバレー)では二人仲良くペアを組み、見事に優勝している」

と喧嘩の後、元の親友に戻った様子を金田さんは述べている。

プロ野球界両雄の喧嘩

「日本人は喧嘩下手」と金田さんは厳しいが、本当にそうなのか。

塩ジイが新入社員で、ゴルフの編集に従事していた頃のオフに、読売ジャイアンツの川上哲治さんと千葉茂さん、それに会社の役員の4人で千葉カントリー倶楽部の野田コースに出かけた。

プレーが終わってロッカーに入った時、奥の方から川上さんと千葉さんが部屋中響き渡る声で言い合っているのが聞こえた。特に川上さんの声が怒りを含んでいて大きかった。その頃川上さんがジャイアンツのヘッドコーチで、千葉さんが二軍の監督という関係だったと思う。

二人は風呂にも入らず川上さんがオースチン、千葉さんがヒルマンと、それぞれの愛車に乗ってクラブを後にした。私は千葉さんの車に乗せてもらって、日光街道を東京方面に向かった。

千住大橋の袂へ来た時、大勢の警察官が並び、一斉取り締まりであることがわかった。このとき千葉さんの顔色が変わった。免許証を小物入れの中の鍵と一緒にトランクに放り込んだままになって、取り出せなくなっていたのだ。

警官は免許証の提示を求めた。千葉さんはもじもじしながら事情を説明した。そこへ先行していた川上さんが心配してやってきた。千葉さんの免許証が鍵のかかったトランクの中にあるのを知っていたからである。

そうこうしているうちに、帽子に金筋を巻いた、この日の指揮官がやってきた。

「やあどうも、ここで川上さんと千葉さんに会えるなんて…」とニコニコしながら千葉さんに、車をここに置いて帰るようにと指示した。千葉さんは社の車に乗りかえて帰るということで放免になった。

そして二人はいつもの「川さん」「茂やん」の顔で別れた。1時間前にロッカーで激しく言い合ったことなどなかったかのように。


この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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塩田正

塩田正

昭和7年、千葉県生まれ。昭和31年東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業。体育心理学専攻。同年(株)ベースボールマガジン社入社。ゴルフマガジン誌編集長を経て独立。会社役員、短大講師を兼ねながらゴルフライターとして活躍。

最高のハンディは5。現在は14。ベストスコア69。アルバトロス1回。ホールインワン4回。エージシュート21回(平成29年1月現在)。著書「ゴルフ“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト社)ほか多数。日本ゴルフジャーナリスト協会顧問。

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