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トップの切り返しに光を当てたベン・ホーガンの理論

エイジシュート21回の塩じいが語る 塩田正

今年は新型コロナウイルス禍のために、内外のツアー競技をTVで見ることはできなかった。去年の今頃は、アメリカツアーでの選手の優勝争いはもちろん、スウィングの技術にも目を光らせる日が続いていた。

その中で特に目を引いたのが、トッププロたちのショットに入る前のあるルーティンだった。

素振りをする人、構える前に小刻みにヘッドを揺らす人、あるいは全く何もしないですぐ構えに入って、そのままショットする人など、まさに多種多様であった。

ただその中で綺麗なフォームで知られるジャステン・トーマスや強打のダスティン・ジョンソン、さらにタイガー・ウッズなどが、これまでプロの間では、ほとんどお目にかかれなかったルーティンが印象に残っている。

それはアドレスしたら、実際にボールを打つ時と同じようにトップまでバックスウィングをしていき、そこからダウンスウィングを始めて、両手が右膝の高さに達したところで止める、という動きである。

実際のショットのために、両手の通り道を確認するかのような動作に見えた。前述のようにこの動きはこれまでプロの間では、あまり目にすることはなかった。むしろトップから振り下ろす際の軌道確認は、ビギナーに多く見られる動きであったように思う。

今も昔も難問中の難問

では、アメリカツアーでもスターといわれるプロ達が、なぜビギナーと似たルーティンを採り入れているのか。

まず単純に、世界のトップランキングを争うようなプロでも、ダウンスウィングの軌道をしっかりと確かめるためではないかと考えた。言い換えれば、〝世界のプロ〟にとっても、このダウンスウィングのスタートが、一番間違いを起こしやすい箇所と思っていて、慎重になっているからではないかと感じ取ったのである。

一介のアマチュアゴルファーに過ぎなかった私も、長い間、プレーをしてきて、ダウンスウィングのスタートの部分では、いろいろなアドバイスを聞いたり読んだりして、一生懸命練習をしてきた。だが、あまりにも問題点が多く、今でもすっきりと振り切れていることはなく、迷いの多いポイントと感じている。

私の手元に「ゴルフ問答読本」(日本ゴルフドム社刊 草葉丘人著 昭和13年7月7月10日発行)がある。その中に第一線プロの技術座談会が載っていて、当時のプロ達がどんなイメージでダウンスウィングのスタートを始めていたかを語っている。ちょっと長いが引用してみることにした。

司会者が「ダウンスウィングを始める前の要領は?」という質問に対して、六人のプロが次のように答えている。

石角武夫プロ バックスウィングで捻った左肩を原位置に返す運動を起こすことです。
柏木健一プロ 絶対に手から下ろさない。トップでは左親指でクラブを支えた気持ちのまま左肩、および腰から引き下ろす。
宮本留吉プロ 右踵をまず最初に上げ、同時に左踵を下ろし、グリップを振り下ろすのです。
村木 彰プロ 右肩が前へ出るのを抑え、左足に重心を移す。体を動かさないでスウィングします。
中村兼吉プロ しっかりと左踵のヒールダウンから始めます。
瀬戸島達雄プロ 左肩をトップの位置に置いたまま、腰の捻りから始める。これでヒールダウンを始めれば、クラブが遅れてきます。

太平洋戦争前の話だが、この座談会では、六人が六人とも、ダウンスウィングを始めるときの要領については、それぞれが違う考えを持っていたことがわかる。そしてこうした話は現代でも、よく聞く言葉で、この点に関しては、昔も今もあまり変わってはいない。

腰の回転で始動

私もダウンスウィングのときは、前記六人のプロの秘法はもちろん、他にも「グリップエンドをボールに向けて」とか「まず左足へ体重を移す」など、あらゆる方法でテストしてきた。だが、「これだ!」と確信できる方法には、出会うことなく過ごしてきた。

難しさに負けたわけではないが、まあ、生涯の課題にしておくことにしようと考えていた。そんなとき、ベン・ホーガン著の「モダンゴルフ」(ベースボールマガジン社刊=水谷準訳)を読んでいて、はっと気がつく文章に出会った。

今までこの本は5回も6回も熟読していたはずなのに、読み過ごすというミスがあったのだ。その箇所とはこうだ。

「両腰の回転がダウンスウィングを始動する。この腰の運動が自動的に両腕と両手とを腰の高さあたりの位置まで引き下ろす」

これはダウンスウィングのスタートのイラストにつけられた説明文である。

ベン・ホーガンによれば「腰を正しく回転させてダウンスウィングをスタートさせることがダウンスウィングそのものなのだ」といっている。つまりトップから両手(両腕)を振り戻すのがスタートではなく、腰を巻き戻す動きをした瞬間がダウンスウィングの始まりだというのである。

さらにこの腰の回転で体重が右足から左足へ移動し、両腕の通り抜けもスムーズにし、目標に向かって力を絞り出させる、そしてこれが強力なヒッティングの位置につかせる、などダウンスウィングの重要な動きを自動的にやってくれるということにも触れている。

冒頭に挙げたジャステン・トーマス、ダスティン・ジョンソン、タイガー・ウッズなどが見せているショット前のルーティンも、解けたような気が気がした。今はベン・ホーガンのいう腰の回転が彼らの頭の中にあるからだと思えてならない。


この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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塩田正

塩田正

昭和7年、千葉県生まれ。昭和31年東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業。体育心理学専攻。同年(株)ベースボールマガジン社入社。ゴルフマガジン誌編集長を経て独立。会社役員、短大講師を兼ねながらゴルフライターとして活躍。

最高のハンディは5。現在は14。ベストスコア69。アルバトロス1回。ホールインワン4回。エージシュート21回(平成29年1月現在)。著書「ゴルフ“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト社)ほか多数。日本ゴルフジャーナリスト協会顧問。

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