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ブリヂストンスポーツと武蔵野美術大学が「初心者向けクラブ」を共同開発 センターシャフト誕生の経緯

ブリヂストンスポーツ株式会社は大学教育への支援にも熱心である。大学ゴルフ授業研究会のサポーター企業として、Gちゃれ(ゴルフ場体験)へのボール等の物品提供、授業用クラブの無償提供、観戦教育の支援(ブリヂストンオープンへ学生を招待)、Bちゃれ(インドアゴルフ体験)開催支援、協賛広告等々、多くのサポートを頂いている。

これら様々な支援のコーディネートは、同社の浦邉敏彦氏を中心としたものである。

浦邉氏とは2015年3月25日、ゴルフダイジェスト社の中村修氏の仲介によりファーストコンタクトを取った。大学と産業界との連携協定は2016年6月27日に結ばれたが、この1年以上前にブリヂストンスポーツと筆者との交流が始まった。

そのきっかけとなったのは、「大学ゴルフ授業にも有効な初心者向けゴルフクラブ開発」の共同研究であった。浦邉氏はメーカーとして、中村氏はゴルフダイジェスト社の記者でもあるがPGAライセンスを保有するプロゴルファーとして、そして筆者は大学教育の現場を受け持つ教員として、ミーティングを重ねた。

開発においては、ブリヂストンスポーツ株式会社の皆様に多大なるご協力を頂いた。本稿ではその背景と開発経緯の概要を紹介したい。


なぜ初心者向けクラブが必要なのか

大学体育授業で行われることの多いバスケットボールやサッカーといったチームスポーツの場合、個人の技能に多少の差はあれ、ゲームの進行に支障を来すことなく、誰もが楽しいプレーを経験しやすい。

だが、ゴルフの場合、遅刻や欠席などにより学修機会を逸すると、他学生よりも遅れをとりやすい一面がある。また、全ての授業に真面目に取り組んでいた場合でも、なかなか動きをマスターできず、ストレートボールが打てない学生も時折見られる。

教養体育のシラバスにおける学習目標の多くには「生涯スポーツ」が掲げられていることからも、体育を受講する最後の機会である大学においては、運動やスポーツをすることは楽しい、という意識を植え付けることが受講後や卒業後においても重要である。

こうした点からも、例えば、クラブを振ってもボールが1球も真っすぐ飛ばなかった、といった記憶のまま仮に授業が終わるとすれば「するスポーツ」の楽しさの意識も芽生えにくいだろう。

黎明期のクラブにはセンターシャフトのものが多く見られる

ところで、セントアンドリュース・オールドコースに隣接する、英国ゴルフ博物館(British Golf Museum)には、1800年代のゴルフクラブが多数展示(Fig.1)されており、これらの中にはセンターシャフトのものが多く見られる。

「1900年頃までは様々なクラブが使われていたが、センターシャフトのクラブは易し過ぎると言う理由からパターを除いて禁止にされた」(博物館学芸員の話)とされている。

英国ゴルフ博物館に所蔵されているセンターシャフトクラブの一例(筆者撮影)
Fig.1 英国ゴルフ博物館に所蔵されているセンターシャフトクラブの一例(筆者撮影)

「こんなクラブがあったら・・・」 イメージした形状

例えば、L字タイプのパターは、シャフトの線上からフェースの芯まである程度重心距離があるが、センターシャフトの場合は概ねこの重心距離がない。そのため、手の延長線上にフェースの芯が来るイメージをとりやすく、初心者にはメリットが多いと考えられる。

実際、アイアンやウッドなどのクラブを初心者が使用した際、インパクトの瞬間にヘッドの遠心力に添い手がついていけずスライスボールになりやすい。この点を改善するためには、クラブヘッドとシャフトの接続部分をヘッドの中心に近い位置にずらした方が扱いやすいのではないかと考えた。

要するに、シャフトをヘッドの中心に近い位置にすることにより、インパクトの瞬間に添い手の力が分散することなくピンポイントに集中しやすいのではないか。つまり、フェースのどのスポットにボールが当たっても、フェースの角度が変わらず、狙った方向に打つことが容易になるのではないかと考えた。

