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巨大なキャディバッグ部品工場は世界シェア90% ~超大手メーカーも信頼を寄せるパーツ工場を発見~

松浦真也の現場放浪記 松浦 真也

月刊ゴルフ用品界2018年3月号に掲載された「現場放浪記 第10回」をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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ゴルフ用品の一大生産拠点である中国の工場現場から、キャディバッグが出来るまでについてお伝えしています。今回キャディバッグに使われるプラスチック部品の製造を行っている広東省東莞市茶山鎮にある耀宇塑胶五金制品有限公司(東莞)を訪れました。

世界の90%シェアを誇る

TDCAのブランドで昨年のジャパンゴルフフェアにも出展したこの工場は、約20年前からキャディバッグ用のボトム部品、口枠部品、持ち手ハンドル部分、スタンド式バッグのスタンド部品(脚)を主に製造しており、約1万5000平米の工場敷地内に、約200人の従業員が在籍。全員ゴルフキャディバッグの部品を製造しています。

工場責任者の張祖杰さんによると、世界のゴルフメーカーが同社のプラスチック部品を採用。そのシェアは「超大手がウチの部品を採用しているから本数では90%の世界シェアだよ」との弁。年間でキャディバッグ500万本分の部品製造をしているそうです。

キャディバッグに使われる樹脂部品は単純な構造や機能であるにも関わらず、売上規模は「1億元(17億円)以上」と。しかもゴルフメーカーに直接納入するのではなく、あくまでキャディバッグ製造工場への納品。いわば孫請け工場なのです。黒子の立場にも関わらず、そのシェアの大きさには驚かされました。

デザインから製造まで

キャディバッグに使われるプラスチック部品であるボトムや口枠は、実は非常に多くの種類があり、同社が常時製造できる種類で800種類以上あります。

また近年は大手メーカーとの協働でデザイン開発することも多く、「超大手メーカーとも直接仕事しているよ」とのこと。専門の製品デザイン部門を配し、常にメーカーからの要望に応えているそう。それでは製造手順を見ていきましょう。

やはりカナガタ?

口枠やボトムは「射出成形」という工法で作られます。これは、製品形状をしたカナガタ(金型)にプラスチック原材料をドロドロに溶融したもの(湯)を射出し、冷えたところで離型して取り出す方法です。

複雑な形状や大型の製品まで製造することができ、バケツ、玩具などの民生品でも幅広く採用されている成形方法です。カナガタはオス・メスがあり樹脂の注入口があります。

工場ではこのカナガタも自社設計、自社製造。成形のノウハウが満載のため、決して外部には製造委託させないそう。自社で専任の設計人員を抱えているそうです。

手では持ち上げられない

最初にカナガタを射出成形装置にセットします。射出成形装置は160t、もしくは260tの圧力で樹脂を押し出すような構造をした大型機械です。その価格は約19万元(320万円)もしくは50万元(850万円)とのこと。

カナガタはオス・メスあり、一つが約60cm角のブロック状。重さは約200kgもあり、とても人の手では持ち上げられません。工場内には2.8tのホイスト(クレーン)が走っていて、それで吊り上げながらセット。

「カナガタを取り付けるだけで2時間はかかるよ」と張祖杰さんの弁。高圧で樹脂を射出するため、寸分違わずセットしないとバリなどの成形不良になってしまいます。現場では熟練の工員が手際よく作業していました。

二色同時に成形もできる

射出成形機は全部で約30台もあり、うち3台が「2色同時成形」という製法が可能です。

キャディバッグを観察すると一部商品でボトム部の脚が黒以外の色になっているものがあり、デザイン性のほか、硬さを変えてバッグが安定して立たせる目的でこの様になっています。

これを造るのに必要なのが2色同時成形です。

セットしたカナガタは1色目の射出が終わると自動的に反転し、もう1色の射出を受け入れます。重さ1t近いカナガタが「クルッと」素早く反転して成形する様子は圧巻でした。

フル稼働で一日千個の製造

こうして1台の射出成形機では1日最大1000個の部品を製造することができ、受注の増大に対応しているそうです。2016年には「中国国家高新技術」賞を受賞したとのこと。これは高い技術力とともに、世界シェアを席巻した実績が認められて、国家から表彰されたという事のよう。「ライバル会社? 無いよ」と自信の笑みを浮かべていました。

ふと工場内の一角を見ると立ち入りが厳重に管理された区画におびただしい数の「カナガタ」が保管されていました。

ところで材料って?

キャディバッグのプラスチック部品の材料はPP(ポリプロピレン)、TPR(熱可塑性エラストマー)、PE(ポリエチレン)、ABS樹脂など。その原材料倉庫を見ると、まるでお米屋さんでした。

一粒一粒が小豆程度の大きさの原材料のツブが袋詰めされ、倉庫に山積みになっていました。それを射出成形機の上部に投入すればあとは溶融~射出までほぼ自動化されています。

将来は組み立てまで含めた全行程を自動化。人員を3分の1まで減らす計画もあるとのことでした。

刷新不止の精神

圧倒的な世界シェアと品質を誇る耀宇公司ですが、さらに新しい技術開発、製品開発を追求していく姿勢が随所に見られ、昨年はベトナムにも新工場をオープンしたとのこと。「刷新を止めない」。このスローガンは工場各場所に掲示されていて社員が共有していました。

でもこの工場が止まると、世界へのキャディバッグ供給も止まる? そう思わずにはいられませんでした。

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ライター紹介 ライター一覧

松浦 真也

松浦 真也

日幸物産株式会社 代表取締役社長 松浦真也

1973年、徳島県生まれ。埼玉大学工学部環境科学工学科卒業後、空調機器企業で原子力関連機器の設計に携わる。2003年よりゴルフジャパン販売代表取締役。実店舗経営でオリジナルクラブの製造販売に従事。2005年日幸物産に入社。大手メーカーOEMクラブの開発設計並びに工房支援業務に携わる。2006年、代表取締役社長に就任。現在に至る。

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