和以美・元木健二選手がG4Dツアー初出場! パラアスリートとして、企業人×職人としての挑戦
浅水敦
1971年東京(板橋区)生まれ、埼玉育ち。(株)明光商会入社後、7年半シュレッダー&パウチッ子&ボイスコールの営業(新規開発営業部→第3直販部配属、外務省、宮内庁、旧富士銀行、日本興業銀行、大手宗教法人を担当)...
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和以美株式会社・酒田営業所のパラアスリート社員元木健二選手(右下腿切断、山形県)が1月22日〜23日にドバイ(アラブ首長国)のALHAMARAカントリークラブで開催されたG4Dツアー「G4D Tour @Ras Ai-Khaimah Championship」に招待選手として初参戦。
G4Dツアーとは、EDGA(ヨーロッパゴルフ協会)の呼びかけで、男子ヨーロッパツアーの「DP World Tour」と同じコース、同じ設定で世界から選ばれた障がい者ゴルファーが出場する競技だ。
今大会は「ラアス・アル・ハイマ選手権」の前哨戦として行われ、これまではWR4GDランキング(世界障害者ゴルフランキング)のグロス部門上位者の中から選ばれた選手が出場していたが、今年は同ランキングネット部門の10名が選抜されている。
その一人が元木選手で選出時のWR4GDネットランキング16位、日本人選手としては最上位にランクする。アジア勢の参加は元木選手一人のみで、結果は83・75で8位入賞を果たした。
同選手権には、英国をはじめとするヨーロッパ諸国、オーストラリア、カナダなどから参加。ひと握りのエリートプレーヤーだけが出場できる試合ではなく、努力と運があれば出場権を獲得できるHDCP戦は今後も開催の予定で、より多くの選手がプロツアーと同様のゴルフ場と設定でプレーできる他、障害者ゴルフの健全な発展にも繋がると期待されている。
G4Dツアーへアジア人として初出場を果たした、和以美株式会社のパラアスリート社員・元木健二選手(38)と同社の田中幸治社長を交え、出場の手応えや日頃の働き方を訊く。アスリートとして、そして企業人・職人としての挑戦を浮き彫りにする。
―G4Dツアー出場おめでとうございます。元木さんは日本代表選手として競技と仕事をとてもバランス良く両立されてますね。
元木 仕事も競技も、どちらも手を抜かず頑張りたいと思っています。現在の職場である和以美・酒田営業所(山形県)では住宅の外壁施工を担っており、パラアスリート社員として昨年4月に採用された経緯があります。
―右足を失ったのはいつ頃?
元木 車でサーフィンへ向かう途中、誤ってガードレールに突っ込んだのが20歳の時。運転席は粉々で、右足が挟まった状態でした。病院では義姉が対処してくれました。遠目で担当医師と話しているのが見えたんですが、涙を流していたので、ただ事じゃないと。
―どのような心境でしたか。
元木 朝、麻酔から目が覚めると右足の膝下がなくなっていました。でも、へこんだことは一度もないです。日々生きていることに感謝してますし、義足をつければ普通に歩けるって言われたので。
―バランス感覚が変わりますよね? 一番苦労した点は。
元木 特にありません。私の場合、幸いにも切断面が綺麗なので痛みもなく、義足がすんなり膝下から装着できるんです。普通に歩けるので、長ズボンを履いていると健常者によく間違われます。
―平日は仕事で、普段はどんな練習をされてるんですか?
元木 時間があれば練習場に出かけます。ゴルフは雨や風など外的要因はあるけれど、ピンを狙う自分自身が大きく結果を左右します。ゴルフは人のせいにしたり、ごまかすことができません。もしかすると、そうした弱い自分に打ち勝ちたいという思いで続けているのかもしれません。
―ゴルフを始めたきっかけは。
元木 友人に誘われるがまま34歳でいきなりコースデビューしました。競技に目覚めたのは今からちょうど3年前で、SNSを通じDGA(日本障害者ゴルフ協会)主催のゴルフ競技会を知ったのもこの頃です。人でもスポーツでも、出会いって本当に不思議ですよね。
―元木さんにとってゴルフの魅力とは。
元木 ゴルフはチームで戦うスポーツとは異なり、自分ひとりで判断し自分と戦う競技です。そして、障がいを持っている自分が健常者と同じフィールドで一緒にプレーができて楽しめる。ゴルフって本当に素晴らしいスポーツだと感じます。
―G4Dツアーへの出場が決まったとき、周りの反応はどうだった。
元木 世界観が変わるくらいたくさんの方が応援してくれて、頑張ってこいと言っていただきました。今回初参戦して、私自身もっと腕を磨いてさらに高いフィールドで戦いたいというモチベーションになりましたし、私が活躍することで、同じような障がいを抱えた人たちに勇気を与えたいっていう気持ちが一層強くなりましたね。
―最後に今後の目標について聞かせてください。
元木 最終目標は、PGAのインストラクター資格を取得して、これまでお世話になった人たちへレッスンで恩返しをしたい。今はプレイヤーとして上位を目指しますが、仕事も競技どちらも全力で取り組みたいと思っています。