クラブ開発の経緯

(1)プロトタイプの作成

シャフトがセンター寄りに接続されたクラブのイメージを表現するために、中古アイアンクラブを切断・溶接し、プロトタイプを作成した(Fig.2)。

中古アイアンクラブを切断・溶接して作成したプロトタイプ
Fig.2 中古アイアンクラブを切断・溶接して作成したプロトタイプ
(2)アイアンとドライバーの試作

次に、ブリヂストンスポーツのクラブ開発担当とのミーティングを経て、Fig.3のような形状のアイアンクラブ、およびFig.4のようなドライバークラブを作成した。

Fig.3 試作アイアン
Fig.3 試作アイアン
Fig.4 試作ドライバー
Fig.4 試作ドライバー
(3)クラブ使用感の調査

筆者が2016年当時担当していた明治大学ゴルフ授業の受講者(ゴルフ未経験者)15名(男子11名、女子4名)に、試作したクラブでショットをさせ、一般的なクラブとの使用感の違いについてヒアリングした。

<試作アイアン使用後のヒアリング>
「打球が速くなった気がする」「音が鋭くなった」「打ちやすい」「ボールが見やすい」というコメントが複数の学生から挙げられた。その他「スイートスポットが広く感じた」「安定感がある」「フェース面が広く見える」などのコメントがあった。

反対に「打ちにくい」「アドレスの時にボールが見にくい」「一般的なクラブとあまり変わらない(難しい)」というコメントもあった。

<試作ドライバー使用後のヒアリング>
「振りやすい」「ボールが捕まる感じがした」「正確な軌道で打てている気がした」「スイートスポットが広い気がした」「シャフトがヘッドの真ん中にあるのでバランスが良い」など、ドライバーに関しては、ネガティブな意見は無かった。

(4)ショット正確性のテスト

ネガティブコメントが無かったドライバーを利用して、男子学生3名に10球ずつショットさせた。試作クラブと従来クラブを使用し、ストレートボールの出現率を比較した。

その結果、いずれの学生においても試作ドライバーの方(グラフ上段)がストレートボールの出現率が高かった(Fig.5)。

Fig.5.従来クラブと開発クラブ使用時のストレートボール出現率
Fig.5.従来クラブと開発クラブ使用時のストレートボール出現率
(5)クラブの改良

学生へのヒアリングとテストを経てクラブを改良した。
具体的には「ソールの幅を厚くした」(Fig6・左)、「フェース面をできるだけ広くした」(Fig6・中央)、試作クラブはボールが見えづらい印象を受けるため「ネックを曲げずに直接ヘッドに接続」(Fig6・右)の対応を行い、ウッドに近いアイアンクラブへの改良を試みた。

また、より初心者にも対応できるように、正しい握りをするための「グリップトレーナーの装着」(Fig.7)もした。

3Dプリンターでヘッドの模型を作成(Fig.8・右)した上、改良製品(Fig.9)を作成した。

Fig.6 改良を加えたクラブ(ヘッド)
Fig.6 改良を加えたクラブ(ヘッド)
改良を加えたクラブ(グリップ)
Fig.7 改良を加えたクラブ(グリップ)
Fig.8 3Dプリンターで作成したヘッドの模型(右)
Fig.8 3Dプリンターで作成したヘッドの模型(右)
Fig.9 改良を加えたクラブ(全体像)
Fig.9 改良を加えたクラブ(全体像)

まとめと展望

数回の改良を経て試作したクラブを、初心者の大学生に使用させたところ、スイングしやすく、ボールも見やすく、ダフリなどのミスもカバーできる形状に仕上がった。実際に改良途中の試作クラブを用いたテストにおいても、ストレートボールの確率に上昇傾向が見られた。

これらのクラブは実際の公式試合の使用には適合していないが、大学体育やゴルフを始めたばかりの初心者がラウンドの楽しさを充分に味わうことができる。初心者のタイプや様々なシチュエーションでゴルフプレーを楽しむことの出来るクラブ開発を目指して、今後も検証と改良が必要である。


※本稿の内容の一部は、World Scientific Congress of Golf Ⅶ(2016年7月19日、セントアンドリュース大学)で発表(Kita.T)した。
※本稿の詳細は2019年3月に論文誌で公表予定(北徹朗,中村修の共著)。
※本稿で紹介したクラブは2018年10月1日現在、一般への市販はされていない。

参考文献

Kita T.(2016)A Study on the Development of Golf Clubs for Biginners、World  Scientific  Congress of Golf Ⅶ Abstracts, p.16

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ライター紹介 ライター一覧

北 徹朗

北 徹朗

<現職>武蔵野美術大学 身体運動文化准教授・同大学院博士後期課程兼担准教授、サイバー大学 IT総合学部 客員准教授、中央大学保健体育研究所 客員研究員

<学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程

<主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事

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